隣の車が動いた瞬間に「自分の車が下がった?」と錯覚するのはなぜ?――動いていないのに動いた気がする現象『 ベクション(視覚誘導性自己運動感覚)』をわかりやすく解説します

考える

脳と前庭系、オプティックフローから解く“動いた気がする”錯覚。運転の安全確認とVR酔い対策も

隣の車が動いたのに、自分の車が下がった気がする…その正体は『ベクション』でした

✅代表例

駅で電車を待っているとき。
隣の電車が動き出した瞬間、なぜか 自分の電車が動いた気になって、思わず体がこわばる。
――あれ、ちょっと不思議ですよね。

✅ 5秒で分かる結論

お答えします。
それは 『ベクション(Vection』 という現象です。

動いていないのに、目の情報だけで 「自分が動いている」 ように感じてしまう、自己運動の錯覚です。

✅ 小学生でもスッキリ分かる説明

たとえば、映画でジェットコースターの映像を見ると、
体はイスに座ったままでも ヒュッ… ってなることがありますよね。

あれは、目が「すごいスピードで動いてる!」と脳に伝えるので、
脳が 「じゃあ自分も動いてるはず」 と勘違いするからです。

1. 今回の現象とは?

あるあるで“自分ごと化”

信号待ちで止まっているのに――
隣の車がスッ…と動いた瞬間、

「えっ、私の車が後ろに下がった!?」
と感じて、ブレーキを踏み直したことはありませんか。

この現象、実は かなり“あるある” です。
あなたの感覚が変なのではなく、脳の仕組みで説明できます。

✅ こんな「あるある」ありませんか?

  • 駐車場で、横の車が出ると「自分が動いた」と錯覚する
  • 大きな広告ビジョンやスクリーン映像で、体が前に引っ張られる感じがする
  • VR(ブイアール)で、体は止まっているのに「進んでいる」感覚がして気分が悪い

✅ キャッチフレーズ風の“よくある疑問”

  • 止まっているのに動いた気がするのはどうして?(ベクションとは?)
  • 目で見ただけで、体の感覚がだまされるのはなぜ?(ベクションとは?)
  • 隣の車が動くだけで、なぜ自分が動いた気になるの?(ベクションとは?)

✅ この記事を読むメリット

  • 運転中の「ヒヤッ」を減らす(焦りが小さくなる)
  • VR酔い・映像酔いの理由が整理できる(対策の方向性が分かる)
  • 「脳はなぜだまされるのか」をスッキリ理解できる(雑学としても面白い)

2. 疑問が浮かんだ物語

夕方、あなたは交差点の先頭で信号待ちをしていました。
ブレーキはしっかり踏んでいるし、エンジンの振動もいつもどおり。
なのに、目の前の空気だけが少し重くて、頭がふわっとしている――そんな疲れの残る時間帯です。

赤信号が長く感じられて、何となく視線が横に流れます。
右隣の車。その車が、音もなくスッ…と前へ動いた瞬間でした。

次の瞬間――
あなたの体が「ふわっ」と沈んだ気がしました。
お腹の奥が、エレベーターの下り始めみたいに軽くなる。
座席に押しつけられるような、引っ張られるような、言葉にしにくい“ずれ”が起きます。

「え、いま私、下がった……?」

一瞬で背中が冷たくなって、手に汗がにじみます。
視線がメーターに飛びます。速度はゼロ。
それでも、感覚だけが「動いた」と言い張ってくる。

「いや、でも……ちゃんとブレーキ踏んでる。踏んでるよね?」

足に力を入れ直して、ブレーキをもう一段深く踏み込みます。
カクン、と車体が沈む。
その“沈み”が、さらに自分の感覚を混乱させて、心臓がドクンと跳ねました。

落ち着いて外を見れば、停止線の位置は変わっていない気がします。
でも自信が持てません。
停止線が動かないように見えるのに、体の中では“後ろに流れた”感覚が残っている。

「なんで? 今の、確かに動いた感じがしたのに……」
「私、疲れてるから? それとも、車が勝手に下がった?」
「え、もし本当に下がってたら……後ろの車に当たってない?」

