『ポーション症候群』とは?ゲームでレアアイテムをすぐ使う人・使えない人の違いと『ラストエリクサー症候群』の意味も説明

考える

ゲームの「もったいない」と「今使いたい」がわかる心の攻略ガイド

ゲームのレアアイテムをすぐ使っちゃうあなたへ。『ポーション症候群』とラストエリクサー症候群の心理学

代表例

お土産でもらった、1つ300円もする高級プリン。

「今日は普通の日だから、もっと特別な日に食べよう」
そう思って冷蔵庫の奥にしまい込み、気づいたら賞味期限切れ。

一方で、もらったその日に
「せっかくだし、今食べちゃおう!」と
一瞬で平らげてしまう人もいます。

同じプリンなのに、

  • 「もったいなくて食べられない人」
  • 「もったいないからこそ、今食べたい人」

にはっきり分かれてしまうのは、なぜなのでしょうか。

ゲームのレアアイテムも、じつはこれと同じ。
その「不思議な違い」を、この記事でやさしくひも解いていきます。

ここから先は、まずサクッと答えを見てから、
少しずつ深い話に入っていきましょう。

3分で分かる結論として

  • ラストエリクサー症候群』とは
    → ゲーム内の超レアアイテムを「もったいない」と思って温存しすぎて、
    結局ほとんど使えないままクリアしてしまう現象を指す俗語(ゲーム用語のスラング)です。
  • 一方で、この記事が扱う
    『ポーション症候群(浪費タイプ)』とは
    → レアアイテムでさえ「今使ったほうが得」と考えて、
    道中からどんどん使ってしまうタイプを、
    ※本記事内では、今回の説明としての呼び名として便宜的にそう呼ぶものです。

※なお、ネット上では「ポーション症候群」を
「ポーションですら使えない節約タイプ」の意味で使う例も多く、
意味がブレている状態です。

この記事では混乱を避けるために、

  • 一般的な用法:
    「ラストエリクサー症候群/エリクサー症候群」=使えない・温存タイプ
  • 本記事での造語:
    「ポーション症候群(浪費タイプ)」=すぐ使うタイプ

という整理で話を進めていきます。

小学生にもスッキリわかる説明

ゲームの中には、

  • とても強いけど、数が少ない「とっておきアイテム」がありますよね。

ラストエリクサー症候群は、

「すごく強いアイテムだから、もったいなくて使えない……」
と思い続けて、
最後まで1回も使わないままゲームをクリアしちゃうこと

を、ゲーマーたちがふざけてつけた名前です。

それに対して、このブログでいう『ポーション症候群(浪費タイプ)』は、

「強いアイテムでも、今ピンチだから今使おう!」
「あとで困るかもしれないけど、とりあえず今楽になりたい!」

と考えて、どんどん使っちゃう人のことです。

どっちが「正しい」ではなくて、

  • 未来のためにがまんするタイプ
  • 今を楽しむために使うタイプ

という、性格のちがいとして見ていくとわかりやすいです。

ここから先では、
そんな2つのタイプがゲームや現実でどんな行動の差になるのか
もう少し大人向けに、ていねいに見ていきましょう。

1.今回の現象とは?

「レアアイテムをすぐ使う人」のナゾ

まずは、今回のテーマを
キャッチフレーズ風に並べてみます。

  • 「ポーション症候群」とは、どうしてレアアイテムをすぐ使ってしまうのか?
  • 「ラストエリクサー症候群」とは、なぜ大事なアイテムを最後まで取っておいてしまうのか?
  • ゲームでの“アイテムのクセ”は、私たちの「お金・時間の使い方」とどうつながるのか?

このあたりが、
多くの人がモヤっと感じているポイントではないでしょうか。

このようなことはありませんか?

ゲーム中に、心当たりはないか思い出してみてください。

  • せっかく手に入れた最強クラスの回復アイテムを、
    ボス戦でもないのに道中の雑魚戦でどんどん使ってしまう
  • 「まだ大丈夫かな?」と回復をケチった結果、全滅して逆に損した
    ことが何度もある
  • 友だちにプレイを見られていて、
    「え、それもう使っちゃうの?」「ラスボスまで取っておきなよ!」
    と驚かれたことがある
  • スマホゲームのスタミナ回復アイテムガチャ石を、
    配布されたそばからその日のうちにほぼ使い切ってしまう
  • 逆に、
    ポーションや安い回復薬ですら使えず、どんどん貯まっていく
    自分を見て「なんでこんなにケチなんだろう」と不思議に思うことがある

ひとつでも「あるある…」と思ったなら、
あなたの中にも「ラストエリクサー症候群」や
この記事でいう「ポーション症候群(浪費タイプ)」の要素が
少なからずあるはずです。

この記事を読むメリット

この記事を読み進めることで、

  • **「自分はなぜアイテムを温存するのか/すぐ使うのか」**が言葉になる
  • ゲームだけでなく、
    お金・時間・体力・チャンスの使い方のクセにも気づける
  • 心理学・行動経済学で語られる
    「損失回避バイアス(そんしつかいひバイアス)」や
    「現在志向バイアス(げんざいしこうバイアス)」などの
    心のクセをやさしく理解できる
  • そのうえで、
    **「自分のタイプに合ったアイテムの使い方」**を考えられるようになる

