性格検査は本当に当たるのでしょうか。質問紙法・投影法・作業検査法の違いや、心理学で「わかること・わからないこと」を初心者にもわかりやすく解説します。検査結果の正しい見方や注意点、ネット診断との違いまで、研究をもとに丁寧に紹介します。
『性格検査』で本当の性格はわかる?心理学の検査でわかること・わからないこと
代表例
友達に勧められて、性格診断を受けてみた。
質問に答えていくと、
「あなたは慎重で、人の気持ちに敏感な性格です」
と表示されました。
「確かに当たっている気がする……」
そう思う一方で、
「でも、これだけで本当の自分がわかるの?」
と不思議に感じたことはありませんか?
性格診断が当たりすぎて少し怖くなった
スマートフォンで性格診断を受けたところ、普段は人に話していない悩みまで言い当てられたように感じました。
「どうして、いくつかの質問に答えただけで、自分のことがわかるのだろう?」
当たっているようでうれしい反面、自分の心を見透かされたようで、少し怖くなることもあります。
しかし、その結果は、本当にあなたの性格のすべてを表しているのでしょうか。
5秒でわかる結論
『性格検査』でわかるのは、その人の性格や行動の「一部の傾向」です。
検査は、自分を理解するための手がかりにはなります。
しかし、一度の検査だけで、本当の性格、将来の行動、人としての価値まで完全に決めることはできません。
心理検査は、決められた方法で行動や回答の一部を調べるものです。
専門的な心理アセスメントでは、必要に応じて検査だけでなく、面接、観察、生活上の情報なども組み合わせて判断します。
つまり、性格検査は心のすべてを映す鏡ではなく、自分の特徴を考えるための資料の一つなのです。
小学生にもわかる性格検査の答え
性格検査は、あなたの心を全部見抜く魔法ではありません。
たとえば、学校で撮った一枚の写真を想像してみてください。
その写真を見れば、その日の髪形や表情はわかります。
でも、その一枚だけでは、
- 何が好きなのか
- 家ではどのように過ごしているのか
- どんな夢を持っているのか
- いつもどんな気持ちでいるのか
まではわかりません。
性格検査も、それとよく似ています。
質問への答え方や、課題に取り組む様子から、あなたの特徴の一部分を調べます。
噛み砕いていうなら、性格検査は、
「あなたは絶対にこういう人です」と決めるものではなく、「こんなところがあるかもしれません」と教えてくれるもの
です。
結果を見て、
「自分には、こんな一面もあるのかな?」
と考えるために使うとよいでしょう。
1.性格検査について、このようなことはありませんか?
性格検査や性格診断を見ていると、さまざまな疑問が浮かびます。
あなたにも、次のような経験はありませんか?
診断結果が驚くほど当たっていた
簡単な質問に答えただけなのに、自分の長所や悩みを言い当てられたように感じた。
「どうして、これだけでわかるのだろう?」
と驚いたことはないでしょうか。
別の日に受けたら違う結果になった
以前は「内向的」と表示されたのに、別の診断では「社交的」と表示された。
「性格が変わったの?」
「どちらが本当の自分なの?」
と迷ってしまうことがあります。
結果を見て、自分には向いていないと落ち込んだ
「リーダーには向かない」
「人付き合いが苦手」
などと書かれていて、自分の可能性まで否定されたように感じた。
性格検査の結果によって、必要以上に不安になる人もいます。
友達と同じタイプなのに、性格がまったく違った
同じ性格タイプになったのに、考え方も話し方も違っている。
「同じタイプなのに、どうしてこんなに違うの?」
という疑問が生まれます。
就職や学校で受けた検査の目的がわからなかった
たくさんの質問に答えたり、計算を続けたりしたけれど、
「いったい何を調べていたのだろう?」
と気になったことがあるかもしれません。
キャッチフレーズ風に言うならば
性格検査とはどうして当たっているように感じるの?
性格検査で本当の自分はどこまでわかるの?
同じ人が受けても、なぜ結果が変わることがあるの?
質問にうそをついたら、検査結果はどうなるの?
インターネットの性格診断と心理検査は同じものなの?
どれも、性格検査について多くの人が感じる疑問です。
性格検査には、質問に答える方法だけではありません。
不思議な模様を見て答える方法や、数字の足し算を続ける方法もあります。
同じ「性格を調べる検査」なのに、なぜこれほど方法が違うのでしょうか。
そして、どの検査なら「本当の自分」がわかるのでしょうか。
不思議な性格検査の世界には、私たちが想像するよりも多くの工夫と限界があります。
この記事では、その謎を一つずつ解き明かしていきます。
この記事を読むメリット
- 性格検査でわかること、わからないこと
- 心理学で使われる代表的な性格検査の種類
- 質問紙法・投影法・作業検査法の違い
- 検査結果が変わることの意味
- 性格検査を受けるときの注意点
- インターネット上の性格診断との付き合い方
- 結果によって自分や他人を決めつけない考え方
性格検査について正しく知れば、診断結果に振り回されにくくなります。
また、自分の性格を「良い・悪い」で判断するのではなく、特徴として冷静に見つめやすくなります。
性格検査は、人を箱の中へ押し込めるための道具なのでしょうか。
それとも、自分でも知らなかった一面を見つけるための地図なのでしょうか。
その答えを、一緒に探していきましょう。
2.疑問が浮かんだ物語
計算していただけなのに性格がわかる?
高校生のハルカさんは、進路に関する説明会で、一枚の検査用紙を渡されました。
用紙には、横一列にたくさんの数字が並んでいます。
先生から説明されたのは、隣り合った数字を足し続け、合図が聞こえたら次の行へ移るという方法でした。
「これは計算の速さを調べるテストなのかな?」
そう思いながら、ハルカさんは数字を足し始めました。
最初は順調でした。
ところが、同じ計算を繰り返しているうちに、少しずつ集中が切れてきます。
数字がぼやけて見えたり、間違えた気がして前の答えを確認したくなったりしました。
それでも、周りからは鉛筆を動かす音が聞こえてきます。
「みんなは、もっと速くできているのかな」
「間違えたら、頭が悪いと思われるのかな」
そんな不安を感じながら、ハルカさんは最後まで計算を続けました。
検査が終わったあと、先生はこう説明しました。
「これは、計算の正解数だけでなく、作業の進み方などから、能力面や性格・行動面の特徴を調べる検査です」
ハルカさんは驚きました。
「計算していただけなのに、性格までわかるの?」
「途中で疲れたことや、焦ったことも、結果に表れるのかな?」
「そもそも、数字を足すことと性格には、どんな関係があるのだろう?」
まるで、足し算の列の裏側に、自分でも知らない心の動きが隠れているように感じました。
しかし、計算の結果だけで、人の性格を本当に判断できるのでしょうか。
速く計算できた人は、よい性格なのでしょうか。
ゆっくり取り組んだ人は、能力が低いのでしょうか。
考えれば考えるほど、謎は深まっていきました。
ハルカさんが受けたものと同じ種類の検査には、心理学で「作業検査法」と呼ばれる方法があります。
代表的な内田クレペリン検査では、一桁の足し算を前半15分、休憩をはさんで後半15分行い、作業量、時間による作業量の変化、誤答などを手がかりに、能力面や性格・行動面の特徴を検討します。
ただし、計算が速いか遅いかだけで性格を決める検査ではありません。
では、性格検査は、人の何を、どのように調べているのでしょうか。
ハルカさんが感じた疑問の答えを、次の章で見てみましょう。
3.すぐにわかる結論
『性格検査』は「心を見抜く道具」ではありません
お答えします。
性格検査は、人の性格を完全に見抜くためのものではありません。
質問への回答や課題への取り組み方などを、決められた方法で記録し、その人の性格特性や行動傾向を考えるための手がかりを得るものです。
心理検査では、人の性格そのものを、身長や体重のように直接見ることはできません。
性格は目に見えないため、
- どのような質問に、どう答えたか
- 曖昧な絵や模様を、どう受け取ったか
- 決められた作業に、どう取り組んだか
といった、外に表れた反応から間接的に検討します。
性格や能力のように、直接見ることができず、回答や行動を通して間接的に捉えるものは、心理学では「構成概念」として扱われます。性格検査の質を考える際には、結果の一貫性に関わる信頼性や、目的とする特徴を適切に捉えているかに関わる妥当性が重要です。
性格検査は自分を映す「一枚の写真」
性格検査を、一枚の写真にたとえてみましょう。
写真を見れば、その瞬間の表情や服装、立っていた場所はわかります。
しかし、一枚の写真だけでは、その人がこれまでどのような経験をしてきたのか、どんな夢を持っているのかまではわかりません。
性格検査も同じです。
検査によって、ある特徴は詳しく調べられます。
しかし、検査が対象としていない性格、経験、価値観、生活環境まですべて理解できるわけではありません。
さらに、人の行動は性格だけで決まりません。
たとえば、普段はよく話す人でも、初めて会う人ばかりの場所では静かになることがあります。
いつも慎重な人でも、得意なことには思い切って挑戦できるかもしれません。
疲れている日と、元気な日でも、回答や作業の仕方は変わる可能性があります。
そのため、専門的な心理アセスメントでは、一つの検査結果だけではなく、目的に応じて面接、観察、生活上の情報などを組み合わせて検討します。
「客観的な検査」でも、すべてが自動的に決まるわけではない
性格検査は、なるべく同じ条件で実施し、一定の基準に沿って結果を整理できるように作られます。
しかし、「客観的」という言葉を、
機械が心を完全に読み取り、必ず一つの正解を出してくれる
という意味で受け取ってはいけません。
質問紙法では、本人の自己理解や回答の仕方が影響します。
投影法では、自由な反応を扱うため、実施や解釈に専門的な知識が求められます。
作業検査法では、課題への取り組み方を見る一方で、疲労、体調、検査環境なども考慮する必要があります。
つまり、方法が違えば、見えてくる性格の側面も違うのです。
ここまでに浮かんだ疑問への答え
なぜ簡単な質問で性格がわかるの?
