『ちいかわ』第378話「パラレルワールド④」感想考察――「この世界の方がいいの?」幸せそうだからこそ怖い、ハチワレの迷いと理想の世界

感想

「この世界の方がいいの?」――幸せそうに見える世界だからこそ生まれるハチワレの迷い。走る“木”や虫の不気味な仕組みを追いながら、理想と現実、そして本当の幸せについて考えます。

  1. 『ちいかわ』第378話「パラレルワールド④」。
  2. 最初の一枚から始まる「何かが少し違う」という違和感
  3. この世界では、みんなが少し幸せそうに見える
  4. 討伐ランキング2位のちいかわは、本当にちいかわの理想なのか
  5. 「この世界の方がいいの?」――ハチワレが考えているのは自分の幸せではない
  6. 「一緒にいたい」と「幸せでいてほしい」は同じではない
  7. そこに現れる「原因らしき存在」
  8. 「ありがとう」が先に出るハチワレ
  9. 走る「木」という異常事態を受け入れてしまうテンポ
  10. 木が突然すべてを説明する異様さ
  11. パラレルワールドは「別の宇宙」ではなく、ちいかわの中に作られた世界なのか
  12. 現実世界とパラレルワールドにいる虫は同じなのか
  13. 「吸われた者はからっぽに」という言葉の怖さ
  14. 「幸せな世界」を見せるからこそ恐ろしい
  15. 「この世界の住民となるのじゃ」と言いながら自分を指す木
  16. 木は、あの「葉っぱ」と関係があるのかもしれない
  17. ハチワレの「全然わかんない」がくれる安心感
  18. そして結論だけは驚くほど早く理解するハチワレ
  19. あまりにも力強い「YES!」が面白くて、少し怖い
  20. 「怪物」ではなく「怪異」に近い存在なのかもしれない
  21. 今回の話は「現実と理想のどちらが幸せか」という話にも見える
  22. コメント欄ではどんなところが注目されていたのか
  23. 今回の話が教えてくれるかもしれないこと

『ちいかわ』第378話「パラレルワールド④」。

今回の話を見ていて、私は最初から最後まで「かわいい」「面白い」「なんだこれは」と笑いながら見ていたはずなのに、見終わってから考えてみると、かなり怖いことを描いている回だったように感じました。

特に今回気になったのは、パラレルワールドが単純な「変な世界」として描かれているわけではなく、ちいかわにとって、もしかすると元の世界より魅力的に感じられるかもしれない世界として描かれていることです。

そして、その世界を前にしてハチワレが口にする、

「もしかして…この世界の方がいい…の?」

という言葉。

私は、この一言が今回の話の中心にあるように感じました。

最初の一枚から始まる「何かが少し違う」という違和感

今回の始まりに映るのはラッコ先生です。

ただし、いつものラッコ先生とは少し違う。

眉毛は太く、角のようなものもあり、よく見るとかなり変わっています。

最初の一瞬だけなら「ラッコ先生だ」と普通に受け入れてしまいそうなのに、見ているうちに少しずつ、

「あれ?」

という感覚が生まれてくる。

私は、この「最初はそれほど変だと思わないのに、見れば見るほど違う」という感覚そのものが、パラレルワールドらしいと思いました。

完全に別人ならすぐに異世界だと分かります。

しかし、似ている。

知っているものが、ほんの少しずつ違う。

だからこそ不気味です。

パラレルワールドというものは、何もかもが違う世界というよりも、「自分が知っている世界によく似ているのに、決定的なところだけ何かが違う世界」だからこそ怖いのかもしれません。

