人づてのほめ言葉がなぜこんなに刺さるのか──口コミを信じてしまう『ウィンザー効果』の心理学

考える

口コミ・第三者の評価を味方につける行動心理学入門

上司から直接より「人づてのほめ言葉」がうれしい理由『ウィンザー効果』ってなに?第三者の声の心理学

代表例

たとえば、転職活動のとき。

企業の採用ページで「働きやすい職場です!」と書いてあっても
「ほんとかな?」とちょっと疑ってしまうのに、

友達から
「うちの先輩、その会社に転職したけど、“人がめっちゃいい”って言ってたよ」
と聞いた瞬間、

「お、それは気になる…!」と急にその会社が良さそうに感じたことはありませんか?

この

本人の言葉より、“人づての言葉”のほうが信じられて、心に刺さる

という不思議な現象こそが、今回のテーマです。

30秒で分かる結論

ウィンザー効果』とは?

当事者本人の言葉よりも、利害関係の薄い第三者を通して伝わった情報のほうが、信じやすく・心に響きやすくなる心理現象のことです。

上司から直接ほめられるより、
同僚経由で「さっき部長が“あのプレゼンすごく良かった”って言ってたよ」と聞いたほうがうれしいのは、
まさにウィンザー効果が働いているから、というわけですね。

小学生にもスッキリわかる説明

子ども向けに、もっとかみ砕くと…

「その人が得しなさそうな人のほめ言葉ほど、本当っぽく聞こえてうれしくなる」

という心のくせです。

たとえば、

  • お店のお兄さんが「このお菓子おいしいよ!」と言うより
  • たまたま居合わせたお客さんが「これ、まじで一番おいしい」と話しているのを聞いたほうが
     「食べてみたい!」って思いやすい、というイメージです。

「だって、その人がウソついても得しないでしょ?」
と、私たちの頭が勝手に判断しているんですね。

ここまでで、『ウィンザー効果』ざっくりした全体像はつかめました。

ここからは、

  • どんな場面で起こりやすいのか
  • どんな歴史や研究の裏付けがあるのか
  • 仕事・恋愛・子育て・マーケティングでどう活かせるのか

を、物語とともに深掘りしていきます。

1. 今回の現象とは?

「本人より“人づてのほめ言葉”が刺さる」のはなぜ?

キャッチフレーズ風の疑問

「ウィンザー効果とはどうして、“本人より人づてのほめ言葉”がうれしく感じるのか?」

「あ、この気持ち知ってる!」となる“あるある”集

こんなこと、ありませんか?

あるある①:上司のほめ言葉より、同僚の一言が刺さるとき

  • 上司「今日の資料、よくできてたよ。お疲れさま」
  • あなた「(ありがたいけど…立場上、言ってるだけかも?)」

その数時間後、同僚からの一言。

「さっき部長がね、『今日の資料めちゃくちゃ分かりやすかった』って言ってたよ」

その瞬間、
さっきよりずっと大きいガッツポーズを心の中で決めてしまう。

あるある②:好きな人本人より、“友達経由の好意”が破壊力MAX

  • 本人から「今日の服、似合ってるね」と言われる
  • 友達から「○○くんが、“あの服似合うよな”って言ってたよ」と聞く

なぜか、後者のほうが顔が真っ赤になってしまう。

あるある③:広告より、口コミの一言に心が動く

  • 新しくできたパン屋さんのチラシ → ふーん…で終わる
  • 友達の「ここのクロワッサン、人生で一番かも」 → その日に行きたくなる

あるある④:自分の評価を他人の口から聞いたときのドキドキ

  • 「上司が“あの人、最近すごく成長してるよね”って言ってたよ」
  • 「先生が、“最近ほんとにがんばってる”って褒めてたよ」

こういう「いないところで自分を褒めてくれていた話」を聞くと、
じわっと胸があたたかくなりますよね。

この記事を読み進めると…

  • 「なんでこんなにうれしいの?」というモヤモヤに名前がついてスッキリします
  • 職場・家庭・恋愛・子育てで、第三者の声をうまく使ったコミュニケーションができるようになります
  • 口コミやレビューにだまされない、**ステマ(ステルスマーケティング)対策の“心の盾”**が手に入ります

