性格は誰が研究し、どのように心理学として発展してきたのでしょうか。オールポート、キャッテル、コスタ&マクレー、ブシャールの研究を通して、ビッグファイブ、双子研究、遺伝と環境の関係まで、性格心理学の歴史をやさしくたどります。

オールポート、キャッテル、コスタ&マクレー、ブシャールから学ぶ性格心理学の歴史
代表例
「性格って誰が考えたの?」
学校の授業や本で、
「ビッグファイブ」
「パーソナリティ」
「性格は遺伝と環境で決まる」
という言葉を見たり聞いたりしたことはありませんか?
でも、ふとこんな疑問を持ったことはないでしょうか。
「そもそも、性格って誰が研究し始めたんだろう?」
「どうして『性格』を科学で調べようと思った人がいたんだろう?」
今では当たり前のように使われている「性格」という考え方。
実は、その裏には100年以上にわたって「人はなぜ違うのか」という謎に挑み続けた心理学者たちの研究があります。

今回の記事では、「性格」という目に見えないものを解き明かそうとした代表的な心理学者たちを紹介しながら、現在の心理学につながる歴史を一緒にたどっていきましょう。
5秒で分かる結論
現在、私たちが考える「性格」の多くは、一人の心理学者が作ったものではありません。
多くの研究者たちが、およそ100年以上にわたって研究を積み重ねた結果、少しずつ形づくられてきた考え方です。
特に、
- ゴードン・オールポート(性格とは何かを体系的に整理)
- レイモンド・キャッテル(性格を科学的に測ろうとした)
- ロバート・マクレーとポール・コスタ(ビッグファイブを完成)
- トーマス・J・ブシャール(双子研究から遺伝と環境を研究)
この4人は、現代の性格心理学を語るうえで欠かせない代表的な心理学者です。

小学生にもわかるように言うと
たとえば、ゲームを思い浮かべてみてください。
今遊んでいるゲームも、一人だけで作られたものではありません。
ある人がアイデアを考え、
ある人がキャラクターを作り、
ある人が音楽を作り、
ある人が最後に完成させています。
「性格」の研究も、それとよく似ています。
最初に「性格って何だろう?」と考えた人がいました。
そのあと、「どうやって調べればいいのかな?」と考えた人がいました。
さらに、「人の性格にはこんな特徴があるよ」とまとめた人もいました。
つまり、今私たちが学んでいる心理学の「性格」は、一人の天才が作ったものではなく、たくさんの心理学者たちが力を合わせて少しずつ完成させてきた考え方なのです。

1. 今回の疑問とは?
心理学について調べていると、
「ビッグファイブ」
「パーソナリティ」
「特性理論」
「双子研究」
など、さまざまな言葉が出てきます。
でも、その言葉を知るうちに、こんな疑問が浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
「この考え方は、誰が最初に思いついたの?」
「心理学者は、どうして性格を研究しようと思ったの?」
「今では当たり前になっている『性格』という考え方は、昔からあったの?」
「どうして世界中の心理学者が、何十年も性格を研究し続けているの?」
どれも、とても自然な疑問です。

実は、心理学における「性格」の研究は、一人の心理学者が突然完成させたものではありません。
ある人は「性格とは何か」を考えました。
ある人は「性格を科学で測る方法」を考えました。
ある人は「人の性格には5つの大きな特徴がある」と整理しました。
さらに、ある人は「性格は遺伝と環境のどちらが影響するのか」を研究しました。
つまり、「性格」という一つのテーマに対して、それぞれの心理学者が少しずつ新しい発見を積み重ねてきたのです。
だからこそ、現在の心理学は、一人の天才が作り上げたものではなく、多くの研究者たちが受け継ぎながら発展させてきた「知識のリレー」とも言えるでしょう。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 心理学における性格研究は、どのように始まったのか
- 現代の性格心理学を築いた代表的な心理学者たち
- ビッグファイブや双子研究が生まれた背景
- それぞれの研究が、現在の心理学にどのようにつながっているのか
- なぜ今でも性格研究が続けられているのか
次の章では、「性格とは何だろう?」という素朴な疑問を持った一人の学生の物語を通して、心理学者たちが追い続けた「性格」という謎の世界へ入っていきましょう。
2. 疑問が浮かんだ物語
「性格って、誰が最初に見つけたんだろう?」
放課後の図書館。
ミナさんは、心理学の本を読んでいました。
ページをめくると、
「ビッグファイブ」
「パーソナリティ」
「性格特性」
という言葉がたくさん出てきます。
「へぇ、性格ってこんなふうに研究されているんだ。」
そう思いながら読んでいるうちに、ふと手が止まりました。
「でも……。」
「これって、最初に考えたのは誰なんだろう。」
「性格なんて目に見えないのに、どうして研究できたんだろう。」
「そもそも、昔の人は”性格”というものをどう考えていたんだろう。」
気になり始めると、不思議なことが次々と頭に浮かびます。
「ビッグファイブを作った人は誰?」
「『パーソナリティ』という言葉は、いつから使われているの?」
「今では当たり前に『性格』と言うけれど、それを最初に科学として研究した人は誰なんだろう。」
本を閉じても、その疑問は消えませんでした。

ミナさんは思いました。
「もし、その人たちのことを知れば、性格そのものをもっと深く理解できるかもしれない。」
心理学者たちは、どのような思いで「その人らしさ」の謎に挑んできたのでしょうか。
その長い物語を、一緒に見ていきましょう。
3. すぐに分かる結論
『性格心理学』は、一人ではなく多くの心理学者が少しずつ完成させてきた
お答えします。
現在、私たちが学んでいる「性格心理学」は、一人の心理学者が作ったものではありません。
100年以上にわたり、多くの研究者たちが少しずつ研究を積み重ねてきた結果、現在の考え方になりました。
ある人は、
「性格とは何か。」
を考えました。
ある人は、
「性格を科学で測る方法。」
を考えました。
またある人は、
「人の性格には共通する特徴がある。」
ことを発見しました。
さらに、
「遺伝と環境は、それぞれどれくらい性格に関係するのか。」
を研究した心理学者もいます。
つまり、性格心理学は、一冊の本を一人で書いたようなものではありません。
何世代もの研究者が、前の時代の研究を受け継ぎながら、一章ずつ書き加えて完成させてきた「大きな物語」なのです。
だからこそ、心理学者たちを知ることは、
単に名前を覚えることではありません。
「性格とは何か」という答えが、どのように見つけられてきたのかを知る旅でもあるのです。
ここからは、その物語の最初のページを開いてみましょう。
4. 性格研究はどこから始まった?
人は昔から「人はなぜ違うのか」を考えていた
「性格」の研究は、実は心理学が誕生するずっと前から始まっていました。
昔の人たちも、
「どうして勇敢な人がいるのだろう。」
「どうして怒りやすい人と穏やかな人がいるのだろう。」
「同じ出来事でも、人によって感じ方が違うのはなぜだろう。」
と、不思議に思っていたのです。

たとえば、古代ギリシャでは、紀元前400年ごろ(日本では弥生時代よりも前)に活躍した医師のヒポクラテスが、人の性格や気質は体の中にある四つの体液のバランスによって変わると考えました。
ヒポクラテスは、古代ギリシャを代表する医師で、後の時代に「医学の父」と呼ばれることもある人物です。
彼は、病気や人の体の状態を、神話や迷信だけで説明するのではなく、体の中で起きている自然な働きとして考えようとしました。
その考え方の一つが、四体液説(よんたいえきせつ)です。
四体液説では、人間の体には、
血液。
粘液。
黄胆汁。
黒胆汁。
という四つの体液があり、そのバランスによって体の健康だけでなく、気分や性格の傾向も変わると考えられていました。
たとえば、血液が多い人は明るく活動的、黒胆汁が多い人は憂うつになりやすい、というように、人の違いを体の中のバランスで説明しようとしたのです。
現在では、この「四体液説」は科学的には正しいとは考えられていません。
しかし重要なのは、この説が正しかったかどうかだけではありません。
人は昔から、
「なぜ人によって感じ方や行動が違うのか」
「生まれつきの体の特徴が、性格にも関係するのではないか」
という疑問を持っていた、ということです。
つまり四体液説は、現代の性格心理学そのものではありませんが、人間の違いを体系的に説明しようとした古い試みの一つとして見ることができます。
その後も、多くの哲学者や医師が、
「人はなぜ一人ひとり違うのか。」
という問いに挑み続けました。
そして時代は流れ、
1800年代後半(日本では明治時代)になると、心理学は哲学から独立し、「実験によって人の心を調べる学問」として発展し始めます。
ここから、「性格」は経験や勘だけではなく、
観察し、測定し、科学的に研究する対象
へと変わっていきました。
つまり、現代の性格心理学は、
突然生まれたものではありません。
古代から続く、
「人はなぜ違うのか。」
という人類共通の疑問が、長い年月をかけて少しずつ積み重なり、今の心理学へとつながっているのです。
次の章では、いよいよ「現代の性格心理学の父」とも呼ばれる人物の一人、ゴードン・オールポートが、どのようにして「性格とは何か」を科学的に整理したのかを見ていきましょう。
5. 性格心理学を築いた4人の心理学者たち
ここまで読んでくださったあなたは、
「性格とは、その人らしい考え方・感じ方・行動の傾向であること」
「性格は遺伝だけでも環境だけでもなく、さまざまな要因が重なって形づくられること」
「ビッグファイブという、性格を5つの特徴から見る考え方があること」
などについて知ることができました。
でも、ここで一つ新しい疑問が浮かびます。
「これらの考え方は、一体誰が見つけたのだろう?」
実は、心理学における「性格」は、最初から今のように分かっていたわけではありません。
昔の心理学では、
「性格」という言葉はあっても、
何をもって性格と呼ぶのか、
どうやって調べればよいのか、
研究者の間でも意見が分かれていました。
性格は目で見ることができません。
重さを量ることもできません。
定規で長さを測ることもできません。
だからこそ、
「性格を科学として研究するには、どうすればいいのか」
という大きな壁があったのです。
その壁に挑み、
少しずつ答えを見つけていったのが、これから紹介する心理学者たちです。

