『ちいかわ』第380話「パラレルワールド⑥」感想考察――「簡単ッ!簡単ッ!」でハチワレは何を手に入れ、何を失ったのか

感想

「簡単ッ!簡単ッ!」の一言で、ハチワレは本当に“強く”なったのか。少しずつ変わる身体、声、表情、そして涙ながらに武器を向けるちいかわ?。第380話に描かれた「強さ」「変化」「願い」の意味を、場面を追いながら考察します。

『ちいかわ』第380話「パラレルワールド⑥」

今回の話は、ほんの短い時間の中でハチワレの姿、声、表情、そして周囲との関係まで大きく変わっていく、とても印象的な回だった。

特に私が面白いと思ったのは、「ハチワレが大きくなった」という出来事そのものではない。

少しずつこの世界に馴染んでいく身体。
虫を倒したことで初めて知る自分の力。
「簡単ッ!簡単ッ!」という言葉。
そして最後に、さっきまで笑顔だったちいかわ?から武器を向けられてしまうこと。

こうして順番に見ていくと、今回描かれているのは単なる変身ではなく、「ある世界に馴染んでいくことで、自分自身まで変わってしまう怖さ」なのではないかと思えてくる。

みんなが笑っている「理想の世界」のような始まり

冒頭のイラストでは、このパラレルワールドにいるオデやゴブリンのキャラクターたちが描かれている。

それぞれ元の世界とは微妙に姿が違う。

けれど、印象的なのはみんなが笑顔でいることだ。

一見すると、とても幸せそうな世界に見える。

争う必要もない。
みんな楽しそうにしている。
この世界に住んでいる者たちにとっては、こここそが理想の世界なのかもしれない。

しかし今回を最後まで見ると、この最初の「みんな笑顔」という絵まで少し違って見えてくる。

本当に理想の世界なのか。

それとも、この世界に完全に馴染んだ者にとっては「理想の世界に見える」ということなのか。

その違いはかなり大きい。

今回の話では「馴染む」という言葉が重要になる。

だから私は冒頭の笑顔も、ただかわいいだけではなく、「この世界に馴染めば、あなたもこうなれるよ」と言われているようにも感じた。

もちろん、これは私の考えすぎかもしれない。

でも、そう考えてもう一度冒頭を見ると、この明るいイラストにも少しだけ不気味さが生まれてくる。

ピンク色の空と「吸われている」ちいかわ

そこから前回の続きへ。

上空にはピンク色の空が広がり、葉っぱのようなものまで吸い込まれていく。

そして元の世界と思われるちいかわは、あの虫によって頭から何かを吸われている。

一見すると『ちいかわ』らしい柔らかな絵なのに、よく見るとかなり怖い。

特に、頭のピンク色になっている部分を見ると、「本当に何かを吸い取られている」ということが細かく表現されているように感じる。

さらに虫そのものがアップになり、吸われていることが強調される。

かわいい画面の中で、実際にはかなり危険なことが進行している。

この「かわいい」と「怖い」が同じ画面の中で普通に共存しているところが、やはり『ちいかわ』らしい。

そしてパラレルワールドの世界で、

木が、

「この世界に馴染み始めちょる」
「早くするんじゃ」

という趣旨のことを伝える。

ここで初めて、「時間がない」ということが強く意識される。

このままでは、世界だけでなくハチワレ自身までこちら側へ馴染んでしまう。

気づかないうちに変わっていくハチワレ

一方、ハチワレは虫を追いかけている。

この段階では、まだ普通のハチワレにかなり近い。

しかしよく見ると、しっぽが変わっている。

さらに虫を追いかけていく間に、頬の毛が増え、耳も変化していく。

変身シーンとして大げさに見せるのではなく、普通に行動している間に少しずつ変わっているところが怖い。

本人が気づかない間にも変化が進んでいるからだ。

でも同時に、この途中のハチワレがものすごくかわいい。

毛が増えて、少しモフモフになっている。

「怖い変化の途中なのに、かわいい」。

ここにも『ちいかわ』らしい妙な感覚がある。

そして私は、この「かわいい」という感情そのものが、さらに怖さを強めているようにも感じた。

明らかに良くないことが起こっているのに、「でもちょっとかわいい」と思ってしまう。

もしかするとハチワレ本人にとっても同じなのかもしれない。

変化というものは、いつも分かりやすく嫌な姿をしてやってくるわけではない。

最初は悪いものだと気づかない。

むしろ少し心地よかったり、便利だったり、魅力的だったりする。

だからこそ、気づいたときには深く馴染んでしまっている。

今回のハチワレの変化を見ていると、そんなことまで考えてしまう。

助けに来たと思った二人は、虫と遊び始める

そこへ、この世界のちいかわ?とうさぎ?が走ってくる。

うさぎ?はいつものように大声を上げつつ勢いよく前傾姿勢で突っ込んできて、頭についているハサミのような部分をカチカチさせている。

ちいかわ?もうわーといった声を上げながら、武器のようなものを持っている。

一瞬、ハチワレと一緒に虫を捕まえてくれるのだと思う。

ハチワレも、

「手伝ってくれるの?」

という期待を見せる。

ところが二人は虫を倒そうとしない。

むしろ楽しそうにしている。

うさぎ?は飛び跳ねて手を突き上げ声もいつもの奇声ではなくイエイエと言っているようにも聞こえる、
ちいかわ?も足を交互に動かし虫と一緒になって遊んでいるように見える。