次は、この“あるある”が起こる瞬間を、ひとつの物語としてのぞいてみましょう。

2. 疑問が浮かんだ物語

「なんで人づてのほうがうれしいの?」と気づいた日

会社員のミユさんは、入社3年目の普通の事務職。
その日は、大きなプロジェクトの進捗報告会がありました。

慣れないプレゼンに緊張しながらも、なんとか資料を説明し終えます。
会議のあと、部長からこんな言葉をかけられました。

「ミユさん、プレゼン分かりやすかったよ。お疲れさま」

ありがたい。
でも同時に、

「(こういう場だから、そう言うしかないよね…)」
「(本音なのかな?社交辞令かも)」

と、どこか冷静な自分もいました。

その日の夕方、コピー機の前で同僚のタカシさんとばったり会います。

「そういえばさっき部長がね、
『今日のミユさんのプレゼン、ほんと分かりやすかったな。
あの資料、他のチームにも共有したい』って言ってたよ」

その瞬間、胸の奥で何かが“ぽんっ”とはじけました。

「えっ、そんなふうに言ってくれてたの…?」

さっき部長から直接ほめられたときより、
ずっと嬉しくて、ずっとじんわり心にしみていきます。

でも、そのうれしさの裏で、ふとこんな疑問が顔を出します。

「なんで、同じような内容なのに
本人からより、人づてに聞いたほうが
こんなにうれしいんだろう?」

「どうしてこんな気持ちになるんだろう」
「この感覚には、なにか名前がついているのかな?」

ミユさんの中に、「このナゾをちゃんと知りたい」という
小さな探究心が芽生えた瞬間でした。

この“モヤモヤとうれしさがまざった不思議な感情”の正体が、まさに今回のテーマです。
次の章で、さっそく名前と正体を見ていきましょう。

3. すぐに分かる結論

お答えします。
――それは『ウィンザー効果』です

ミユさんが感じたような、

  • 本人からの言葉より
  • 第三者から聞いた言葉のほうがうれしい・信じやすい

という現象は、心理学・ビジネスの世界で
『ウィンザー効果』と呼ばれています。

もう一度、やさしく言いかえると…

「自分に得がなさそうな人の言葉ほど、“本音っぽく”感じて信じやすくなる心のくせ」

です。

  • 部長本人:立場上、部下を勇気づけるために褒めているのかもしれない
  • 同僚:別にミユさんをおだてても、得することはなさそう

だからこそ、同僚の言葉を通して聞くと、

「あ、これは“本当にそう思ってくれてる”ってことなんだ」

と感じやすいのです。

このあと、

  • ウィンザー効果のもっと正式な意味・由来
  • 脳や心理学の研究とどうつながっているのか
  • 日常生活やマーケティングで、どう活かしたらいいのか

を、順番に詳しく見ていきます。

「この不思議な現象を、もう少しちゃんと理解したい」

そう思った方は、ぜひこのまま読み進めてください。
ウィンザー効果を知ると、自分の気持ちにも、人の言葉にも、前よりやさしくなれます。

4. 『ウィンザー効果』とは?

定義

日本の心理・ビジネス関連の解説では、ウィンザー効果は次のように説明されます。

当事者本人が直接発信した情報よりも、第三者を介して伝わる情報のほうが信頼されやすく、説得力が高くなる効果

マーケティングの文脈では、

  • 店員や企業が自ら商品をほめるより
  • 実際に使ったお客さんの感想や、第三者機関の評価

のほうが、購入の後押しになる現象として紹介されます。

名前の由来はミステリー小説のひと言

「ウィンザー効果」という名前は、
アメリカの作家 アーリーン・ロマノネス(Arlene Romonones) が書いた
スパイ小説『伯爵夫人はスパイ』に登場する、ウィンザー伯爵夫人の言葉が由来とされています。

作品の中で、ウィンザー伯爵夫人はおおよそこんな意味のことを言います。

「人を説得したいなら、直接ほめるより、
第三者のほめ言葉を伝えたほうがいちばん効果的よ」

日本のビジネス書や講座などでこのセリフがよく引用され、
いつしかこの現象全体を「ウィンザー効果」と呼ぶようになりました。

英語圏では“ニックネーム”的な扱い

少し専門的な話をすると…。

  • 日本語の書籍やWeb記事では「ウィンザー効果」はよく登場します
  • しかし、英語の心理学論文では “Windsor effect” という用語はほとんど使われていません

日本語版のウィキペディアでも、
「英語での用例が見当たらない」と注意書きがあります。

そのため、

  • 現象そのものは「口コミ」「情報源の信頼性」として世界中で研究されている
  • ただし「ウィンザー効果」という名前は、日本で広まった“あだ名”のような位置づけ

と理解しておくと、バランスがよいです。

このように、「ウィンザー効果」は
小説発のニックネーム+心理学で昔から研究されてきたテーマの組み合わせ
だと考えるとスッキリします。

次は、「なぜ今、この現象がとくに重要視されるのか」を見ていきましょう。

5. なぜ注目されるのか?