嫌な想像が一気に膨らみます。
ミラーをチラッと見るけれど、距離感がつかめない。
後ろの車のライトが妙に近く見える気までして、余計に焦ります。

そしてもう一度、横を見る。
隣の車は、もう少し先へ進んでいます。
その「動いていく景色」が目に入るたび、体がまたほんの少し引きずられるような感覚がする。

「何これ……自分の車、止まってるのに……」
「どうして目で見ただけで、体の感覚まで変わるの?」
「こんなこと、みんなもあるの? 私だけ?」

不思議さが怖さに変わりそうになる一方で、
心の奥にはもうひとつの感情が芽生えます。

――これ、理由があるはずだ。
――ただの気のせいじゃなくて、名前がつくくらい“よくある現象”なのかもしれない。

「もし仕組みが分かったら、次から落ち着けるかもしれない」
「運転中に焦るのは危ない。だから、ちゃんと知りたい」

そう思ったとき、ふと浮かぶんです。
“動いてないのに動いた気がする現象”には、きっと名前があるって。

次で、答えをハッキリ出して、安心できる形にします

3. すぐに分かる結論

お答えします。
その正体はベクション(Vection)』 です。

ベクションは、簡単に言うと――
目から入る「動きの情報」が強いと、体が動いていなくても“自分が動いた気”になる現象です。

そして大事なのは、これが単なる「バグ」ではなく、
ふだん私たちが世界を理解するための“正常な知覚の一面” だと説明されている点です。

✅ ここまでの疑問に、いったん答えをまとめます

  • 隣の車が動いたのに、自分が動いた気がした理由
    → 視界の動きが脳に「自己運動」を連想させ、錯覚が起きたからです。
  • 止まっているのに気分が悪くなることがある理由
    → 現実では自己運動の判断に、視覚だけでなく 前庭覚(ゼンテイカク:内耳のバランス感覚) なども関わります。
    VRなどで視覚だけが強く動くと、感覚の組み合わせがズレて不快感につながる可能性があります。

ここから先は深掘りですが、先に「よくある疑問」をまとめて解決します。
気になるところだけ開いて読んでください。

3.5 よくある質問(まずここだけ読めばOK)

ここから先は深掘りですが、先に“よくある疑問”をまとめて解決します。気になるところだけ読んでください。

よくある疑問

Q1. ベクションって結局ひとことで何ですか?
A. 体は止まっているのに、視界の動きが強いせいで「自分が動いた気がする」自己運動の錯覚です。

Q2. 「視覚誘導性自己運動感覚」って、ベクションと同じ意味ですか?
A. はい、同じ内容を指す日本語表現として使われます。
「視覚(目)」に誘導されて「自己運動(自分が動く感じ)」が生まれる、という意味です。

Q3. 隣の車が動いただけで、なぜ自分が動いた気になるんですか?
A. 目に入る景色が大きく動くと、脳がそれを「自己運動の手がかり」と解釈してしまうことがあるからです。特に視界が広く動いた瞬間は起きやすいです。

Q4. 止まっているのに気分が悪くなるのはなぜ?
A. 視覚は「動いている」と言っているのに、前庭系(ぜんていけい:内耳のバランス感覚)が「加速度はない」と感じると、感覚の食い違いが起きて不快感につながることがあります(個人差があります)。

Q5. その場で一番安全な対処法は?(運転中)
A. まずブレーキを維持して「停止」を確保し、停止線・信号機など動かない基準を見て、メーターとミラーで確認します。焦って踏み直しや急操作をしないのが大切です。

Q6. 坂道で本当に下がっているのと、錯覚の見分け方は?
A. 速度計(0かどうか)と、停止線・標識など動かない基準、ミラーで距離を確認します。錯覚でも実際の動きでも、確認手順は同じでOKです。

疑問がほどけたところで、次は「ベクションとは何か」を定義からきれいに整えます。
ここから先は、知るほど面白くなるパートです。

次の章では、「ベクションとは何か」を“定義”から、もっと正確に深掘りしていきます。いっしょに解像度を上げましょう

4. 『ベクション』とは?

定義と概要

まず1分で要点まとめ

  • 『 ベクション(Vection)』は、主に「周囲の映像が大きく動く」ことで、体は止まっているのに“自分が動いた感覚”が出る現象です。
  • よくある例が、電車の待ち合わせで隣が動いた瞬間に、自分が動いた気がする“トレイン・イリュージョン”です。

※ベクションは日本語で 『視覚誘導性自己運動感覚(しかくゆうどうせい じこうんどうかんかく)とも呼ばれます。
「目(視覚)の情報に誘導されて、自分が動いているように感じる」現象です。