ある人物は、
「そもそも性格とは何なのか。」
という問いに挑みました。
ある人物は、
「性格は測ることができるのか。」
という疑問に挑みました。
さらにある人物は、
「性格は本当に5つの特徴で説明できるのか。」
という研究を積み重ねました。
そして最後に、
「性格には遺伝はどれくらい関係しているのか。」
という長年の謎を、大規模な研究によって明らかにしました。
つまり、この4人は、それぞれ違う問いに挑戦しながら、バラバラだった「性格」という知識を、一つの学問へと育てていった人物たちなのです。
ここからは、その研究の流れを時代順にたどりながら見ていきましょう。
すると、
現代の心理学で語られる「性格」という考え方が、どのように生まれ、どのように発展してきたのかが、一本の物語のようにつながって見えてくるはずです。
5-1 『ゴードン・オールポート』
「性格とは何か?」という問いに、心理学として初めて真正面から向き合った人物
この人物が解き明かそうとした謎
ここで、一つ考えてみてください。
私たちは普段、
「あの人は優しい性格だ。」
「私は人見知りな性格です。」
と、ごく自然に「性格」という言葉を使っています。
では、その「性格」とは、一体何なのでしょうか。
今では当たり前のように使われているこの言葉ですが、1900年代前半(明治後期~昭和初期)までは、心理学の世界でも明確な定義はありませんでした。
人によって説明が違い、
学者によって考え方も違いました。
つまり、「性格」という言葉は知られていても、その正体はまだはっきりしていなかったのです。
そんな曖昧だった「性格」を、科学として整理しようと考えた人物が、ゴードン・オールポートでした。

基本プロフィール
正式名称
ゴードン・ウィラード・オールポート
(Gordon Willard Allport)
生年月日
1897年11月11日(明治30年)
没年月日
1967年10月9日(昭和42年)
出身地
アメリカ合衆国
インディアナ州モンテズマ
職業
心理学者
専門分野
人格心理学(性格心理学)
社会心理学
どのような人生を歩んだの?
オールポートは、四人兄弟の末っ子として生まれました。
父親は医師で、自宅の一部を診療所として使っていたため、小さいころから病気だけでなく、「人そのもの」と向き合う姿を見ながら育ったといわれています。
その後、アメリカの名門であるハーバード大学で学び、そのまま研究者となりました。
当時の心理学では、
人は刺激にどう反応するか。
どう学習するか。
どう記憶するか。
といった、人間に共通する仕組みを研究することが中心でした。
しかしオールポートは、そこに疑問を持ちます。
同じ出来事が起きても、人によって感じ方も行動も違う。
それなら、「人それぞれの違い」そのものを研究することにも、大きな意味があるのではないか。
そう考えたのです。
当時の心理学は「その人らしさ」をうまく説明できなかった
1900年代前半の心理学では、
知能
記憶
反射
学習
などの研究は急速に発展していました。
しかし、
「なぜ同じ経験をしても、人によって考え方や行動が違うのか。」
という疑問には、まだ十分な答えがありませんでした。
つまり、
「その人らしさ」を科学的に説明する方法が、まだ確立されていなかったのです。
オールポートは、この大きな空白を埋めようとしました。
オールポートは何を研究したの?
オールポートは、
「人には、それぞれ比較的安定した特徴がある」
という考えに注目しました。
ある人は、初対面でも積極的に話しかけます。
ある人は、慎重に相手を観察してから話します。
また、失敗してもすぐ立ち直る人もいれば、長く気にしてしまう人もいます。
このような特徴は、一度だけ偶然見られるものではなく、その人のさまざまな場面で繰り返し表れます。
オールポートは、このような比較的一貫した特徴こそが、「性格」を理解する手がかりになると考えました。
『人格―心理学的解釈』で性格を科学として定義した
1937年(昭和12年)、オールポートは代表作である
『Personality: A Psychological Interpretation』
(パーソナリティ:ア・サイコロジカル・インタープリテーション/人格―心理学的解釈)
を出版しました。
この本の中で、人格(パーソナリティ)を次のように定義しています。
「人格とは、個人の内部に存在する精神身体的体系の動的な組織であり、その人特有の環境への適応を決定するものである。」
一見すると難しい言葉ですが、簡単に言えば、
「その人らしい考え方や感じ方、行動を生み出す、心と体の仕組み」
という意味です。
現在でも、この定義は人格心理学を学ぶうえで最も重要な定義の一つとして紹介されています。
「特性(トレイト)」という考え方を広めた
オールポートは、人の性格を理解するためには、「特性(トレイト:Trait)」という考え方が重要だと考えました。
トレイト(Trait)とは、
その人に比較的一貫して見られる性格の特徴や傾向のことです。
たとえば、
誠実。
親切。
慎重。
社交的。
好奇心が強い。
こうした特徴が、さまざまな場面で繰り返し表れるなら、それはその人の「特性」と考えられます。
さらにオールポートは、特性には重要さの違いがあるとして、
主要特性(Cardinal Trait:カーディナル・トレイト)
中心特性(Central Trait:セントラル・トレイト)
副次特性(Secondary Trait:セカンダリー・トレイト)
という三つに分けて考えました。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、これは簡単に言えば、
「その人らしさが、どのくらい強く、どのくらい広い場面で表れるか」
によって性格の特徴を分ける考え方です。
主要特性とは、その人の人生全体を強く特徴づけるような、とても大きな特性です。
たとえば、
「正義を何より大切にする」
「人を助けることに人生をかける」
「名誉や信念を守ることを最優先にする」
といったように、その人の生き方全体に強く表れる特徴です。
ただし、オールポートは、すべての人がこのような強い主要特性を持つとは考えませんでした。
多くの人の場合、ここまで人生全体を支配するほど強い特性は、はっきり表れないこともあります。
中心特性とは、普段のその人らしさを表す、比較的分かりやすい特性です。
たとえば、
「親切」
「慎重」
「まじめ」
「社交的」
「好奇心が強い」
といった特徴です。
私たちが誰かを紹介するときに、
「あの人は優しい人だよ」
「彼は責任感があるよ」
「少し心配しやすいところがあるよ」
と言う場合、多くはこの中心特性を見ていると考えられます。
つまり中心特性は、日常の中で見えやすい「その人らしさ」です。
副次特性とは、特定の場面や状況で表れやすい、少し細かな特徴です。
たとえば、
「人前で話すときだけ緊張しやすい」
「親しい友達の前ではよく話す」
「旅行のときだけ計画的になる」
「食べ物の好みには強いこだわりがある」
といったものです。
その人全体を説明するほど大きな特徴ではありませんが、場面によって表れる大切な「その人らしさ」の一部です。
このようにオールポートは、性格を一つの言葉だけで決めつけるのではなく、
人生全体に強く表れる特徴。
普段のその人らしさを表す特徴。
場面によって表れる細かな特徴。
というように、重なりのあるものとして考えました。
これは、現代の性格心理学にもつながる大切な視点です。
私たちも誰かを見たとき、
「あの人は明るい」
「あの人は心配性」
と一言で言ってしまうことがあります。
しかし実際には、人の性格はもっと複雑です。
ある場面では明るくても、別の場面では慎重になることがあります。
普段はおとなしくても、好きなことになると積極的になることもあります。
オールポートの考え方は、
「人を一つの性格だけで決めつけてはいけない」
ということも教えてくれます。
そしてこの「特性」という考え方は、次に紹介するレイモンド・キャッテルによって、より統計的に研究されていきます。
キャッテルは、性格を表す言葉や質問紙のデータを集め、因子分析という統計手法を使って、性格を科学的に測ろうとしました。
つまり、オールポートが整理した「性格には特性がある」という考え方を、キャッテルはデータを使ってさらに発展させていったのです。
その流れは、後に現在のビッグファイブ研究へとつながっていきました。
オールポートが心理学にもたらしたもの
オールポート以前、
性格は「あの人らしいね」という曖昧な言葉で語られることが多くありました。
しかし彼は、
性格を科学的に研究できる対象として整理しました。
つまり、
「性格とは何か」という問いに、心理学として初めて体系的な答えを示した人物
だったのです。
もしオールポートがいなければ、
その後に登場するキャッテルの研究も、
ビッグファイブも、
現代の人格心理学も、大きく違うものになっていたかもしれません。
この人物を一言で表すなら
「性格心理学という学問の設計図を描いた人物」
オールポートは、「性格とは何か」という最初の謎に答えました。
しかし、新しい疑問も生まれます。
「性格があることは分かった。でも、それを客観的に測ることはできるのだろうか。」
この新たな謎に挑んだのが、次に紹介するレイモンド・キャッテルです。
5-2 『レイモンド・キャッテル』
「性格は測れるのか?」という謎に挑み、科学へ近づけた人物
この人物が解き明かそうとした謎
オールポートによって、
「性格とは、その人らしい特徴である」
という考え方は整理されました。
しかし、新たな疑問が生まれます。
「その性格は、本当に科学的に調べられるのだろうか。」
もし研究者ごとに、
「あの人は優しい。」
「この人は社交的だ。」
と感覚だけで判断していては、客観的な研究にはなりません。
誰が調べても同じような結果が得られる方法が必要でした。
この難しい課題に挑戦した人物が、レイモンド・キャッテルです。