口コミ社会とウィンザー効果』

いま私たちは、1日に何十件という**「第三者の声」**にさらされています。

  • レストラン → 食べログ・Googleマップの★とレビュー
  • 買い物 → Amazon・楽天の口コミ
  • 転職 → 転職サイトの企業クチコミ
  • 旅行 → 旅行サイトのレビューやSNSの投稿

国際的な調査では、

友人や家族からの推薦を「信頼できる」と答えた人は、世界全体で80〜90%にのぼる

という結果が出ています。

つまり、

「第三者の口コミを信じる」というウィンザー効果的な反応は
世界中の人がふつうに持っている心のクセ

だということです。

「情報源の信頼性」を扱う古典的な研究

ウィンザー効果に近い考え方として、
心理学には 「情報源の信頼性(ソース・クレディビリティ)」 という理論があります。

代表的なのが、ホヴランドとヴァイス(Hovland & Weiss 1951)の研究です。

ざっくりいうと、こんな実験でした。

  1. 同じ内容のメッセージ(あるテーマについての主張)を用意
  2. それを
    • 「権威ある科学雑誌」など信頼できそうな情報源から来たメッセージ
    • 「ゴシップ雑誌」など信頼できなさそうな情報源から来たメッセージ
      の2パターンとして提示
  3. どちらのほうが意見を変える力(説得力)が大きいかを調べる

結果は直感どおりで、

信頼できそうな情報源から出たメッセージほど、人の態度を大きく変えた

というものです。

ここでは「第三者かどうか」というより
**「その人(その媒体)をどれだけ信じるか」**が重要なポイントでした。

ウィンザー効果は、この「情報源の信頼性」の考え方を
第三者の口コミや紹介にフォーカスして分かりやすくした言葉だ、と見ることができます。

脳科学から見た「信頼」のしくみ

「第三者の声を信じる・信じない」という判断は、
脳の中ではどのように行われているのでしょうか。

脳科学の研究では、

  • 人の顔の「信頼できそう/怪しそう」を評価するとき
  • あるいは「信頼できる声」かどうかを聞き分けるとき

**扁桃体(へんとうたい)**と呼ばれる脳の部位が強く関わっていることが報告されています。

扁桃体(へんとうたい)…
感情の処理や「危険か・安全か」の判断に深く関わる脳の一部。

fMRI(エフエムアールアイ:機能的磁気共鳴画像法)という
「脳の活動をリアルタイムで撮影する装置」を使った研究では、

  • 信頼できなさそうな顔を見たとき
  • あるいは、信頼度の極端に高い・低い顔を見たとき

に、扁桃体の反応が強くなることが分かっています。

ウィンザー効果そのものを直接測った脳研究はまだ多くありませんが、

「この情報は信じてよさそうか?」という判断も、
こうした“信頼フィルター”を担う脳のネットワークが関わっている

と考えられます。

  • 当事者:得をする立場 → 「盛ってるかも」と脳が自動的に警戒
  • 第三者:損得がなさそう → 「本音っぽい」と感じて扁桃体の警戒がゆるむ

というイメージです。

デジタル時代での“使われ方”の変化

小説で語られた時代のウィンザー効果は、
主に「社交場でのほめ言葉」のテクニックでした。

しかし現在では、

  • 口コミサイト・レビュー
  • SNSの感想投稿
  • インフルエンサーの紹介
  • 第三者機関の認証マーク

など、デジタルな宣伝・情報発信の根っこにまで広がっています。

一方で、ステルスマーケティング(広告と明記しない宣伝)が
ウィンザー効果やバンドワゴン効果(みんながやっているから自分も、という心理)を悪用しているとして、
日本でも景品表示法による規制が始まりました。

このように、ウィンザー効果は

「信頼できる第三者の声」は、私たちの行動を大きく変える
だからこそ、ビジネスでも、法律でも、無視できない存在になっている

というわけです。

次の章では、ウィンザー効果を日常生活の中でどう活かせばいいのかを、具体的に見ていきます。

6. 実生活への応用例

日常で使える「ほめ言葉のバトン」と口コミの力

職場で:ほめ言葉の“バトン”を回す

例①:上司として部下を伸ばしたいとき

  1. 本人に直接ほめる
     → 「今日の対応、とても丁寧でよかったよ」
  2. その場にいない第三者にも伝えておく
     → 別の先輩に「さっきの○○さんの対応、すごく助かった」と話す
  3. 後で先輩が本人に伝える
     → 「さっきA課長が、“今日の対応すごく良かった”って褒めてたよ」