この世界では、みんなが少し幸せそうに見える

続いて描かれるのは、ピンク色に染まった画面の中で、ちいかわとハチワレがおでとゴブリンを迎えている場面です。

おでは目が3つあり、ゴブリンも元の世界とは少し姿が違います。

確かにパラレルワールドなのですが、そこで起きていること自体はとても穏やかです。

みんなが笑っています。

次の場面では、ちいかわとハチワレが黒い流れ星に乗って楽しそうにしています。

ちいかわの笑顔も本当にかわいい。

元の世界で黒い流れ星という存在に抱いていた印象を考えると、ここにも大きな違いを感じます。

この世界では、黒い流れ星さえ、嫌な形で願いをかなえるものではなく、素直に楽しい体験を与えてくれる存在なのかもしれない。

少なくとも今回映される場面だけを見るなら、元の世界で怖かったものや悲しかったものが、こちらでは少しずつ優しい形へと置き換えられているように見えます。

私はここを見て、単なる「別世界」というより、

ちいかわの中にある「こうだったらよかったのに」が混ざった世界なのではないか

と感じました。

討伐ランキング2位のちいかわは、本当にちいかわの理想なのか

さらに興味深いのが、討伐ランキングです。

2位にはパラレルワールドのちいかわ。

3位にはうさぎ。

そして1位はラッコ先生です。

ちいかわは自分が2位であることを、どこか誇らしそうにハチワレへ見せています。

ハチワレも驚きながら、その結果を受け止めています。

一見すると、

「弱かった自分が強くなった」

という、ちいかわの願いがかなった世界のようにも見えます。

でも、私は少し引っかかりました。

ちいかわは、本当に討伐ランキング2位になりたいのでしょうか。

もちろん、強くなりたいと思うことはあるでしょう。

でも、危険な討伐を好んでいるようにはあまり見えません。

できれば草むしりをして、穏やかに暮らしていたいようにも見えます。

だとすると、この世界は単純に「ちいかわが望んだことをそのまま実現する世界」ではないのかもしれません。

ちいかわの中にある、

「試験に受かりたい」
「強くなりたい」
「みんなに認められたい」
「怖い目には遭いたくない」
「ラッコ先生にはずっと憧れていたい」

そういった複数の気持ちが混ざり合って作られた世界なのではないか。

私はそんなふうにも感じました。

そして、ちいかわが2位なのにラッコ先生が1位のままなのも興味深いところです。

もし何でも自由になる夢なら、自分を1位にしてしまうこともできるはずです。

それでもラッコ先生が1位にいる。

そこには「ラッコ先生はやっぱりすごい存在であってほしい」という、ちいかわ自身の憧れまで残っているようにも見えました。

自分が強くなっても、憧れの人を追い越したいわけではない。

そう考えると、このパラレルワールドにはちいかわの願望だけでなく、ちいかわらしい謙虚さまで反映されているようで面白いです。

「この世界の方がいいの?」――ハチワレが考えているのは自分の幸せではない

そうした場面を見たあと、ハチワレは広い原っぱに立っています。

風が吹き、耳が揺れています。

この耳の動きがとてもかわいいのですが、その表情はかわいさだけではありません。

何かを真剣に考えている。

そして少し寂しそうにも見える。

そこでハチワレが、

「もしかして…この世界の方がいい…の?」

と口にします。

この言い方がとても印象に残りました。

強く問いかけるわけではない。

「絶対こっちの方がいいよね」と決めつけるわけでもない。

むしろ、

「もしかして」

「いい…の?」

と、自分でも答えが分からないような言い方です。

私はここに、ハチワレのものすごく大きな葛藤を感じました。

この世界では、ちいかわは楽しそうです。

嫌な出来事が違う形になっている。

強くもなっている。

友達とも笑っている。

そんな姿を見てしまったら、

「元の世界へ連れ戻すことは、本当にちいかわのためなのかな」

と考えてしまうのも無理はありません。

「一緒にいたい」と「幸せでいてほしい」は同じではない

さらに考えてみると、この場面にはかなり重い問いが隠れているようにも思えます。

ハチワレ自身にとって、パラレルワールドが特別都合のいい世界として描かれているわけではありません。

少なくとも今回映されているのは、主にちいかわが喜んでいる世界です。

それなのにハチワレは、

「この世界の方がいいの?」

と考えます。

つまりハチワレが考えているのは、

「自分はどちらの世界が好きか」

ではありません。

「ちいかわはどちらの世界にいた方が幸せなのか」

です。

ここに私は、ハチワレの優しさを強く感じました。

友達なら普通、

「一緒に元の世界へ帰ろう」

と思いたくなります。

でもハチワレは、その前に一度、ちいかわ自身の幸せを考えてしまう。

自分と一緒にいてほしいという気持ちより、相手が幸せであることを優先しようとしているようにも見えます。

だからこそ、この場面は寂しい。

もしちいかわにとって本当にこちらの世界の方が幸せなのだとしたら。

ハチワレは何を選ぶのか。