基本プロフィール
正式名称
レイモンド・バーナード・キャッテル
(Raymond Bernard Cattell)
生年月日
1905年3月20日(明治38年)
没年月日
1998年2月2日(平成10年)
出身地
イギリス
イングランド・スタッフォードシャー州ヒル・トップ
職業
心理学者
専門分野
人格心理学
心理測定
統計学
どのような人生を歩んだの?
キャッテルはイギリスで生まれ、若い頃は化学を学んでいました。
しかし、第一次世界大戦(1914年〈大正3年〉~1918年〈大正7年〉)を経験し、
「人間という存在をもっと深く理解したい。」
という思いから心理学へ進みます。
その後、ロンドン大学で研究を続け、後にアメリカへ渡り、イリノイ大学などで人格心理学の研究を発展させました。
彼は、
「心理学も物理学や化学のように、数字を使って客観的に研究できる学問にしたい。」
という強い信念を持っていました。
当時の心理学はどうだった?
オールポートによって、
性格という考え方は整理されました。
しかし、
「性格をどうやって測ればいいのか。」
という方法は、まだ十分に確立されていませんでした。
例えば、
「誠実」
「親切」
「社交的」
という言葉はあっても、
それぞれがどのような関係を持っているのか、
本当に別々の特徴なのか、
それとも似た性質なのかは分かっていませんでした。
つまり、
性格を科学として測定するための”ものさし”がまだ存在していなかったのです。
キャッテルは何を研究したの?
キャッテルは、
まず、人を表す言葉を徹底的に集めました。
その出発点となったのが、オールポートと、共同研究者であるヘンリー・S・オドバートが1936年に発表した研究です。
二人は、英語辞典から人の性格や特徴を表す言葉を集め、約18,000語に及ぶ人格表現を整理しました。
オドバートは、オールポートとともに、人の性格を表す言葉を整理した研究者です。
この研究では、英語の中にある「人の特徴を表す言葉」を大量に集めることで、性格を科学的に研究するための材料を作ろうとしました。
キャッテルは、その言葉のリストをもとに、重複する表現を減らし、統計学を使って性格の基本的な特性を探っていきました。
キャッテルは、それらを整理・統合し、重複するものを減らしながら研究を進めました。
そして、多くの人に質問紙(アンケート)や心理検査を行い、その結果を統計学を使って分析しました。
ここで活躍したのが、
ここで活躍したのが、
因子分析(いんしぶんせき)
という統計手法です。
因子分析とは、
たくさんのデータの中から、
「一緒に現れやすい特徴」を見つけ出し、共通する性質をまとめる方法
です。
少し難しく聞こえますが、簡単に言えば、
バラバラに見える性格の特徴の中から、「実は同じグループに入りそうなもの」を探す方法
だと考えると分かりやすいです。
キャッテルが行ったのは、実験室で人に特別な作業をさせるような実験というより、たくさんの人の性格に関するデータを集め、それを統計的に分析する研究でした。
まずキャッテルは、オールポートとオドバートが集めた人格を表す言葉をもとに、似た意味の言葉や重なる表現を整理していきました。
そして、人の性格を調べるために、
本人への質問紙。
周囲の人による評価。
行動や生活に関する情報。
など、さまざまなデータを集めました。
例えば、
「人と話すのが好き。」
「初対面でも積極的。」
「人前でも緊張しにくい。」
という特徴が、同じ人に一緒に見られやすいなら、
それらは一つの大きな性格特性としてまとめられるかもしれません。
反対に、
「計画を立てて行動する。」
「約束を守る。」
「物事を最後までやり遂げる。」
という特徴が一緒に見られやすいなら、
そこには別の性格特性があると考えられるかもしれません。
キャッテルは、このように多くのデータの中から、似た特徴がどのようにまとまるのかを因子分析によって調べました。
そして、性格を研究者の印象や感覚だけで語るのではなく、できるだけ客観的に測ろうとしたのです。
その研究の中でキャッテルが提案したのが、16PFです。
16PFとは、
16 Personality Factors(シックスティーン・パーソナリティ・ファクターズ)
の略で、日本語では「16の人格因子」や「16の性格特性」と説明されることがあります。
これは、人の性格を16の基本的な特性から理解しようとする考え方です。
たとえば、
社交性。
情緒の安定性。
支配性。
規則を大切にする傾向。
大胆さ。
感受性。
緊張しやすさ。
など、人の性格をいくつかの基本的な特徴に分けて見ようとしました。
この16PFをもとに作られた性格検査は、16PF性格検査として知られています。
つまり16PFは、
「人の性格を16のものさしで測ろうとしたキャッテルの性格モデル」
だと考えると分かりやすいです。
もちろん、現在ではビッグファイブのように、性格をより大きな5つの特性で整理する考え方も広く使われています。
しかし、キャッテルが16PFによって示した、
「性格はデータをもとに測定できる」
という発想は、後のビッグファイブ研究にもつながる重要な一歩でした。
キャッテルの研究が重要だった理由
キャッテルの研究で大切なのは、単に
「性格を16個に分けた」
ということだけではありません。
それ以上に重要なのは、
性格を印象や経験だけで語るのではなく、データと統計学を使って研究しようとしたこと
です。
それまで性格は、
「この人は優しい」
「あの人は社交的」
というように、やや感覚的に語られることも多くありました。
しかしキャッテルは、質問紙や評価、行動に関する情報を集め、そこに共通するパターンを見つけようとしました。
この姿勢によって、性格心理学は、
“人柄を語る学問”から、“性格を測定し、分析する学問”へ
大きく近づいていきました。
もちろん、その後の研究では、
「16の特性ではなく、もっと大きな5つの特性で整理できるのではないか」
という考え方も発展していきます。
それが、後にビッグファイブ研究へとつながっていきました。
キャッテルが心理学にもたらしたもの
キャッテル以前、
性格研究は、
研究者の経験や印象に左右されることも少なくありませんでした。
しかしキャッテルは、
大量のデータと統計学を用いることで、
性格研究をより客観的な科学へ近づけました。
そして、
「性格は測ることができる」
という考え方を広めたのです。
この研究は後に、
次に紹介するビッグファイブ研究の重要人物である
ポール・コスタとロバート・マクレー
にも大きな影響を与えました。
二人は、性格を5つの大きな特性から理解するビッグファイブの考え方を、現代の人格心理学の中で広く発展させた心理学者です。
つまり、キャッテルの研究があったからこそ、
現在もっとも広く使われる性格モデルの一つであるビッグファイブ理論へと、研究の流れがつながっていったのです。
この人物を一言で表すなら
「性格を”科学的に測るものさし”を作った人物」
オールポートは、
「性格とは何か。」
という問いに答えました。
キャッテルは、
「性格はどうやって測るのか。」
という問いに答えました。
そして次に心理学者たちは、
「本当に人の性格は16種類もの特徴が必要なのだろうか。それとも、もっと少ない特徴で説明できるのではないか。」
という新たな疑問に挑みます。
その答えを探し、現在のビッグファイブ理論を確立したのが、次に紹介するポール・コスタとロバート・マクレーです。
5-3 『ポール・コスタ』&『ロバート・マクレー』
「人の性格は5つの特徴で説明できるのか?」という問いに答えた人物たち
この人物たちが解き明かそうとした謎
オールポートは、
「性格とは何か。」
という問いに答えました。
キャッテルは、
「性格は科学的に測ることができる。」
ことを示しました。
しかし、新しい疑問が残ります。
「性格は本当に16もの特徴に分ける必要があるのだろうか。」
「もっと少ない特徴で、人の性格を説明できるのではないか。」
この疑問に長年取り組み、現在の人格心理学で最も広く使われているビッグファイブ理論を完成させたのが、ポール・コスタとロバート・マクレーです。