…ここから先は「なるほど」で終わらせず、“なぜそう感じるのか”を、定義→歴史→研究で解像度を上げます。

定義 ベクション「自己運動(じこ うんどう)の錯覚」

学術的には、ベクションは多くの場合
**「静止している観察者が、視覚刺激(特に広い視野の動き)によって自己運動を感じる錯覚」**として扱われます。

ただし近年は、視覚だけに限らず、音や触覚などでも“自己運動っぽさ”が強まることが知られており、「主観的な自己運動体験」という広い意味でも使われます。

【種類】回る?進む?—ベクションにもタイプがある

よく出てくる分類はこの2つです。

  • サーキュラー・ベクション(Circular Vection:回転)
    ぐるぐる回るように“自分が回っている”感覚。回転ドラム実験が代表例です。
  • リニア・ベクション(Linear Vection:直線移動)
    前進・後退しているような感覚。VRや映像酔いで問題になりやすいタイプです。

※ちなみに「運動残効(モーション・アフターエフェクト)」は、ベクションとは別の現象です。
運動残効は「動く映像を見た“あと”に、止まったものが逆向きに動いて見える」錯視。
一方 サーキュラー・ベクションは「映像が回っている“最中”に、自分が回っているように感じる」自己運動の錯覚です。

【名前の意味】「ベクション」って何語?

「vection」は、ラテン語の vectio(運ぶ/運搬の行為) に由来すると説明されています。
つまり言葉の発想としては、
“自分が運ばれているように感じる” が芯です。

【由来と歴史】いつから知られていたの?

ベクションは、VRが生まれてから突然出てきた概念ではありません。

  • 19世紀に Mach(マッハ) が回転ドラムのような刺激で自己運動感覚が起こることに触れています。
  • 1920〜30年代には、フィッシャー(Fischer)ヴォダック(Wodak)(1924)、およびフィッシャー(Fischer)コルンミュラー(Kornmüller)(1930)らが、自己運動感覚に関する記述の中で 「Vektionen(ヴェクツィオーネン)」 という語を用いています(当時は「実際の運動」か「錯覚」かの区別が、現代ほど整理されていませんでした)。
  • 日常例として有名な“電車の錯覚”は、William James(ウィリアム・ジェームズ)が1890年の著作で触れたとされます。

つまり、ベクション
**「昔から人が体験していたのに、後から名前と研究が追いついた現象」**なんです。

次は、研究者がどうやってこの現象を“実験で確かめたのか”へ進みます。

【代表研究】どうやって実験するの?(方法と結果のイメージ)

ベクション研究でよく使われるのが、次のような装置・条件です。

実験の典型:回転ドラム(縞模様)/大型スクリーン

  • 被験者は椅子に座って動かない
  • 視野いっぱいに、縞模様やオプティックフロー(後述)がぐるぐる/流れる
  • しばらくすると、最初は「壁が動いてる」に見えていたのが、
    **「壁は止まってて、自分が回ってる」**感覚へ反転していきます(これが強いベクション)。

この種の研究は1970年代以降に体系化され、視覚刺激で自己回転が誘発される現象が実験的に扱われてきました。

何を測るの?

最近のレビューでは、ベクションを測る指標として例えば次が整理されています。

  • 感じ始めるまでの時間(潜時:せんじ)
  • 強さの主観評価(どれくらい動いた気がしたか)
  • 持続時間(どのくらい続いたか)
  • 行動指標(例:自分が止まったと感じるよう“調整”させる)など

ここまでで「定義・歴史・研究の枠組み」が揃いました。
次は読者が一番知りたい “なぜ脳がだまされるのか” に入ります。

5. なぜ注目されるのか?

背景・重要性

結論から言うと:脳は「世界が動いたのか/自分が動いたのか」をいつも推理している

あなたが信号待ちで「下がった?」と感じた瞬間、脳内では実は、こういう二択が起きています。

  • A:隣の車(世界)が動いた
  • B:自分(自己)が動いた

この判断に強く効くのが、視覚情報です。特に、等速運動(ずっと一定の速さ)では、身体の加速度センサー(前庭:ぜんてい)が頼りにくくなるため、視覚が重要になると説明されています。

キーワード1:オプティックフロー(Optic Flow:視野全体の“流れ”)

**オプティックフロー(オプティック・フロー)**とは、
自分が前に進むときに、景色が後ろへ流れていくように見える 「視野全体の動きのパターン」 のことです。

この考え方を心理学の中で大きく整理した人物が、
視覚心理学者 ジェームズ・J・ギブソン(James J. Gibson/ジェームズ・ジェローム・ギブソン) です。