ほんの数秒の場面なのに、「大切な人の幸せとは何なのか」というものすごく大きな問題を抱えているように思えました。

そこに現れる「原因らしき存在」

そんなふうにハチワレが迷っているところへ、虫が飛んできます。

ハチワレはその虫を見て、何かを思い出します。

ちいかわが刺されたこと。

その後、ちいかわが寝込んだこと。

自分がちいかわのおでこに触れたとき、電撃のようなものが走ったこと。

そこでハチワレは、

「なんか関係あるんじゃない?」

と考え、虫を追いかけます。

私はここで、ハチワレの良さがもう一つ表れているように感じました。

分からなくても、とりあえず手掛かりを追う。

すべてを理解してから行動するわけではありません。

むしろ、

「よく分からないけど、たぶん関係がある」

という感覚で動く。

この直感的な行動力が、今回ちいかわを助けるための大きな力になっているように見えます。

「ありがとう」が先に出るハチワレ

虫を追いかけて走るハチワレ。

そこへ突然、

「網で捕獲じゃ」

と、横から虫取り網が差し出されます。

するとハチワレは、まず、

「ありがとう」

と受け取ります。

私はこの場面も好きです。

誰が渡してきたのか分からない。

何者なのかも確認していない。

それでも、助けてもらったから「ありがとう」が先に出る。

危険な状況でも、こういうところは変わらない。

その後で画面が引いて、

「えっ? 木!?」

となる。

順番が逆ではないところが、なんともハチワレらしいと思います。

走る「木」という異常事態を受け入れてしまうテンポ

そして今回最大級のインパクトを持って登場するのが「木」です。

足なのか根なのか分からない部分をくねくね動かしながら、普通に走っています。

しかもかなり速い。

ハチワレも驚いて、

「木!?」

という表情をします。

でも走るのはやめません。

ここが面白い。

普通なら「なぜ木が走っているんだ」と、そこで話が止まりそうです。

しかし、ちいかわの世界ではそうならない。

不思議なことが起こっても、とりあえず受け入れながら先へ進む。

このテンポの良さが『ちいかわ』独特だと思います。

同時に、アニメになったことで、根のような部分がうねうね動く様子がはっきり見えるため、かわいいだけではなく妙な生々しさもあります。

「木が走っている」というだけなら笑える。

でも、実際に動いているところを見ると少し気持ち悪い。

この「面白い」と「ちょっと怖い」の境界線も、今回の話らしいところだと思いました。

木が突然すべてを説明する異様さ

ハチワレと木は、そのまま並んで走ります。

ハチワレは明らかにまだ、

「なんなんだろう、この木」

というような顔をしています。

しかし木は気にせず、

「そろそろ吸いに来るぞい」

と説明します。

当然ハチワレは、

「吸い? 何を?」

となります。

ここから木は、今回起きている現象について一気に説明し始めます。

その内容がすごい。

「頭に産み付けて」

「脳と混じり合い」

「濃厚になったパラレルワールド」

かわいい画面の中で、かなり生々しい単語が続きます。

私はここを見ながら、

「こんな設定だったのか」

と驚くと同時に、

「なぜこんな恐ろしい設定を走る木が説明しているんだろう」

という別の面白さも感じました。

ものすごく恐ろしいことが起こっているのに、説明方法があまりにも『ちいかわ』です。

パラレルワールドは「別の宇宙」ではなく、ちいかわの中に作られた世界なのか

木の説明をそのまま受け取るなら、このパラレルワールドは、最初からどこかに存在していた別世界というより、

ちいかわの頭の中で作り出された世界

と考えることもできそうです。

「頭に産み付ける」

「脳と混じり合う」

という言い方からすると、虫がちいかわの記憶や願望などを材料にして、この世界を生み出しているのではないか。

もしそうなら、これまで見てきた「少し違う世界」にも説明がつきます。

ラッコ先生はラッコ先生だと分かる。

おでも、おでだと分かる。

ゴブリンも、うさぎも、流れ星も知っているものです。

でも少しずつ違う。

完全に新しいものではなく、「ちいかわの記憶を材料に再構成した世界」だからなのではないでしょうか。

そう考えると、最初に感じた、

「知っているのに少し違う」

という違和感にも、意味があるように思えてきます。

現実世界とパラレルワールドにいる虫は同じなのか

同時に、現実世界と思われるちいかわの部屋にも虫が現れます。

焦点の合っていないような目で横になっているちいかわ。

その近くを飛ぶ虫。

一方、パラレルワールドではハチワレたちが虫を追いかけています。

ここは私はかなり気になりました。

二つの世界にいる虫は同じ存在なのでしょうか。

それとも別々の虫なのでしょうか。

同じ虫が、現実世界とパラレルワールドの両方に同時に存在しているように見えているのでしょうか。

あるいは、「現実世界で虫がちいかわの頭の周りを飛んでいる場所」と「パラレルワールドでハチワレが虫を追いかけている場所」が、世界は違っても同じ座標のようにつながっているのかもしれない。