この**“二段階ほめ”**は、
本人のやる気と自己肯定感をぐっと引き上げてくれます。

例②:同僚同士で“いい噂”を増やす

  • 「さっきの資料、ほんと分かりやすかったよ。今度、部長にもそう言っとくね」
  • 「別チームの人が、“あの人の説明いつも助かる”って言ってたよ」

本人がいないところでこそ、
相手の良さをきちんと言葉にしておくことがポイントです。

恋愛・家族関係で

  • 友達 → 「○○が、“あの人ほんと頼りになる”って言ってたよ」
  • 親 → 「先生が、“最近すごく集中して授業聞いてますよ”って褒めてたよ」
  • パートナー → 「あなたのこと、同僚が“仕事めちゃくちゃ丁寧な人”って言ってた」

直接「すごいね」と言われるのが苦手な人でも、
第三者経由なら素直に受け取りやすい傾向があります。

マーケティング・発信活動での活かし方

ビジネスの場面では、ウィンザー効果はとても強力です

すぐにできる工夫

  • 商品ページに、具体的な「お客様の声」を掲載する
  • 導入事例・成功事例を、インタビュー形式で紹介する
  • 公的な第三者機関の認証や、受賞歴を分かりやすく表示する
  • SNSで、実際のユーザーの投稿(UGC)を許可を得て紹介する

効果的に使うポイント

  • 「誰の声か?」という第三者の信頼性を大切にする
  • 「よかったです」だけでなく、具体的なストーリーや数字も添える
  • 良い話だけでなく、ちょっとした改善点にも触れたほうが、かえって信用されやすい

メリットとデメリット

メリット

  • 相手の自己肯定感を静かに高められる
  • 信頼関係が深まりやすい
  • 営業・PRの「売り込み感」をやわらげられる

デメリット・注意点

  • やりすぎると「操作されている」と感じさせてしまう
  • 「やらせ口コミ」「サクラ」など、倫理的に問題のある行為と紙一重
  • 第三者の信頼性が低いと、逆効果になることもある

ウィンザー効果は、
「人をだますテクニック」ではなく、
「本当にある価値を、第三者の口を借りて丁寧に伝える技術」

として使うのが理想です。

6.5.よくある質問Q&A

ウィンザー効果について読み進めるうちに、
「ステマと何が違うの?」「恋愛や子育てにも使えるの?」「だまされないコツは?」
など、いくつか新しい疑問も浮かんできたかもしれません。
ここでは、よくいただくギモンをQ&A形式でまとめました。
気になるところから、チェックしてみてください。

ウィンザー効果をもっと深く知りたい人へ

Q1. ウィンザー効果って、本当に“心理学用語”なんですか?

A.「ウィンザー効果」という名前は、日本で広まった俗称に近い言葉です。
ただし、現象そのものは、
「情報源の信頼性(ソース・クレディビリティ)」
「口コミ(ワード・オブ・マウス)」
などとして、海外の心理学やマーケティングでも古くから研究されています。
つまり、
名前はニックネーム寄りだけど、中身はちゃんと心理学のテーマに対応している
と考えると分かりやすいです。

Q2. ウィンザー効果と「単なるお世辞」はどう違うの?

A.「お世辞」は直接その人に向けて言うほめ言葉ですが、
ウィンザー効果でポイントになるのは、
第三者を経由して伝わること
その第三者が「得しなさそう」に見えることです。

本人から「すごいね」と言われると
「社交辞令かな?」と疑いやすい一方、
第三者から
「○○さんが“あなたのこといつも褒めてたよ”って言ってた」
と聞くと、
“本音っぽい”と感じやすくなるのがウィンザー効果です。

Q3. ウィンザー効果って、ステマ(ステルスマーケティング)と同じですか?

A.同じではありません。

ウィンザー効果
→ 「第三者の声が信じられやすい」という人間の心理の傾向
ステルスマーケティング(ステマ)
→ その心理を悪用して、広告であることを隠して宣伝する行為
です。

ウィンザー効果自体は善悪のない「心のクセ」です。
それを 正直・誠実に使うか、
だまして使うかで意味が変わってきます。
ブログでもビジネスでも、
「これは広告です」「PRです」ときちんと示した上で、
本当に役に立つ情報や口コミだけを紹介することが大切ですね。

Q4. ウィンザー効果は、恋愛にも使えるんですか?