ギブソンは、人が移動するときの視覚情報に強い関心を持ち、
とくに 航空機の着陸のような「動きながら正確に判断する場面」 を研究する流れの中で、
視野に広がる動きの法則性(=オプティックフロー)が、自己運動を知る大きな手がかりになる、と考え方をまとめていきました。

ここで重要なのは、脳が
「オプティックフローが強い=自分が動いている可能性が高い」
という経験則を持っている(=そう解釈しやすい)点です。

だからこそ、VRや大型スクリーンのように“視界の動き”が強いと、
体が止まっていても 「自分が動いている感覚」(自己運動感覚)が立ち上がりやすくなります。
この流れが、ベクション(Vection)の理解につながっていきます。

(次は、この「視覚」と「前庭(ぜんてい)=内耳のバランス系」が食い違うと何が起きるのか、もう一段深く見ていきましょう。)

キーワード2:前庭覚(ぜんていかく)との“ズレ”が、気持ち悪さを生む

前庭系(ぜんていけい:内耳にあるバランスの器官)は、頭の動き(回転や直線の加速度)を感じ取ります。
つまり、視覚が「動いてる!」と言っているのに、前庭系が「加速度はないよ?」と言うと、脳が混乱して違和感(酔いっぽさ)につながることがあります。

この“感覚の食い違い”が、**映像酔い/VR酔い(サイバーシックネス)**の背景として語られることが多いです。

どの脳部位が関わるの?(分かる範囲で正確に)

神経科学の研究では、ベクション時に

  • 視覚の運動処理(例:MT/V5などの運動関連領域)
  • 前庭関連の皮質(例:PIVC:パリエト・インスラー・ベスティビュラー・コーテックス=頭頂‐島皮質前庭野)

などが関わる可能性が示されています。

有名なPET(ペット:陽電子放出断層撮影)研究では、視覚刺激でベクション(自己回転している感覚)が起きているとき、視覚の運動を処理する領域は活発になる一方で、前庭皮質の中核候補である PIVC(ピーアイブイシー/頭頂葉‐島前庭性皮質) の活動は 低下(ディアクティベート:反応が弱まる) することが報告されました。
この結果から、視覚系と前庭系が互いの信号を“強めすぎないよう抑え合う(相互抑制)” ことで、「世界が動いたのか/自分が動いたのか」を脳が整理している可能性が提案されています。

めちゃくちゃ噛み砕くと:
「いまは目の情報を信じるぞ」モードになると、前庭側の声が小さくなる
……みたいなイメージです(もちろん単純化です)。

キャッチフレーズの疑問に、ここで答えます

  • 止まっているのに動いた気がするのはどうして?
    → 視界全体の動き(オプティックフロー)が強いと、脳が「自己運動」と解釈してしまうからです。
  • 目で見ただけで、体の感覚がだまされるのはなぜ?
    → 自己運動の判断は、視覚・前庭など複数の感覚を統合して行われ、等速運動などでは視覚が重要になるとされるからです。
  • 隣の車が動くだけで、なぜ自分が動いた気になるの?
    → “動いたのは世界か自分か”の判定が一瞬ぶれると、自己運動側に転びやすい状況があるからです(視覚優位)。

次は、ここまでの理解を「生活でどう使う?」に落としていきます。
→次章:運転・VR・日常での応用例へ。

6. 実生活への応用例

今日から使える

ここは“知識で終わらせない章”です。焦り・酔いを減らす方向に繋げます。

運転中の「ヒヤッ」を減らすコツ

信号待ちの錯覚は、怖いのが普通です。だから対策は「根性」ではなく、視覚の扱い方で整えます。

✅ すぐできる3つ

  • 停止線・信号機・看板など「固定点」を1つ決めて見る
    → 視界が流れにくくなり、自己運動の錯覚が起きにくくなります(イメージとして)。
  • 体調が悪いときほど“起きやすい”と知っておく
    → それだけでパニックが減ります(経験的にも合理的にも大事)。
  • 「今のはベクションだ」と言語化する
    → 脳の解釈を落ち着かせる“ラベル付け”として有効です(危険運転を避ける目的)。

※実際に車が動いている可能性がゼロではないので、ミラー確認は安全のためにやってOKです。

VR(ブイアール)・映像で気分が悪くなる人へ(軽減の方向性)

ベクションは「臨場感」も作りますが、強すぎると酔いの要因になりえます。

✅ 体験者向け:ラクになる調整

  • 視界の動きが強い映像は、短時間→休憩→再開のリズムにする
  • 可能なら 視野角(FOV)を少し狭める/急加速シーンを減らす
  • 画面のどこかに 固定の目印(UIや枠) があると落ち着きやすいことがあります(視覚の基準点)。

