ミルグラムの服従実験とは?なぜ人は「おかしい」と思っても従ってしまうのか
まず、こんな場面を想像してみてください
「そのまま続けてください」
そう言われたけれど、自分では「もうやめた方がいい気がする」と感じている。
それでも相手が、自分より詳しい専門家や立場の上の人だったら――。
あなたなら、自分の判断を信じて「やめます」と言えるでしょうか?
5秒で分かる結論
服従実験とは、人が権威のある人物から指示されたとき、自分の迷いや違和感があっても、どこまでその指示に従うのかを調べた心理学実験です。
この実験が問いかけたのは、
「人の行動は、自分の意思だけで決まっているのだろうか?」
という、とても身近で深い問題です。
小学生にも分かるように言うと?
先生や大人から、
「これを続けてください」
と言われたとします。
でも心の中では、
「本当にやっていいのかな?」
と思っています。
そんなとき、
自分の考えと、えらい立場の人から言われたことの、どちらを選ぶのだろう?
それを調べようとしたのが「服従実験」です。
つまり、
「人は、言われたことにどこまで従ってしまうの?」
を調べた実験だと考えると分かりやすいでしょう。
1.「どうして従ってしまうんだろう?」と思ったあなたへ
こんなことを不思議に思ったことはありませんか?
「おかしいと思っているのに、どうして上の人に言われると従ってしまうの?」
「自分だったら断れると思うけれど、本当にそうなの?」
「『言われたからやった』なんて、本当に起こるの?」
「立場のある人の言葉は、それほど人の判断に影響するの?」
この記事は、そんな疑問を持った人に向けて書いています。
読み進めていくと、
人はなぜ権威に従うことがあるのか。
心理学では、それをどのように調べたのか。
そして、
「自分だったらどうするだろう?」
というところまで、一緒に考えていきます。
難しい心理学の知識を暗記するための記事ではありません。
心理学を通して、
自分自身の判断や、日常の何気ない行動について少し深く考えるための記事です。
まずは、この不思議な疑問が心理学の研究につながったところから見てみましょう。
2.疑問が生まれた物語――「本当にそんなことが起こるの?」
ある日、ユウキさんはこんな話を耳にしました。
「人って、立場のある人から『続けてください』と言われると、本当は嫌でも従ってしまうことがあるらしいよ」
ユウキさんは首をかしげます。
「本当に?」
「嫌だったら、やめればいいだけじゃないの?」
「自分だったら断れると思うけどな……」
でも、少し考えると自信がなくなってきました。
たとえば、相手が専門家だったら。
「大丈夫です。続けてください」
とはっきり言われたら。
周りの人も何も言わず従っていたら。
それでも、自分だけ「やめます」と言えるだろうか?
なんだか不思議です。
「どうして、人は自分で嫌だと思っていることにも従うことがあるんだろう?」
気になって調べていくと、ユウキさんは、この疑問を実際に心理学の研究で調べようとした実験があることを知りました。
その名前が、
「服従実験」
です。
「そんな実験が本当にあったんだ」
「いったい、どんなことをしたんだろう?」
そして何より、
「結果はどうなったんだろう?」
ここから、ユウキさんの小さな疑問は、人間の心についての大きな問いへ変わっていきます。
では、その答えを見てみましょう。
3.すぐに分かる結論|ミルグラムの服従実験とは?
お答えします
「服従実験」として特に有名なのが、アメリカの心理学者スタンリー・ミルグラムがイェール大学で行った一連の研究です。
ミルグラムは1961〜1963年(昭和36〜38年)に、人が権威のある人物から指示されたとき、どこまで従うのかを実験によって調べました。
参加者には、
「学習者が問題を間違えたら、電気ショックを与えてください」
と説明されます。
間違えるたびに、電圧を少しずつ上げるよう指示されました。
実際には、学習者役には本物の電気ショックは流れていません。
しかし、本当の参加者である「教師役」は、そのことを知らない状態で実験に参加しました。
そして1963年(昭和38年)に発表された有名な実験条件では、40人の参加者のうち26人、65%が、装置上の最大450Vまで進みました。 ミルグラムの原著論文は同年10月に学術誌へ掲載されています。
ただし、ここはとても大切です。
この結果は、
「人間の65%は残虐である」
という意味ではありません。
また、
「命令されれば、誰でも悪いことをする」
と証明したわけでもありません。
ミルグラムは条件を変えた多くの実験も行っており、その後の研究による再分析でも、実験者と参加者の距離、学習者との関係、周囲の人の行動など、状況によって服従の程度が変わることが確認されています。
噛み砕いていうなら
この実験のおもしろさは、
「悪い人は悪いことをする」
という話ではありません。
むしろ、
「普通に迷ったり、嫌だと思ったりする人でも、その場の状況や権威の影響を受けることがある」
というところにあります。
だからこそ、服従実験は約60年以上たった今でも語られています。
では――。
参加者は、どんな部屋で、どんな指示を受けていたのでしょう。
なぜ「もうやめたい」と思いながら、続けた人がいたのでしょう。
そして有名な「65%」「450V」という数字は、本当は何を意味しているのでしょうか。
ここから先は、服従実験を最初から一つずつたどりながら、「なぜ人は従うのか」をもう少し深く見ていきましょう。

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