基本プロフィール
正式名称
ポール・トーマス・コスタ・ジュニア
(Paul Thomas Costa Jr.)
生年月日
1942年9月16日(昭和17年)
没年月日
確認できる範囲では、公的に確認できる没年月日は見つかりませんでした。
出身地
アメリカ合衆国
ニューハンプシャー州フランクリン
職業
心理学者
専門分野
人格心理学
老年心理学
正式名称
ロバート・ロジャー・マクレー
(Robert Roger McCrae)
生年月日
1949年4月28日(昭和24年)
没年月日
確認できる範囲では、公的に確認できる没年月日は見つかりませんでした。
出身地
アメリカ合衆国
ミズーリ州メアリービル
職業
心理学者
専門分野
人格心理学
五因子モデル
成人期の人格発達
どのような研究をしていたの?
二人は、アメリカ国立老化研究所
(National Institute on Aging:ナショナル・インスティテュート・オン・エイジング)
で共同研究を行いました。
当時の人格心理学では、
さまざまな性格理論が存在し、
「結局、人の性格は何個の特徴で説明できるのか。」
という議論が続いていました。
キャッテルは16特性を提案しました。
しかし、
他の研究者たちの因子分析でも、
何度調べても似た特徴が何度も現れることが分かってきました。
コスタとマクレーは、
それまで積み重ねられてきた多くの研究結果を整理し、
もっと普遍的で分かりやすい人格モデルを作ろうと考えました。
ビッグファイブは「発明」ではなく「積み重ね」の成果
ここで知っておきたいことがあります。
ビッグファイブは、
ある日突然、
一人の研究者が思いついた理論ではありません。
その背景には、性格をデータで調べようとした多くの研究者たちの積み重ねがあります。
1960年代には、
アーネスト・タプス
(Ernest Tupes)
と
レイモンド・クリスタル
(Raymond Christal)
という研究者たちが、性格に関するデータを改めて分析しました。
二人は、先ほどキャッテルの研究でも登場した因子分析を用いて、人の性格は大きく5つの因子で整理できる可能性があることを示しました。
ここで大切なのは、タプスとクリスタルの研究が、キャッテルの研究とまったく同じものではないという点です。
キャッテルは、性格をできるだけ細かく測ろうとし、16の基本的な性格特性、つまり16PFを提案しました。
一方で、タプスとクリスタルは、性格に関するデータを改めて分析し、人の性格はもっと大きな5つの因子で整理できるのではないかという流れにつながる結果を示しました。
つまり、キャッテルが
「性格を統計的に測る道を開いた人物」
だとすれば、タプスとクリスタルは、
「その流れの中で、後のビッグファイブにつながる5つの因子を示した研究者」
だと考えると分かりやすいです。
二人は、現在のビッグファイブ理論を完成させた人物ではありません。
しかし、後にビッグファイブとして広く知られる考え方につながる、重要な土台を作った研究者たちです。
つまり、コスタとマクレーの研究は、突然生まれたものではありません。
タプスとクリスタルをはじめとする先行研究の積み重ねの上に、少しずつ形づくられていったのです。
その後、
ウォーレン・ノーマン
ルイス・ゴールドバーグ
など、多くの研究者が同じような結果を報告します。
コスタとマクレーは、
こうした長年の研究成果を統合し、
現在広く使われている
「ビッグファイブ理論」
として完成させました。
ビッグファイブとは?
コスタとマクレーがまとめた人格モデルでは、
人の性格は、
次の五つの特性で考えられるとされています。
外向性(Extraversion:エクストラバージョン)
人との交流や活動性に関係します。
協調性(Agreeableness:アグリーアブルネス)
思いやりや協力性に関係します。
誠実性(Conscientiousness:コンシエンシャスネス)
責任感や計画性、自分をコントロールする力に関係します。
神経症傾向(Neuroticism:ニューロティシズム)
不安や心配など、感情の揺れやすさに関係します。
開放性(Openness to Experience:オープンネス・トゥ・エクスペリエンス)
新しい考え方や芸術、知識への興味などに関係します。
一番重要なのは「分類」ではないこと
ビッグファイブで最も重要なのは、
人を五種類に分ける理論ではない
ということです。
例えば、
「外向型」
「内向型」
と分類するものではありません。
五つそれぞれについて、
どのくらい高いか、
どのくらい低いかを見ていきます。
つまり、
五つの特徴の組み合わせによって、
その人だけの「その人らしさ」が形づくられると考えるのです。
この考え方は、
現在でも人格心理学の中心的な理論として、
世界中の研究で利用されています。
コスタとマクレーが心理学にもたらしたもの
コスタとマクレーは、
長年積み重ねられてきた人格研究を整理し、
世界中で共通して使える人格モデルを作り上げました。
現在では、
心理学研究だけでなく、
教育
医療
企業
カウンセリング
など、さまざまな分野でビッグファイブが活用されています。
つまり二人は、
人格心理学を「世界共通の言葉」で説明できるようにした人物
だったのです。
この人物たちを一言で表すなら
「ビッグファイブを完成させ、世界共通の性格モデルを築いた人物たち」
コスタとマクレーによって、
「人の性格は五つの特性で理解できる。」
という考え方は世界中へ広がりました。
しかし、最後にもう一つ、大きな疑問が残ります。
「では、その五つの特徴は、生まれつきなのでしょうか。それとも育った環境によるものなのでしょうか。」
この長年の問いに、大規模な双子研究によって迫った人物が、次に紹介するトーマス・J・ブシャール・ジュニアです。
5-4 『トーマス・J・ブシャール・ジュニア』
「性格は生まれつきなのか?」という長年の謎に科学で挑んだ人物
この人物が解き明かそうとした謎
ここまで紹介してきた心理学者たちによって、
「性格とは何か。」
「性格はどのように測るのか。」
「人の性格は五つの特徴で考えられる。」
ということが少しずつ分かってきました。
しかし、多くの人が今でも気になる疑問があります。
「その性格は、生まれつき決まっているのでしょうか。」
「それとも、育った環境によって作られるのでしょうか。」
この問いは、心理学だけでなく、多くの親や教育者も長年考え続けてきたテーマでした。
この難しい謎に、大規模な双子研究によって挑んだ人物が、トーマス・J・ブシャール・ジュニアです。

基本プロフィール
正式名称
トーマス・ジョセフ・ブシャール・ジュニア
(Thomas Joseph Bouchard Jr.)
生年月日
1937年10月3日(昭和12年)
没年月日
2021年10月13日(令和3年)
出身地
アメリカ合衆国
職業
心理学者
行動遺伝学者
専門分野
人格心理学
行動遺伝学
双子研究
どのような人生を歩んだの?
ブシャールは、
「人の能力や性格は、何によって違ってくるのか」
というテーマに強い関心を持っていました。
私たちはよく、
「この子は親に似ている」
「育った環境が性格を作る」
「生まれつきの気質がある」
という言い方をします。
しかし、こうした言葉だけでは、
遺伝の影響なのか
環境の影響なのか
をはっきり分けて考えることはできません。
ブシャールは、この難しい問いに、心理学と行動遺伝学の立場から向き合いました。
その後、ブシャールは、
アメリカのミネソタ大学
(University of Minnesota)
で研究を続けます。
そして、別々に育った双子を調べた研究としてよく知られている、
ミネソタ双生児研究
(Minnesota Study of Twins Reared Apart)
を中心となって進めました。
この研究は、人格心理学だけでなく、
行動遺伝学全体にも大きな影響を与えた研究として知られています。
では、なぜ「別々に育った双子」を調べることが、性格研究にとって重要だったのでしょうか。
その背景には、当時の心理学で続いていた大きな議論がありました。
当時の心理学はどうだった?
1970年代から1980年代にかけて、
心理学では、
「人は環境によって作られる」
という考え方と、
「遺伝も重要なのではないか」
という考え方が、活発に議論されていました。
たとえば、親子の性格が似ている場合、
それは親から受け継いだ遺伝子の影響かもしれません。
しかし同時に、
同じ家で暮らし、
同じような生活習慣を持ち、
同じ家庭環境の中で育った影響かもしれません。
つまり、親子が似ていても、
遺伝の影響なのか
家庭環境の影響なのか
を簡単に区別することはできなかったのです。
ここで重要になるのが、双子の研究でした。
特に、一卵性双生児は、
ほぼ同じ遺伝情報を持っています。
もし、その一卵性双生児が別々の家庭で育っていたらどうでしょうか。
遺伝的にはとてもよく似ている。
でも、育った家庭、親、学校、友人関係、生活経験は違っている。
このような双子を調べることで、
「遺伝がどのくらい関係しているのか」
「環境はどのように関係しているのか」
を考える大きな手がかりになるのです。
ブシャールは何を研究したの?
ブシャールが注目したのは、
幼いころに別々の家庭で育った双子でした。
この研究は、
ミネソタ双生児研究
(Minnesota Study of Twins Reared Apart)
と呼ばれています。
研究では、別々に育った一卵性双生児だけでなく、
二卵性双生児や三つ子なども対象にして、
心理面や身体面について詳しく調べました。
ブシャールたちは、こうした双子を大学に招き、
数日間にわたって、さまざまな検査や調査を行いました。
調べられた内容には、
性格。
知能。
興味や価値観。
生活習慣。
健康状態。
職業。
人間関係。
社会的な態度。
などが含まれていました。
つまり、この研究は単に、
「双子は似ているのか」
を見た研究ではありません。
人間の違いが、遺伝と環境のどちらから、どのように生まれるのか
を、できるだけ多方面から調べようとした研究だったのです。
そして研究者たちは、
別々に育った双子同士が、
どのくらい似ているのかを統計的に比較しました。
その結果、何が分かったの?
研究では、
別々の家庭で育った一卵性双生児でも、
性格や行動の傾向、
興味、
価値観、
知能などに、
似ている部分が見られることが報告されました。
たとえば、
外向性。
神経症傾向。
興味の持ち方。
社会的な態度。
といった面でも、遺伝的な影響が関係している可能性が示されました。
これは、
性格は家庭環境だけで決まるわけではない
ということを考えるうえで、大きな意味を持っていました。
しかし、ここで大切なのは、
この研究が
「性格は遺伝だけで決まる」
と示したわけではない、という点です。
別々に育った双子は、似ている部分がある一方で、
まったく同じ人間になるわけではありません。
友人関係。
学校での経験。
仕事。
出会った人。
失敗や成功の経験。
本人が選んできた環境。
こうしたものによって、
性格や生き方には違いも生まれていきます。
つまり、ブシャールたちの研究が教えてくれるのは、
性格は、遺伝だけでも、環境だけでも説明できない
ということです。
遺伝は、その人の性格や能力の土台に関わります。
しかし、環境や経験は、
その土台がどのように表れるかに関わります。
同じ種から育った植物でも、
日当たり、水、土、風の当たり方によって育ち方が変わるように、
人の性格も、
生まれ持った特徴と、
その後の経験が重なり合って形づくられていくのです。
ミネソタ双生児研究は、
この複雑な関係を考えるための重要な手がかりを与えた研究でした。
ブシャールが心理学にもたらしたもの
ブシャールの研究が大きな意味を持ったのは、
性格を「家庭環境だけ」で説明する見方に、重要な問いを投げかけたこと
です。
それまで、性格や能力は、
「親の育て方」
「家庭環境」
「学校での経験」
によって作られると考えられることが多くありました。
もちろん、これらの環境が大切であることは間違いありません。
しかし、ミネソタ双生児研究は、
同じ家庭で育ったかどうかだけでは、人の性格を十分に説明できない
ということを示す手がかりになりました。
別々の家庭で育った一卵性双生児にも、
性格や行動の傾向に似ている部分が見られたからです。
この結果は、
人の性格には、生まれ持った特徴も関係している可能性がある
という考えを、より強く支持するものになりました。
ただし、ブシャール一人だけがすべての答えを出したわけではありません。
その後も世界中で多くの双子研究や行動遺伝学の研究が行われ、
現在でも研究は続いています。
それでも、ミネソタ双生児研究は、
遺伝と環境が人の違いにどのように関わるのかを考えるうえで、代表的な研究の一つ
として知られています。
この研究で誤解してはいけないこと
ここで、とても大切な注意点があります。
ブシャールの研究は、
「性格は遺伝だけで決まる」
と証明した研究ではありません。
また、
「性格の半分は遺伝で、半分は環境である」
と単純に示した研究でもありません。
ここは、性格心理学を理解するうえでとても重要です。
双子研究で語られる「遺伝の影響」とは、
一人の人間の性格の中に、
遺伝が何%、環境が何%入っている
という意味ではありません。
そうではなく、
たくさんの人を比べたときに、
人と人との違いの一部が、遺伝的な違いと関係している可能性がある
という意味です。
たとえば、
「外向性には遺伝の影響がある」
と聞くと、
「自分の外向性の半分は遺伝で決まっている」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
性格には、
遺伝。
気質。
家庭環境。
学校での経験。
友人関係。
文化。
人生で出会った出来事。
本人が選んできた環境。
こうしたさまざまな要素が重なっています。
そして、それらは別々に働くのではなく、
お互いに影響し合いながら、その人らしさを形づくっていきます。
つまり、ブシャールの研究が教えてくれるのは、
「遺伝か、環境か」ではなく、「遺伝と環境がどのように関わり合うのか」を考えることの大切さ
なのです。
ブシャールが心理学に残したもの
ここまで見てきた4人の心理学者たちは、
それぞれ違う角度から「性格」という謎に向き合ってきました。
オールポートは、
「性格とは何か」
を整理しました。
キャッテルは、
「性格は測ることができるのか」
という問いに挑みました。
コスタとマクレーは、
「性格はどのような大きな特徴で整理できるのか」
を発展させました。
そしてブシャールは、
「その性格は、どこから生まれるのか」
という問いに向き合いました。
ブシャールの研究によって、
性格は家庭環境だけで作られるものではなく、
生まれ持った特徴も関係していることが、より深く考えられるようになりました。
しかし同時に、
性格は遺伝だけで決まるものでもありません。
人は、生まれ持った特徴を土台にしながら、
家庭、
学校、
友人、
文化、
経験、
そして自分自身の選択の中で、
少しずつ「その人らしさ」を形づくっていきます。
ブシャールは、
性格を
「遺伝か環境か」
という二択で見るのではなく、
「遺伝と環境が重なり合って形づくられるもの」
として考える視点を、心理学に強く残した人物だと言えるでしょう。
この人物を一言で表すなら
ブシャールを一言で表すなら、
「性格は『遺伝か環境か』ではなく、『遺伝と環境がどう関わり合うのか』を考える時代へ導いた人物」
です。
彼の研究は、
私たちに大切なことを教えてくれます。
それは、
生まれ持った特徴を無視する必要もなければ、
環境や経験の力を軽く見る必要もない、
ということです。
性格は、最初からすべて決まっているものではありません。
けれど、まっ白な紙のように、何でも自由に書き換えられるものでもありません。
生まれ持った傾向と、
その後に出会う環境や経験が重なりながら、
少しずつ形づくられていくものなのです。
4人の心理学者がつないできたもの
ここまで見てきたように、
オールポート、キャッテル、コスタとマクレー、そしてブシャールは、
それぞれ違う角度から「性格」というテーマに向き合ってきました。
ある人は、
性格とは何か
を問い、
ある人は、
性格をどう測るのか
を考え、
ある人は、
性格をどのように整理するのか
を発展させ、
ある人は、
性格がどこから生まれるのか
を探ろうとしました。
つまり、4人の研究はバラバラに見えて、
実は一つの大きな問いにつながっています。
それは、
「人はなぜ、一人ひとり違うのか」
という問いです。
この問いに少しずつ答えようとしてきた積み重ねが、
現在の性格心理学を形づくってきました。
次の章では、
この4人の研究がどのようにつながり、
現在の心理学にどのような影響を残しているのかを、
もう一度大きな流れとして整理していきましょう。
6. 4人の研究はどのようにつながっているの?
ここまで、
ゴードン・オールポート。
レイモンド・キャッテル。
ポール・コスタとロバート・マクレー。
トーマス・J・ブシャール・ジュニア。
という、性格心理学に大きな影響を与えた心理学者たちを見てきました。
一人ひとりの研究テーマは違います。
しかし、よく見ると、4人の研究はバラバラではありません。