A.はい、恋愛でもよく起こります。

本人からの「かわいいね」より、
友達経由の「○○くんが“あの服似合うよね”って言ってたよ」
のほうが、心に刺さってしまうあの感覚もウィンザー効果の一例です。

ただし、恋愛で使うときは、
意図的に「操作」したり、ウソの情報を流したりしないことが大前提。
本当に相手のことを褒めていたときだけ、そっと伝える
いないところで悪口ではなく「良い噂」を残す
という使い方なら、
ウィンザー効果はやさしい形で人間関係を育ててくれるはずです。

Q5. ウィンザー効果って、子育てにも活かせますか?

A.とても活かしやすい分野です。

たとえば、
「先生が、“最近すごくがんばってるよ”って褒めてたよ」
「おばあちゃんが、“あの子は優しいね”って言ってたよ」
といった言葉は、
子ども本人に直接「すごいね」と言うよりも
すっと心に入っていきやすいことがあります。

ポイントは、
実際に言われたことだけを伝える
「〇〇がすごい=他の子がダメ」とは結びつけない
ということ。
比較ではなく、「その子自身の良さ」を伝えるツールとして
ウィンザー効果を活かすと、とても力になります。

Q6. ビジネスでウィンザー効果を使うとき、やってはいけないことは?

A.サクラ・やらせレビューを使う

お金を払っているのに、「普通の口コミ」のように装う
マイナスの声を一切見せない

こういった行為は、
ウィンザー効果を利用した “だまし” に近い使い方です。
結果として、
信頼を一気に失う
法律(景品表示法など)の問題になる
リスクもあります。

“その商品やサービスの本当の良さ”を、
第三者のリアルな声で伝えるために使う。
これがビジネスでの健全な使い方です。

Q7. 「私は人の口コミに弱い…」そんな自分を守る方法はありますか?

A.ウィンザー効果を「知っている」ことが、すでに最初の防御です。

買い物やサービス選びの前に、こんなチェックをしてみてください。
これは広告・PRだと明示されているか?
良い点だけでなく、悪い点も書かれているか?
他のサイト・他の人の口コミも見たか?
「この人には何か得があるのかな?」と一度立ち止まったか?

これだけでも、
“ウィンザー効果に乗せられすぎない自分”を作ることができます。
「人の声に耳を傾けるやさしさ」と
「情報をそのまま信じすぎない冷静さ」のバランスが大切ですね。

Q8. ウィンザー効果と似た心理学用語ってありますか?

A.いくつか近い考え方があります。

バンドワゴン効果
「みんながいいと言っているから、自分もいいと思いやすくなる」
ハロー効果
「一つの良い印象が、他の面までよく見せてしまう」
権威性の原理
「専門家や有名人の言うことを、信じやすくなる」

ウィンザー効果は、
「第三者の声」や「口コミ」に焦点を当てた言葉なので、
これらと組み合わせて理解すると、
人の心の動きがより立体的に見えてきます。

次は、この効果をめぐる“誤解”や“落とし穴”についても正直に見ていきましょう。

7. 注意点や誤解されがちな点

「第三者なら誰でもOK」ではない

ウィンザー効果だからといって、

  • 企業とべったりなインフルエンサーだけがほめている
  • 具体性のない★5レビューばかり並んでいる
  • 同じ文章がコピペされた口コミが大量に投稿されている

といったケースで、信頼感が高まるわけではありません

第三者であっても、

「この人は、この商品やサービスについて、
本当に自分の言葉で話していそうか?」

という視点が大事です。

ステルスマーケティングという落とし穴

ウィンザー効果は、悪用されるとステルスマーケティング(ステマ)につながります。

  • お金をもらっているのに、そのことを隠して口コミを書く
  • 広告だと示さず、普通の感想のように商品を褒める

日本では2023年10月から、
「広告なのに広告と分からせない表示」は景品表示法違反とみなされるようになりました。

ウィンザー効果の

「第三者の声は信じやすい」

という性質を利用して、消費者をだます行為は明確にNGです。

誤解しないためのセルフチェック

口コミやレビューを見るときは、次の点を意識してみてください。

  • 「PR」「広告」「タイアップ」の明示はあるか?
  • 良い点と悪い点、両方が書かれているか?
  • 複数のサイト・複数の人の声を見比べたか?
  • 「本当にこの人には、何のメリットもない発言だろうか?」と一度立ち止まってみる

これだけでも、ウィンザー効果につけ込んだ情報に振り回されにくくなるはずです。

ここまでで、「うれしいけれど、時に危ないウィンザー効果」の輪郭が見えてきました。
次は、ちょっとマニアックな“用語の立ち位置”のお話です。

8. おまけコラム

「ウィンザー効果」は世界共通語?それとも日本オリジナル?