二人とも笑顔だ。

ここでハチワレは、

「虫採り……してるわけじゃなくて……」

と戸惑う。

私はこの場面がかなり切ないと思った。

ハチワレにとって虫は、元の世界へ戻るために倒さなければならない存在。

ところが、こちらの世界の二人にとってはそうではない。

もしかすると、あの虫は敵ですらないのかもしれない。

この世界を成立させている存在として大切にされているのかもしれないし、単純に一緒に遊ぶ仲間なのかもしれない。

つまり同じものを見ていても、ハチワレと二人では意味がまったく違う。

ハチワレには「倒さなければならない敵」に見えている。

ちいかわ?とうさぎ?には「遊ぶ相手」に見えている。

ここには、このパラレルワールドの怖さが凝縮されているように思う。

ハチワレが感じたのは「困惑」だけではなく「孤独」だったのかもしれない

二人が「わーい」と楽しそうにしている後、ハチワレの表情がアップになる。

私はこの顔がとても印象に残った。

困っている。

でも、それだけではないように見える。

少し寂しそうでもある。

「手伝ってくれると思っていたのに」

という気持ちがあるのではないだろうか。

そのあと背景まで暗くなり、虫取り網を持つ手が震える。

ここでハチワレは初めて、本当の意味でこの世界の中で一人になってしまったように感じた。

姿はこの世界へ馴染み始めている。

でも心はまだ元の世界へ帰ろうとしている。

ところが、この世界の友達は帰ろうとはしていない。

むしろ楽しんでいる。

身体はこちら側へ引っ張られていくのに、心だけが元の世界へ戻ろうとしている。

その二つが引き裂かれているようにも見える。

だからあの震える手は、「怖い」というだけではなく、

「自分一人でやらなければいけない」

という孤独の表現にも思えた。

それでも「帰るんだ」と決めるハチワレ

後半、ハチワレは振り返る。

そして表情が変わる。

目に力が入り、覚悟を決めたように、

「帰るんだ」

という意志を見せる。

私はここが、今回のハチワレの格好いいところでもあると思う。

助けてもらえない。

身体も変わり始めている。

それでも帰ろうとする。

この時点では、まだハチワレが求めているものは「元の世界へ帰ること」だ。

だからこそ、このあとに起きることが一層怖くなる。

笑顔のまま話す「木」がやっぱり怖い

そこで木が、

「体が完全に馴染む前に」

といったことを伝える。

しかし私は、この木が最後までどういう立場なのか分からないところが面白い。

言っていることだけを聞けば、ハチワレを助けようとしているようにも思える。

「完全に馴染む前に急げ」と教えてくれているのだから、忠告しているようにも見える。

ところが表情はずっと笑顔。

さらに身体の動きもどこか妙で、拳を前に出したようなポーズをしている。

応援しているようにも見える。

「お前もこっち側になるぞ」と喜んでいるようにも見える。

だから判断できない。

私は、この「善意なのか悪意なのか分からない」ということ自体が、この木の不気味さなのではないかと思う。

本当に恐ろしい存在なら、もっと分かりやすく悪い顔をしていてもいい。

でも笑っている。

親切そうに教えてくれる。

それなのに、どこか信用しきれない。

「体?」――ハチワレ自身が初めて自分の変化に気づく

木の言葉に、ハチワレは初めて、

「体?」

と反応する。

ここが重要だと思う。

視聴者にはかなり前から変化が見えていた。

しっぽも変わっていた。
耳も変わった。
頬の毛も増えていた。

でも、本人はここまで自覚していなかった。

そして初めて自分の腕や足を見て、

「何これ」

というように驚き、虫取り網まで落としてしまう。

私たちは少しずつ変化を見てきたけれど、ハチワレにとってはここで初めて「自分の身に起こっていること」になる。