むしろ、
「人はなぜ、一人ひとり違うのか」
という大きな問いを、時代ごとに少しずつ受け継いできた流れとして見ることができます。
オールポートは、
「性格とは何か」
を整理しました。
キャッテルは、
「性格はどう測れるのか」
を考えました。
コスタとマクレーは、
「性格はどのような大きな特徴で整理できるのか」
を発展させました。
そしてブシャールは、
「その性格はどこから生まれるのか」
という問いに向き合いました。
この流れをリレーにたとえるなら、
オールポートが、性格研究の出発点となるバトンを渡し、
キャッテルが、それを測定の研究へつなぎ、
コスタとマクレーが、ビッグファイブという形で整理し、
ブシャールが、遺伝と環境の関係へと問いを広げた、
と言えるかもしれません。
つまり、性格心理学は、
一人の天才が一度に完成させた学問ではありません。
多くの研究者が、
「性格とは何か」
「どう測るのか」
「どう整理するのか」
「どこから生まれるのか」
という問いを少しずつつなぎながら、発展してきた学問なのです。
この流れを知ると、性格心理学は単なる用語の暗記ではなく、
人間を理解しようとしてきた長い探究の物語として見えてきます。
次の章では、
この研究の積み重ねによって、現在の心理学では性格についてどこまで分かっているのかを見ていきましょう。
オールポート、キャッテル、コスタとマクレー、ブシャール。
こうした研究者たちの問いが積み重なったことで、現在の心理学では、性格についてどこまで分かっているのでしょうか。
次は、性格心理学の「現在地」を見ていきましょう。
7. 現在の心理学では、性格はどこまで分かっているの?
ここまで、
オールポート。
キャッテル。
コスタとマクレー。
ブシャール。
という研究者たちの歩みを見てきました。
4人の研究は、それぞれ違う問いに向き合っていました。
性格とは何か。
性格はどう測るのか。
性格はどのように整理できるのか。
性格はどこから生まれるのか。
では、こうした研究の積み重ねによって、現在の心理学では、性格についてどこまで分かっているのでしょうか。
最初に大切なことを言うと、
性格について、すべてが完全に分かったわけではありません。
むしろ現在の心理学では、
かなり分かってきたこと
と、
まだ研究が続いていること
の両方があります。
性格は、血液型のように一言で決まるものでもありません。
生まれつきだけで決まるものでもありません。
反対に、努力や環境だけで何でも自由に変えられるものでもありません。
性格は、
変わりにくい部分
と、
変わりうる部分
をあわせ持っています。
この二つを分けて考えると、性格心理学の現在地が見えやすくなります。
分かってきたこと1:性格には「その人らしいパターン」がある
まず、現在の心理学では、
性格はその場その場で完全に変わるものではなく、
ある程度安定して表れる、その人らしいパターン
だと考えられています。
たとえば、
初めての場所でも人に話しかけやすい人。
物事を始める前に、よく考えてから動く人。
小さな変化にも気づきやすい人。
約束や締め切りを大切にする人。
こうした特徴は、毎日まったく同じ形で表れるわけではありません。
疲れている日もあります。
緊張する場面もあります。
相手によって態度が変わることもあります。
それでも、長い目で見ると、
その人がどんな場面で、どのように感じ、考え、行動しやすいのか
という傾向が見えてきます。
性格とは、たった一回の行動で決まるものではありません。
一つの失敗。
一度の怒り。
一日だけの落ち込み。
それだけで、その人の性格がすべて決まるわけではありません。
大切なのは、
時間をかけて繰り返し見えてくる、その人らしい傾向
なのです。
ここには、オールポートが考えた「特性」の考え方が今も生きています。
性格とは、一瞬の気分ではなく、
その人の行動や感じ方に、ある程度くり返し表れる特徴なのです。
分かってきたこと2:性格は5つの特性でかなり整理できる
現在の人格心理学では、性格を理解する方法として、
ビッグファイブ
が広く使われています。
ビッグファイブとは、人を5種類に分ける考え方ではありません。
人を箱に入れるためのラベルでもありません。
そうではなく、
5つのものさしを使って、その人の特徴を立体的に見る考え方
です。
その5つとは、
外向性。
協調性。
誠実性。
神経症傾向。
開放性。
です。
たとえば、外向性が高い人もいれば、低い人もいます。
誠実性が高い人もいれば、低い人もいます。
開放性が高く、新しい考えや体験を楽しみやすい人もいます。
反対に、慣れたやり方や安定した環境を大切にする人もいます。
ここで大切なのは、
どちらが良い、悪いという話ではない
ということです。
外向的な人には、人と関わる力があります。
内向的な人には、一人で深く考える力があります。
誠実性が高い人には、計画を立てて続ける力があります。
一方で、柔軟に動ける人には、変化に対応しやすい強みがあります。
性格は、点数で人の価値を決めるものではありません。
むしろ、
その人がどんな場面で力を発揮しやすいのか
どんな環境だと疲れやすいのか
を知るための手がかりになります。
コスタとマクレーが発展させたビッグファイブの考え方は、
性格を一つのタイプに押し込めるのではなく、
いくつもの特徴の組み合わせとして理解する視点を広げました。
人の性格は、単色ではありません。
いくつもの色が重なった、複雑な模様のようなものなのです。
分かってきたこと3:性格には遺伝も環境も関係している
現在の心理学では、
性格は遺伝だけでも、環境だけでも説明できない
と考えられています。
双子研究などから、
性格の個人差には遺伝的な影響があることが示されています。
ただし、ここで注意が必要です。
これは、
「性格は生まれつきすべて決まる」
という意味ではありません。
また、
「性格の半分は遺伝で、半分は環境」
と単純に分けられるという意味でもありません。
双子研究で語られる遺伝の影響とは、
たくさんの人を比べたときに、
人と人との違いの一部に、遺伝的な違いが関係している可能性がある
という意味です。
一人の人間の心の中を、
「ここからここまでが遺伝」
「ここからここまでが環境」
と線で分けられるわけではありません。
性格には、
遺伝。
気質。
家庭環境。
学校での経験。
友人関係。
文化。
時代。
人生で出会った出来事。
本人が選んできた環境。
こうしたものが重なり合っています。
つまり性格は、
生まれ持った特徴と、その後の経験が重なり合って形づくられるもの
と考えるのが、現在の心理学に近い見方です。
これは、ブシャールの研究ともつながります。
ブシャールの研究は、
性格を
「遺伝か、環境か」
という二択で見るのではなく、
「遺伝と環境が、どのように関わり合うのか」
という問いへ進めるきっかけになりました。
分かってきたこと4:性格は完全固定ではない
性格には、安定した部分があります。
しかし、まったく変わらないわけではありません。
研究では、人格特性は成人期にも変化しうることが示されています。
たとえば、年齢を重ねる中で、
責任感が強くなる。
感情が安定しやすくなる。
人との関わり方が変わる。
以前より落ち着いて判断できるようになる。
といった変化が見られることがあります。
もちろん、誰もが同じように変わるわけではありません。
大きく変わる人もいれば、あまり変わらない人もいます。
環境が変わったことで、性格の表れ方が変わることもあります。
たとえば、
学校ではおとなしいけれど、好きな趣味の場ではよく話す人。
職場では慎重だけれど、親しい友人の前では大胆になれる人。
安心できる相手とは明るく話せるけれど、初対面では緊張しやすい人。
こうした例を見ると、
性格は「中身がそのまま外に出るだけのもの」ではないことが分かります。
性格は、
その人の特徴
と、
その人が置かれている環境
の組み合わせによって、表れ方が変わるのです。
だからこそ、性格を知ることは、
「私はこういう性格だから変われない」
と決めつけるためのものではありません。
むしろ、
自分の特徴を知り、自分に合った環境や行動を選ぶための手がかり
になります。
性格は、牢屋ではありません。
自分を閉じ込めるものではなく、
自分が進みやすい道を見つけるための地図なのです。
まだ分かっていないこともある
一方で、性格については、まだ完全には分かっていないこともたくさんあります。
たとえば、
なぜ同じ家庭で育った兄弟でも、ここまで違う性格になるのか。
同じ出来事を経験しても、なぜ受け止め方が違うのか。
遺伝子、脳、環境、文化、本人の選択が、どのように組み合わさって性格を作るのか。
性格は、どのような経験によって、どのくらい変わるのか。
こうした問いは、今も研究が続いています。
また、現代では新しい問いも生まれています。
たとえば、
スマートフォンの使い方。
SNSでのふるまい。
オンラインでの人間関係。
検索や購買の行動パターン。
こうした現代的な生活データと性格の関係を調べようとする研究もあります。
さらに、人工知能やデータ分析の発展によって、
人の行動パターンから性格傾向を推測しようとする試みも広がっています。
しかし、ここでも注意が必要です。
データから性格の傾向を推測できる場合があっても、
それだけで人間のすべてを理解できるわけではありません。
スマートフォンの使い方は、その人の一部を映すかもしれません。
SNSの投稿も、その人の一面を表すかもしれません。
しかし、人間はデータの集まりだけではありません。
言葉にしなかった思い。
誰にも見せていない不安。
環境に合わせて抑えている自分。
過去の経験から身につけた守り方。
そうしたものも、その人らしさの一部です。
性格は、数字だけで完全に説明できるほど単純なものではないのです。
なぜ今でも性格研究は続いているの?
性格研究が今でも続けられているのは、
性格がとても身近でありながら、
とても複雑なものだからです。
私たちは毎日のように、
「自分はどうしてこう考えてしまうのだろう」
「あの人はなぜ、あんな反応をするのだろう」
「自分は変われるのだろうか」
と考えています。
性格は、勉強、仕事、恋愛、友人関係、家族関係、進路、健康にも関わります。
つまり性格は、
心理学の中だけにあるテーマではありません。
私たちの日常のすぐそばにあるテーマなのです。
しかも、時代が変われば、人の性格の表れ方も変わります。
昔は、学校や職場、家庭の中で見えていた性格が、
今ではSNSやチャット、オンライン会議、ゲーム、動画投稿、スマートフォンの使い方にも表れるようになっています。
だからこそ、新しい時代が生まれるたびに、
「性格はどのように表れるのか」
「人はどのように自分らしさを育てていくのか」
という新しい問いも生まれていきます。
性格研究は、過去の学者だけのものではありません。
今を生きる私たちの自己理解や人間関係にもつながる、
現在進行形の学問なのです。
現在の心理学が教えてくれること
では、現在の心理学は、私たちに何を教えてくれるのでしょうか。
私は、次のように考えます。
性格とは、
生まれ持った特徴。
積み重ねてきた経験。
選んできた環境。
人との関わり。
時代や文化の影響。
そのすべてが重なり合ってできる、
その人らしさのパターン
です。
そして心理学は、
その人らしさを決めつけるためではなく、
より深く理解するためにあります。
「私はこういう性格だからダメ」
ではなく、
「私はこういう場面で、こう感じやすいんだ」
と気づくこと。
「あの人は変わっている」
ではなく、
「あの人には、あの人なりの感じ方があるのかもしれない」
と考えてみること。
それだけでも、自分や他人を見る目は少し変わります。
性格心理学は、
人を分類して終わるための学問ではありません。
人と人の違いを理解し、
自分に合った生き方を考え、
他人との違いを少しやさしく受け止めるための学問です。
ここまで見てきたように、
性格は、単純な答えでは説明できません。
だからこそ、心理学は問い続けます。
人はなぜ違うのか。
自分らしさはどこから生まれるのか。
人はどこまで変われるのか。
そして、その違いをどう理解すれば、私たちは少し生きやすくなるのか。
次の章では、少し視点を変えて、
もしこの4人の心理学者が同じ部屋で話し合ったら、どのような会話になるのかを想像しながら、
ここまでの内容を楽しく振り返ってみましょう。
8. おまけコラム
もし、この4人が同じ部屋で話し合ったら?
ここからは、少しだけ想像の世界に入ってみましょう。
もちろん、これは実際に行われた会話ではありません。
それぞれの心理学者が残した考え方や研究の役割を、分かりやすく理解するための架空の対話です。
もし、ゴードン・オールポート、レイモンド・キャッテル、ポール・コスタ、ロバート・マクレー、そしてトーマス・J・ブシャールが同じ部屋に集まったら、どのような話をするのでしょうか。