“使えるベクション”もある(リハビリ・研究)

視覚刺激(オプティックフロー)を用いた研究は、自己運動や姿勢制御の理解に関わっており、応用研究も進んでいます。

ここは断定しませんが、少なくとも
**「視覚の流れが、身体の制御に影響する」**という方向性は、多分野で重要視されています。

メリットとデメリット(正直に)

メリット

  • 臨場感・没入感が上がる(VR、アトラクションなど)
  • 自己運動知覚の研究が進む(知覚・神経科学)

デメリット

  • 強すぎると不快感・酔いにつながりうる
  • 運転など安全が絡む場面では、焦りが事故リスクに繋がる可能性がある(だから“知っておく”価値が高い)

次は、誤解されがちなポイントを整理して「不安」を潰します。
→次章:注意点と誤解へ。

7. 注意点や誤解されがちな点

ここで安心してOK

誤解1:ベクション=病気?

違います。日本心理学会の解説でも、ベクションは「錯覚というより、日々の正常な知覚の一側面を反映する」と説明されています。

ただし、体調や個人差で「強く出る/酔いやすい」は起こりえます。

誤解2:「見えたもの」が100%正しいと思ってしまう

ベクションが怖いのは、感覚がリアルだからです。
でも現実には、自己運動の判断は 複数感覚の統合で成り立っていて、視覚が強いと判断が偏ることがあり得ます。

誤解3:似た現象との混同(ここは大事)

  • ベクション:自分が動いた感覚
  • 誘導運動(induced motion):対象物が動いたように見える錯覚

似ていますが、主役が違います。混同すると説明がズレやすいので注意です。

注意:体調不良が強いときは無理しない

VRや映像で吐き気・めまいが強い場合は、まず休憩し、続く場合は医療機関へ。
この記事は医療判断の代替ではありません(安全のために明記します)。

最後に、誤解されやすい点と注意点をQ&Aで整理します。
ここを読むと、安心してベクションを捉えられるようになります。

7.5 誤解しやすいポイントQ&A(不安をここで解消)

不安になりやすいポイントをQ&Aで整理します。安心して読み進めてください。

ポイントQ&A

Q7. ベクションは病気ですか?
A. 病気そのものというより、知覚のしくみから起きうる現象として扱われます。ただし、強いめまい・吐き気が続く場合は無理せず休み、必要なら医療機関へ相談してください。

Q8. ベクションと「運動残効(モーション・アフターエフェクト)」は同じ?
A. 同じではありません。
運動残効は「動く映像を見た“あと”に、止まったものが逆向きに動いて見える」現象です。ベクションは「見ている最中に、自分が動いた気になる」現象です。

Q9. ベクションと「誘導運動(インデュースド・モーション)」の違いは?
A. 誘導運動は「物が動いて見える」錯覚、ベクションは「自分が動いた気になる」錯覚、という主役の違いで整理すると分かりやすいです。

Q10. サーキュラー・ベクション/リニア・ベクションって何が違う?
A. サーキュラーは「自分が回転している」感覚、リニアは「前進・後退している」感覚です。どちらも自己運動の錯覚(ベクション)です。

Q11. 「オプティックフロー」って何ですか?
A. 自分が移動したときに、視界の景色が流れていくように見える“視野全体の動きのパターン”です。これが強いと、ベクションが起きやすくなります。

Q12. PIVCってどこで、何をしている場所ですか?
A. 脳の中で前庭(バランス)情報に関わるとされる領域候補のひとつです。研究では、視覚刺激で自己運動感覚が強いときに、活動が下がる(ディアクティベートされる)報告があり、視覚と前庭が影響し合う可能性が議論されています。

Q13. ベクションは世の中でどう使われていますか?
A. VRや大型映像、アトラクションなど「動いた体験」を作る分野で重要です。うまく使うと没入感が上がります。

Q14. 悪用される危険性はありますか?
A. 極端に強い映像表現を長時間見せて不快感を起こす、注意を奪って判断を鈍らせる…などのリスクは考えられます。体調が悪くなる演出は無理せず離脱し、休憩するのが基本です。

Q15. 研究はもう決着がついている現象ですか?
A. まだ深掘りが進んでいる分野です。定義や測り方、脳内メカニズムなど、研究が積み重なってアップデートされ続けています。