これは少し現実の変化にも似ていると思った。

人は変わっていく途中では、自分の変化には案外気づかない。

周囲から見れば明らかに変わっていても、自分では今までの自分のままだと思っている。

そして何かをきっかけに突然、

「あれ、自分ってこんなふうになっていたんだ」

と気づく。

今回の「体?」という短い言葉には、そんな怖さまで感じた。

そして、ハチワレは自分の「強さ」を知ってしまう

そこへ虫が飛んでくる。

ハチワレはその虫を見つけ、手を伸ばす。

そして、「えいっ」と言いながら、あまりにも簡単に握り潰してしまう。

これまで虫取り網で必死に追いかけていた相手だった。

それを、今の身体なら一撃で倒せる。

ハチワレ自身も驚き、

「潰した」
「強いよ、このカラダ!」

と自分の力を認識する。

この瞬間までなら、まだ単純な驚きにも見える。

ところが、ここから何かが変わる。

「おめでとう」と言う木は何を祝っているのか

そして木は笑顔のまま、

「おめでとう」

と告げる。

私はここも不思議でならなかった。

虫を倒せたことを祝っているのか。

ハチワレが強くなったことを祝っているのか。

それとも、この世界へさらに深く馴染んだことを祝っているのか。

虫がこの世界にとって大切な存在なら、なぜ潰したハチワレを祝うのだろう。

逆に木が本当にハチワレを助けようとしているなら、「帰るための行動に成功した」という意味で祝っているのかもしれない。

どちらにも取れる。

だからこそ怖い。

この木は、ハチワレの味方なのか、この世界の味方なのか、それとも単純に目の前で起きたことを肯定しているだけなのか。

今回だけでは、まだ答えが出ない。

潰した手のひらを見る時間が意味するもの

虫を潰したあと、ハチワレは自分の手を見る。

手のひらには、黒っぽい跡のようなものまで残っている。

私はこの「自分の手を見る」という時間がすごく重要だと思う。

ただ敵を倒しただけなら、そのまま次の行動へ進めばいい。

でもハチワレは見る。

「自分がやった」という事実を確認する。

そして、

「自分にはこれだけの力がある」

と理解していく。

このわずかな間に、ハチワレの興味が「帰ること」から「自分の力」へ移動したようにも見える。

少し前まで、

「帰るんだ」

と決意していた。

ところが今は、

「強いよ、このカラダ!」

なのだ。

ここに私は、今回最大の転換点を感じた。

「やった!」ではなく「簡単ッ!簡単ッ!」だった

そして、あの言葉が出る。

「簡単ッ!簡単ッ!」

私はここが本当に怖かった。

なぜならハチワレは、

「やった!」
「これで帰れる!」
「よかった!」

とは言わなかったからだ。

出てきたのは、

「簡単」。

つまり喜んでいる対象が「帰れる可能性」ではなく、「自分が簡単に敵を倒せるほど強くなったこと」へ変わっているように見える。

ずっと努力してきたハチワレ。

強くなりたいと思ってきたハチワレ。

そんなハチワレが、突然、努力を必要としないほど大きな力を手に入れる。

だからこそ「簡単」という言葉が恐ろしい。

今まで苦労してきたものが、力さえ手に入れればこんなにも簡単だった。

その感覚に触れた瞬間なのかもしれない。

変わったのは「身体」なのか、それとも「心」なのか

そして「簡単ッ!簡単ッ!」の瞬間、声が大きく変わる。

目の印象も変わる。

口元や牙も、それまでのハチワレとは違って見える。

ここで完全に「強くなったハチワレ」になったように感じる。

私はこの順番がすごく面白いと思った。

身体そのものは、それより前からかなり変わっていた。

それでも声は、まだ私たちの知っているハチワレに近かった。

ところが自分の力を認識し、

「簡単」