ある日、「性格とは何か会議」が始まった
大きな丸いテーブルのある部屋。
そこに、性格心理学を大きく動かした研究者たちが集まっています。
最初に口を開いたのは、ゴードン・オールポートでした。
オールポート
「まず考えたいのは、そもそも性格とは何かということです。
人は、一回だけの行動で決まるものではありません。
ある場面だけを見て、『この人はこういう性格だ』と決めつけるのは危険です。
性格とは、その人に比較的一貫して見られる考え方や感じ方、行動の特徴として考えるべきでしょう。」
それを聞いて、レイモンド・キャッテルがうなずきます。
キャッテル
「その通りです。
しかし、性格を語るだけでは科学になりません。
もし本当に研究したいなら、測る方法が必要です。
『優しい』『社交的』『慎重』という言葉を並べるだけではなく、それらの特徴がどのように関係しているのかを、データで調べなければなりません。
だから私は、多くの性格を表す言葉や質問紙の結果を集め、統計学で分析しようとしました。」
そこへ、ポール・コスタとロバート・マクレーが会話に加わります。
コスタ
「キャッテル先生の研究は、とても重要でした。
性格を測るという道を開いてくれたからです。
ただ、研究が進むにつれて、一つの疑問が出てきました。
人の性格を理解するために、本当に16もの特性が必要なのだろうか、という疑問です。」
マクレー
「私たちは、それまでの多くの研究をもとに、人の性格には大きく5つの特徴が繰り返し見られると考えました。
外向性。
協調性。
誠実性。
神経症傾向。
開放性。
この5つを使うことで、人を単純なタイプに分けるのではなく、その人らしさを立体的に見ることができます。」
その話を聞いていたトーマス・J・ブシャールが、静かに口を開きます。
ブシャール
「みなさんの研究によって、性格とは何か、どう測るか、どう整理するかが見えてきました。
しかし、私はさらにこう考えました。
では、その性格はどこから生まれるのか。
生まれつきなのか。
育った環境なのか。
それとも、その両方なのか。
この問いに答えるために、私は双子研究に注目しました。
特に、別々の家庭で育った一卵性双生児を調べることで、遺伝と環境の関係をより詳しく考えようとしたのです。」
4人の会話から見えてくること
この想像上の会話を見てみると、4人の役割がとても分かりやすくなります。
オールポートは、
「性格とは何か」
を整理しました。
キャッテルは、
「性格はどう測るのか」
を考えました。
コスタとマクレーは、
「性格はどのように分類ではなく整理できるのか」
を示しました。
ブシャールは、
「性格はどこから生まれるのか」
という謎に挑みました。
つまり、4人は別々のことを言っているようで、実は一つの大きな問いにつながっています。
それは、
「人はなぜ、一人ひとり違うのか」
という問いです。
もしこの4人が読者に一言伝えるなら
もし、この4人が今を生きる私たちに一言ずつ伝えるとしたら、こんな言葉になるかもしれません。
オールポート
「あなたの性格は、一回の失敗や一つの行動だけで決まるものではありません。
長い時間の中で見えてくる、あなたらしい特徴を大切にしてください。」
キャッテル
「自分を知るには、感覚だけで決めつけないことです。
思い込みではなく、行動のパターンを丁寧に見てみましょう。」
コスタとマクレー
「人は一つのタイプに収まるほど単純ではありません。
五つの特徴がさまざまに組み合わさって、あなただけの性格が形づくられています。」
ブシャール
「性格は、生まれつきだけでも、育ちだけでも説明できません。
遺伝と環境、そしてあなた自身の経験が重なり合って、今のあなたらしさができています。」
このコラムで伝えたいこと
この4人の研究を並べてみると、性格心理学は一人の天才が完成させた学問ではないことが分かります。
誰かが問いを立て、
次の誰かが測る方法を考え、
さらに別の誰かが整理し、
また別の誰かが、その由来を調べていく。
心理学とは、このようにして少しずつ積み重ねられてきた学問なのです。
そして、それは私たち自身にも似ています。
自分の性格を理解することも、一度で終わるものではありません。
「私はどんな人間なのだろう。」
「どんな場面で力を出しやすいのだろう。」
「どんな環境なら安心できるのだろう。」
そうやって少しずつ問い直しながら、自分という存在を理解していくものです。
性格心理学の歴史は、
心理学者たちが人間を理解しようとした物語であると同時に、
私たち一人ひとりが、自分を理解していくための物語でもあるのかもしれません。
次の章では、ここまでの内容を振り返りながら、心理学者たちが教えてくれた「性格との向き合い方」についてまとめていきましょう。
9. まとめ・考察
ここまで、心理学における性格研究を大きく発展させた心理学者たちを見てきました。
オールポートは、
「性格とは何か」
という問いに向き合いました。
キャッテルは、
「性格はどうすれば科学的に測れるのか」
という問いに挑みました。
コスタとマクレーは、
「人の性格は、どのような特徴で整理できるのか」
という問いを発展させました。
そしてブシャールは、
「性格はどこから生まれるのか」
という問いに、双子研究を通して迫りました。
この流れを見ると、性格心理学は、
一人の研究者が一度に完成させた学問ではないことが分かります。
誰かが問いを立て、
誰かが測る方法を考え、
誰かが整理し、
誰かがその背景を調べる。
その積み重ねによって、現在の性格心理学は形づくられてきました。
つまり、性格心理学の歴史は、
「人はなぜ、一人ひとり違うのか」
という問いを、少しずつ受け渡してきた物語でもあるのです。
性格心理学が教えてくれる一番大切なこと
では、この性格心理学の歴史から、私たちは何を学べるのでしょうか。
私は、もっとも大切なのは、
人は一言では説明できない
ということだと思います。
私たちはつい、
「あの人は明るい人だ」
「あの人は暗い人だ」
「私は心配性だからダメだ」
「自分は飽きっぽい性格だ」
というように、人や自分を短い言葉で決めつけてしまうことがあります。
もちろん、そうした言葉がまったく役に立たないわけではありません。
短い言葉で表すことで、自分や相手を理解しやすくなることもあります。
しかし、性格心理学の歴史を見ていくと、
人の性格は、そんなに単純なものではないことが分かります。
性格には、比較的安定した特徴があります。
でも、完全に固定されているわけではありません。
遺伝の影響もあります。
でも、遺伝だけで決まるわけではありません。
環境も関係します。
でも、環境だけで説明できるわけでもありません。
友人関係。
学校での経験。
仕事。
文化。
時代。
人生で出会った出来事。
本人が選んできた環境。
こうしたものが複雑に重なり合って、
その人らしさは形づくられていきます。
だからこそ、性格を理解することは、
「あなたはこういう人です」
と決めつけることではありません。
むしろ、
「あなたには、こういう傾向があるかもしれない」
「この特徴は、場面によって強みにも弱みにもなるかもしれない」
と、より柔らかく人を見るための手がかりなのです。
「性格を知る」とは、自分を閉じ込めることではない
性格診断や心理学の話を聞くと、
「自分はこういう性格だから仕方ない」
と考えてしまうことがあります。
でも、本来の性格心理学は、
自分を小さな箱に閉じ込めるためのものではありません。
むしろ、
自分をより上手に扱うための道具
です。
たとえば、心配性な人は、
不安を感じやすい一方で、
危険に気づきやすい人でもあります。
慎重な人は、
行動が遅く見えることがある一方で、
失敗を防ぐ力を持っている人でもあります。
好奇心が強い人は、
一つのことを続けにくいことがある一方で、
新しい世界を広げる力を持っている人でもあります。
大切なのは、
性格を
良いか、悪いか
だけで見ることではありません。
その特徴が、
どんな場面で強みになりやすいのか
どんな場面で自分を苦しめやすいのか
を知ることです。
同じ特徴でも、
置かれる環境によって、意味が変わることがあります。
慎重さは、急がなければならない場面では弱みに見えるかもしれません。
でも、ミスを防ぐ必要がある場面では、大きな強みになります。
心配しやすさは、自分を疲れさせることがあります。
でも、事前に準備する力につながることもあります。
つまり性格は、
消すべき欠点ではなく、
扱い方を知ることで力に変えられる特徴
でもあるのです。
心理学が教えてくれるのは、
性格をなくす方法ではありません。
性格と上手に付き合う方法なのかもしれません。
他人を理解するための心理学でもある
性格心理学は、自分を知るためだけのものではありません。
他人を理解するためにも役立ちます。
自分にとっては簡単なことが、
他の人にとっては難しいことがあります。
自分ならすぐ行動できる場面で、
相手は慎重に考えているかもしれません。
自分なら気にならない一言でも、
相手は深く傷ついているかもしれません。
逆に、自分が不安で動けないとき、
相手は自然に前へ進めることもあります。
この違いを、
「変だ」
「弱い」
「わがまま」
と決めつけるのではなく、
「その人には、その人なりの感じ方があるのかもしれない」
と考えられるようになること。
これも、性格心理学が私たちに与えてくれる大切な視点です。
性格を学ぶことは、
人を分類することではありません。
人と人との違いを、
少しだけ丁寧に見ることです。
自分とは違う反応の奥に、
その人の経験や不安や大切にしているものがあるかもしれない。
そう考えられるだけで、
人間関係の見え方は少し変わります。
4人の研究が今の私たちにつながる理由
オールポートが性格を定義しようとしたこと。
キャッテルが性格を測ろうとしたこと。
コスタとマクレーが性格を5つの特性で整理したこと。
ブシャールが遺伝と環境の関係を調べたこと。
これらはすべて、遠い昔の学者だけの話ではありません。
今、私たちが、
「自分はどんな人間なのか」
「なぜ人と違う感じ方をするのか」
「どうすれば自分らしく生きられるのか」
と考えるとき、その背景には、こうした研究の積み重ねがあります。
性格心理学の歴史を学ぶことは、
心理学者の名前を覚えることだけではありません。
それは、
自分や他人を、より深く理解するための考え方を受け取ること
でもあります。
オールポートの研究は、
一回の行動だけで人を決めつけない視点をくれます。
キャッテルの研究は、
印象だけでなく、データから人を理解しようとする視点をくれます。
コスタとマクレーの研究は、
人を一つのタイプに押し込めず、複数の特徴の組み合わせとして見る視点をくれます。
ブシャールの研究は、
性格を「生まれつきか、育ちか」という二択ではなく、
遺伝と環境が重なり合うものとして見る視点をくれます。
この4つの視点を合わせると、
性格はただのラベルではなく、
人を理解するための奥行きのある地図として見えてきます。

