私はー……ただ…悲しいんです

漫画

ーーー最上拝 コンシェルジュ 

言葉へのあらすじ

三年前のテロ事件によって家族を亡くした最上拝。その場所へ墓参りにいくと、モルガンに会います。モルガンと一緒にカフェで現状の話をしながら当時の出来事や、事件に対しての事や、その後対応の考え方を話します。そしてテロリストについて、モルガンに問われた時の最上拝の言葉です。

心に響い事 考えたこと

悲しい、ただそれだけ、という感情が胸の内にある状況を考えると、事件に対する怒りや事件を起こした犯人への憤りではなく、起こってしまった事実への理不尽さを嘆きたいわけでも、なぜそれが起きてしまったのかと喚きたいわけでもありません。また、事件を引き起こした側や事件を起こす要因を攻め立てるわけでもありません。ただ、自分の心の中に存在する感情だけを表現しています。

全ての原因を排除し、今自分に起こっていることにだけを意識し、自分の感情に集中できるようになったことが、事件の影響だったと仮定すると、それが素晴らしいことなのか、あるいは虚無感によって生じた悟りのような境地に至るために辛い経験を強いられたのかは、判断が難しいです。

けれども、自分の気持ちだけをありのままに意識し、表現できることは、自己の内面をより深く理解し、問題解決や成長につながる素晴らしい手段ではないかと思います。感情を言葉に表現することで、自分自身の感情を明確に捉えることができます。そして、それらの感情を受け入れることによって、感情と向き合うことができるようになるのだと感じられます。

ただ悲しい、という感情そのものでしか自分を表現できないほどの喪失感があったのでしょう。悲しみは、何かを失ったり、別れを経験したりすることによって引き起こされる感情です。例えば、愛する人の死や大切な関係の終了を経験している状況、このような状況では、心の中には孤独感や絶望感が広がたのではないかと推測できます。また、悲しみが続く中で無力感を抱くこともあったのかもしれません。

時には悲しみによって、感情の混乱を引き起こし、悲しみに加えて怒りや恐れ、焦燥感など、さまざまな感情が入り混じり、心情が複雑になったり、悲劇的な出来事に直面したことで、希望や前向きな展望を見出すことが難しくなったのかもしれません。

その様な感情があったと想像できる状況下にも関わらずに、自己の感情のみを語り、起こってしまった出来事に対して憎しみも、怒りの言葉も発することのない最上に、敬意を表します。

私は、起こってしまったことに対して文句を言ったり嘆いたりしても何も変わらないと理解はしています。けれども、失われたものは戻らないとわかっていても、割り切ることは難しいですし、報いを受けさせたいという感情に飲み込まれてしまい、その事に囚われてしまい、時間や体力、気力を取られてしまうと思います。

悲しみに目を向け、事実のみを意識し続けられる、最上拝の言葉が心に響いた、感銘を受けた言葉でした。

物語の流れ

東京のクインシーホテル・トーキョーで、コンシェルジュとして働く最上拝ですが、今日はその場所に姿はありません。川口涼子が支配人の笠井信男に尋ねると、ニューヨークに行ったのだと言います。

ニューヨークのグランドゼロ、この地に来ていた最上拝。その場所で花束を持ったモルガンと出会います。ホテルに電話をし、外出したと聞いたモルガンは、この場所に最上が居ると推測したのです。

日本の墓参りは毎年行っているが、この場所にはなかなか来られないと言う最上に、あれから三年、早いものだと言うモルガン、そしてモルガンはカフェに入り話をしないかと持ちかけます。

現状を話しつつ、三年前のテロ事件のことを話す二人。家族が事件に巻き込まれてしまった最上は、時が止まったような気がすると語り、家族にとって自分は、良い家族であったのかと悩んでいる、と話します。

その話の中で、モルガンは二度と悲劇は起こさないと、正義の国だと言うと、最上は正義という言葉についての持論を語ります。

その達観したような、悟ったような語り方に、モルガンはテロリストが悪くないのか、と最上に問います、その言葉に対して最上が言った言葉が

私はー… ……

ただ… 悲しいんです

コンシェルジュ 第11話 より引用

でした。

自分の胸の内だけを語る、最上拝の言葉でした。

その後の話や、物語を直接読みたい場合は

コンシェルジュ 原作 いしぜきひでゆき 漫画 藤栄道彦 新潮社 BUNCHCOMICS

第2巻 第11話 最上の過去

を是非読んでみて下さい。

皆様には、どの様な新しい響きがあるのか、楽しみです。

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