と言ったところで、一気に変わる。

だから私は、

「身体が変わったから声が変わった」

というより、

「自分が強くなったことを受け入れたから、声まで変わった」

ように感じた。

もちろん実際の演出意図がそうだとは断定できない。

でも、そう考えると今回の変化がさらに怖くなる。

本当の変身の完了条件は、姿が変わることではなく、

「新しい自分を本人が受け入れてしまうこと」

だったのではないか。

そんな見方までできるからだ。

「簡単」のあとにある小さな「ん?」が怖い

さらに印象的なのが、その後ろから聞こえてくる、

「イヤ……」

という声に対して、ハチワレが振り返るときの、

「ん?」

という短い一言だ。

この「ん?」が、いつものハチワレとは少し違って聞こえる。

いつものハチワレなら、

「どうしたの?」

と友達の声に優しく耳を傾けるような「ん?」に感じる。

でも今回は、もっと低く、少し距離がある。

私には一瞬、

「何?」

あるいは、

「今いいところなのに、どうしたの?」

というようなニュアンスさえ感じられた。

もしそうなら怖い。

少し前までハチワレは、この二人が一緒に虫を捕まえてくれないことに寂しさを感じていたように見えた。

それなのに今は、自分の力に夢中になっている。

つまり身体だけではなく、友達を見る視線まで変わり始めた可能性がある。

「簡単ッ!簡単ッ!」よりも、私はむしろ、この何気ない「ん?」のほうにハチワレの変化を強く感じた。

さっきまで笑っていたちいかわ?が、泣きながら武器を向ける

振り返った先にいるのは、こちらの世界のちいかわ?。

さっきまで楽しそうに「わーい」としていたちいかわ?が、今度は涙を浮かべ、震えながら武器をハチワレに向けている。

この変化もすごい。

なぜ泣いているのだろう。

私はいくつかの可能性を考えた。

一緒に遊んでいた虫を突然潰されたからなのかもしれない。

この世界では虫が大切な存在で、「なんてことをするんだ」と怒りや悲しみを感じているのかもしれない。

あるいは突然大きくなったハチワレを見て、純粋に恐怖を感じたのかもしれない。

または、自分の知っている「友達のハチワレ」が、別の何かへ変わってしまったことを理解したのかもしれない。

そして、もう一つ考えられる。

このちいかわ?は、この世界ではかなり強い存在として描かれている。

もし「こうなってしまった存在」がどのようなものなのか知っているのだとしたら、目の前にいる親友を自分が止めなければならないと理解したのかもしれない。

そう考えると、あの涙はただの恐怖ではなくなる。

「怖いから泣いている」のではなく、

「友達に武器を向けなければならないから泣いている」。

もしそうなら、とてもつらい場面だ。

本当の「強さ」はどちらなのだろう

ここまで考えると、今回の話には二つの「強さ」があるように思える。

一つはハチワレが手に入れた強さ。

虫を素手で簡単に潰せるほどの圧倒的な力。

もう一つは、ちいかわ?が見せる強さ。

怖くて震えている。
涙も流している。

それでも武器を構える。

もし親友を止めるためにあの武器を向けているのだとしたら、こちらもまた「強さ」ではないだろうか。

敵を簡単に倒せることだけが強さなのか。

泣いていても、怖くても、大切なもののために立ち向かうことも強さなのではないか。

そう考えると、ハチワレの

「強いよ!このカラダ!」

という言葉まで違って聞こえてくる。

確かに身体は強い。

でも、それだけが「強い」ということなのだろうか。

「友達」から武器を向けられるという残酷さ

そして私は、次にハチワレがどう感じるのかがとても気になる。

ハチワレはこの世界に来てからも、ちいかわ?とうさぎ?を仲間として見ていた。

だから二人が来たとき、