考察:性格とは「自分らしく生きるための地図」なのかもしれない
性格という言葉は、
ときに人を縛る言葉にもなります。
「あなたはそういう性格だから」
「私は昔からこうだから」
「性格は変わらないから」
そんなふうに使われることもあります。
しかし、心理学の歴史をたどると、
性格は人を決めつけるための言葉ではないことが見えてきます。
性格とは、
その人がどんな場面で力を出しやすいのか。
どんなときに疲れやすいのか。
どんな環境で安心しやすいのか。
どんな関わり方なら自分らしくいられるのか。
そうしたことを考えるための手がかりです。
言い換えるなら、性格は、
自分らしく生きるための地図
のようなものかもしれません。
地図は、行き先を強制するものではありません。
でも、
自分が今どこにいて、
どちらへ進めそうかを考える助けになります。
性格も同じです。
「この性格だから、こう生きなければならない」
と決めるものではありません。
「自分にはこういう傾向があるから、こういう工夫ができるかもしれない」
と考えるためのものです。
心配しやすいなら、
安心できる準備を増やせるかもしれません。
慎重なら、
大事な判断を任される場面で力を発揮できるかもしれません。
好奇心が強いなら、
新しい学びや出会いの中で自分らしさが広がるかもしれません。
自分の性格を知ることは、
自分をあきらめることではありません。
自分との付き合い方を、少しずつ見つけていくことです。
そして他人の性格を知ることは、
相手を決めつけることではありません。
その人の違いを、少しだけやさしく理解しようとすることです。
もしかすると、性格心理学が本当に教えてくれるのは、
「人は違っていていい」
という、とても当たり前で、とても大切なことなのかもしれません。
10. さらに学びたい人へ
性格心理学を学ぶためのおすすめ書籍
ここまで、性格心理学を作ってきた心理学者たちと、その研究の流れを見てきました。
「性格とは何か」
「性格はどう測るのか」
「ビッグファイブとは何か」
「遺伝と環境はどのように関係するのか」
こうした内容に少しでも興味を持った方は、本を一冊読んでみると、さらに理解が深まります。
ここでは、性格心理学を学びたい人に向けて、目的別に3冊だけ紹介します。
初級編:まずやさしく知りたい人へ
『性格とは何か より良く生きるための心理学』小塩真司 著
最初の一冊としておすすめしたい本です。
性格とは何か、性格は変わるのか、性格と幸せは関係するのかなど、日常の疑問と心理学の研究をつなげながら学べます。
専門書ほど難しくなく、それでいて内容はしっかりしているため、この記事を読んだ後に読む本として相性がよいです。
「心理学に興味はあるけれど、専門書はまだ不安」という人に向いています。
中級編:もう少し本格的に学びたい人へ
『はじめて学ぶパーソナリティ心理学 個性をめぐる冒険』小塩真司 著
性格心理学を、もう少し体系的に学びたい人におすすめです。
オールポートやキャッテル、ビッグファイブなど、今回の記事で触れた内容を、より学問的な流れの中で理解できます。
大学の入門書に近い内容ですが、初めて学ぶ人にも読めるように構成されています。
「人物紹介だけでなく、パーソナリティ心理学全体をきちんと学びたい」という人に向いています。
全体像をつかみたい人へ
『パーソナリティを科学する 特性5因子であなたがわかる』ダニエル・ネトル 著 竹内和世 訳
ビッグファイブを中心に、性格を科学的に理解したい人におすすめの本です。
外向性、神経症傾向、誠実性、調和性、開放性という5つの特性をもとに、性格が日常生活や行動とどう関わるのかを学べます。
この記事で紹介したコスタとマクレーの研究につながる内容を、より具体的に知りたい人に向いています。
少し読みごたえはありますが、「性格診断」ではなく「性格を科学として理解したい」という人には、特に面白く読める一冊です。
どれか一冊だけ選ぶなら
まず一冊だけ読むなら、
『性格とは何か より良く生きるための心理学』
がおすすめです。
読みやすく、性格心理学の全体像をつかみやすいからです。
そこからもっと深く知りたくなったら、
『はじめて学ぶパーソナリティ心理学』
へ進むと、今回の記事で紹介した心理学者たちの位置づけがより理解しやすくなります。
ビッグファイブに特に興味を持った人は、
『パーソナリティを科学する』
を読むと、性格を5つの特性から見る考え方がさらに深まります。
本を読むことで、この記事で紹介した心理学者たちの研究が、ただの歴史ではなく、今の私たちの自己理解にもつながっていることが、よりはっきり見えてくるはずです。
次の章では、最初に登場した物語へ戻り、ミナさんの疑問がどのように解けたのかを見ていきましょう。
11. 疑問が解決した物語
放課後の図書館。
窓の外は、少し夕方の色に変わっていました。
ミナさんは、さっきまで読んでいた心理学の本を、もう一度ゆっくり開きました。
最初に見たときは、
「ビッグファイブ」
「パーソナリティ」
「性格特性」
という言葉が、どれも難しく見えました。
けれど今は、少し違って見えます。
「性格って、誰か一人が突然見つけたものじゃなかったんだ。」
ミナさんは、ノートにそう書きました。
オールポートは、
「性格とは何か」
を考えました。
人の一回だけの行動ではなく、
くり返し表れる、その人らしい考え方や感じ方、行動の傾向に目を向けた人でした。
ミナさんは思いました。
「一度失敗したからといって、その人全部が決まるわけじゃないんだ。」
「一回怒ったから、悪い性格というわけでもないんだ。」
そう考えると、自分にも、友達にも、少しやさしくなれる気がしました。
次に、キャッテルは、
「性格はどうすれば測れるのか」
を考えました。
目に見えない性格を、ただの印象で語るのではなく、
言葉や質問紙、データを使って、できるだけ科学的に調べようとしました。
ミナさんは、クラスの友達のことを思い出しました。
「あの子は明るい」
「あの子はおとなしい」
普段、何気なくそう言っていたけれど、
本当はもっといろいろな特徴が重なっているのかもしれません。
「人を一つの言葉だけで決めつけるのは、少し早いのかもしれない。」
ミナさんは、そう感じました。
そして、コスタとマクレーは、
「性格はどのような特徴で整理できるのか」
を発展させました。
ビッグファイブは、人を5種類に分ける考え方ではありません。
外向性。
協調性。
誠実性。
神経症傾向。
開放性。
この5つのものさしから、人の特徴を立体的に見ようとする考え方です。
ミナさんは、自分のことを考えました。
「私は少し心配しやすいところがある。」
前なら、それを悪いところだと思っていました。
でも今は、少し違います。
心配しやすいからこそ、準備をしっかりできることもあります。
慎重だからこそ、失敗を防げることもあります。
「性格は、良いか悪いかだけで見るものじゃないんだ。」
ミナさんは、ノートに小さくそう書きました。
最後に、ブシャールは、
「性格はどこから生まれるのか」
という問いに向き合いました。
別々の家庭で育った双子を調べることで、
性格には遺伝も環境も関係していることを考える手がかりを示しました。
けれど、それは、
「性格は生まれつきすべて決まる」
という意味ではありません。
また、
「育った環境だけですべて決まる」
という意味でもありません。
性格は、
生まれ持った特徴。
家庭。
学校。
友人関係。
経験。
文化。
そして、自分が選んでいく環境。
そうしたものが重なり合って形づくられていきます。
ミナさんは、少し安心しました。
「私はこういう性格だから、もう変われない。」
そう決めつけなくてもいいのだと思いました。
でも反対に、
「何でも自由に、すぐ変えられる。」
と簡単に考える必要もありません。
大切なのは、自分の特徴を知り、
その特徴とどう付き合っていくかを考えることなのです。
ミナさんは、本を閉じました。
最初に浮かんだ疑問は、もう少し違う形に変わっていました。
「性格って、誰が最初に見つけたんだろう?」
その答えは、
一人の名前だけではありませんでした。
性格心理学は、
オールポートが問いを立て、
キャッテルが測る方法を考え、
コスタとマクレーが整理し、
ブシャールが遺伝と環境の関係を探ったように、
たくさんの研究者が少しずつつないできた学問でした。
ミナさんは、ノートの最後にこう書きました。
性格は、決めつけるための言葉ではない。
自分を知るための手がかり。
人との違いを、少しやさしく見るための道しるべ。