作中ではここまではっきり説明されていません。

だからこそ考える余地があります。

もし虫だけが二つの世界をまたげるのだとしたら、この虫は単なる生き物というより、「世界と世界をつなぐ装置」のような存在にも思えてきます。

「吸われた者はからっぽに」という言葉の怖さ

そして木は、

「吸われた者はからっぽに」

と説明します。

この「からっぽ」という言葉も、かなり怖い。

単純に命を奪うとは言っていません。

「からっぽになる」。

身体は残っているのに、中身だけがなくなるのかもしれない。

人格なのか、記憶なのか、意識なのか。

具体的に何が空になるのかは分かりません。

だから余計に怖い。

しかも本人は、その間、頭の中で理想に近いパラレルワールドを見ているのかもしれません。

本人が幸せそうにしている間に、現実の本人は少しずつ空っぽになっていく。

そう考えると、今回の虫はかなり悪質な怪異に思えます。

「幸せな世界」を見せるからこそ恐ろしい

私はここで、この虫の一番恐ろしい部分は、単純に襲ってくることではないのかもしれないと思いました。

この虫が作る世界は、どうやら完全な地獄ではありません。

むしろ、少し魅力的です。

ちいかわが強くなっている。

悲しい出来事が起きていないように見える。

みんなが仲良くしている。

そんな世界を見せられたら、本人だけでなく、助けようとしている側まで、

「本当に戻した方がいいのだろうか」

と迷ってしまいます。

実際、ハチワレは迷いました。

つまり、この怪異は相手を力で閉じ込めるだけでなく、

戻る理由そのものを揺らがせる

のです。

これはかなり恐ろしい。

怖い世界なら逃げたくなります。

苦しい世界なら戻りたくなります。

でも幸せな世界ならどうでしょう。

「ここにいたい」と思ってしまう。

もしかすると、それこそがこの怪異の一番危険なところなのではないかと思いました。

「この世界の住民となるのじゃ」と言いながら自分を指す木

さらに気になったのが、木の動きです。

木は、

「入り込んだものはこの世界の住民となるのじゃ」

と説明するとき、自分自身を指しているように見えます。

ここはとても意味深です。

作中では木の過去について説明されていないため、これはあくまで私の考察ですが、

この木自身も、かつて外からこのパラレルワールドへ入り込んだ存在なのではないか

とも考えられます。

ハチワレと同じように誰かへ触れ、この世界へ入ってしまった。

しかし戻ることができず、長い時間の中で「木」という姿になってしまった。

もしそうなら、今回ハチワレを助けている理由にも別の意味が生まれます。

自分と同じ目に遭わせたくないから、必死に説明しているのかもしれない。

そう考えると、突然現れた便利な説明役に見えた木が、急に少し悲しい存在に見えてきます。

木は、あの「葉っぱ」と関係があるのかもしれない

もう一つ面白いと感じたのが、木の正体についての別の考え方です。

以前、ちいかわが虫に刺されたとき、ハチワレはちいかわのために葉っぱを頭へ貼っていました。

もし、その葉っぱまでちいかわの記憶の一部としてこの世界に取り込まれていたとしたら。

そしてその葉っぱがパラレルワールドの中で育ち、「木」になったのだとしたら。

もちろん、これは作中で明言されたことではありません。

完全に想像の領域です。

ただ、私はこの考え方も面白いと思いました。

もともとハチワレが、

「ちいかわを助けたい」

と思って使った葉っぱ。

その葉っぱが、この世界で今度はハチワレを助ける存在になっている。

そうだったとしたら、ハチワレの優しさが巡り巡って自分自身を助けているようにも見えます。

そう考えると、とても『ちいかわ』らしい気もします。

ハチワレの「全然わかんない」がくれる安心感

木があまりにも難しいことを説明するので、ハチワレは、

「全然わかんない」

と言います。

ここは私も完全に同じ気持ちでした。

頭に産み付ける。

脳と混じる。

パラレルワールドが濃厚になる。

一度聞いただけでは、