一つの質問だけで性格を判断するわけではありません。
一定の考え方に基づいて作られた複数の質問への回答をまとめ、似た特徴を持つ回答の傾向などを調べます。
ただし、すべてのインターネット診断が、十分な研究や検討に基づいているとは限りません。
なぜ別の日に受けると結果が変わるの?
その日の気分、体調、置かれた状況、質問の受け取り方などが回答へ影響する可能性があります。
また、得点が境目に近い場合は、わずかな回答の違いで表示される分類が変わることもあります。
結果が変わったからといって、すぐに検査が間違っているとも、性格が完全に変わったとも限りません。
なぜ足し算で性格を調べられるの?
足し算の正解数だけではなく、一定時間の作業量、作業量の変化、誤答などを手がかりに、課題への取り組み方を検討するからです。
内田クレペリン検査は、作業検査法に分類され、前半と後半の各15分間に行う一桁の足し算から、能力面と性格・行動面の特徴を総合的に測定すると公式に説明されています。
ただし、計算結果だけで人格全体を決めるものではありません。
同じ性格タイプなのに、人によって違うのはなぜ?
検査で同じ分類になっても、育った環境、経験、価値観、興味、能力などは異なるからです。
また、性格をいくつかのタイプに分ける方法もあれば、ビッグファイブのように複数の特徴を連続的な程度として捉える考え方もあります。
ビッグファイブでは、外向性、協調性、誠実性、神経症傾向、経験への開放性という五つの大きな次元から性格特性を整理します。
人間は、一つの短い言葉だけでは表せないほど複雑なのです。
噛み砕いていうなら
性格検査とは、
「あなたの正体を当てるクイズ」ではなく、「あなたの特徴について考えるための質問」
です。
結果は、判決ではありません。
一生変わらない名札でもありません。
自分の行動を振り返り、
「確かに、こういう場面では慎重になるかもしれない」
「人前では静かだけれど、家ではよく話す」
「苦手だと思っていた特徴が、別の場面では強みになるかもしれない」
と考えるための材料です。
性格検査を正しく使えば、自分を狭い箱へ閉じ込めるのではなく、自分のさまざまな面を知るきっかけになります。
しかし、性格検査には、質問に答える「質問紙法」、曖昧な刺激への反応を見る「投影法」、作業への取り組み方を見る「作業検査法」など、まったく異なる方法があります。
同じ心を調べようとしているのに、なぜ質問、絵、足し算という別々の道を使うのでしょうか。
性格という見えないものを、心理学者たちがどのように測ろうとしてきたのか。
その仕組みが気になった方は、この先で、心を映す三つの「窓」を一緒にのぞいてみましょう。
4.『性格検査』とは?
見えない性格をどのように調べるのか
ここまで、性格検査は人の心を完全に見抜くものではなく、性格や行動の傾向を考えるための手がかりであると説明してきました。
では、目に見えない「性格」を、心理学ではどのように調べるのでしょうか。
性格検査とは、質問への回答や課題への取り組み方などを、決められた方法で記録し、その人の性格特性や行動傾向を検討するための心理検査です。
たとえば、身長は身長計で測れます。
体温は体温計で測れます。
しかし、慎重さ、社交性、責任感、不安になりやすさといった性格は、目で直接見ることも、定規で測ることもできません。
そこで心理学では、
- どのような質問に、どう答えたか
- 曖昧な図形や場面を、どう受け取ったか
- 決められた作業に、どう取り組んだか
- 似た行動が、どのような場面で繰り返されるか
といった外に表れた反応から、性格について間接的に考えます。
心理学では、性格や知能、不安、意欲のように、直接見ることはできないものの、理論や観察を通して考えられる概念を「構成概念」と呼びます。
性格検査は、心そのものを取り出して測っているわけではありません。
性格という見えない構成概念を理解するために、回答や行動という観察可能な情報を集めているのです。
「性格」「人格」「パーソナリティ」は違うの?
お答えすると、三つの言葉は意味が重なるものの、まったく同じとは限りません。
ただし、心理学のすべての分野で、明確な使い分けが統一されているわけでもありません。
「性格」は、考え方、感じ方、行動に見られる、その人らしい傾向を表す一般的な言葉です。
たとえば、
「慎重な性格」
「明るい性格」
「人見知りしやすい性格」
というように、日常会話でも使われます。
一方の「人格」は、性格だけでなく、価値観や意思、社会との関わり方などを含め、その人全体を表す広い意味で使われることがあります。
ただし、日本語の「人格」には、
「人格を尊重する」
「立派な人格を持つ」
といった、人としての価値や尊厳に関係する意味もあります。
そのため、「人格検査」という名前を見て、
「人間として立派かどうかを調べる検査なの?」
と思うかもしれませんが、そのような意味ではありません。
「パーソナリティ」は、英語の「personality」をカタカナで表した言葉です。
心理学では、人に比較的持続して見られる思考、感情、行動の個人差を扱う言葉として使われます。
日本語に訳すときに「性格」とされることもあれば、「人格」とされることもあるため、三つの言葉の境界は重なっています。
噛み砕いていうなら、
- 性格は、日常で使いやすい言葉
- 人格は、その人全体を含む広い意味を持つことがある言葉
- パーソナリティは、心理学でよく使われる英語由来の言葉
と考えると、違いをつかみやすいでしょう。
ただし、これは絶対的な区別ではありません。
研究者、専門分野、書籍、検査の名称によって使い方が異なります。
そのため、「性格検査」「人格検査」「パーソナリティ検査」と書かれていても、人としての価値を測る別々の検査だと考える必要はありません。
本記事では、初めて心理学に触れる方にも読みやすいよう、基本的に「性格」と「性格検査」という言葉を使用します。
性格検査と心理アセスメントは同じものではない
お答えすると、心理アセスメントとは、本人がどのようなことで困り、どのような特徴や強みを持ち、どのような支援が必要なのかを、複数の情報から総合的に理解していく過程です。
「アセスメント」には、評価や査定という意味があります。
しかし、ここでいう評価は、人としての優劣を決めたり、点数をつけたりすることではありません。
本人の状態や置かれている状況を整理し、困りごとの背景や、今後の支援方法を考えるための評価です。
心理アセスメントでは、目的に応じて次のような情報を集めます。
- 本人との面接
- 日常の行動観察
- 現在困っていること
- 家庭、学校、職場などの生活環境
- これまでの成長や生活の経過
- 本人の強みや得意なこと
- 必要に応じた心理検査
- 本人の同意を得て確認する家族や関係者からの情報
これらを一つずつ別々に見るのではなく、互いにどのように関係しているかを考えます。
たとえば、学校で発言できない子どもがいたとします。
性格検査の結果だけを見て、
内向的な性格だから話せない
と決めることはできません。
授業内容が難しいのかもしれません。
間違えることを強く恐れているのかもしれません。
友達との関係に悩んでいる可能性もあります。
家庭ではよく話しているのに、教室だけで話せないのかもしれません。
心理アセスメントでは、こうした複数の可能性を、面接、観察、生活状況、必要に応じた検査などから整理していきます。
そのうえで、
本人が困っていることは何か
どのような状況で困りやすいのか
すでに持っている強みは何か
どのような支援や環境調整が役立ちそうか
を考えます。
性格検査は、心理アセスメントの材料の一つ
性格検査は、質問や課題を使って、回答、反応、得点などの情報を得るための測定手段です。
一方、心理アセスメントは、その検査結果を含む複数の情報を組み合わせ、本人を総合的に理解しようとする、より広い過程です。
関係を簡単に表すと、
性格検査は「情報を集める方法の一つ」
心理アセスメントは「集めた情報を整理し、理解や支援につなげる過程」
となります。
そのため、
性格検査を一度受けた
=その人のすべてが評価され、理解された
ということではありません。
検査で同じ得点が出た二人でも、生活環境、悩み、経験、得意なことは異なります。
心理アセスメントでは、検査の数字だけを見るのではなく、
なぜその結果になったのか
本人の生活とどのように関係しているのか
どのような支援や工夫につなげられるのか
まで慎重に考えます。
噛み砕いていうなら、性格検査が「一つの手がかりを集めること」なら、心理アセスメントは、集めた手がかりを並べ、本人と一緒に全体像を考えることです。
性格検査は、心理アセスメントに役立つ大切な道具の一つです。