はずです。

では次に、
この不思議な現象に気づく「きっかけの物語」を見ながら、
あなた自身の感覚と重ねていきましょう。

2.疑問が浮かんだ物語

レアアイテムの前で、2人の気持ちがすれ違うとき

ゲーム好きのユウマは、
今日もRPGのラスダン手前を冒険中です。

激しい戦いの末、宝箱の中から
「パーティー全体のHPとMPを全回復し、状態異常も治す」
という、とんでもない回復アイテムを手に入れました。

「うおお、絶対レアだこれ!」

ユウマはコントローラーを握りしめ、思わず声を上げます。

ところが、その数分後。
ちょっと強めの雑魚敵に囲まれて、パーティーは瀕死状態に。
画面のHPバーは真っ赤です。

「やばい、このままだと全滅するかも……
まあ、さっきのアイテム使えばいいか!」

ユウマは、さっき手に入れたばかりの
「超レア回復アイテム」をほとんど迷わず使用します。

一気に全員が全回復し、BGMも元気なものに戻る。
ユウマはホッと息をついて、少し得意げな顔です。

そこへ、横で見ていた友人のミナトが思わず声を上げます。

「え、それ使っちゃうの!?
それ絶対ラスボスまで取っとくやつでしょ!」

ユウマは首をかしげます。

「だって今ピンチじゃん。
ここで全滅したら、さっきの宝箱まで戻るのめんどくさいし。
結局使わないままクリアしちゃうくらいなら、
今使ったほうが得じゃない?」

ミナトは、なんだかソワソワした気持ちになります。

「でもさ、それ**“ここぞ”の時の切り札**でしょ?
こんな雑魚戦で使ったらもったいなくない?」

ユウマも、ちょっとだけ不思議になります。

「うーん……
じゃあ“ここぞ”って、いつなんだろう?
今だって十分ピンチな気がするんだけどな」

同じゲーム、同じアイテム。
でも、2人の「正解」はまったく違います。

  • ユウマは
    「今ピンチなんだから、今使うのが一番いい」と感じています。
  • ミナトは
    「もっと大事な場面があるはずだから、今はがまん」と感じています。

2人とも、ちゃんと理由があってそうしているのに、
お互いの感覚は、どこかかみ合いません。

「どうして自分は、こんなにすぐ使っちゃうんだろう?」
「なんであいつは、あんなにアイテムをケチるんだろう?」

そんな小さなモヤモヤが、
ユウマとミナトの心の中に、じわっと広がっていきます。

この「レアアイテムの使い方」のちがいは、
いったいどこから生まれているのでしょうか。

次の章では、この疑問に
できるだけシンプルな言葉で答えてみるところから始めてみましょう。

3.すぐに分かる結論

お答えします。

まずは、1章と2章で出てきた疑問に
シンプルに答えてしまいます。

前提としての説明
『ラストエリクサー症候群』とは?

多くのゲーム系サイトや辞書で共通している説明をまとめると、
ラストエリクサー症候群とは

ゲーム内で手に入る、とても貴重で強力なアイテムを
「もったいない」と思うあまり、
ほとんど使えないままゲームをクリアしてしまうプレイスタイル

を指す言葉です。

ファイナルファンタジーシリーズの
「エリクサー」「ラストエリクサー」が元ネタで、
**ゲーム好きのあいだで自然に広まった俗語(ネットスラング)**です。

そして、
『ポーション症候群』という言葉については、
二種類の考え方があります。

使い方がかなりバラバラなのです。

ネット上の例を見てみると、

  • 「ポーションやフェニックスの尾にすら手をつけない人」
  • 「店で買える回復薬ですら温存してしまう、極端な節約タイプ」

といった意味で使われることが多く、
「安いアイテムですら使えない人」を指すことが多いようです。

つまり、もともとの文脈では

「ポーション症候群」=“安いアイテムすら使えない節約系”

として語られていることが多い、というのが
現時点で確認できる実情です。

本記事での『ポーション症候群(浪費タイプ)』の定義

しかし、ここでの疑問としての現象は、

「レアアイテムをもったいなくて使えない」のではなく、
「レアアイテムですら、つい今使ってしまう」

という、逆側の悩みですよね。

そこでこの記事では、あくまで記事内だけの説明として、

ポーション症候群(浪費タイプ)
=レアアイテムであっても、
「今が使いどきだ」と感じると、
どんどん使ってしまう傾向

という意味で使うことにします。

あわせて、
「レアアイテムをバンバン使ってしまう自分」を
ちょっとおもしろく呼ぶニュアンスで、
「エリクサー浪費症候群」というラベルを使う場合もありますが、
これは完全にこの記事内だけの呼び名

(ごく稀な一部で使われている)と考えても良いレベルです。

✅ ここで出てくる名称はすべて、
医学的・学術的な正式用語ではなく、
ゲーマーのあいだで使われる俗語(スラング)+本記事内の説明になります。

この前提だけ、最初にハッキリさせておきます。

噛み砕いていうと…

ここまでを、もっとざっくり言いかえると、

  • ラストエリクサー症候群
    → 「使ったら減るのが怖くて、
       ずっと取っておいちゃう人」
  • (本記事の)ポーション症候群(浪費タイプ)
    → 「使わないまま終わるくらいなら、
       今どんどん使っちゃいたい人」

の違い、と考えてOKです。

この違いの裏側には、

  • 損失回避バイアス(そんしつかいひバイアス)
    同じ金額の“得”より“損”のほうが、強くイヤに感じるクセ
  • 保有効果/エンダウメント効果(ほゆうこうか)
    自分のものになった途端、その価値を実際以上に高く見積もってしまうクセ
  • 現在志向バイアス(げんざいしこうバイアス)
    将来の大きな得より、目の前の小さな得をえらびがちなクセ

といった、行動経済学の
有名な「心のバイアス(かたより)」が関わっていると考えられています。

このあたりを理解すると、

「あ、自分はケチなんじゃなくて、
こういう心のクセが強めに出ているだけなんだな」

と、ちょっと気持ちがラクになります。

ここまでで、

  • 言葉の意味の整理
  • 「使えない人」「すぐ使う人」という2タイプ
  • その背後にある“心のクセ”の存在

をざっくり押さえることができました。

次の章以降では、

  • どうしてそんな心のクセが生まれるのか
  • ゲーム・お金・時間の使い方にどうつながるのか
  • 自分のタイプと上手につき合うコツ

を、もう少しゆっくり、
でも難しくなりすぎないように深掘りしていきます。

「なんで自分は、レアアイテムの前で毎回モヤモヤするんだろう?」
という疑問の答えを、一緒に探していきましょう。

3.5.よくある質問(Q&A)

ポーション症候群とラストエリクサー症候群について

Q1. 「ポーション症候群」って、本当に一般的な言葉なんですか?