「どういうこと?」

となります。

しかも、これだけ重要そうな説明をされると、「ここを理解できないと、この先の話についていけないのかな」と、少し置いていかれるような気持ちにもなります。

でも、そんなところでハチワレ自身が、

「全然わかんない」

と言ってくれる。

すると不思議と、

「あ、やっぱり分からないよね」
「今は分からなくてもいいんだ」

と、少し安心できます。

『ちいかわ』の世界では、起きていることのすべてがきれいに説明されるわけではありません。

分からないものは、分からないままそこにある。

だからこそ、ハチワレが理解していないことをそのまま口にしてくれることで、「分からないままでも、この先を見ていていいんだ」と思わせてくれるような気がしました。

そしてハチワレは、分からないことを分かったふりもしません。

その代わりに次は、

「どうなるの?」

と、一番大事なところを聞きます。

全部を理解しようとするのではなく、分からないことは分からないと言い、そのうえで「結局どうなるのか」を確かめる。

この素直さも、ハチワレの強さの一つなのかもしれません。

そして結論だけは驚くほど早く理解するハチワレ

木の説明をすべて理解できたわけではないはずなのに、ハチワレはやがて、

「それってつまり、元の世界に戻れなくなるってこと?」

と、本質をつかみます。

ここも面白い場面です。

細かい仕組みは分からない。

でも、

「何が一番危険なのか」

は理解する。

これは日常でも案外重要なことなのかもしれません。

すべてを完璧に理解できなくても、本当に大事なところだけは見失わない。

ハチワレは難しい説明に詳しいわけではありませんが、「このままでは戻れなくなる」という危険性にはきちんと気づきます。

だからこそ、この場面で一気に緊張感が高まります。

あまりにも力強い「YES!」が面白くて、少し怖い

そしてハチワレの問いに対して、木は、

「YES!!」

と答えます。

ここは笑ってしまいました。

なぜ英語なのか。

なぜそんなに力強いのか。

なぜそんなにいい声なのか。

しかも表情は笑顔。

内容だけ考えると、

「元の世界には戻れなくなる」

という、かなり絶望的な話です。

それなのに、

「YES!!」

この温度差がすごい。

ただ、少し考えてみると私はこの笑顔がちょっと不気味にも見えました。

この木は味方なのか。

それとも、もうパラレルワールドの住民になって長い時間が経ち、

「戻れなくなること」を当たり前の現実として受け入れているだけなのか。

もし木自身が戻れなくなった存在だとすれば、あの明るい「YES!」は、単なるギャグではなく、少し怖いものにも見えてきます。

絶望的な出来事が、もうこの木にとっては日常なのかもしれない。

そんな見方までできてしまいます。

「怪物」ではなく「怪異」に近い存在なのかもしれない

今回の虫について考えていると、単純なモンスターとは少し違う気がします。

襲われたら戦えばいい、という存在ではない。

本人の頭の中へ世界を作る。

そこへ他人まで巻き込む。

その世界が本人の願望を反映しているように見える。

そして、現実の本人は空っぽになっていく。

こうなると、敵というより「怪異」という言葉の方が似合います。

さらに恐ろしいのは、一人でいると対処できない可能性が高いことです。

今回もハチワレが異変に気づき、ちいかわへ触れたからこそ、ここまでたどり着きました。

もし誰にも気づかれなかったら。

もし一人だったら。

本人は理想に近い世界の中で過ごし続け、現実では空っぽになってしまうのかもしれません。

そう考えると、『ちいかわ』の世界では、

「誰かがそばにいること」

そのものが、生き残るための重要な力なのかもしれないと思いました。

今回の話は「現実と理想のどちらが幸せか」という話にも見える

今回を見ていて、私は最初、

「元の世界に戻るのが当然」

と思っていました。

でもハチワレの、

「この世界の方がいいの?」

という言葉を聞くと、少し考えてしまいます。