ここまで押さえれば、ベクションを安心して語れる土台は完成です。
次は、ちょっと楽しい角度から“ベクションの面白さ”を増やします。
→次章:おまけコラムへ。

8. おまけコラム

ベクションは「エンタメの演出」にも潜んでいる

ベクションは、研究室だけの話ではありません。

日本の解説記事でも、ベクションを誘発する演出が

  • 紅白歌合戦での演出(例として紹介)
  • テーマパークのライド体験
    などで触れられています。

なぜエンタメがベクションを使うのか?
それは単純で、
**「体が動かなくても“動いた体験”を作れる」**からです。
映像だけで心拍が上がったり、足がすくむ感じがしたり…あれがまさに狙いです。

家でできる“安全な”ミニ実験(無理しない範囲で)

  • 画面いっぱいに流れる映像(流れる雲、道路、宇宙トンネル系)を見て、
    「自分が動く感じ」が出るかだけ観察してみる
  • 気分が悪くなったら即中止
  • 目線の固定点を作るとラクになるかも観察

次は、記事全体をまとめつつ、ちょっと深い考察で読後感を作ります。
→次章:まとめ・考察へ。

9. まとめ・考察

まとめ(要点だけ)

  • ベクションは、視覚情報で自己運動を感じる錯覚/体験です。
  • 等速運動などでは前庭だけでは自己運動を検出しにくく、視覚が重要になると説明されています。
  • 脳内では視覚‐前庭の相互作用が示唆され、PIVCの活動低下などの報告もあります。

少し高尚な見方

ベクションが教えてくれるのは、
**「私たちの感覚は“世界の実況”ではなく、“最もそれっぽい解釈”」**だということです。
脳は、現実をそのまま映す鏡というより、編集者に近いんですね。

ちょっとユニークな見方

もし脳が喋れたら、信号待ちでこう言っているかもしれません。

「視界が動いた。
たぶん…君が動いたってことにしておくね(暫定)」

この“暫定判断”が、あなたを焦らせることもあれば、
VRでは臨場感としてワクワクをくれることもあります。

あなたなら、この性質をどう扱いますか?
「怖い」で終わらせず、**“知って落ち着く”**に変えられるのが、ベクション記事の価値だと思います。

ここまでで、
「止まっているのに動いた気がする」正体が ベクション(視覚誘導性自己運動感覚) だと分かりました。

――でも、実はここからが“おもしろい所”です。

世の中には、
ベクションに似ているのに、仕組みが少し違う錯覚がたくさんあります。

この先は、興味に合わせて 応用編 へ。
「似た言葉」を増やして、日常で起きた不思議を 自分の言葉で説明できるようになりましょう。

では次で、混同しやすい現象をスッキリ整理します。

10. 応用編

似ている現象・間違えやすい言葉

最初に“覚え方”だけ言うと、こうです。

  • ベクション:自分が動く錯覚(自己運動)
  • 誘導運動:周りの動きにつられて、対象が動く錯覚
  • 運動残効:見続けた“あと”に、逆方向に動くように見える
  • コリオリ錯覚:回転中に頭を動かして、前庭系が混乱する(航空の注意点で有名)

ここから、それぞれを「ベクションと何が違うの?」で整理します。

誘導運動(ゆうどううんどう):周りの動きが“主役”をすり替える

**誘導運動(インデュースド・モーション)**は、
背景など「周り」が動くことで、本当は静止しているものが動いて見えるタイプの錯覚です。

たとえば、

  • 雲が流れると、月が逆方向に動いたように見える
  • 電車の窓の外が動くと、止まっている側が動いた気がする(体験として“あるある”)

ベクションとの違いはここです。

  • 誘導運動:主に「物が動いた」と感じやすい
  • ベクション:主に「自分が動いた」と感じやすい

※現実の体験では、両方が“混ざって感じられる”こともあります。だからこそ、言葉を知ると整理しやすいです。

次は「見たあとに起きる」別タイプを見ます。

運動残効(うんどうざんこう):見続けた“あと”に起きる、逆向きの動き

運動残効(モーション・アフターエフェクト)は、
ある方向に動く映像をしばらく見たあと、止まっているものが逆方向に動いて見える
現象です。

有名なのが「滝の錯視(ウォーターフォール・イリュージョン)」で、
流れる滝を見たあと、岩や木が“上に動く”ように見える、あれです。

ベクションとの違い

  • 運動残効:目や脳が“動きに慣れた反動”で、対象が動いて見える
  • ベクション:今まさに視界が動いて、自分が動いた気になる

「回るベクション」と混ざりやすいので、次で回転系の注意も入れます。

サーキュラー・ベクション/リニア・ベクション:回る?進む?