A.
いいえ、「ポーション症候群」は
医学用語でも公式な心理学用語でもなく、
もともとはゲーム好きのあいだで生まれた俗語(ネットスラング)です。

またネット上では、

「ポーションですら使えない節約タイプ」

「安い回復アイテムを貯め込んでしまう人」

といった意味で使われることも多く、
まだ意味が安定していない言葉でもあります。

この記事では、

「レアアイテムですら、今使ったほうが得だと思ってどんどん使ってしまう人」

を便宜的に
『ポーション症候群(浪費タイプ)』と呼んでいます。

そのため、

「この記事の中ではこういう意味なんだな」

という前提で読んでいただけると安心です。

Q2. 「ラストエリクサー症候群」って病気なんですか?

A.
病気ではありません。

ラストエリクサー症候群もあくまで

ゲーム内の貴重なアイテムを
「もったいなくて使えない」
プレイスタイルを面白く名前づけしたネットスラング

です。

ただし、その裏には

損失回避バイアス(損を強く嫌うクセ)

所有効果(自分のものを高く評価してしまうクセ)

といった心理学・行動経済学で研究されている心のパターンが関わっています。

「ラストエリクサー症候群っぽいな」と感じることで、
自分の心のクセに気づきやすくなる、という意味では
役に立つ“あだ名” だと考えることもできます。

Q3. 「すぐ使う人」と「温存する人」、どっちが正解なんですか?

A.
はっきり言うと、どちらも正解ではないし、どちらも間違いではありません。

ラストエリクサー寄り(温存タイプ)は
→ 備えや余力を残すのが得意

ポーション症候群寄り(浪費タイプ)は
→ 今の楽しさや行動力を大事にできる

という違いがあるだけです。

大事なのは、

「自分はどっち寄りのクセが強いのか?」
「どんな場面で、そのクセが“助け”になり、“邪魔”になるのか?」

を知って、
少しずつ自分なりのバランスを見つけていくことです。

この記事の中の

「使いどきルールを決める」

「レアアイテムは必ず1個残す」

といったコツも、
そのバランスを取りやすくするための小さな工夫です。

Q4. 現実の「お金」や「時間」にもポーション症候群は関係ありますか?

A.
かなり関係があります。

セールを見るとすぐ買ってしまう

もらったお小遣いやボーナスを、気づいたら使い切ってしまう

休みの日の体力を、午前中の予定だけで全部使ってしまう

こうした行動には、

「今の楽しさ・今の得」を強く優先する
現在志向バイアス

が関わっていると考えられます。

ゲーム内のレアアイテムについて考えることは、
じつは

自分のお金の使い方

時間や体力の配分

チャンスの使いどころ

を見直す優しいリハーサルにもなります。

「ゲームの中の自分を観察してみる」ことは、
意外と現実の行動改善にも役立つので、
一度じっくり振り返ってみるのがおすすめです。

Q5. この記事の「ポーション症候群(浪費タイプ)」は、まねしてもいいんでしょうか?

A.
「まねする・しない」というより、
自分の中に“どれくらいその傾向があるか”を知るきっかけとして
使ってもらうのがよいと思います。

「今を楽しむ力」に自信がない人にとっては、
ポーション症候群(浪費タイプ)の視点は
「もう少し今の自分に使ってもいいんだ」と気づくヒントになります。

一方で、
すでに「今優先」がかなり強い人にとっては、
記事の中で紹介したような
「最低1個は残す」「一晩寝かせてから決める」
といった工夫とセットにするのが安心です。

この記事は、

「あなたはこれです」と決めつける診断ではなく、
「自分のクセをやさしく観察してみるための鏡」

のようなものとして使っていただければうれしいです。

4.『ラストエリクサー症候群/ポーション症候群』とは?

ラストエリクサー症候群とは

まずは、よく知られているほうから整理します。

多くのゲーム系ブログや辞書的なサイトでは、

ラストエリクサー症候群
ゲーム内で手に入る希少で強力な消費アイテムを
「もったいない」「もっと大事な場面が来るかも」と考えすぎて、
ほとんど(あるいは一度も)使えないままゲームをクリアしてしまう現象

と説明されています。

元ネタはもちろん、RPG『ファイナルファンタジー』シリーズに登場する
「エリクサー」「ラストエリクサー」などの最強回復アイテムです。
HP・MP を全回復するような「とんでもなく強い」「でも数が少ない」「お店では買えない」アイテムが象徴になりました。

ここから、

  • いつかの「ここぞ」のために温存し続ける
  • 気がつくとエンディング、アイテム欄には最強アイテムがズラリ

という “あるある” をまとめて呼ぶスラングとして
「ラストエリクサー症候群」「エリクサー症候群」「エリクサー病」などが広まりました。

最近では、

  • 「保険金がもったいなくて使えない」
  • 「目的のために貯めたお金なのに、いざ使うとなると躊躇する」

など、現実世界の「もったいなくて使えない行動」を指す比喩としても
紹介されることがあります。

『ポーション症候群』という言葉の実際の使われ方

一方、「ポーション症候群」という言葉は、
ラストエリクサー症候群ほど意味が固まっていません。

ネット上の実例を見ていくと、

  • ポーションやフェニックスの尾(戦闘不能回復アイテム)すら
    もったいなくて使えない人
  • 「ハイポーションがいくらでも買えるくらいになるまでハイポーションも使えない」
    というような、安いアイテムですら温存してしまう極端な節約タイプ

を指して「ポーション症候群」と呼んでいる掲示板の書き込みや記事が見つかります。

また、SNS 上では
「ラストエリクサー症候群の逆として、安い回復アイテムを溜め込む人」
の意味で使っている例も確認できます。

つまり、現状の日本語ネット文化では、

ポーション症候群 = 安いアイテムですら使えない節約系

という使い方が、比較的見つけやすい状態です。

本記事での説明

『ポーション症候群(浪費タイプ)』の定義

ただ、この記事で扱いたいのは、

  • 「レアアイテムが使えない」悩みではなく
  • 「レアアイテムをすぐ使ってしまう」悩み

のほうです。

そこで本記事では、あくまで記事内だけの便宜的な呼び名として、

ポーション症候群(浪費タイプ)
= レアアイテムであっても、
「今が使いどきだ」と感じると
どんどん使ってしまう傾向

という意味で使うことにします。

合わせて、

「レアアイテムをバンバン使ってしまう自分」を
ちょっとおもしろくラベリングする言い方として
エリクサー浪費症候群

という表現を使うこともありますが、
これは 本記事内での説明だと考えていただいても大丈夫です。

✅ ここで出てくる名称は、どれも
医学的・学術的な正式用語ではなく、
ゲーマーのあいだで自然に広まった俗語(スラング)+本記事独自の説明 です。

海外の近い概念:「Too Awesome To Use」

英語圏では、似た現象が

Too Awesome To Use(トゥー・オーサム・トゥー・ユーズ)

という名前で TV Tropes などのサイトにまとめられています。

意味はほぼ「ラストエリクサー症候群」と同じで、

  • あまりに強力で、あまりにレアなアイテムや武器なので
  • 使うのがもったいなさすぎて
  • 結局最後まで温存してしまう

というゲームあるあるの 1 つです。

国や言語が違っても、
「強すぎるからこそ、使えない」 という感覚は共通しているわけですね。

ここまでで、

  • ラストエリクサー症候群(温存タイプ)
  • ポーション症候群という言葉の揺れ
  • 本記事での説明「ポーション症候群(浪費タイプ)」

という、言葉の整理ができました。

次の章では、
なぜこれほど多くの人がこの現象に悩まされるのか、
そしてなぜ心理学や行動経済学と結びつけて語られるのかを見ていきます。

5. なぜ注目されるのか?

ただの「ゲームあるある」で終わらない理由

ラストエリクサー症候群やエリクサー症候群は、
ゲームメディアやブログでもたびたび特集されています。

なぜ、ここまで話題になるのでしょうか?

ポイントは、ゲームだけの話で終わらない ところにあります。

  • 高級なお菓子やプリンを「特別な日のために」と取っておいて腐らせてしまう
  • いい食器・香水・文房具を「もったいなくて」なかなか使えない
  • 目的のために貯めたお金を、いざ使おうとすると急にブレーキがかかる
  • 非常用の栄養ゼリーや登山の行動食を、「今はまだ大丈夫」と温存して体力を落としてしまう

こうした現実の行動にも
「ラストエリクサー症候群だ〜」と名前をつけて
語られることが増えています

一方で、今回のテーマである

「貴重なアイテムですら、つい今使ってしまう」

という ポーション症候群(浪費タイプ) の感覚も、
お金・時間・体力・チャンスなど、
私たちの日常のあらゆる場面で顔を出します。

心のクセから見た「ラストエリクサー」と「ポーション」

心理学・行動経済学の世界では、
このような行動の違いを説明するために、いくつかの有名な概念が使われています。

① 損失回避バイアスとプロスペクト理論

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンと
共同研究者のエイモス・トヴェルスキーは、
人間が「得よりも損を強く感じる」クセを
損失回避(loss aversion) として整理しました。

これを含む意思決定モデルが プロスペクト理論 です。

ざっくり言うと、

同じ 1,000 円でも
「得した嬉しさ」より
「失った悲しさ」のほうを、1.5〜2.5 倍くらい強く感じてしまう

という傾向がある、というものです。

ラストエリクサー症候群の人は、

  • 「ラストエリクサーを減らす」という 損失
  • 「ラストエリクサーを使って勝つ」という

を比べたときに、
損失のほうを過大評価してしまう、と解釈できます。

「使ったら減る」という感覚が強くなりすぎて、
「使って勝てる」という得よりも
「なくなってしまう痛み」が先に立ってしまうわけですね。

② 所有効果(エンダウメント効果)

カーネマンたちは、学生にマグカップなどを配り、

  • マグカップを持っている側には「いくらなら売ってもいい?」
  • 持っていない側には「いくらなら買いたい?」

と値段をつけさせる実験を行いました。

結果は、

持っている人が提示する「売りたい価格」は
持っていない人の「買いたい価格」の約 2 倍

というものでした。

このように、

一度「自分のもの」になった瞬間に、
そのモノの価値を実際以上に高く感じてしまう

現象を 所有効果(endowment effect) と呼びます。

ゲーム内のレアアイテムも、一度手に入れた瞬間に

  • 「これは特別なものだ」
  • 「こんな貴重なもの、使ったらもったいない」

と感じやすくなり、
温存タイプの行動を後押しすると考えられます。

③ 現在志向バイアス(げんざいしこう)とポーション症候群(浪費タイプ)

今回の記事の主役である ポーション症候群(浪費タイプ) には、
逆向きの心のクセが強く働いていると考えられます。

行動経済学では、

将来の大きな得よりも、目の前の小さな得を優先してしまう傾向

現在バイアス/現在志向バイアス(present bias) と呼びます。

  • 「あとで後悔するかも」とうっすら感じていても、
  • 「いま楽になる」「いま気持ちいい」ほうを選びやすい

というクセです。

「今ここで全滅したらめんどくさいし、
さっき拾ったレアアイテムを使えば一発で回復できる。
だったら、今使ったほうが得じゃない?」

という発想は、まさに現在バイアスのあらわれだと言えます。

脳の中では何が起きているのか(ざっくり神経科学)

ここからは、少しだけ脳科学寄りの話です。

損失回避や現在バイアスに関する研究では、

  • 扁桃体(へんとうたい)
    不安・恐怖・「イヤな予感」などに関わるとされる部位
  • 腹側線条体(ふくそくせんじょうたい/ventral striatum)
    報酬や快感、「ごほうび」の価値判断に関わる部位
  • 前頭前野(ぜんとうぜんや/medial prefrontal cortex など)
    計画・我慢・長期的な判断に関わる部位

といった領域の働きが、よく話題に上がります。

例えば、

  • 扁桃体にダメージを受けた人は、
    お金の損を嫌がる度合い(損失回避)が弱くなる、という研究
  • 損失を重く感じているときほど、
    扁桃体と線条体・前頭帯状皮質(ぜんとうたいじょうひしつ:ACC)などの結びつきが強くなる、という fMRI 研究
  • 目の前の報酬を選びがちな「現在バイアス」が強い人ほど、
    腹側線条体や内側前頭前野の活動が、即時のごほうびに敏感に反応するという報告

などが知られています。

もちろん、

「ラストエリクサー症候群そのもの」を脳スキャナで調べた研究

があるわけではありません。(ここは要注意ポイントです)

ただ、

  • 「損を過剰に恐れる回路(扁桃体まわり)」
  • 「今のごほうびに飛びつきやすい回路(腹側線条体まわり)」
  • 「それらをコントロールする前頭前野」

のバランスが、人によって少しずつ違うために、

  • 温存タイプ(ラストエリクサー症候群寄り)
  • 浪費タイプ(ポーション症候群寄り)

という個性の差になって表れている、と考えることはできます。

ここまでで、

  • なぜこの現象が「ただのゲームの話」で終わらず、
  • 心理学・行動経済学・脳科学とも結びつけて語られるのか

が見えてきました。

次の章では、
この知識を「現実の生活の中でどう使うか?」という視点から
具体的な応用例を見ていきます。

6. 実生活への応用例

ここからは、

  • ラストエリクサー症候群寄り(温存タイプ)
  • ポーション症候群(浪費タイプ)

の両方の視点から、
日常生活での「アイテムの使い方」「お金や時間の使い方」のコツを見ていきます。

温存タイプ(ラストエリクサー寄り)へのヒント

こんな傾向が強い人

  • 高級な服・文房具・コスメを「もったいなくて」しまい込んでしまう
  • 貯金はできるが、「いざ使う」段階で固まってしまう
  • 体力や時間の「余力」があっても、なかなか切り札を切れない

そんな人には、次のような工夫が役に立ちます。

コツ① 「使いどきルール」を先に決めておく

例:

  • 「このノートは、今進めているプロジェクトのメモに全部使い切る」
  • 「この貯金のうち 10 万円は、必ず今年中に自己投資に使う」

といったように、
「どんな場面で使い切るか」を先に言葉にしておきます。

ゲームでも、

  • 「ラスダン以降では、強いボス戦ごとに必ず 1 個はレアアイテムを使う」

と決めておくだけで、「もったいない」と悩む時間が減ります。

コツ② 「一軍に出す」儀式を作る

ラストエリクサー級のモノほど、
引き出しの奥や倉庫にしまい込まれがちです。

  • 一番手前の棚に置く
  • 今日はこのマグカップだけを使う日、にする
  • 今月は「いい食器をとにかく使う月」にする

など、意識的に “一軍入り” させる小さな儀式 を作ると
所有効果の「もったいない」がほどけやすくなります。

浪費タイプ(ポーション症候群寄り)へのヒント

一方で、今回の主役である
「ポーション症候群(浪費タイプ)」 の人には、
こんな傾向があります。

  • スマホゲームの石やスタミナ回復アイテムを、配布されたそばからすぐ使ってしまう
  • ボーナスをもらっても、気づいたらほとんど残っていない
  • 元気な朝から体力を全開で使いすぎて、午後にバテる

ここでは、現在バイアスと上手につき合うための簡単な工夫を紹介します。

コツ① 「あと 1 回分だけは残す」ルール

ゲームであれば、

  • 「どんなにピンチでも、レアアイテムは必ず 1 個だけ残しておく」

現実であれば、

  • 「お小遣い・自由に使えるお金には、常に“最終防衛ライン”を 1 つ決める」

というように、「ゼロにしない」だけでも
かなり安全度が上がります。

人間は「ゼロかどうか」に敏感なので、
「ゼロにはしない」という制約があるだけで、
現在バイアスによる暴走を少し抑えやすくなります。

コツ② 「未来の自分に 1 回だけ相談する」

実際にレアアイテムや大きな出費を決める前に、

  • 紙やメモアプリに「今使う理由」「後で使うとしたらどんなとき?」を書き出す
  • 一晩寝かせてから、翌日の自分がそのメモを見て判断する

という「ワンクッション」を入れてみてください。

これは、感情の高ぶりを少し落ち着かせ、
前頭前野にじっくり考える時間を与える
感情調整(emotion regulation) の一種で、
損失回避や衝動買いを弱める方法としても研究されています。

温存タイプ・浪費タイプ、それぞれのメリット/デメリット

最後に、それぞれのタイプの長所と短所を
ざっくり整理しておきます。

温存タイプ(ラストエリクサー寄り)

  • ✅ 良い点
    • 備えが手厚く、リスク管理が得意
    • 「いざというとき」のための余力を残しておける
  • ⚠ デメリット
    • 「結局使わないまま終わる」ことが増えやすい
    • 機会損失(チャンスを逃すこと)が増える

浪費タイプ(ポーション症候群寄り)

  • ✅ 良い点
    • 行動が早く、今を楽しむのが得意
    • 「使わなくて後悔」より「使ってスッキリ」が多い
  • ⚠ デメリット
    • 将来のピンチ用のリソースが足りなくなりがち
    • 財布・体力・時間が「常にカツカツ」になりやすい

どちらも一長一短であり、
「どちらが正解」というより、場面によって使い分けたい 2 つのモード
と考えるのがちょうどよさそうです。

ここまでで、「タイプ別にどう活かすか」という話をしました。

次の章では一度立ち止まって、
この現象についての よくある誤解や注意点 を整理しておきます。

7. 注意点や誤解されがちな点

病名ではなく、あくまでネットスラング

まず一番大事な点です。

  • ラストエリクサー症候群
  • エリクサー症候群
  • ポーション症候群

といった言葉は、どれも

ゲーム好きのあいだで自然に生まれた俗語(ネットスラング)

であって、
医学的な病名や公式な診断名ではありません。

雑誌記事やゲームメディアでも、
「実際の病ではありませんが…」と
断ったうえで紹介されることが多くなっています。

用語の意味は、人やサイトごとにかなり揺れている

すでに見てきたように、

  • ラストエリクサー症候群/エリクサー症候群
    → 「貴重なアイテムが使えない」温存タイプ
  • ポーション症候群
    → 「安いアイテムですら使えない節約タイプ」として使われることが多い
    → 一方で、本記事では便宜的に「浪費タイプ」のラベルとして使っている

というように、意味の使われ方はかなり揺れています。

そのため、

「この記事では、こういう意味で使います」

と明記しておくことが、とても大切です。

この記事もまさにその一例であり、
読者の方も「ここでの定義」と「一般的な使われ方」は
別物として意識してもらえると安全です。

自分や他人を責める材料に使わない

これも大切なポイントです。

ラストエリクサー症候群やポーション症候群は、
自分や友だちのプレイスタイルを
ちょっと笑いながら語るためのニックネーム
として生まれたものです。

  • 「お前、マジでエリクサー症候群だな!」
  • 「自分、完全にポーション症候群なんだよね〜」

というノリで使うのは楽しいのですが、
それをそのまま、

  • 「だから自分はダメなんだ」
  • 「あの人は浪費家だからダメだ」

という 自己否定・他者否定のラベル にしてしまうと、
本来のユーモラスな役割から外れてしまいます。

大事なのは、

「あ、自分にはこういうクセがあるんだな」
「じゃあ、どう付き合っていこうか?」

行動を工夫するきっかけ にすることです。

次の章では、少し肩の力を抜いて、
ゲーム文化の中で生まれた派生用語や海外の似た概念などを
「おまけコラム」として眺めてみましょう。

8. おまけコラム

派生スラングと世界の「ラストエリクサー」

「エリクサー病」「ハイポーション症候群」「フェニ尾症候群」など

日本のゲームコミュニティでは、

  • エリクサー病/エリクサー症候群
  • ハイポーション症候群
  • ポーション症候群
  • フェニ尾症候群(フェニックスの尾が使えない)

など、さまざまな派生スラングも見られます。

意味はそれぞれ微妙に違いますが、

「貴重なものに手をつけられない」
「安いものですらケチってしまう」

という “もったいない病” を
ユーモラスに表現している点は共通しています。

海外の「Too Awesome To Use」との比較

先ほど少し触れた
Too Awesome To Use という英語のトロープ(お約束)も、

  • あまりに強くてレアな武器やアイテムを
  • すごく大事にしすぎて
  • 最後まで使えない

という現象をまとめている点で、
ラストエリクサー症候群とよく似ています。

世界中のゲーマーが、

「強すぎると、かえって使えない」

という矛盾した感覚を共有している、というのは
なかなかおもしろいところです。

ここまでで、「言葉の遊び」としての側面も含めて、
この現象を眺めてきました。

次の章では、一度全体をまとめながら、
あなた自身の「レアアイテムとの付き合い方」を
どうとらえ直せるかを考えてみます。

9. まとめ・考察

あなたは何を大事にしたいタイプ?

ここまでの内容を、あらためてぎゅっとまとめると――

  • ラストエリクサー症候群 は、
    貴重なアイテムを「もったいない」と感じるあまり、
    ほとんど使えないまま終えてしまう現象(温存タイプ)。
  • (本記事での造語)ポーション症候群(浪費タイプ) は、
    レアアイテムであっても「今使ったほうが得」と考えて
    どんどん使ってしまうタイプ。
  • その違いの背景には、
    損失回避・所有効果・現在バイアスといった
    心のクセと、それを支える脳の働きがある。

どちらのタイプも、それ自体が「良い/悪い」ではありません。

  • 温存タイプは、「備え」と「余力」を大事にできる人
  • 浪費タイプは、「今の体験」と「行動の早さ」を大事にできる人

と考えることもできます。

大事なのは、

「自分はどんな場面でどちらのモードに入りやすいか?」
「そのクセを知ったうえで、どんなふうに使いこなしたいか?」

を、少しだけ意識してみることです。

たとえば、

  • 「お金はラストエリクサー寄り、
    スマホゲームの石はポーション寄り」

という人もいれば、

  • 「他人へのプレゼントはポーション寄り、
    自分への投資はラストエリクサー寄り」

という人もいるかもしれません。

どこで温存し、どこで使うのか。
そのバランスの取り方が、
あなたらしさそのもの、とも言えます。

――この先は、興味に合わせて。

次章では、
「自分の現象を自分の言葉で語れるようになる」ための応用編 として、
日常で使いやすいフレーズや考え方をまとめていきます。

さらに深く学びたい方のために、
そのあとの章では おすすめ書籍 も紹介します。

10. 応用編

自分の言葉で「ポーション症候群」を語ろう

ここからは少し肩の力を抜いて、
日常会話や SNS で使いやすい「語彙(ごい)」を増やしていきます。

自分のタイプをやわらかく表現するフレーズ集

そのままコピペしても使えるような言い方を並べてみます。

ラストエリクサー寄り(温存タイプ)の人向け

  • 「自分、完全にラストエリクサー気質なんだよね」
  • 「”とっておきモード” に入りやすいタイプです」
  • 「アイテムを飾って眺めるのが好きなコレクター系」

ポーション症候群(浪費タイプ)の人向け

  • 「レアアイテム即使用派です」
  • 「今楽になりたいポーション脳」
  • 「”あとで後悔するかも” より “今スッキリしたい” 優先タイプ」

どちらにも使える柔らかい表現

  • 「未来優先モード」と「今優先モードが切り替わる人」
  • 「貯めグセ強め」「使いグセ強め」

ラベルを少しユーモラスにしておくと、
自己否定ではなく「ネタ」にしやすくなります。

自分のクセを説明するテンプレート

会話やブログでそのまま使えるテンプレも置いておきます。

「ゲームだとラストエリクサー症候群だけど、
お金の使い方はポーション症候群(浪費タイプ)寄りです。
未来のために取っておきたい気持ちと、
今楽になりたい気持ちのバランスをいつも探してます。」

「ラストエリクサー症候群っぽいところがあって、
高い服やノートを ‘特別な日’ まで取っておきがちです。
最近は『今着てこそ価値がある』と思い直して、
意識して “一軍入り” させるようにしています。」

こうして言葉にしておくと、
自分の行動を客観的に眺めやすくなります。

小さな「セルフ振り返りワーク」

最後に、簡単なワークを 3 ステップで。

  1. 最近の「ラストエリクサー体験」「ポーション体験」を 1 つずつ書き出す。
  2. それぞれについて、
    「そのとき守りたかったものは何か?」(お金?時間?安心感?快適さ?)をメモする。
  3. 「次に似た状況が来たとき、同じ選択をするか?少しだけ変えるか?」を考えてみる。

この 3 ステップをやるだけでも、
「なんとなくのクセ」が
「自分で言語化できるパターン」へと変わっていきます。

ここまで読んで、
「もっとちゃんと理論から学んでみたい」と感じた方に向けて、
次の章では おすすめ書籍 を紹介します。

11.更に学びたい人へ

ポーション症候群を「ちゃんと理解したい」と思ったら

ここまで読んで、

「自分の“すぐ使っちゃうクセ”、もう少しちゃんと知りたいな」

と感じた方のために、行動経済学や「不合理な選び方」を学べる本を
4冊だけピックアップしました。

どの本も、

  • 「ラストエリクサー症候群」「ポーション症候群」という言葉そのもの
    を説明しているわけではありませんが、
  • その裏にある
    「今の快楽を優先してしまう」「損を過大評価してしまう」心のクセ

を理解するのに、とても役立つ本ばかりです。

レベル別にご紹介するので、
今のあなたに合いそうな一冊から、“知識のポーション” を飲むつもりでどうぞ。

① 小学生高学年〜中学生にもおすすめ
『天才デイビッドの大実験!ぼくたちが宿題をサボる理由』
(10歳からの行動経済学) ダン・アリエリー 他

こんな人におすすめ

  • 小学生高学年〜中学生
  • 親子で「心のクセ」を一緒に知りたい人

世界的な行動経済学者アリエリーが、
「宿題を後回しにする」「今の楽しさを優先してしまう理由」を、
主人公デイビッドの“実験”として物語風に教えてくれる入門書です。

「将来の自分より、今の楽しさを選ぶ」

という現在志向バイアスがテーマなので、
「あとで困るかもと思いつつ、今レアアイテムを使ってしまう」
ポーション症候群の感覚を、一番やさしく理解できる一冊です。

② マンガでざっくり全体像をつかみたい人へ
『マンガでわかる行動経済学』 川西 諭 監修 他

こんな人におすすめ

  • まずはマンガで全体像を知りたい
  • 「勉強」より「読み物」として楽しみたい大人

ほぼ全編マンガで、

  • 損失回避(損を過大評価するクセ)
  • アンカリング(最初の数字に引っぱられるクセ)
  • フレーミング効果(言い方で判断が変わるクセ)

などを、日常の「あるある」と一緒に紹介してくれます。

「なぜセール品や『今だけお得』に弱いのか?」がわかるので、
ゲームでレアアイテムやガチャ石をすぐ使ってしまう自分を、
お金や買い物のクセと結びつけて客観的に見直すきっかけになります。

③ 大人の入門〜中級編としてじっくり読みたい人へ
『予想どおりに不合理』
行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 ダン・アリエリー 著

こんな人におすすめ

  • 文字量があっても、面白ければ読み切れる
  • 「なぜ人はわざわざ損な選択をするのか?」に興味がある

「無料に弱い」「今だけお得に動かされる」「高いほうが効く気がする」など、
人間の“おかしな行動”を、ユーモラスな実験エピソードと一緒に紹介する名著です。

「あとで困るかも」と分かっているのに
「今の得・今の快適さ」を選んでしまう

というポーション症候群(浪費タイプ)の正体を、
買い物・仕事・ダイエット・恋愛など、
現実のさまざまな場面と重ねながら理解できる一冊です。

④ 本格的に「思考の仕組み」を学びたい人へ
『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』
ダニエル・カーネマン 著

こんな人におすすめ

  • 行動経済学・心理学をちゃんと学びたい
  • システム1/システム2を原典で理解したい

私たちの思考を、

  • システム1:速い思考(直感・即断)
  • システム2:遅い思考(熟考・慎重な判断)

の2つに分けて、「なぜ判断ミスが起きるのか」を解き明かす本です。

レアアイテムを前にした

「今ピンチだから今使おう!」

という感覚は、システム1(直感)寄りの判断。
「もっと後のボス戦まで取っておこう」というのは、システム2側の判断です。

この本を読むと、

「今すぐ使いたい自分」と
「あとで困るかもと心配する自分」

が、脳の中でどう役割分担しているのかが見えてきます。
ポーション症候群とラストエリクサー症候群を、
“性格の違い”から一歩進んで、思考の仕組みとして理解したい人向けの本です。

本を「棚のラストエリクサー」にしないで

ここで紹介した4冊も、
ある意味では知識のレアアイテムです。

「難しそうだから、時間ができたら読もう」
「せっかく買ったのに、もったいなくて読み始められない」

と温存してしまうと、本そのものがラストエリクサー化してしまいます。

どれか1冊でも「読んでみたい」と感じたなら、
それを今開いてみること自体が、

  • ポーション症候群(すぐ使っちゃうクセ)
  • ラストエリクサー症候群(温存しすぎるクセ)

の両方を、やさしく乗りこなしていくための
最初の一歩になるはずです。

どうか、本まで“とっておき”にせず、
ページを開くところまでを含めて、
あなた自身の新しい「実験」として楽しんでみてください。

12. 疑問が解決した物語

レアアイテムの前で、もう迷わないために

あの日から少し経った夜。
ユウマはスマホでゲーム記事を眺めていて、こんなタイトルを見つけました。

「ラストエリクサー症候群と、レアアイテムをすぐ使ってしまう人の心理」

「これ、オレらのことじゃん」

リンクを送ると、ミナトからすぐ返信が来ます。

「読んだ。オレ、完全にラストエリクサー症候群だわ」
「ユウマはポーション症候群(浪費タイプ)だな」

記事には、

  • 「もったいなくて使えない」のも
  • 「今すぐ使いたくなる」のも

どちらも人間なら自然な“心のクセ”だ、と書かれていました。

「オレ、ユウマに“浪費しすぎ”って思ってたけど、
 ただオレの“損したくない”が強かっただけかも」

「オレも“今使ったほうが得”って決めつけすぎてたかもな」

2人は、ちょっと照れながら笑いました。

その夜、2人は「アイテムの使い方ルール」を決めました。

  • レアアイテムは必ず1個は残す
  • でもラスダン以降は、ため込みすぎずちゃんと使う
  • 雑魚戦で全滅しそうなときは、命優先で使ってOK

「これなら、オレも安心して見てられるわ」
「オレも、なんでも即使用はやめてみる」

そうして、「ユウマ寄り」と「ミナト寄り」の中間点ができました。

数日後。
また2人で同じRPGを進めていると、長いダンジョンでピンチに。

「これ、やばくない?」

ユウマは少し悩んでから、レアアイテムを1個だけ使います。

「前のルールどおり、1つだけね。まだ1個残ってるし」

ミナトは、胸のモヤモヤが少し軽くなった気がしました。

ラスボス戦。
本当に追い込まれた場面で、今度はミナトが言います。

「……ここで、オレがエリクサー使うわ」

「おお、ミナトがついに!」

「だって、今が“ここぞ”でしょ」

ミナトがアイテムを選ぶ指先は少し震えていましたが、
使った後の顔は、とてもスッキリしていました。

プレイが終わったあと。
ユウマがしみじみと言います。

「“使いすぎ”でも“温存しすぎ”でもなくて、
 自分たちで決めたタイミングで使えたの、なんか気持ちよかったな」

ミナトもうなずきます。

「クセが分かると、ルールを工夫できるんだなって思った。
 オレは未来優先モード強め、ユウマは今優先モード強め。
 どっちもアリだけど、バランスが大事だなって」

2人の中で、「どっちが正しいか」よりも、

「自分がどんなクセを持っていて、
どう付き合うかを考えること」

のほうが大事になっていました。

この物語の教訓は、とてもシンプルです。

レアアイテムの使い方には、
たったひとつの正解よりも
「自分のクセ」と「自分なりのルール」が大事。

温存しすぎるのも、
すぐに使いすぎるのも、どちらも人間らしい反応です。

大切なのは、

  • 自分はユウマ寄り(今を楽しむポーションタイプ)なのか
  • それともミナト寄り(未来を守るラストエリクサータイプ)なのか

を知ったうえで、

「そのクセと、どう付き合っていきたいか?」

を少しだけ考えてみること。

さて、ここまで読んでくれたあなたは、
どんなタイプに近いでしょうか。

そして――
あなたなら、自分の“レアアイテム”をどんなルールで使ってみたいですか?

13.文章の締めとして

ここまで読み進めてくださったあなたは、
きっと「ゲームのアイテムの使い方」以上のものを、
どこかで感じ取ってくださっているのではないでしょうか。

レアアイテムをいつ使うか。
ポーションをどこまで温存するか。

それはそのまま、

  • お金をどこに使うか
  • 大事な時間や体力を、誰のため・何のために使うか

という、私たちの日常の選び方にもつながっています。

「ため込みすぎて使えない自分」も、
「その場のノリで使いすぎてしまう自分」も、
どちらもダメではなくて、どちらもあなたの一部です。

大事なのは、

「あ、いまラストエリクサー寄りになってるな」
「今日はポーション寄りの自分が強いな」

と、自分のクセに気づいてあげること。

そして、ユウマとミナトがそうしたように、
少しだけ「自分なりのルール」を決めてみることです。

  • 今日はちょっとだけ、今の自分のためにアイテムを使ってみよう
  • 逆に、今日はあえて未来の自分に残してあげよう

そんな小さな選択の積み重ねが、
あなたの人生というRPGを、少しずつ遊びやすくしてくれます。

もしこの記事が、
あなたの中の「もったいない」と「使ってみたい」のあいだを
ちょっとだけやさしくつなぐ、
小さな回復アイテムのような存在になれたなら、
これ以上うれしいことはありません。

注意補足

今回紹介した言葉は、いずれも公式な医学用語ではなく、
ゲームコミュニティで生まれた俗語です。
その中で記事の内容は、著者が個人で調べられる範囲で、
公開されている信頼できる記事・Wiki・心理学・行動経済学の解説をもとに、
私が現時点で理解できる範囲でまとめたものです。

心の動きや行動のクセについての研究は、
今も世界中でアップデートが続いています。
今後、新しい研究結果が出ることで、
ここでの説明がより細かく修正される可能性もあります。

また、ネットスラングの意味は、
コミュニティや時代によって変化していきます。

🧭 本記事のスタンス

この記事は、「これが唯一の正解」を示すものではなく、
「読者が自分のクセを知り、興味を持って調べるための入り口」
として書かれています。

もしこのブログで少しでも「ポーション症候群」に興味がわいたなら、
ここで知識を温存せず、
専門書や論文といった“上位ポーション”にもそっと手を伸ばして、
あなた自身のペースで学びのHPをじっくり深く回復させてみてください。

最後まで読んでいただき、

本当にありがとうございました。

どうかこれからは、自分をすり減らすポーション症候群ではなく、心と時間をじょうずに回復させる“いいポーション症候群”と一緒に、あなたの物語が進んでいきますように。

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