元の世界では、うまくいかなかったことがある。

試験に落ちたこともある。

悲しい別れもある。

怖い出来事もある。

パラレルワールドでは、それらが少し優しい形に置き換わっているように見える。

では、どちらが幸せなのでしょうか。

完璧に近い世界で暮らすこと。

それとも、思い通りにならないこともある現実で、大切な人と過ごすこと。

今回の段階では答えは出ていません。

でも、ハチワレの迷いが描かれたことで、ただ「元の世界へ戻ろう」という単純な話ではなくなっています。

私はそこが今回一番興味深いところでした。

コメント欄ではどんなところが注目されていたのか

今回のコメント欄では、やはり突然登場する「木」に関する反応が非常に多く見られました。

「突然木が出てきて全部説明するのがおもしろい」「走る木が速すぎる」「キャラクター名が“木”なのがおもしろい」「YES!が力強すぎる」といった声が多く、茶風林さんの声についても「イメージ通り」「キャスティングが合いすぎている」という意見が数多く書かれていました。

一方で、ハチワレの「この世界の方がいい…の?」という場面については、「自分に都合のいいことが起こっていないのに、ちいかわの幸せを考えているのが優しい」「声や表情が切ない」「友達にとって何が幸せなのかを考えているところが印象的」といった感想も多くありました。

また、木が「この世界の住民となるのじゃ」と言ったときに自分自身を指しているように見えることから、「木自身も外から入り込んで戻れなくなった存在なのではないか」という考察や、「ちいかわの頭に貼られた葉っぱがこの世界で木になったのではないか」という説も見られました。

そのほかにも、パラレルワールドでもラッコ先生がランキング1位であること、パラレルのラッコ先生のデザイン、ちいかわがランキング2位になっていること、ハチワレの耳が風で揺れるアニメならではの表現、木の根のような脚がくねくね動く描写など、短い映像の中に入れられた細かな部分まで多くの人が注目していました。

そして、「頭に産み付ける」「脳と混じり合う」「吸われた者はからっぽになる」という内容について、「かわいい作品なのにかなり怖い」「ホラーなのに笑えてしまう」「怪物というより怪異」という反応も目立っていました。

今回の話が教えてくれるかもしれないこと

今回の話を見て、私は「幸せとは、嫌なことが何も起こらない世界のことなのだろうか」と考えました。

失敗しない世界。

悲しい別れがない世界。

強くなれる世界。

怖かった存在とも仲良くできる世界。

そんな場所があれば、確かに魅力的です。

もしかすると、そこから戻りたくないと思うことさえあるかもしれません。

けれど、その世界が自分の記憶や願望から作られたもので、現実の自分が少しずつ「からっぽ」になっているのだとすれば、それを本当の幸せと呼べるのか。

今回のパラレルワールド編は、そんな問いをこちらへ投げかけているように感じます。

そして何より印象に残るのは、ハチワレが「自分がちいかわと一緒にいたいか」ではなく、「ちいかわにとってどちらの世界がいいのか」を考えたことです。

誰かを大切にするということは、ただ自分のそばにいてほしいと願うことだけではない。

ときには、自分の気持ちとは別に、その人にとっての幸せを考えることなのかもしれません。

同時に、どれだけ不完全でも、失敗したことや悲しかったことまで含めて誰かと共有してきた時間そのものが、「本当の世界」を大切なものにしているのではないかとも思います。

完璧に作り直された世界よりも、うまくいかないことがありながら、それでも誰かが異変に気づき、追いかけ、助けようとしてくれる世界。

今回の動画は、もしかすると、

「幸せとは、何もかも思い通りになることではなく、不完全な現実の中で、それでも自分を気にかけてくれる誰かとつながっていることなのかもしれない」

そんなことを教えてくれているのかもしれません。

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