「手伝ってくれるの?」

と期待した。

そんな相手から、今度は武器を向けられる。

しかもハチワレ本人には、自分がそこまで恐ろしい存在になったという自覚がまだない可能性もある。

自分としてはただ「強くなった」。

虫を簡単に倒せるようになった。

それなのに、振り返ったら親友が泣きながら自分へ武器を向けている。

これはハチワレにとって、どれほどショックな光景なのだろう。

その瞬間、初めてハチワレは、

「自分は強くなった」のではなく、
「自分は変わってしまった」

と気づくことになるのかもしれない。

次回、ハチワレがちいかわ?の涙をどう受け止めるのかが、とても気になる。

「ハチワレ?」「強くなったハチワレ」という名前の意味

終わり際の続くの車に乗っているのは、ハチワレ?だった。

そして最後のクレジットも印象的だった。

ハチワレについて、

「ハチワレ」
「ハチワレ?」
「強くなったハチワレ」

と段階が分けられている。

すべて同じ田中誠人さんが演じている。

私はこの「ハチワレ?」がすごく面白いと思った。

ハチワレからいきなり「強くなったハチワレ」になるのではない。

その間に、

「ハチワレ?」

がある。

「まだハチワレではある。でも、本当にいつものハチワレなのだろうか」

そんな曖昧な状態にまで名前がついている。

今回の物語そのものを表しているように感じる。

変化というものには、「変わる前」と「変わった後」だけがあるわけではない。

その間に、

「まだ自分なのか」
「もう別の自分なのか」

分からなくなる時間がある。

その状態を「ハチワレ?」と表現していると考えると、とても興味深い。

そしてファンの間では「デカワレ」などと呼ばれることもある姿が、クレジットでは「強くなったハチワレ」と表現されていることも重要だと思う。

単に「大きくなった」のではない。

公式の表記では「強くなった」。

ハチワレ自身が以前から求めてきたものと同じ言葉なのである。

願っていたものを手に入れた結果が、この姿。

そう考えると、「強くなったハチワレ」という一見そのままの名前が、急に残酷なものに感じられる。

田中誠人さんの声だから成立した「同じハチワレなのに違う」という怖さ

そして今回、どうしても触れずにはいられないのが田中誠人さんの演技だった。

「簡単ッ!簡単ッ!」で声が変わった瞬間、本当に驚いた。

けれど、完全に別人の怪物の声になったわけではない。

ちゃんとハチワレの面影が残っている。

だからこそ怖い。

完全に別の声なら、

「ああ、怪物になったんだ」

と切り離して考えられる。

しかし今回聞こえてくるのは、

「ハチワレなのに、いつものハチワレではない声」。

同じ存在が、そのまま少し先へ進んだような声なのである。

そして逆に、この声を聞くことで、

「では普段のハチワレの声は、どれほど繊細に作られているのだろう」

とも感じた。

今回の低い声が田中さんの普段の声にどの程度近いのかは私には断定できない。

ただ、少なくともこれだけ異なる声色を同じ回の中で成立させ、「ハチワレ」「ハチワレ?」「強くなったハチワレ」を地続きの存在として聞かせる演技には驚かされた。

演じる田中さん自身が成長していくことと、物語の中でハチワレが変化していくこと。

この二つが偶然とは思えないほど重なって見えることも、今回が特別な回に感じられる大きな理由なのだと思う。

コメント欄では、このようなことが多く挙げられていた

今回のコメント欄では、田中誠人さんによる声の演じ分けについての反応が非常に多く、「簡単ッ!簡単ッ!」で声が低くなった瞬間に鳥肌が立った、普段のハチワレの声を丁寧に演じていることが分かった、声変わりをした田中さんが続投してきたことが今回の場面に非常によく合っていた、という意見が数多く見られた。