しかし、道具一つだけで、人の心や生活のすべてを理解することはできないのです。
性格検査の質を考える4つの重要なポイント
心理検査は、面白そうな質問を並べれば完成するものではありません。
性格検査の質を考えるうえでは、少なくとも次の四つが重要です。
ただし、実際には公平性、測定誤差、実施方法、採点方法、利用目的、個人情報の管理など、さらに多くの条件も検討されます。
1.標準化
標準化とは、できるだけ同じ条件で検査を実施し、採点できるように手順を整えることです。
ある人には詳しく説明し、別の人には十分な説明をしなかった場合、結果を公平に比べることは難しくなります。
そのため、専門的な心理検査には通常、
- 説明の仕方
- 実施する順番
- 制限時間
- 採点方法
- 結果を読む際の注意点
などを定めた手引があります。
2.信頼性
信頼性とは、結果がどの程度安定し、一貫しているかを考えるものです。
たとえば、同じ鉛筆を同じ定規で測っているのに、
- 15センチ
- 28センチ
- 7センチ
と毎回大きく結果が変わるなら、その定規は安心して使えません。
心理検査でも、測りたい特徴とは関係のない偶然の影響によって結果が大きく変わるなら、測定道具として問題があります。
ただし、人の気持ちや行動は時間とともに変化します。
「信頼性が高い」とは、何年たっても必ず同じ結果になるという意味ではありません。
測ろうとしている特徴に対して、不必要なぶれがどの程度少ないかを検討する考え方です。
3.妥当性
妥当性とは、検査得点から行う解釈や、その結果の使い方を支える十分な根拠があるかという考え方です。
初心者向けには、
測ろうとしているものを、適切に測れているか
と説明されることがあります。
ただし、より正確には、検査そのものに一つの妥当性が永久に備わっているわけではありません。
同じ検査でも、
- 自己理解の参考にする
- 医療で支援方針を考える
- 採用判断の資料にする
- 研究で集団を比較する
など、目的が変われば必要な根拠も変わります。
たとえば、自己理解にはある程度役立つ検査であっても、その結果だけで採用の合否を決めてよいとは限りません。
心理検査の国際的な基準でも、妥当性、信頼性、実施、採点、公平性、教育や職場での利用など、幅広い点が扱われています。
4.比較の基準となるデータ
検査結果は、多くの場合、似た条件の人たちから集めたデータと比較して解釈します。
成人の結果を子どもの基準で評価したり、ある文化圏で作られた検査を、言葉や文化の違いを考慮せず別の国で使用したりすると、適切な解釈ができないことがあります。
検査を別の言語へ翻訳するときも、単語を置き換えるだけでは不十分です。
質問の意味が同じように伝わるか。
文化による回答傾向の違いはないか。
比較に使う集団が適切か。
こうした点まで確かめる必要があります。
性格検査の裏側には、質問を作るだけでは終わらない、長い検討の積み重ねがあります。
では、人間は、いつから性格を「測ろう」と考えるようになったのでしょうか。
次の章では、性格検査が生まれてきた歴史をたどります。
5.『性格検査』はどのように生まれた?
人の違いを測ろうとした歴史
人の性格を理解しようとする試みは、古代から存在していました。
昔の人々も、
- 活発な人
- 穏やかな人
- 怒りやすい人
- 心配しやすい人
といった個人差に気づいていたからです。
しかし、昔の性格分類の中には、現在の科学的な検証を受けていないものもあります。
現代の心理学では、「言い当てているように感じるか」だけではなく、
- 同じ方法で測れるか
- 結果はどの程度安定するか
- 実際の行動やほかの指標と関係するか
- 別の集団でも似た結果が得られるか
- 結果をその目的に使う根拠があるか
を研究します。
性格を印象だけで語ることから、データを集めて検証することへ。
この変化が、現代の性格検査につながりました。
『質問紙法』が発展した背景
「質問紙法」は、特定の一つの検査名ではありません。
あらかじめ用意された質問へ回答してもらい、その答えを整理して、心理的な特徴や行動の傾向を調べる方法の総称です。
英語では questionnaire method(クエスチョネア・メソッド) と呼ばれます。
性格検査では、本人が自分の考え方や感じ方、普段の行動について答える形式が多く、このような方法は「自己報告法(self-report method)」とも呼ばれます。
ただし、質問紙法には、保護者や教師など、本人以外の人が回答する形式もあります。
そのため、質問紙法のすべてが自己報告法というわけではありません。
19世紀末から20世紀にかけて、心理学や教育、医療、軍隊、産業などの分野では、多くの人の特徴を、できるだけ同じ条件で調べる必要が高まりました。
一人ずつ長時間の面接をするだけでは、大人数を同じ方法で調べることが難しかったためです。
質問紙法には、同じ質問を多くの人へ提示し、回答を一定の基準で整理しやすいという特徴があります。
ただし、初期の性格検査では、作成者が、
この質問なら、この性格を調べられるだろう
と考え、理論や経験をもとに項目を選ぶ場合もありました。
その後、実際に多くの人から回答を集め、統計的な方法を使って、
- 似た質問が同じ特徴を捉えているか
- ほかの指標や行動と関係しているか
- 異なる集団でも似た結果が得られるか
などを検討する方法が発展しました。
性格検査の歴史は、心理学者の経験や理論だけに頼る方法から、実際の回答データを使って確かめる方法へと発展してきた歴史でもあります。
ただし、現在の検査でも、理論や専門家の判断が不要になったわけではありません。
理論をもとに質問を作り、データを使って確かめ、必要に応じて修正する。
その繰り返しによって、質問紙法は発展してきたのです。
MMPIはなぜ作られたのか
MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory:ミネソウタ・マルティフェイシック・パーソナリティ・インヴェントリー/日本語では「ミネソタ多面的人格目録」)の略で、日本語では「ミネソタ多面的人格目録」などと訳されます。
アメリカの心理学者スターク・ハサウェイと、精神科医J・C・マッキンリーによって開発され、1940年代に公表されました。
MMPIの特徴の一つは、質問が病気と関係しそうに見えるかどうかだけではなく、実際の患者群と比較群で回答にどのような違いが見られるかを、尺度作成に利用した点です。
このように、実際の集団の回答差を重視する方法は、経験的基準法などと呼ばれます。
MMPIには複数の版があります。
成人用のMMPI-2は567項目を含みます。一方、2020年(令和2年)に刊行されたMMPI-3は335項目、52尺度で構成されています。
したがって、
MMPIは必ず567問の検査である
という説明は正確ではありません。
どの版を扱っているかによって、項目数や尺度構成は異なります。
また、MMPIは「明るい人」「リーダー型」といった日常的なタイプを気軽に知るための娯楽診断ではありません。
主に臨床、医療、司法などの場面で、パーソナリティと精神病理に関係する特徴を多面的に評価するために使われる専門的な心理検査です。
回答の不一致や不自然な回答傾向など、結果を解釈する前提を検討するための妥当性尺度も含まれています。
ただし、妥当性尺度があっても、回答者の心の中にある「うそ」を100%見抜けるわけではありません。
ビッグファイブは誰が発見したのか
ビッグファイブの正式な呼び方としては、五因子モデル(Five-Factor Model:ファイブ・ファクター・モデル)や、ビッグファイブ性格特性(Big Five personality traits:ビッグ・ファイブ・パーソナリティ・トレイツ)**などがあります。
ただし、ビッグファイブは、一人の心理学者がある日突然発明した理論ではありません。
多くの研究者が、人の性格を表す言葉や質問への回答を集め、統計的に整理する中で、五つの大きな性格特性が繰り返し見いだされるようになりました。
そのため、ビッグファイブは特定の一つの検査名ではなく、人の性格を五つの大きな特性から捉える理論的な枠組みです。
多くの研究者が、人の性格を表す言葉や質問への回答を集め、統計的に整理する中で発展してきました。
その背景には、語彙アプローチと呼ばれる考え方があります。
これは、人々の生活にとって重要な個人差は、長い時間をかけて日常の言葉として表現されるようになるだろう、という考えです。
たとえば、
- 親切
- 慎重
- 活発
- 心配性
- 好奇心が強い
といった性格を表す言葉を集め、似た言葉がどのようなまとまりを作るかを調べました。
フランシス・ゴルトンは1884年(明治17年)に、辞書に収録された性格表現へ注目しました。