日本のマーケティング記事や心理学本では、
「ウィンザー効果」という言葉はかなりメジャーです。

一方で、英語圏の研究では、

  • third-party endorsement(サードパーティ・エンドースメント:第三者の推薦)
  • word-of-mouth(ワード・オブ・マウス:口コミ)
  • source credibility(ソース・クレディビリティ:情報源の信頼性)

といったキーワードで議論されており、
「Windsor effect」という表現はほぼ登場しません。

ウィキペディア日本語版でもその点が指摘されています。

つまり、

中身としては国際的に研究されているけれど、
「ウィンザー効果」というラベルは日本で広まったニックネーム

という、ちょっとユニークな立ち位置の心理効果なのです。

さあ、ここまで来たらラストスパート。
次の章では、この記事全体を振り返りつつ、
「あなたならこの効果をどう活かす?」という問いも投げかけてみます。

9. まとめ・考察

「自分の価値は、他人の口から育っていく」

ここまでの内容をギュッとまとめると…

この記事の要点

  • ウィンザー効果とは、
    当事者本人の言葉より、第三者を通じて伝わる情報のほうが信頼されやすい心理現象
  • 背景には、「情報源の信頼性」を扱う古典的な研究と、
    扁桃体などが関わる**“信頼フィルター”の脳の働き**がある。
  • マーケティングや人間関係でうまく活かせば、
    信頼を高め、コミュニケーションをなめらかにしてくれる。
  • しかしステルスマーケティングなど、
    悪用されると法律違反や信頼崩壊につながるため、倫理がとても重要。

少し高尚(っぽい)考察をすると…

ウィンザー効果は、

「人は、自分の評価を“自分の口”ではなく、“他人が語る物語”で受け取っている」

という、人間関係の本質を映しているようにも見えます。

だからこそ、

  • その人がいないところで、どんな言葉を選ぶか
  • 見えない場面で、相手のことをどう扱うか

が、長い目で見て一番その人の評価を形づくるのかもしれません。

ちょっとユニークな視点から言うと…

もし、なかなか自分への「良い噂」を耳にしないとしたら、
それはあなたがダメなわけではなく、ただ単に

「まだ誰も、あなたの良さを“物語として語るチャンス”を得ていないだけ」

かもしれません。

今日からできる、小さな実験として――

「誰かの良いところをひとつだけ、その人がいないところで、ちゃんと言葉にしてみる」

ことから始めてみませんか?

それが巡り巡って、自分のもとに“ウィンザー効果的なほめ言葉”として返ってくる未来も、きっとあるはずです。

――この先は、あなたの興味に合わせて。
応用編へ。
「ウィンザー効果」を、自分の言葉で語れるようになりましょう。

10. 応用編

語彙を増やして「ウィンザー効果」を自分の言葉で説明してみよう

日常会話で使えるひと言フレーズ

友達との会話で

「本人から言われるより、人づてに聞くほめ言葉って刺さるよね。
これ、“ウィンザー効果”っていうらしいよ」

職場の1on1で

「あえて、ミーティングではなく第三者のフィードバックを使って
モチベーションを上げるって、ウィンザー効果の活用ですね」

家族との会話で

「先生が褒めてたよって伝えるの、実は“ウィンザー効果”なんだよ。
直接言われるより、ちょっと嬉しく感じない?」

仕事で使える“ひとこと説明テンプレ”

プレゼン資料や企画書で、ウィンザー効果を説明したいときのテンプレです。

「当事者本人の自己PRよりも、第三者の推薦・口コミ・レビューのほうが
信頼されやすい心理効果(ウィンザー効果)を活用します。」

「広告コピーより、利用者の生の声を前面に出すことで、
ウィンザー効果による信頼性向上をねらいます。」

「社員本人ではなく、同僚・上司・顧客からのコメントで
評価を伝えることで、ウィンザー効果を期待できます。」

そのままコピペして使っていただいてOKです。

自分の体験を「ウィンザー効果ストーリー」に変えてみる

最後に、あなた自身の体験を
**1本の“ウィンザー効果ストーリー”**にしてみましょう。

  1. 「人づてのほめ言葉」をもらった経験を思い出す
    • どんな場面で
    • 誰から
    • なんと言われたか
      を一度メモに書き出す
  2. 「なぜ本人から言われるより、うれしかったのか?」を
    自分なりの言葉で書いてみる

