私達コンシェルジュはホテルを訪れる…お客様たちの一時の友人です

漫画

ーーー最上拝 コンシェルジュ

過去の野球選手のユニフォームを手に入れたいと、お客様からの依頼があり調べるも現存する数は3枚。一枚はパン屋の店主の手にありますが、そすでに売約済みと言い交渉に応じてくれません。本腰を入れた最上拝がたどり着いた先は、なんと亡き妻と娘が三年前に店主と約束していた事実が判明しました。

あまりにも長い時間をかけた契約。あまりにも不思議な縁がからまった依頼の達成でした。

パン屋の店主も人気選手のユニフォームを店に飾っていたことから、ユニフォームを買い取りたいという交渉は何度も何度も行われたのでしょう。それでも一度交わした約束をきちんと守りき切る決意の凄さが伺えます。

三年前に交わされた約束、三年もの間ずっと引き取られないユニフォーム。その様子を見て、ユニフォームを欲しがる人の中には、売約済みという契約自体が嘘なのではないかと考えた人達もいたのでしょう。

もしくは、何度も何度も交渉してくる人や、強気に交渉してくる人達もいたのでしょう、それでも契約を守り抜いたパン屋の店主に頭が下がります。

契約をした本人の旦那(最上拝)が来てくれ、ホッとした肩の荷が降りた気持ちもあるのではないのでしょうか?とも考えてしまいます。

このまま契約者が永久に取りに来なかったら、漫画では手付け金を受けっとていると言っていたのでパン屋の店主がユニフォームを管理しきれなくなったら、所有権はどうなってしまうのか?などと考えてしまう私がいました。

パン屋の店主が持っているユニフォームは、最上も最初の交渉では売約済みだと相手にされません。しかし、売約先の相手が最上の亡き家族だと判明するという奇跡がおきます。

実は最上本人が三年前にも同じ依頼を受けていたのでした。

その時もユニフォームをほうぼう探しても手に入れることが出来なかった最上、家庭でも愚痴をこぼすほど難しい依頼でした。その様子を見ていた家族が、夫が仕事に必要だからと店主に粘り強く交渉していたとのことでした。

その様な縁があり、相手を思いやり行動し合えるほどに信頼しあっていた夫婦の絆を使ってまで手に入れたユニフォーム。

三年前の深い思いのこもった出来事により手に入れることの出来たユニフォーム。

依頼とはいえ依頼だったからこそ、この様な不思議な縁が、絆が出来上がったのでしょう。

それにしても、遺品とも言えるような品物を人手に渡してしまえる最上拝の懐の深さ、仕事に対する責任のとり方に感銘を受けます。

依頼とは関係ないのですが、大切な大切な家族とのエピソードが、こんなにもあっけなく見つかってしまうのも不思議だとも考えてしまいました。

どんなにも複雑な事象であろうとも、どんなにも困難な出来事であろうとも、たとえ我が身に関係する出来事と引き換えに達成できた結果であろうとも、依頼主にはその事を明かす必要はない。

依頼主の希望した事柄を達成出来たのか、希望した物(事)が手に入れる事が出来たのか、だけが大切で、その事実だけが求められるという、仕事感に敬服しました。

その先に紡がれる感謝の気持ちは自分ではなく、その先にいる人達が受け取れるように巡るような仕事がしたいという気持ちにまでなっている最上が眩しいです。

私ならば大きく困難な依頼を達成したならば、その苦労をその奮闘をその手柄を知ってもらいたい賛辞してもらいたいと考えてしまうのでしょうから。

このような困難な依頼の物語は、最上拝がニューヨークのグランドゼロを訪れたところから始まります。

三年前に起こった出来事に寄って家族を亡くしてしまった最上が、この地を訪れると当時の仕事仲間のモリガンに出会います。

その縁から、モリガンが受けた困難な依頼を最上は相談されます。

その依頼は野球選手のユニフォームを入手したいという依頼でした。

この依頼は、なんとニューヨークで三年前の出来事が起こる前に最上が受けていた依頼と同じ内容でした。

しかし当時の依頼はニューヨークで起こった出来事によってウヤムヤになってしまったのでした。その当時もなかなか見つけられずに奥さんに愚痴っていたと最上は話します。

今回はモルガンの勤め先のホテルのコンシェルジュ達によってユニフォーム一着の所在は見つけられたのですが、その所有者のパン屋の店主との交渉が困難を極めました。

その主人に交渉しようにも、売却済みとのことで取り付く島もありません。

その様な状況ではと本腰を入れる最上。

その結果、現存するユニフォームの行方が分かった数は3着であり、1つは野球博物館、1つは日本のスポーツショップ(しかし人手に渡り行方不明)、残り1つが例のパン屋さんということが判明します。

やはりユニフォームを入手するにはパン屋の主人から譲ってもらうしか方法はない様子でした。

なんとか譲ってもらいたいと改めて交渉に行くと、不思議な感覚に陥る最上。

パン屋の主人がパン屋に来たならばパンに目を向けろと、たしなめられた最上がパンを口にし、店を見渡すと、三年前に暮らしていた時に食べた味、見たことのあるパンの袋を目にするのでした。

不思議な感覚の正体は、以前に見たことがあるパン屋だという感覚でした

その事を主人に話し、また最上の家族の風貌を伝えると、主人は驚きの表情に変わりユニフォームはその家族に売ったものだと話します。

三年前の九月に、店主の持っているユニフォームを夫が仕事でどうしても必要としていると、娘とともに頼み込む姿に根負けした店主はついにユニフォームを譲ることを決断します。

すると二人は手付け金を払い契約したと言います。

しかしそれっきり姿を見せなくなってしまった二人、三年前に起こった出来事を考えれば何が有ったかは想像がつくという店主。

そして店主が見せてくれた、その時のメモには携帯番号と最上久美子と名前がサインがされていました。

そのメモをみて最上拝は天を仰ぎ、その後うつむきながら自分のカミさんだと伝えます。

そこまでしてくれていたのかと、そこまで…と三年前の出来事に思いを馳せる最上でした。

良い夫であり、良い妻であったのだとだからこそ一生懸命に支えようとしたのだと店主は慰めます。

その後無事に、念願のユニフォームを手にした依頼主が喜ぶ姿を影から見ていたモリガンは、いい気なもんだと言います。ユニフォームが手に届くまでにどれだけのドラマが隠されていたのか知りもしないでと言いたそうに。

それを聴いた最上が言った言葉が

いいんですよ

私達コンシェルジュはホテルを訪れる…お客様の一時の友人です

お客様へのサービスは私達からの友情なんです

コンシェルジュ第2巻より引用

でした。

どんなに困難だろうとも、たとえ一時の間だろうとも友人にたいする行為ならば、自分たちの行為は友情のもとに行ったのだから、見返りを求めるのでも賛辞を求めるのでもない。

という仕事に対する思いを見習いたいと感じた、心に響いた、感銘を受けた言葉でした。

このような仕事感を持つ最上の物語を直接読みたい場合は

コンシェルジュ 原作 いしぜきひでゆき 漫画 藤栄道彦 BUNCHCOMICS 新潮社

第2巻 第11話 最上の過去

を是非読んでみてください。

皆様にはどの様な新しい響きがあるのか、楽しみです。

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