その後、多くの研究者が語彙を整理し、因子分析と呼ばれる統計的方法を用いて、性格特性のまとまりを調べました。
ルイス・ゴールドバーグらの研究によって、五つの大きな因子から性格を整理する「ビッグファイブ」という枠組みが広く知られるようになりました。ゴールドバーグの1990年(平成2年)の研究でも、性格を表す形容詞から五因子構造が検討されています。
ビッグファイブは、人を五種類に分ける理論ではありません。
一般に、
- 外向性
- 協調性
- 誠実性
- 神経症傾向
- 経験への開放性
という五つの特性について、一人ひとりがどの程度の傾向を持っているかを連続的に捉えます。
「外向型」と「内向型」の二種類しか存在するのではなく、その間にもさまざまな程度があるという考え方です。
ロールシャッハ法は「しみ占い」から生まれたの?
ロールシャッハ法の正式名称としては、**ロールシャッハ・テスト(Rorschach Inkblot Test:ロールシャッハ・インクブロット・テスト)**という呼び方があります。
正式名称としては「ロールシャッハ・テスト(Rorschach Inkblot Test)」とも呼ばれます。
日本語では、ロールシャッハ法またはロールシャッハ・テストと呼ばれるのが一般的です。
「Inkblot」は、インクでできたしみや模様という意味です。
ただし、ロールシャッハ法は、インクのしみを見て運勢を占う「しみ占い」ではありません。
曖昧なインクの模様に対して、何が見えたか、模様のどの部分を使ったか、形や色などの何に注目したかといった反応を、一定の方法で整理する心理検査です。
この検査を考案したのは、スイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハです。
ロールシャッハは1884年(明治17年)に生まれ、1921年(大正10年)に、研究成果をまとめた『精神診断学(Psychodiagnostik:プシコディアグノスティーク)』を刊行しました。
ロールシャッハは1884年(明治17年)に生まれ、1921年(大正10年)に『精神診断学』を刊行しました。
彼は、曖昧なインクの模様を、人がどのように知覚し、どのように意味づけるかに注目しました。
ロールシャッハ法では、単に、
何に見えましたか?
という答えの内容だけを見るわけではありません。
採点体系によって異なりますが、
- 図版全体を使ったか
- 一部分を使ったか
- 形を重視したか
- 色に注目したか
- 動きを感じたか
- その見え方をどのように説明したか
といった複数の側面を整理します。
ただし、ロールシャッハ法には複数の採点・解釈体系があります。
研究上の支持も、体系や指標によって異なります。
2013年(平成25年)に公表された包括的体系の主要変数に関するメタ分析でも、一定の妥当性が支持された指標がある一方、すべての指標が同じ強さの根拠を持つわけではないことが示されています。
したがって、
ロールシャッハ法は科学的だから、何でもわかる
とも、
投影法だから、すべて根拠がない
とも一括して判断できません。
どの採点体系の、どの指標を、何の目的で使うのかを確認する必要があります。
TATはなぜ物語を作らせるのか
TATの正式名称は、**主題統覚検査(Thematic Apperception Test:シーマティック・アパーセプション・テスト)**です。
英語名の頭文字を取って、一般に**TAT(ティー・エー・ティー)**と呼ばれます。
1935年(昭和10年)、クリスティアナ・モーガンとヘンリー・マレーが、曖昧な絵を見て物語を作ってもらう方法を発表しました。
「Thematic」は「主題の」、「Apperception」は、見たものを自分の経験や意味づけを通して受け取ること、「Test」は「検査」という意味です。
噛み砕いていうなら、TATは、絵に描かれた場面をただ説明してもらうのではなく、その人がどのような物語や意味をそこに見いだすかを手がかりにする検査です。
検査を受ける人は、絵に描かれた人物や場面を見て、
- 何が起きているのか
- 登場人物は何を感じているのか
- その前に何があったのか
- この後どうなるのか
という物語を作ります。
同じ絵を見ても、作られる物語は人によって異なります。
その違いから、関心、欲求、葛藤、対人関係の捉え方などを考える手がかりを得ようとする方法です。
ただし、TATには重要な注意点があります。
使用するカード、カードの枚数、質問の仕方、採点体系などが、目的や実施者によって異なる場合があります。
そのため、「TAT」という名前だけを見て、信頼性や妥当性を一括して評価することはできません。
採点法が明確に定められた物語法については、信頼性を検討する研究も行われていますが、使用する方法によって評価は変わります。
雨の物語を作ったから悲しい人
怖い結末を書いたから危険な人
というように、一つの表現から性格を断定する検査ではありません。
性格検査には、質問、言葉、知覚、物語、作業など、異なる歴史から生まれた方法があります。
次の章では、その代表的な三つの方法を、長所と限界の両方から比べてみましょう。
6.性格検査の3つの方法『質問紙法』・『投影法』・『作業検査法』
性格検査は、心理学の教科書などで、次の三つに分けて説明されることがあります。
- 質問紙法
- 投影法・投映法
- 作業検査法
ただし、この分類だけが唯一の分け方ではありません。
検査によっては複数の性質を持ち、文章完成法のように「半投影法」などとして説明されることもあります。
ここでは、初心者が特徴をつかみやすいように、代表的な三分類を使って説明します。
質問紙法
自分について質問に答える方法
質問紙法では、自分の考え方、感じ方、普段の行動などについて書かれた質問へ回答します。
たとえば、
初対面の人とも気軽に話せる。
という質問に対し、
- とても当てはまる
- やや当てはまる
- どちらともいえない
- あまり当てはまらない
- まったく当てはまらない
などから選びます。
「はい・いいえ」で答える検査もあります。
質問紙法の長所
質問紙法は、同じ質問と採点方法を使いやすく、多くの人へ比較的短時間で実施できます。
複数の特徴を数値として整理しやすいため、研究、医療、教育、産業など、さまざまな場面で利用されています。
また、本人が自覚している考えや感情を直接尋ねられることも長所です。
質問紙法の限界
質問紙法は、本人の回答をもとにするため、次のような影響を受けます。
- 自分を実際よりよく見せたい
- 反対に悪く見せたい
- 自分の性格を正確に理解していない
- 理想の自分を思い浮かべて答える
- 質問の意味を取り違える
- その日の気分や体調に影響される
これは、必ずしも悪意のある「うそ」とは限りません。
自分では正直に答えているつもりでも、普段の自分より「こうありたい自分」を思い浮かべていることがあります。
一部の専門的な検査には、回答の不一致、不自然な回答態度、過度によく見せようとする傾向などを検討する妥当性尺度があります。
ただし、そうした尺度があっても、すべての回答の偏りを完全に見抜けるわけではありません。
投影法
正解のない刺激へ自由に答える方法
投影法では、意味が一つに決まっていない図形、絵、言葉などを示し、自由に答えてもらいます。
代表例には、
- ロールシャッハ法
- 主題統覚検査(TAT)
- 文章完成法
などがあります。
投影法では、選択肢が用意されていないため、回答者は自分の言葉や表現で答えます。
投影法の長所
投影法では、その人独自のものの見方、物語の組み立て方、感情表現などを考える手がかりが得られる場合があります。
質問紙のように、本人が自覚している特徴を直接尋ねる方法とは異なる角度から情報を得ようとします。
また、自由に語る過程そのものが、面接での対話を始めるきっかけになることもあります。
投影法の限界
投影法は自由度が高いため、実施や解釈に専門的な知識と訓練が必要です。
また、
投影法なら、本人も知らない深層心理がわかる
と単純に説明するのは適切ではありません。
検査名が同じでも、採点体系や指標が異なれば、信頼性や妥当性の研究結果も変わります。
そのため、投影法全体をまとめて、
科学的である
科学的でない
と判断するのではなく、具体的な方法、採点体系、利用目的を確認する必要があります。
自由な表現が得られることは魅力ですが、その自由さは同時に、解釈の難しさにもつながっています。
作業検査法
課題への取り組み方を見る方法
作業検査法では、決められた課題を行い、その結果や時間による変化などを資料として扱います。
日本でよく知られているのが、内田クレペリン検査です。
内田クレペリン検査とは?