それだけで、
この記事で読んだ知識が**「自分の言葉」**になっていきます。

ここまで読んで、「もっとじっくり学びたい」と感じた方へ。
次の章で、実際に手に取れる本や、体験できる場所をご紹介します。

11.更に学びたい人へ

ここまで読んで
「ウィンザー効果、もっとちゃんと勉強してみたい」
「第三者の声の心理を、仕事や日常で使いこなしたい」

そう感じた方のために、3冊を目的別にご紹介します。

① 初学者・小学生高学年にもおすすめ
『今すぐ君の武器になる 今日から使える心理学』文響社(編集)

この本は、
「心理学ってむずかしそう…」というイメージをくつがえしてくれる、
“心理学の入門書”兼・“読み物” のような一冊です。

こんな人におすすめ

心理学そのものが初めてで、まずは広く浅く知りたい
ウィンザー効果も含めて、「カリギュラ効果」「ダニング=クルーガー効果」など
有名な心理効果を 一気にざっと眺めたいイラスト付きでサクサク読み進めたい/子どもと一緒に心理学を楽しみたい

この本のここが“推しポイント”

1項目ごとの文章が短く、スマホ読書との相性が良い
学術書というより「心理学トリビア図鑑」に近いので、
読みたいところだけつまみ読みしてもOK
この記事で学んだウィンザー効果を、
「他にはどんな心理効果があるの?」と広げていくのにぴったり

② ビジネスでウィンザー効果を使いこなしたい人へ
『ビジネスに活かす行動心理学講座6:
ウインザー効果 なぜ“他人の声”は信じられるのか?』
田中博樹(著)

こちらは、タイトルどおり
「ウィンザー効果そのもの」をビジネス目線で掘り下げた書籍です。
行動心理学(「人がどう動くか」をデータで研究する心理学の分野)
その中でのウィンザー効果
それを 営業・集客・ブランディング にどう応用するか
といった、実務寄りの視点 がテーマになっています。

こんな人におすすめ

自社の商品・サービスに「お客様の声」をもっと活かしたい
LP(ランディングページ)や営業資料に、
どんな第三者コメントを載せると効くか知りたい
「言葉の選び方」だけでなく「誰に言ってもらうか」を
設計してみたいマーケター・フリーランス・経営者

この本の“推しポイント”

ウィンザー効果に話題を集中させているので、
「とにかくここだけ深く理解したい」というニーズと相性が良い
一般向けビジネス書よりも分量が絞られた電子書籍なので、
スキマ時間で読みきりやすい
本記事で学んだ内容を、「自分のビジネスに置き換える視点」で
もう一段深く整理したい方の“次の一歩”にちょうどいい

③ ウィンザー効果の“原点”の物語に浸りたい人へ
『伯爵夫人はスパイ』アーリーン・ロマノネス(著)/小泉摩耶(訳)

最後は、少し毛色の違う一冊です。
これは心理学の教科書ではなく、
元モデルのアメリカ人女性アーリーンが
第二次世界大戦中〜戦後のヨーロッパで
CIAのスパイとして活動した実体験
をもとに書かれた、自伝的スパイ・ノンフィクションです。

物語の中には、
イギリス王室ゆかりの ウィンザー伯爵夫人(公爵夫人) が登場し、
「第三者の褒め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ」
という趣旨のセリフを語ります。
この一言が、日本で「ウィンザー効果」という名前が広まるきっかけ
なったと多くの解説サイトや辞典で紹介されています。

本の特徴

スパイ活動・上流階級の舞踏会・冷戦下の諜報戦など、
ドラマチックな舞台設定
「情報」「信頼」「噂」が、命に関わるレベルで重く扱われる世界観
ウィンザー夫人の印象的なセリフを通じて、
「第三者の言葉の威力」を物語として体感できる
現在は初版(講談社・1991年刊)が中心で、
新品よりは古書店や図書館で出会うことが多い一冊です。

こんな人におすすめ

「理屈だけでなく、ストーリーで心に残したい」
ウィンザー効果という言葉が生まれた“空気感”を味わってみたい
スパイもの・ノンフィクションが好きで、一気読みしたい

この本の“推しポイント”