帰り道、ミナさんは友達の顔を思い浮かべました。
よく話す友達。
静かに考える友達。
すぐ行動する友達。
慎重に準備する友達。
前なら、
「自分とは違うな」
で終わっていたかもしれません。
でも今は、
「その人には、その人なりの感じ方があるのかもしれない」
と思えるようになっていました。
そして、自分自身についても少し考えました。
心配しやすいところは、準備する力として使ってみよう。
慎重なところは、大切な判断をするときの強みにしてみよう。
人と比べて落ち込む前に、
自分がどんな場面で力を出しやすいのかを考えてみよう。
ミナさんは、心理学の本をかばんに入れながら思いました。
性格を学ぶことは、
自分を決めつけることではありません。
自分との付き合い方を見つけること。
そして、他人との違いを少しやさしく受け止めること。
それが、性格心理学が教えてくれる大切なことなのかもしれません。
では、あなたはどうでしょうか。
あなたは、自分の性格のどんなところを、
これから少し大切にしてみたいですか。
そして、身近な誰かの「自分とは違うところ」を、
少しだけ違った目で見てみることはできるでしょうか。
12. 文章の締めとして
ここまで、心理学における「性格」というテーマを通して、
性格とは何か。
性格はどのように測られてきたのか。
性格はどのように整理されてきたのか。
そして、性格はどこから生まれるのか。
という問いを見てきました。
性格は、目で見ることはできません。
手で触れることもできません。
けれど私たちは毎日のように、
「自分はなぜこう感じるのだろう」
「あの人はなぜ自分と違う反応をするのだろう」
「自分らしさとは何なのだろう」
と考えながら生きています。
その目に見えないものを、
少しでも理解しようとしてきたのが、性格心理学の歩みでした。
オールポートは、性格を言葉にしようとしました。
キャッテルは、性格を測ろうとしました。
コスタとマクレーは、性格を整理しようとしました。
ブシャールは、性格の由来を探ろうとしました。
そして今もなお、性格についての研究は続いています。
それはきっと、人の心が一つの答えだけでは語れないほど、深く、複雑で、豊かなものだからです。
性格を知ることは、
自分を決めつけることではありません。
誰かを一つの言葉で片づけることでもありません。
むしろ、
自分の感じ方に気づき、
相手の違いに少し想像を向け、
「こういう自分もいる」
「こういう人もいる」
と受け止めるための学びなのだと思います。
私たちは、一人ひとり違います。
感じ方も、
考え方も、
行動の仕方も、
大切にしているものも違います。
けれど、その違いを「変だ」と決めつけるのではなく、
「その人らしさ」として見つめることができたなら、
自分との向き合い方も、
人との関わり方も、
少しだけやさしいものに変わるかもしれません。

補足注意
本記事は、作者が個人で調べられる範囲の情報をもとに、心理学における性格研究をできるだけ分かりやすくまとめたものです。
心理学にはさまざまな立場や考え方があり、ここで紹介した内容だけが唯一の答えというわけではありません。
また、性格心理学は現在も研究が続いている分野です。
今後の研究によって、新しい発見が加わったり、これまでの考え方が見直されたりする可能性もあります。

🧭 本記事のスタンス
この記事は、「これが正解です」と決めつけるためのものではなく、読者の方が心理学に興味を持ち、自分でも調べたり考えたりするための入り口として書いています。
さまざまな視点を大切にしながら、性格というテーマをこれからも一緒に考えていけたらうれしいです。
もしこの記事が、あなたの中に小さな「なぜ?」を残したなら、その問いをそのままにせず、次は本や論文、信頼できる資料の中へ進んでみてください。性格という目に見えないものをたどる旅は、知れば知るほど、自分を知り、人を知り、心の奥にある「その人らしさ」を見つめる旅へと続いていくのかもしれません。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
もしかすると、心理学における「性格」の研究は、人を一つの言葉で決めつけるのではなく、自分と他人の違いを理解しながら、それぞれの人生を少し大切に歩いていく方法を教えてくれているのかもしれません。


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