内田クレペリン検査では、一桁の足し算を1分ごとに行を変えながら行います。
検査提供元によると、前半15分、休憩、後半15分の合計30分で実施し、全体の作業量、1分ごとの作業量の変化である作業曲線、誤答などから、能力面や性格・行動面の特徴を総合的に検討するとされています。
ここで重要なのは、計算の正解数だけを見ているわけではないことです。
同じ合計数を計算した二人でも、
- 最初から最後まで一定のペースだった
- 前半は速かったが、途中から大きく変化した
- 休憩後に作業量が増えた
- 特定の時間帯に誤答が増えた
など、作業の経過は異なります。
なぜ足し算を使うの?
検査提供元は、一桁の足し算を、多くの受検者が理解しやすく、一定時間続けることで作業の変化を捉えられる課題として説明しています。
ただし、これは検査提供元による検査設計上の説明です。
「足し算をすれば性格が科学的に完全にわかる」と証明された、という意味ではありません。
内田クレペリン検査の研究は十分なの?
内田クレペリン検査については、信頼性や妥当性を検討した研究があります。
たとえば、1961年(昭和36年)に公表された企業入所者2,708人を対象とした研究では、検査結果と災害傾向、昇給格付、別の職業適性検査との関係が調べられました。
一部の関係が報告された一方、別の適性検査との関連は低いなど、すべてが強く結びついていたわけではありません。
1964年(昭和39年)にも、信頼性と妥当性を客観的な方法で検討する研究が発表されています。
ただし、これらには古い研究が含まれます。
当時の職場環境や評価基準は、現在と同じではありません。
そのため、過去の研究結果を、現代のあらゆる採用や配置へそのまま当てはめることはできません。
内田クレペリン検査について説明するときは、
検査提供元は、このような特徴を測る検査と説明している
関連する研究は存在する
ただし、研究年代、対象者、利用目的を確認する必要がある
人格全体を確定するものではない
という四点を分けて考えることが大切です。
作業検査法の限界
作業結果には、性格だけでなく、
- 睡眠不足
- 疲労
- 緊張
- 体調
- 周囲の騒音
- 検査への慣れ
- 視力や手の状態
- 課題への意欲
なども影響する可能性があります。
また、計算が速い人ほど人格的に優れているわけではありません。
反対に、作業量が少ないからといって、能力や人間性が低いと断定することもできません。
三つの方法を比べてみよう
| 方法 | 主に使う情報 | 得意な点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 質問紙法 | 本人の回答 | 多くの特徴を一定の方法で整理しやすい | 自己理解や回答態度の影響を受ける |
| 投影法 | 曖昧な刺激への自由な反応 | 独自の表現やものの見方を検討できる | 採点・解釈に高い専門性が必要 |
| 作業検査法 | 作業量、誤答、時間による変化 | 言葉以外の行動を資料にできる | 体調や環境、慣れなども影響する |
どの方法にも長所と限界があります。
「最も優れた検査」が一つだけ存在するのではなく、目的に合う方法を選ぶ必要があるのです。
では、検査で捉えようとしている性格は、脳のどこにあるのでしょうか。
次の章では、性格検査と脳科学の関係を見ていきます。
7.性格は脳のどこにある?性格検査と脳科学の関係
「性格を検査できるなら、脳のどこかに性格を担当する場所があるのでは?」
そう考えたことはありませんか?
しかし、性格全体を担当する一つの脳部位は、現在の研究では確認されていません。
性格には、
- 注意
- 記憶
- 感情
- 判断
- 学習
- 動機づけ
- 自己認識
- 対人関係の経験
など、複数の働きが関わります。
そのため、
外向性は脳のここ
慎重さは脳のここ
と一対一で対応させる説明には注意が必要です。
質問紙に答えるとき、何が起きている?
たとえば、
私は初対面の人と話すのが好きだ
という質問へ答えるとします。
そのとき私たちは、
- 文章を読む
- 意味を理解する
- 過去の経験を思い出す
- 普段の自分を考える
- 選択肢を比べる
- 回答を決める
という複数の作業をしています。
つまり、質問紙法は「性格を担当する脳の場所」を直接測っているのではありません。
言語、記憶、自己認識、判断などを通して表れた回答を記録しています。
投影法では何が起きている?
曖昧な模様や絵を見るときには、視覚情報を処理するだけではありません。
- 以前に見たものと結びつける
- 意味を考える
- 感情を感じる
- 想像する
- 言葉で説明する
といった複数の過程が関係します。
模様を「怖い動物」と答えたとしても、その答えだけで、特定の脳部位や性格が決まるわけではありません。
作業検査法では何が必要?
足し算を続ける課題には、
- 数字を認識する
- 計算する
- 注意を保つ
- 手を動かす
- 作業を続ける
- 間違いを確認する
といった複数の認知機能が必要です。
ただし、内田クレペリン検査は脳画像検査ではありません。
検査結果から、
前頭前野が強い
扁桃体が弱い
この神経回路に問題がある
と直接判断することはできません。
ビッグファイブと脳の研究
脳画像研究では、ビッグファイブの性格特性と、脳の構造や機能の関連を調べる研究が行われています。
初期の研究では、特定の性格特性と一部の脳領域との関連が報告されることがありました。
しかし、より大きな集団を対象とした研究では、ビッグファイブと脳の形態に明確な関連がほとんど見つからなかったという報告もあります。
2020年(令和2年)の研究では、ビッグファイブと脳形態との有意な関連を確認できなかったと報告されています。
2022年(令和4年)の大規模研究でも、性格特性に対応する明確な脳構造の違いは支持されませんでした。
これは、脳と性格が無関係だという意味ではありません。
脳構造と性格の関係は複雑で、一つの部位の大きさだけでは説明できないことを示しています。
現時点では、脳画像を見て一人ひとりの性格を正確に判定できる段階ではありません。
「幸せホルモンで性格が決まる」は本当?