心理用語の説明を読むだけでは得られない、
「情報が人を動かすリアルさ」が伝わってくる
ウィンザー夫人のセリフを、
“引用された二次情報”ではなく 原典の文脈の中で味わえる
この記事で学んだことを、「物語の世界」と結びつけて
もっと記憶に残る形にしたい人にぴったり

小さなまとめと、次の一歩へ

ここで紹介した3冊は、それぞれ役割が少しずつ違います。

どれか1冊でも手に取ってみると、
この記事で学んだ「人づてのほめ言葉がうれしい理由」が、
より立体的に見えてくるはずです。

ウィンザー効果をキーワードに、
あなた自身の興味の方向へ、
ぜひ一歩踏み出してみてください。

12.疑問が解決した物語

あの日からしばらくして、ミユさんは、
「人づてのほめ言葉はなぜうれしいのか?」を解説したブログ記事を見つけました。

そこには「本人より第三者からのほめ言葉のほうが、本音だと感じやすい」という
ウィンザー効果の説明があり、
あの日の自分の気持ちそのものが、ことばになっていました。

「そっか。私がおかしいんじゃなくて、
誰にでもある心のくせなんだ…」

そう分かったとき、モヤモヤがスッと軽くなりました。

それからミユさんは、ひとつ決めごとをしました。

「いいな、と思ったところは、
本人がいない場でもちゃんと口にしよう」

後輩の対応が良かったときは部長に、
助けてくれた同僚のことは別のメンバーに、
さりげなく“いい噂”として伝えるようにしたのです。

数日後、今度は同僚からこんな言葉を聞きました。

「部長がね、『最近ミユさんがチームの雰囲気を良くしてくれてる』って
褒めてたよ」

胸の中で、また“ぽんっ”と何かがはじけました。

でも今回は、

「ああ、これがウィンザー効果なんだ。
私が誰かのいい話を運んだみたいに、
誰かも、私のいい話を運んでくれているんだな」

と、前よりも落ち着いて、素直にうれしさを受け取ることができました。

それ以来、ミユさんにとって「ほめる」とは

  • 目の前の相手に伝えること
  • その人がいない場所でも、その人の良さを語ること

の両方を含む、大事な行動になりました。

あなたならどうでしょうか?

  • あなたが一番うれしかった「人づてのほめ言葉」は、どんな言葉でしたか?
  • そして明日、誰のどんな「いいところ」を、
    その人のいないところでそっと伝えてみたいですか?

13.文章の締めとして

ここまで読んでくださった今、
最初の「なんで人づてのほめ言葉ってこんなにうれしいんだろう?」というモヤモヤは、
少しカタチが見えてきたのではないでしょうか。

ウィンザー効果という名前を知ると、
ただ「うれしい」で終わらず、

「あ、いまウィンザー効果が起きてるな」

と一歩引いて味わえるようになります。
それだけで、感情に振り回される側から、
自分の気持ちを静かに眺められる側へ、少しだけ立ち位置が変わります。

そしてあなたはもう、
ただ“受け取る側”だけでなく、

  • 誰かの良いところを、人づてにそっと伝えてあげる
  • 耳にした「いい噂」を、ちゃんと本人に返してあげる

そんな “ウィンザー効果を生み出す側” にもなれる人です。

小さなひと言が、誰かの一日をやさしく塗り替えるかもしれません。

注意補足

本記事の内容は、著者が個人で調べられる範囲で、
ウィンザー効果に関する日本語の解説サイト・専門団体・書籍
など、信頼できると判断した情報源をもとに、
できる限り正確になるよう注意してまとめています。
ただし、
「ウィンザー効果」という用語自体は、主に日本で使われる俗称的な側面もあります
研究の進展や新しい知見によって、解釈や位置づけが変わる可能性があることを、
ご了承ください。

🧭 本記事のスタンス

ウィンザー効果を「だますテクニック」としてではなく、
「人の価値を正しく・気持ちよく伝えるためのヒント」として紹介しています

ウィンザー効果に少しでも「いいな」と心が動いたら、
今度は“人づて”ならぬ“文づて”の世界へ
――本や論文の声もたどりながら、あなた自身のウィンザー効果を深く育ててみてください。

最後まで読んでいただき、

本当にありがとうございました。

あなたの何気ないひと言が、誰かの心にあたたかな「ウィンザー効果」を運びますように。

そして、あなたの毎日の「ほめ言葉」と「口コミ」が、
少しでもやさしく、少しでも誠実なものになりますように。

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