ーーー華原清六 恋人(ラバーズ)
ダーツプレイヤーである華原清六、対戦相手は同じくダーツプレイヤーで迷宮の悪魔と呼ばれ恐れられる烏丸徨。
華原はそんな悪魔と呼ばれている烏丸も、人間であり、なにかに怯えて行動していると指摘します。
何かに怯えるとは?怯えて行動するとは?
華原曰く、恋人にやたらとプレゼントすること、仲間内で浮かないように同じ格好をする、嫌いな上司にもへつらう、そのような行動は全て怯えからくる行動であると指摘します。
本当はやりたくないけれども、想定している最悪の結果を迎えるよりはという怯え、その怯えから逃げるため、怯えを避けるために行動するのが人間だという言葉でした。
確かに、空気を読むではないですけれども、周囲の人達と足並みを揃えなくてはいけない、人よりも目立たずかといって真似をしずぎない格好をしなければいけない、成績を悪くしないかと言って満点を自慢するようなことはしてはいけない。周囲の話を遮らない、わからないことが合っても分かっているようなニュアンスで過ごさなくてはいけない。
などなど、考えながら、考えていると気づかずに、人に合わせる人に好感を持たれることを重視した行動を選択している事が多いのかもしれません。
自分は、自分の中では、そうしているつもりでも知らず知らずにずれてしまっていつのまにか周囲から浮く、悪意を向けられてしまうことが多々あるのですが。その浮いている状態さえも気が付かずに、合わせているつもり、合っているつもりになって行動し、積もりに積もって他者からの白い目線がいつの間にか悪意に変わって初めて、今までの行動が人とは、周囲とはズレていたのだと気付かされてしまう、そんな事を続け、さらに怯えた行動を続けるもなにが正解なのか、なにを自分にもとめているのか、どのようなキャラクターを演じれば良いのか分からずに怯える、それが人間ということなのでしょうか?怯えからくる行動をしなくて良いためには、人と接しないのが一番なのか、人と人一倍接して習慣を理解するべきなのでしょうか?
悩んで悩んで迷宮から出られません。
そのような考えを話していたのかは分かりませんが、烏丸と華原のダーツ対決の舞台は後生島(ぐそうじま)。法律上は無人島だが、その実完全な私有地、つまりは法の外にある島。法の届かない島を所有出来るほどの人物が普通のダーツ対決を所望するはずもなく。
今回のプレイの場は、モルモットとジーニアスと名付けられた実験の名残である密室の中にプレイヤー二人を入れ、ダーツを行い、得点方法によって、毒ガスをプレイヤーの部屋に送り込むという対決方法でした。毒ガスを吸うも得点が入る矢(モルモット)か、点数は入らないが毒ガスが混入するのが止まる矢(ジーニアス)か。更には投げるまでの時間までも計算し相手に毒ガスを吸わせる時間を作るか、すぐに投げ自分が毒ガスを吸う時間を極力減らすか、という選択をしつつ、プレイしなくてはいけない対決。
この対決、自分は何回読んでも耐久戦がベストなのではないかと思ってしまいます、全ての矢をジーニアスにし毒ガスまったく吸わずに、さらに矢を放つ時間をゆっくりと最大限使い、時間を伸ばせば、相手が一回でもモルモットの矢を使用すれば自滅するのでは無いかと、その回答しか出ないのは、毒ガスに対する怯えでようか、それとも対決方法の本質が読み切れていないからなのでしょうか?ルールがもっと簡潔に理解できれば良いのでしょうが、難しです。
兎にも角にも、お互い相手の矢を読み合おうとする対決!かと思いきや華原は観客に自身のスパイを送り込み烏丸の矢の種類を見抜いていました、そして必勝だと確信をします。
この勝負自体が、くだらないと感じていたのですがあまりにも簡単に事がおよびすぎ、疑念が生まれます。それでも疑念であるだけでどのような手段かわからない以上やるべきことは自分が得点していくことのみ、と矢を放ちます。
その様子を見た烏丸は揺さぶりをかけます、華原の言葉がおかしな点を指摘し、その言葉のふせんとなるような怪しい行動を読み切っていたと指摘。
そんな事を伝えても、無駄だと言いたいような華原の表情でしたが、次の烏丸の行動で華原の顔は蒼白になります、なんと烏丸はルールの範囲上で矢に細工をし、たとえ相手が矢を覗き込んでみようとも本当はどっちの矢なのかは分からなくなっていました。
いままで、矢の種類が分かっていた上での行動をしていた華原でしたが、これではいままでの理論は通用しなくなってしまいました。
これでは、どちらが有利でどちらが危険なのかはっきりとは分からず読み合いの迷路の中です。
そこで今までの作戦で毒ガスをすってしまい、少量の吐血を始めていたのにも関わらずに、怯まずに言った華原の言葉が
まぁ でも 仕方ないよ ガスを吸ったら誰でもこうなる ボクも 君も 人間だからね
烏丸君君は皆が言うような“悪魔”なんかじゃない なぜなら君も他の人達と同じように…
何かに怯えて 行動するからだ
漫画 エンバンメイズ 第2巻より引用
でした。
そしてその言葉の意味は、烏丸が華原がイカサマをしていたことを見抜いていたと、今の時点で教えたことが、烏丸の怯えた行動に他ならないと、断言します。
烏丸の行動はあまりにも不自然である、ゲームが終わるまでイカサマを見抜いていないと突き通せば、そのまま烏丸が有利に運べたはずなのだ、それなのに今の段階で勝利を確定するには早すぎる、つまり今イカサマを見抜いているのをバラすのは早すぎる、と。
そのような段階でもネタバラシをした理由、しなくてはいけない理由とは、怯えた理由とは、華原から目をそらしたかった、烏丸が犯してしまったミスを、と続けます。
烏丸は完全な肯定も否定もなくそのまま対決を続行します。
そして、二人の読み合いは続きます。どちらが読み切ったのか、どちらの思考が正しかったのか、この時点では本人達も周囲も読みきれていません。
怯えての行動が、空気を読むということなのか、怯えているからこそ空気を読むという行動に躍起になるしか無いのか、空気を読めということなのか。
皆同じではないと、気持ち悪い、私も同じように振る舞っているのだから、あなたも同じように振る舞えないのならば迫害されても文句を言えない、悪意を生ませる側が悪いこの行動は鉄槌だというような行動思考になっているのでしょうか?自分もそのような思考にならないように気をつけないといけませんと感じた心に響いた感銘を受けた言葉でした。
皆様もこの二人のやり取りや結果を直接読みたい方は
エンバンメイズ ENBAN MAZE 田中一行 good!AFTERNOON KC 講談社
第1巻 ROUND 09 恋人ーloversー〈4〉
を是非読んでみてください、皆様にはどのような新しい響きがあるのか楽しみです。
華原と烏丸の対決はROUND06〜ROUND10までになりますので、ほぼ第2巻全てを使った長期決戦ですので堪能してみて下さい。
コメント