ベクションにも“タイプ”があります。

  • サーキュラー・ベクション(サーキュラー=円の)
    自分が 回転している ように感じるタイプ
  • リニア・ベクション(リニア=直線の)
    自分が 前進・後退 しているように感じるタイプ

ここでのポイントは、どちらも「自己運動(自分が動く)」の錯覚だということ。
一方、運動残効は「見たあとに、対象が動く」です。

では次に、「体調が悪くなる話(VR酔い)」とつなげます。

サイバーシックネス(VR酔い):感覚がケンカすると気持ち悪くなる

VRなどで気分が悪くなる現象は、研究文脈では VE酔い として扱われてきました。
近年は サイバーシックネス(サイバー=仮想環境の、シックネス=体調不良)として語られることも多いです。

ここで起きやすいのが、
視覚(目) は「動いてる!」と言うのに、
前庭(ぜんてい:内耳のバランス系) など他の感覚が「動いてないよ?」と言って食い違うことです。
このズレが不快感の要因になりうる、という考え方がよく使われます(※個人差あり)。

次は、ここまでの知識を「実際に学ぶ・体験する」方向へつなげます。

章まとめ(1行で整理

  • ベクション=自分が動く錯覚
  • 誘導運動=周りにだまされて物が動く錯覚
  • 運動残効=見た“あと”に逆向きに動く錯覚

――この整理ができると、日常の「なんで?」が一気に言語化できます。

では次に、もっと深く学びたい人向けに、本・縁の地・体験できる場所をまとめます。

11. さらに学びたい人へ

ここからは、ベクションを「知識」で終わらせず、
自分の言葉で説明できるレベルまで引き上げたい人向けです。

✅ おすすめ書籍
① 初学者・小学生にもおすすめ:まず“体験”で腑に落ちる
『作ってふしぎ!? トリックアート工作』北岡 明佳(監修)/グループ・コロンブス(著)

  • 特徴:錯視(さくし=見え方の勘違い)を、実際に“作って”体験できる工作本です。エイムズの部屋、不可能立体、色の錯視なども扱います。
  • おすすめ理由:ベクションそのものの専門書ではないですが、「目の情報だけで脳が簡単にだまされる」感覚を、いちばん安全に・楽しく掴めます。自由研究にも向きます。

② 中級者向け:知覚を“体系”で理解したい
『感覚・知覚心理学(シリーズ心理学と仕事 1)』行場 次朗(編集)ほか

  • 特徴:感覚・知覚を、心理学として整理しつつ、安全性や快適性、日用品、食品、アートやエンタメなど生活の文脈にもつなげて解説する構成です。
  • おすすめ理由:「ベクション=おもしろい現象」で止めず、なぜ人の知覚はそう働くのかを、他の知覚現象と比較しながら理解できます。

③ 全体におすすめ:ベクションに“直で触れる”入門書
『脳は、なぜあなたをだますのか──知覚心理学入門』妹尾 武治

  • 特徴:筑摩書房の内容紹介でも、ベクションを入口にして、脳と心の仕組みを解説する本だと明記されています。
  • おすすめ理由:この記事の読者にとって一番「続きが読みやすい」本です。
    ベクションの理解を起点に、知覚心理学全体へ自然につながります。

④ 全体におすすめ:人間の“見落とし”まで一気に広げたい
『錯覚の科学(文春文庫)』クリストファー・チャブリス/ダニエル・シモンズ(木村 博江 訳)

  • 特徴:文藝春秋の紹介では、記憶のウソ、認知の歪み、理解の錯覚などを、実験をもとに明らかにする科学読み物としてまとめられています。
  • おすすめ理由:ベクションは「動きの錯覚」ですが、この本は一歩進んで、
    **“人はなぜ見えているのに気づけないのか”**まで視野を広げられます。

次は、実際に“体験”で理解が深まる場所を紹介します

✅ 体験できる場所
日本科学未来館(お台場)

  • 特徴:科学技術を「展示」で体験できるミュージアムです。公式サイトでも、シンボル展示「ジオ・コスモス」などの展示が案内されています。
  • おすすめ理由:ベクションは「感覚の統合」がテーマなので、未来館のように“体験型”の場に行くと、知識が身体感覚と結びつきやすいです。

東京トリックアート迷宮館(お台場)