一般向けの記事では、
- ドーパミン型
- セロトニン不足
- 右脳型・左脳型
- 扁桃体が強い性格
などの説明を見かけることがあります。
神経伝達物質や脳機能が、感情や行動と無関係というわけではありません。
しかし、人の性格を一つの物質や一つの脳部位だけで説明するのは単純化しすぎです。
性格には、
- 遺伝的な要因
- 成長や発達
- 学習
- 家庭環境
- 文化
- 人間関係
- 成功や失敗の経験
なども関係します。
脳は性格を支える重要な土台ですが、性格を一言で決める秘密のスイッチではありません。
性格検査は脳を直接読む装置ではない。
このことを理解すると、検査結果を過度に恐れたり、絶対視したりしにくくなります。
では、完全ではない性格検査は、実際にどのような場面で役立つのでしょうか。
次の章では、正しい活用方法を紹介します。
8.性格検査は何に使われる?役立つ場面と正しい活かし方
性格検査には限界があります。
しかし、限界があることと、役に立たないことは同じではありません。
体温計だけで病気のすべてはわかりません。
それでも、体調を考えるための大切な情報になります。
性格検査も、目的に合う方法で使えば、自分や他人を理解する資料になります。
医療や心理支援
医療機関や心理相談では、相談者の特徴や困りごとを理解するために、性格検査が使われることがあります。
ただし、検査だけで医学的な診断や支援方針を決めるわけではありません。
面接、症状、行動観察、生活歴、家族や学校・職場の状況などと合わせて検討します。
検査結果と本人の実感が違う場合には、
どうして違うのだろう?
と話し合うこと自体が、自己理解を深めるきっかけになる場合もあります。
学校や教育相談
学校や教育相談では、子どもの特徴や困りごとを理解するための補助資料として、心理検査が利用されることがあります。
ただし、子どもは発達の途中にいます。
一度の検査だけで、
この子は一生このような性格だ
と決めることはできません。
年齢、家庭環境、友人関係、学習状況、体調なども考慮する必要があります。
就職、採用、配置
企業では、採用や配置、人材育成の資料として、性格検査や適性検査が利用されることがあります。
面接とは異なる情報を得たり、仕事上の行動との関連を考えたりする目的があります。
しかし、一つの検査得点だけで採用や不採用を決めることには問題があります。
検査が、その仕事に本当に関係する特徴を測っているのか。
応募者へ公平に実施されているか。
文化、障害、言語などによる不利益はないか。
利用目的に十分な妥当性の根拠があるか。
こうした点を確認する必要があります。
米国の心理検査基準でも、職場や教育で検査を使う際には、妥当性だけでなく、公平性、実施方法、結果の利用などが重視されています。日本国内では、日本の法令や雇用慣行、各組織の規程も確認する必要があります。
自己理解
日常生活で性格検査を使う場合は、結果を「決定」ではなく「仮説」として読むことが大切です。
たとえば、
慎重さが高い
という結果が出たとします。
そこで、
私は慎重だから、挑戦には向いていない
と決めつける必要はありません。
代わりに、
どのような場面で慎重になるのだろう?
と考えてみます。
- 初めての作業では何度も確認する
- 人へ迷惑をかけそうなときは慎重になる
- 得意なことには思い切って挑戦できる
- 疲れていると判断に時間がかかる
このように、具体的な場面へ置き換えると、結果を生活へ活かしやすくなります。
性格検査の結果に振り回されないための4つの質問
性格検査の結果は、そのまま信じ込むためのものではありません。
大切なのは、
「なぜ、この結果になったのだろう?」
と、自分の経験と照らし合わせて考えることです。
次の4つの質問を使うと、検査結果を「自分を決めつける言葉」ではなく、「自分を知るためのヒント」に変えやすくなります。
① どの場面で当てはまる?
学校、家庭、仕事、友人関係など、場面ごとに思い出してみましょう。
たとえば、検査結果に、
「あなたは人前で話すのが苦手です」
と書かれていたとします。
しかし実際には、
- 家族とはよく話す
- 仲の良い友達とは笑いながら話せる
- 初対面の人の前だけ緊張する
という場合もあります。
その場合は、
「いつでも人見知り」
なのではなく、
「初めて会う人の前では慎重になりやすい」
という特徴なのかもしれません。
② 当てはまらない場面はある?
検査結果と反対の行動をした経験も思い出してみましょう。
人には、一つの言葉だけでは表せない、さまざまな面があります。
たとえば、「慎重な性格」と出た人でも、
- 好きなスポーツには思い切って挑戦できる
- 旅行先ではすぐに行動を決められる
- 得意なことなら迷わず進められる
ことがあります。
つまり、
「慎重だから、何でも慎重」
とは限らないのです。
③ この特徴は、どんな場面で強みになる?
性格には、単純な「良い・悪い」ではなく、その特徴が活かされやすい場面があります。
たとえば慎重な人は、
- ミスに気づきやすい
- 安全確認を丁寧にできる
- 計画を立てて進めることが得意
かもしれません。
一方、外向的な人は、
- 初対面の人にも話しかけやすい
- 新しい集団へ入りやすい
- 周囲へ声をかけて場を動かしやすい
という強みを持つことがあります。
大切なのは、得点の高低ではなく、その特徴がどのような場面で役立つかを考えることです。
④ 困る場面では、どう工夫できる?
性格を無理に変えようとするよりも、その特徴との付き合い方を工夫する方が役立つことがあります。
たとえば、慎重になりすぎてなかなか決められないなら、
「5分だけ考えたら、いったん決める」
というルールを作れます。
人と長く過ごすと疲れやすいなら、
「予定のあとに30分だけ一人で休む」
と決めることもできます。
性格を消すのではなく、困りやすい場面での対処方法を増やしていくのです。
この4つの質問を使うと、性格検査の結果を、そのまま受け入れたり否定したりするのではなく、自分の経験と照らし合わせて考えられるようになります。
では、性格検査には、具体的にどのような良い面と注意すべき面があるのでしょうか。
ここからは、メリットとデメリットを分けて見ていきます。
性格検査のメリットとデメリット
性格検査は、自分を理解するきっかけになる一方、結果の受け止め方や使い方を誤ると、自分や他人への決めつけにつながることがあります。
良い面だけでなく、限界や危険性も知ったうえで活用することが大切です。
性格検査のメリット
自分の特徴を言葉にしやすくなる
自分では何となく感じていた特徴が、「慎重さ」「外向性」「協調性」などの言葉で整理されることがあります。
ただし、その言葉だけで自分のすべてが説明できるわけではありません。
行動を振り返るきっかけになる
結果を見ながら、
「どのような場面で当てはまるだろう?」
と考えることで、普段の行動を振り返れます。
専門家との対話に利用できる
心理支援などでは、検査結果が本人と専門家の話し合いを始める材料になる場合があります。
検査の数字だけで結論を出すのではなく、本人の経験や困りごとと照らし合わせて考えます。
強みと困りごとを整理しやすくなる
同じ特徴が、場面によって強みにも困りごとにもなることへ気づけます。
たとえば慎重さは、ミスを防ぐ強みになる一方、決断に時間がかかる原因になる場合もあります。
他人との違いを考えやすくなる
自分と他人では、物事の捉え方や行動の傾向が違うことを考えるきっかけになります。
ただし、検査結果だけで相手を決めつけないことが大切です。
性格検査のデメリット
結果を信じすぎると可能性を狭める
「自分はこのタイプだからできない」
と思い込むと、新しい経験や挑戦を避ける原因になることがあります。
数字やタイプ名だけが独り歩きする
本人の生活や経験を考えず、点数や分類だけで人が判断される危険があります。
不適切な検査では誤った理解につながる
研究上の根拠が示されていない診断や、対象者に合っていない検査では、結果を適切に解釈できないことがあります。
個人情報が不適切に利用される危険がある
オンライン診断では、回答内容や登録情報が保存・分析・広告利用される場合があります。
受ける前に、運営者やプライバシーポリシーを確認することが大切です。
採用や配置で乱用されると不利益につながる
検査結果だけで採用や配置が決められると、本人の能力、経験、実績などが十分に考慮されない可能性があります。
性格検査の結果は、自分の進む方向を考えるための「地図」にはなります。
しかし、
「このタイプだから、自分には無理だ」
と自分を閉じ込めるために使えば、その地図は可能性を狭める「壁」に変わってしまいます。
大切なのは、結果を最終的な答えとして受け取るのではなく、自分の経験や行動を振り返るための手がかりとして使うことです。