また、「簡単ッ!簡単ッ!」だけでなく、その直後の低い「ん?」が怖いという意見、そこで一瞬BGMが途切れる演出が声をさらに際立たせているという意見も多かった。

身体が大きくなった時点ではなく、自分の強さを実感して「簡単」と口にするところで声が変わることに注目したコメントも複数あった。さらに、虫を潰した後に手のひらを見る描写、自分の力に高揚しているように見えること、以前から「強くなりたい」と願っていたハチワレだからこそ今回の変化がつらいという考察も挙げられていた。

最後のちいかわ?については、この世界では強い存在だからこそ、怪物になりつつある友達を自分で止めなければならないことへの涙ではないかという意見や、友達に武器を向ける場面がつらいという声があった。

そしてクレジットの「ハチワレ」「ハチワレ?」「強くなったハチワレ」という三つの表記を細かいこだわりとして評価するコメントも多く、途中のモフモフしたハチワレがかわいい、少しずつ耳やしっぽ、頬が変化している、パラレル世界のうさぎ?の動きが面白い、といった細かな部分にも多くの人が注目していた。

今回の動画が教えてくれるかもしれないこと

今回の話を最後まで見て、私は「願いが叶うこと」と「幸せになること」は、必ずしも同じではないのかもしれないと思った。

ハチワレは強くなりたかった。

そして今回、本当に強くなった。

今まで苦労して追いかけていた相手を、片手で簡単に倒せるほどの力を手に入れた。

願いだけを見れば、叶っている。

それなのに、その瞬間から何かがおかしくなる。

友達は泣く。
武器を向けられる。
自分自身の声まで変わっていく。

ここには「何を手に入れるか」だけではなく、

「それを手に入れたとき、自分が何を大切にするようになるのか」

という問題があるように思う。

ハチワレは少し前まで、

「帰るんだ」

と思っていた。

でも力を知った直後に口から出たのは、

「簡単ッ!簡単ッ!」

だった。

目的のために必要だったはずの力が、いつの間にか力そのものへの喜びに変わってしまう。

そして、そんなハチワレの前で、ちいかわ?は泣きながら武器を構える。

圧倒的な力を持つことが「強さ」なのか。

それとも、怖くて泣いていても、大切なもののために行動することが「強さ」なのか。

今回の話には、その二つが同時に置かれているようにも感じる。

そしてもう一つ感じたのは、「変わる」ということは、ある瞬間に突然起こるものばかりではないということだ。

しっぽが変わる。
耳が変わる。
頬が変わる。
身体が変わる。

それでも本人は自分のままだと思っている。

そして最後に、考え方や価値観まで変わったとき、初めて周囲から「もう以前とは違う」と見られる。

だから今回もっとも怖かったのは、大きな身体でも牙でもなかった。

ハチワレ自身が、

「簡単」

と思ってしまったことだったのかもしれない。

強くなること。
理想の世界に馴染むこと。
願いが叶うこと。

それらは一見するとすべて良いことに聞こえる。

でも、それによって自分が何を失ってしまうのかまで考えなければ、本当に欲しかったものさえ見失ってしまうことがある。

『ちいかわ』第380話「パラレルワールド⑥」は、かわいらしい世界の中で、そんな「変化」と「強さ」と「願い」の少し怖い一面を描いているのかもしれない。

そして今回の動画は、「強くなることそのものよりも、その強さを手にしたあとも、自分が何を大切にできるのかということのほうが大切なのかもしれない」――そんなことを教えてくれているのかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました