『スープの存在なんて頭にない人かもしれない』ミステリな食卓「苺のスープ」が教えてくれた“思い込み”を超える視点

葛井円の言葉

ミステリな食卓『苺のスープ』が教えてくれた“思い込み”を超える視点

はじめに：苺を煮る姿から広がる世界

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今回は「ミステリな食卓 美味しい謎解きアンソロジー 双葉文庫」に収録されている、近藤史恵さんの短編『苺のスープ』で印象的だった言葉をご紹介します。何気なく「苺を煮ている」光景から、私たちの視野が思いがけない方向に開かれるかもしれない……。そんな期待を胸に、作品の背景と心に響いたポイントをお伝えしたいと思います。

物語の概要：思い出をつなぐ苺のスープ

物語の主な登場人物は、奈良瑛子（ならえいこ）と、その後輩・中村あずさ（なかむらあずさ）、さらに瑛子の元同僚だった葛井円（くずいまどか）です。あずさが結婚を機に会社を辞めるかどうか迷っている姿を見て、瑛子は6年前の円とのやりとりを思い出します。カフェを開きたいという夢を抱いた円は、瑛子に相談と報告の末に退職。その後、とある店を訪れた瑛子は偶然にも円が営むカフェを見つけたのでした。
そして、あずさとその婚約者・蘇我正彦（そがまさひこ）を連れて円のお店を再訪した瑛子。円は蘇我の様子にどこか違和感を覚えます。後日、瑛子がひとりで店を訪れたとき、円は苺のスープを味見させながら、

こんな言葉を口にするのです。

『苺を煮てても、なにができるかはわからないですよね。ジャムかもしれないし、スープかもしれない。スープの存在なんて頭にない人かもしれない』

ミステリな食卓美味しい謎解きアンソロジー　双葉文庫　近藤史恵「苺のスープ」より引用

苺のスープが教えてくれる多角的な視点

一見、苺を煮る行為は「ジャム」を作るためだと思い込みがちですよね。でも、そこからスープが生まれるかもしれないという発想は、多角的な視点の大切さを教えてくれているのではないでしょうか。

自分の知識や経験だけでは答えは限られる

私たちは普段の生活で、無意識に「常識」や「経験」を基準に物事を判断しています。しかし、その常識が正しいかどうかを疑う機会は少ないものです。苺ジャムが当たり前と思っている人は、苺スープという選択肢にすら気づけないかもしれません。

知らない可能性を切り捨てない

もし「苺を煮る＝ジャム」と信じて疑わない人がいたら、「苺スープ」という存在は最初から想像の範囲外。こうした思い込みによって、新たな発見や真実に触れるチャンスを逃してしまうこともあるのではないでしょうか。

思い込みが生む危険性と対策

作中では、実際に苺を煮る場面を通じて、他人との関係や意図の読み取りにも通じる深いメッセージが描かれています。

「ウソはついていないけれど、本当のことも言っていない」

そんな状況に陥ると、自分が固く信じ込んでいる“常識”や“想定”が、逆に危機を見過ごす原因になるのかもしれません。

盲信しないで客観的な視点を持つ

疑いすぎるのも問題ですが、鵜呑みにしすぎるのも要注意です。特に詐欺や騙されごとに巻き込まれるとき、人は「自分に都合の良い解釈」ばかりをしてしまいます。
だからこそ、日常でも「もしかしたら別の考え方があるのかも？」と立ち止まって思考する姿勢を大切にしたいものです。

他者の意見を聞く耳を残す

自分が当たり前と思うことでも、ほかの人から見ると違う解釈があるかもしれません。そこで柔軟に意見を取り入れられれば、思わぬ気づきやチャンスをつかめることもあるのではないでしょうか。

ここからは私の想像ですが……
『苺のスープ』は謎解き要素のあるアンソロジー作品の一編ですが、実際に登場人物たちの「思い込み」が事件の鍵になっている可能性もあるのかもしれません（ここはあくまで私の推測です）。
人は、目の前の現象や行動に対して「これしかない」と思い込みやすい性質があります。作中では苺を煮る姿をきっかけに、その思い込みが如何に人間関係や人生の選択に影響を与えているかを暗示しているようにも感じました。

日常に活かすヒント：視野を広げるコツ

こまめに考えをアップデートする
新しい経験や知識に触れたら、自分の中の“常識”と照らし合わせてみましょう。そこにギャップがあるなら、新しい世界を受け入れるチャンスです。

積極的に違う世界を覗いてみる
自分の専門外のセミナーに参加する、全く興味がなかった本を読んでみるなど、意図的に視野を広げる行動をとりましょう。

他人の意見は自分の鏡になる
ときには周囲の人が指摘してくれる意外な視点こそが、思い込みの殻を破るきっかけになることがあります。

こうした視点を持つだけで、「苺を煮る＝ジャム」という固定観念を超えて、新しいアイデアや解釈が生まれるのではないでしょうか。

まとめ：苺を煮る先にある可能性

苺スープを象徴に、多角的に物事を見る大切さを教えてくれる『苺のスープ』。自分の常識だけでなく、他の可能性を排除しない心の柔軟性が大切だと改めて気づかされます。

もし本編を直接読んでみたい方は、ぜひ

ミステリな食卓
美味しい謎解きアンソロジー　双葉文庫

近藤史恵「苺のスープ」

を手に取ってみてください。

どんな謎や会話の中にも、あなたの想像を広げてくれる驚きが隠れているかもしれません。

最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

次回も、物語の言葉や行動に秘められたメッセージを掘り下げていきますので、ぜひまた遊びに来てくださいね。