では、性格検査の結果を信じすぎると、具体的にどのような誤解が生まれるのでしょうか。
次の章では、性格検査で起こりやすい勘違いや、結果を安全に受け止めるための注意点を詳しく見ていきます。
9.性格検査の注意点
結果で人を決めつけないために
性格検査で最も注意したいのは、検査そのものだけでなく、結果の使われ方です。
数字やタイプ名が表示されると、科学的にすべて決まったように感じることがあります。
しかし、性格検査には必ず測定範囲と限界があります。
注意点1.得点は人間の価値ではない
外向性が高い人が、内向的な人より優れているわけではありません。
慎重な人が、行動力のある人より劣っているわけでもありません。
同じ特徴でも、状況によって長所にも短所にもなります。
よく話す人は、新しい関係を作るのが得意かもしれません。
一方で、相手の話を聞かずに進めてしまうこともあります。
慎重な人は、危険やミスを防ぐのが得意かもしれません。
一方で、考えすぎて決断が遅くなることもあります。
性格検査の点数は、人間としての点数ではありません。
注意点2.タイプ分けはわかりやすいが、情報を減らす
人をいくつかのタイプへ分けると、結果は理解しやすくなります。
しかし、わかりやすさと引き換えに、細かな違いが失われます。
本来は連続している特徴を途中で二つに分けると、得点がほとんど同じ二人が別タイプになる場合があります。
反対に、同じタイプの中でも、得点、経験、価値観が大きく違うことがあります。
タイプ名は理解の入り口にはなります。
しかし、その人の完全な説明書ではありません。
注意点3.結果が変わることには複数の理由がある
同じ人が別の日に検査を受けると、結果が変わることがあります。
考えられる理由には、
- 気分や体調が違う
- 生活環境が変わった
- 質問の受け取り方が変わった
- 自己理解が深まった
- 得点が分類の境目に近かった
- 測定上の誤差がある
- 二つの検査が別の特徴を測っている
- 実際に性格傾向が変化した
などがあります。
結果が変わったからといって、すぐに検査が間違っているとも、性格が完全に変わったとも限りません。
どちらが本当なのか
だけではなく、
何が違ったのか
を考えてみましょう。
注意点4.「診断」という言葉をそのまま信じない
インターネットでは、「性格診断」という言葉が広く使われています。
しかし、娯楽的な診断と、専門的な心理検査は同じではありません。
また、性格検査の結果だけで、医学的な診断が決まるわけでもありません。
「心理学に基づく」「専門家監修」と書かれていても、それだけで十分な根拠があるとは限りません。
- 誰が作ったのか
- 何を測るのか
- どのような研究があるのか
- 対象者は誰か
- どのように結果を利用するのか
を確認する必要があります。
注意点5.結果の悪用
性格検査の結果は、個人に関する重要な情報です。
扱い方によっては、
- 本人の同意なく共有される
- 採用や配置で不当に不利に扱われる
- 商品や広告の販売に利用される
- 「この性格だから危険」と決めつけられる
- ほかの個人情報と結びつけて保存される
といった問題につながります。
無料診断を受けるときも、
- 氏名
- 生年月日
- メールアドレス
- 職業
- 悩み
- 人間関係
などを入力する場合があります。
診断結果の面白さだけでなく、個人情報の利用目的やプライバシーポリシーも確認しましょう。
注意点6.専門的な検査を自己流で採点しない
専門的な心理検査には、問題や採点方法が広く公開されると、検査としての有効性が損なわれるものがあります。
事前に検査の意図を知り、望ましい結果になるよう回答を準備したり、反応を変えたりできるためです。
また、採点表だけを入手しても、適切に解釈できるとは限りません。
検査の目的、対象者、実施条件、測定誤差、基準集団などを理解する必要があります。
とくに医療や臨床で使われる検査は、訓練を受けた専門家が、限界を理解したうえで扱う必要があります。
誤解を防ぐための5つの考え方
- 結果は人間の価値を示さない
- 一つの検査だけで決めない
- タイプ名より具体的な行動を見る
- 当たった部分だけでなく、外れた部分も考える
- 重要な判断は、ほかの情報と合わせて行う
性格検査を信じるか、信じないか。
本当に大切なのは、その二択ではありません。
どこまで根拠があり、どこから先はわからないのかを見分けることです。
次の章では、多くの人が利用するインターネット上の性格診断との付き合い方を紹介します。
10.インターネットの性格診断は信じてよいの?
スマートフォンで受けられる性格診断には、さまざまなものがあります。
- 心理学研究に基づく質問紙
- 研究によって検討された短縮版
- 元の検査から独自に項目を減らしたもの
- 就職支援サービスの自己分析ツール
- 広告や商品の購入へ誘導する診断
- 娯楽目的のタイプ診断
- 作成者や根拠が不明な診断
すべてを同じように評価することはできません。
短い検査は信頼できないの?
質問数が少ないからといって、必ずしも信頼できないわけではありません。
研究によって信頼性や妥当性が検討された短縮版もあります。
一方で、元の検査から作成者が独自に質問を削っただけの場合、元の検査と同じ特徴を測れているとは限りません。
大切なのは質問数ではなく、
その短い質問で測定できるという根拠が示されているか
です。
なぜネット診断は当たっているように感じるの?
診断が当たって感じられる理由は、検査の質だけではありません。
たとえば、
人と一緒に過ごしたいと思う一方で、ときには一人になりたいと感じます。
という文章は、多くの人に当てはまります。
また、人は結果の中から、自分に当てはまった部分を強く覚え、外れた部分を見落とすことがあります。
結果を読むときは、
この表現は、ほかの多くの人にも当てはまるのでは?
と一度考えてみましょう。
信頼できるネット検査を見分けるチェック項目
作成者が示されているか
大学、研究者、専門機関、検査出版社など、作成者や管理者を確認します。
肩書だけでなく、所属や研究内容も確認しましょう。
何を測るか説明されているか
「あなたのすべてがわかる」ではなく、
- 外向性
- 職業興味
- ストレス反応
- 対人関係の傾向
など、測定対象が具体的に示されているかを確認します。
根拠となる研究が示されているか
信頼性、妥当性、使用した尺度、参考文献などが示されているかを見ます。
「心理学に基づく」という言葉だけでは十分ではありません。
対象者が合っているか
成人向けなのか、子ども向けなのか。
日本語話者向けに検討されたものなのか。
自分がその検査の対象に含まれているかを確認します。
結果を断定しすぎていないか
次のような断定には注意が必要です。
あなたは絶対にこの仕事に向いています
このタイプの人とは結婚してはいけません
あなたには心の病気があります
一つのオンライン診断だけで、このような重要な結論を出すことはできません。
個人情報の扱いが示されているか
入力した情報が、
- 保存されるか
- 広告に使われるか
- 第三者へ提供されるか
- 削除を依頼できるか
を確認しましょう。
娯楽として楽しむことは悪いの?
娯楽用の性格診断を楽しむこと自体が悪いわけではありません。
友達との会話のきっかけになったり、自分について考えたりする楽しさがあります。
ただし、
面白いこと
科学的な測定として信頼できること
は別です。
娯楽として楽しむのか、心理的な測定として利用するのかを区別しましょう。
無料診断の結果だけで、就職、進学、治療、結婚などの重大な判断を決めるのは避けた方が安全です。
ここまでで、性格検査の仕組み、歴史、種類、利用方法、注意点が見えてきました。
最後に、「当たる検査」とは何なのかを、もう一段深く考えてみましょう。
11.おまけコラム
「当たる性格検査」とは何を意味するの?
性格検査について、多くの人が最初に気にするのは、
この検査は当たるの?
という疑問です。
しかし、心理学的に考えると、「当たる」という言葉だけでは意味が曖昧です。
読んで納得できたら「当たり」?
結果を読んで、
自分らしい
よくわかっている
と感じることはあります。
しかし、本人が納得したことだけでは、その検査の科学的な質は証明できません。
誰にでも当てはまりやすい文章や、好意的に感じられる表現が使われている可能性があるからです。
未来を予測できたら「当たり」?
性格特性と、仕事上の行動、健康、人間関係などとの関連を調べる研究はあります。
しかし、集団全体で関連が見られることと、一人の未来を確実に予言できることは違います。
ある特徴を持つ人が、平均すると特定の行動を取りやすかったとしても、全員が同じ行動をするわけではありません。
統計的な傾向を、一人の運命へ置き換えてはいけません。
専門家が使っていれば「当たり」?