  • 特徴:公式サイトで、江戸をテーマにした和風のトリックアートが楽しめる体験型美術館と紹介されています(デックス東京ビーチ内)。
  • おすすめ理由:ベクションと同じく「目の情報で世界が変わる」を体感できます。
    写真を撮りながら体験できるので、家族・友人とも行きやすいです。

ここまで読めば、あなたはもう「ベクション」を知っている人ではなく、
**“似た現象と区別しながら語れる人”**になっています。

次は、記事の結びとして「疑問が解決した物語」で、最初の不安をきれいに回収していきましょう。

12.疑問が解決した物語

数日後。
夕方の帰り道、あなたはまた同じ交差点の先頭で信号待ちをしていました。
ブレーキを踏む足の感覚、エンジンの微かな振動、窓の外の空気の重さ――あの日と同じです。

赤信号が長く感じられて、視線がふっと横に流れます。
右隣の車が、音もなくスッ…と前へ動いた瞬間。

また来た。
体が「ふわっ」と沈むあの感じ。
お腹の奥が軽くなって、背中が冷える、あの“ずれ”。

でも今回は、心臓が跳ねる前に、頭の中で言葉が先に立ちました。

(これは……ベクションだ)
(目の情報が強くて、自分が動いた気がするだけかもしれない)

あなたは反射で踏み増しそうになったブレーキを、ぐっと“維持”します。
踏み直さない。焦って操作しない。
そして、停止線の白を見て、信号機を見て、メーターを見ます。速度はゼロ。

ミラーも一度だけ確認して、後ろの車との距離を落ち着いて確かめました。
大丈夫。動いていない。ぶつかっていない。

次に、視線をゆっくり戻して深呼吸します。
隣の車は前へ進んでいく。
視界の「流れ」だけが強くて、脳が一瞬“自分の動き”と勘違いした――それだけのこと。

そう理解できた瞬間、
あのリアルな恐怖が、少しだけ“現象の説明”に変わりました。

「私の感覚が壊れたわけじゃない」
「脳が、世界と自分のどちらが動いたかを急いで判断しただけ」

あなたは、ブレーキを踏み続けながら、心の中で小さくうなずきます。
焦らないでいい。
まず止まる。次に確認する。
そして「これはベクションかも」と言葉にする――それが自分の安全スイッチになる。

青信号に変わり、あなたは落ち着いて発進しました。
いつもより視界が静かに感じられて、
「知っているだけで、人はこんなに落ち着けるんだな」と、少しだけ自分を誇らしく思います。

教訓
不思議な感覚は、知らないと怖い。
でも、名前と仕組みが分かると――“対応”に変わる。
ベクションを知ったあなたは、次から「焦って操作する危険」をひとつ減らせます。

最後に、あなたに聞かせてください。
もしまた同じ錯覚が起きたとき、あなたはどうしますか?
「止まる→確認する→言葉にする」――あなたなりの安全ルール、作ってみませんか。

13.文章の締めとして

ここまで読んでくださったあなたは、もう「不思議で怖いだけの感覚」を、ただの気のせいで片づける必要はありません。
信号待ちでヒヤッとした瞬間も、駅のホームでゾワッとした瞬間も、あなたの脳が真剣に「自分の位置」を守ろうとした結果だった――そう思えるだけで、次の一瞬は少しやさしくなります。

ベクションは、なくすための知識というより、落ち着くための言葉です。
「あ、今のはベクションかもしれない」
そう言えた瞬間、感覚に振り回される側から、感覚を見守る側に立てます。

今日からは、あなたの毎日に起こる小さな“ずれ”を、少しだけ丁寧に観察してみてください。
その気づきは、運転の安全にも、VRの快適さにも、そして自分自身への安心にもつながっていきます。

補足注意

本記事は、作者が個人で調べられる範囲の信頼できる情報をもとにまとめたもので、見方や解釈には他の考え方もあり、この内容がすべての正解ではありません。
また研究が進むことで、説明の更新や新たな発見によって見解が変わる可能性もあります。

🧭 本記事のスタンス
この記事は「これが唯一の正解」ではなく、「読者が自分で興味を持ち、調べるための入り口」として書いています。

このブログで「ベクション、もっと知りたい」と感じたなら、ぜひ一歩だけ先へ進んでみてください。
視界に流れが生まれると、体は動いていなくても心が動き出す――ベクションは、そんな“知覚の奥”への入り口です。

この先は、文献や資料というもう少し深い景色の中で、あなた自身の好奇心にベクションされながら確かめてみてください。

最後まで読んでいただき、

本当にありがとうございました。

それでは、あなたの毎日が“いい方向へベクションする”時間になりますように。

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