専門家が使用する検査でも、目的や実施方法が不適切なら、正しい判断にはつながりません。
反対に、研究上の根拠がある検査でも、必ず測定誤差や限界があります。
重要なのは、
- 何を測っているか
- どの程度安定して測れるか
- その解釈を支える根拠があるか
- 誰を対象に作られたか
- 何の目的で使うか
- ほかの情報とどう組み合わせるか
です。
「当たる?」よりも大切な問い
性格検査を見るときは、
当たっていますか?
だけではなく、次のように問いかけてみましょう。
何を測っていますか?
どのような人を対象にしていますか?
どの程度の信頼性がありますか?
この解釈には、どのような根拠がありますか?
どこまではわかり、どこから先はわかりませんか?
この結果を、何のために使いますか?
心理学的に大切なのは、驚くほど言い当てることではありません。
限界を含めて、どこまで根拠のある情報を提供できるかです。
性格検査の面白さは、人間を一言で説明できることではありません。
むしろ、人の性格がどれほど複雑で、慎重に調べなければならないものかを教えてくれるところにあります。
12.まとめ
性格検査は「最終回答」ではなく、自分を考えるための資料
性格検査でわかるのは、その人の性格や行動に関する一部の傾向です。
その人の心、人生、価値、将来をすべて決めるものではありません。
心理学で紹介される代表的な方法には、
- 質問へ答える質問紙法
- 曖昧な刺激へ自由に反応する投影法
- 課題への取り組み方を見る作業検査法
があります。
それぞれ、扱う情報と得意な点が異なります。
質問紙法は、本人の回答を一定の方法で整理できます。
一方で、自己理解や回答態度の影響を受けます。
投影法は、自由な表現を資料にできます。
一方で、採点体系や指標によって研究上の支持が異なり、実施と解釈に専門性が必要です。
作業検査法は、実際の作業への取り組み方を資料にできます。
一方で、疲労、体調、緊張、環境などの影響も考えなければなりません。
結果が変わっても、どちらかが必ず間違いとは限らない
別の日に受けた検査で結果が変わったとしても、すぐに検査が失敗したとは限りません。
体調や環境が違ったのかもしれません。
質問の受け取り方が変わったのかもしれません。
分類の境目に近かった可能性もあります。
実際に経験を通して、性格傾向が変化した可能性もあります。
大切なのは、
どちらが本当の自分なのか
だけを考えることではありません。
なぜ違う結果になったのか
を考えることです。
性格検査は人を小さな箱へ入れるためのものではない
人は、わかりやすい言葉を求めます。
「あなたは内向的です」
「あなたは慎重なタイプです」
そう言われると、自分を理解できたように感じます。
しかし、人間は一つの言葉だけでは表せません。
静かな人にも、大切なことを力強く話す瞬間があります。
慎重な人にも、思い切って一歩を踏み出す日があります。
明るい人にも、一人で静かに考えたい時間があります。
性格検査は、人のすべてを説明する答えではありません。
まだ言葉にできていなかった特徴について、考え始めるための資料です。
結果を「名札」ではなく「問い」に変える
検査結果に「慎重」と書かれていたら、
私は慎重な人間だ
だけで終わらせず、次のように考えてみましょう。
どのようなときに慎重になるのだろう?
慎重さに助けられた経験はあるだろうか?
慎重になりすぎて困ったとき、どう調整できるだろう?
「内向的」と書かれていたら、
人付き合いが苦手なのだ
と決めつけるのではなく、
少人数ではどうだろう?
信頼できる人の前ではどうだろう?
一人の時間から、どのような力を得ているのだろう?
と問い直します。
性格検査の結果は、一生変わらない名札ではありません。
自分について、新しい質問を始めるためのきっかけなのです。
疑問が解決した物語|計算だけでは「人」は決まらない
数日後、ハルカさんは、もう一度あの日の検査のことを思い返していました。
最初は、
「計算だけで性格までわかるなんて、本当にそんなことがあるのかな」
と、不思議な気持ちでいっぱいでした。
しかし、性格検査について調べていくうちに、その考えは少しずつ変わっていきます。
性格検査は、人の心を見抜く魔法ではありません。
質問への答え方や、作業への取り組み方などから、その人の特徴の一部を客観的に整理するための方法だと知ったのです。
そして、一つの検査結果だけで、その人の性格や将来、人としての価値まで決まるわけではないことも分かりました。
ハルカさんは、ふと検査中の自分を思い出します。
「途中で焦ってしまったのは、みんなに遅れたくないと思ったからだったな。」
「何度も答えを確認したのは、失敗したくなかったからかもしれない。」
あの日は、自分の弱さばかりが見えていたように思えました。
でも今は、その慎重さは、見方を変えれば大切な確認を怠らない長所にもなるのだと気づきました。
もし検査結果に苦手な面が書かれていても、
「だから自分はダメなんだ。」
と考える必要はありません。
「そういう場面もあるんだな。」
「では、どうすれば自分らしく力を発揮できるだろう。」
そう考える方が、自分自身をもっと理解できるのだと感じました。
先生が最後に話していた言葉も、今ならよく分かります。
「検査は、人を決めつけるためではなく、その人を理解するための手がかりです。」
ハルカさんは、あの日受け取った検査結果を、もう一度見返しました。
そこには以前と同じ文字が並んでいました。
けれど、不思議なことに、受け取り方はまったく変わっていました。
以前は「自分はこういう人なんだ」と思っていた結果が、
今では、
「自分には、こんな一面もあるのかもしれない。」
と、自分を知るための一つのヒントに見えてきたのです。
性格検査は、自分を縛る「答え」ではありません。
自分という人間を少しずつ理解していくための「地図」のような存在なのです。
もちろん、地図だけでは実際の景色は分かりません。
歩いてみて初めて見える景色があり、出会う人がいて、新しい経験があります。
人の心も、それと同じなのかもしれません。
あなたは、もし性格検査を受けたとき、その結果を「答え」として受け止めますか。
それとも、自分をもっと知るための「新しい一歩」として受け止めますか。
その答えは、検査の紙の中ではなく、これからあなた自身が歩んでいく毎日の中にあるのかもしれません。
文章の締めとして
ここまで、心理学における「性格検査」について、一緒に見てきました。
最初は、
「どうして質問に答えたり、計算したりするだけで性格がわかるのだろう?」
という素朴な疑問から始まりました。
しかし、その答えをたどっていくと、性格検査は人を決めつけるためのものではなく、自分自身をより深く理解するための手がかりであることが見えてきました。
人の心は、とても複雑です。
一枚の写真だけでは、その人の人生がわからないように、一つの検査だけで、その人のすべてを語ることはできません。
だからこそ、検査結果をそのまま信じ込むのではなく、
「なぜ、このような結果になったのだろう?」
「自分には、こんな一面もあるのかもしれない。」
と考えてみることが、本当の意味で自分を知る第一歩になるのでしょう。
心理学には、「人を決めつける学問」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし実際には、人を一つの型へ当てはめるためではなく、一人ひとりの違いや、その人らしさを理解しようとする学問でもあります。
もし、この記事を読んだことで、性格検査を見る目が少しでも変わったり、自分や周りの人をこれまでより温かい気持ちで見つめられるようになったなら、とてもうれしく思います。
補足注意
この記事は、作者が個人で確認できる範囲の情報をもとにまとめています。
性格検査の分類、評価、解釈には複数の理論や立場があり、本記事の説明だけが唯一の答えではありません。
また、心理学や神経科学の研究は現在も進んでいます。
今後、新しい研究、再検証、測定技術の発展によって、現在の理解が修正される可能性があります。
🧭 本記事のスタンス
この記事は、「これが唯一の正解」と示すものではありません。
読者が心理学へ興味を持ち、自分でも資料を調べるための入り口として書かれています。
性格検査の結果だけで、自分や他人を決めつけないこと。
結果が自分の実感と違う場合も、すぐに否定したり信じ込んだりせず、なぜ違うのかを考えること。
異なる研究や立場からの視点も、大切にしていただければ幸いです。
心は、一度の検査だけでは読み切れません。だからこそ、知れば知るほど新しい発見があり、学べば学ぶほど見える景色も変わっていきます。この小さな一歩をきっかけに、ぜひ文献や研究にも触れながら、あなた自身の「心の旅」を続けてみてください。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
性格検査は、人を一つの型にはめることよりも、一人ひとりの違いを丁寧に見つめることの大切さを教えてくれているのかもしれません。

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