透明なのに見える“ゆらゆら”の正体を、物語と再現実験でスッキリ解き明かします。
アイスティーにガムシロを入れたら透明な線がゆらゆら…ナンデ?正体は『シュリーレン現象』です
代表例
真夏の道路や車の上の景色が、
もやもや〜っと揺れて見えること、ありませんか?
「暑いから」で終わらせると、ちょっともったいないです。
あれは実は、空気の“温度のむら”がつくる見え方の変化なんです。

では、答えを先に言いますね。
30秒で分かる結論
道路の上がゆらゆら揺れて見えるのは、地面付近の温度差で空気の密度が変わり、屈折率(くっせつりつ:光の曲がりやすさ)が場所ごとに違って光が曲がるためです。
※先に出した「道路の上のゆらゆら」は、厳密にはシュリーレン現象そのものの呼び名ではなく、気象現象としての**陽炎(かげろう)**です。
ただ、仕組みがとても近いので、「身近で一瞬でイメージできる代表例」として先に紹介しました。
陽炎(道路の上のゆらゆら)も、アイスティーにガムシロを入れたときの透明な線も、温度差や濃度差で“密度のむら”ができ、屈折率(くっせつりつ:光の曲がりやすさ)が場所ごとに変わって光が少し曲がるために見えます。
そして、透明な水や空気の中で「密度の違い → 光の進路が不規則に変化 → もやもやが見える」ことをシュリーレン現象と呼びます。

次の章では、この“光が曲がる”をもう少し丁寧にほどいて、アイスティーの線が見える流れをスッキリ説明します。
小学生にもスッキリ版
道路の近くの空気は、太陽にあたって熱くなります。
でも全部が同じ温度になるわけではなく、場所によって
- あつい空気
- ひんやりした空気
が、まだらに混ざります。
光(ひかり)は基本的にまっすぐ進みます。
ただ、空気の“状態”(あつい/ひんやり など)が違う場所を通ると、**光が少しだけ曲がる(屈折=くっせつ)**ことがあります。
だから、遠くの景色が「ゆらゆら動いている」みたいに見えるんです。
景色が動いているのではなく、光の通り道が、空気のまだらで少しずつ曲げられていると思うとスッキリします。

そしてこの考え方が分かると、次は――
アイスティーにガムシロを入れたときに見える「透明な線」も、同じ仕組みで説明できるようになります。
▶ 次は、あなたの身の回りの“あるある”を集めて、「今回の現象」をもっと身近にします。
1. 今回の現象とは?
「こんなことはありませんか?」あるある例
透明なのに、なぜか“見える”。
そんな体験、心当たりはありませんか?
- アイスティー/アイスコーヒーにガムシロを入れたら、透明な線がほどけるように見えた
- 透明な水にガムシロをそっと入れたら、もやもやがゆらゆら見えた
- お湯に氷を浮かべて横から見ると、境目がゆらいで見えた
- 真夏の道路の上が、景色ごと揺れて見えた(陽炎)

透明同士なのに、見えてしまう。
ここで多くの人がこう思います。
「……ナンデ?」
よくある疑問をキャッチフレーズ風に
- 透明なのに、なぜ“もやもや”が見えるの?(シュリーレン現象とは?)
- ガムシロを入れたら線が出るのはなぜ?(屈折ってなに?)
- 陽炎(かげろう)って、結局なにが揺れているの?(景色?空気?)
この記事を読むメリット
- 「なぜ見えるのか」を、誰かに説明できるようになります
- 家にある材料で、安全に再現して“なるほど”を体験できます
- さらに読み進めれば、見えにくい差をくっきり見せる**シュリーレン法(シュリーレン撮影)**の考え方(ナイフエッジ等)までつながります
ここで一度、短く整理します(この章の着地点)
今回のポイントは、色ではありません。
**密度(みつど:同じ大きさの中にどれくらい物が詰まっているか)**や
**濃度(のうど:どれくらい溶けているか)**の“むら”ができると、
光が通るときに少し曲がって、結果として「もやもや」「線」のように見えることがある――ということです。
▶ では次は、「疑問が生まれる瞬間」を物語で体験してみましょう。
あなたの中の“謎を解きたい気持ち”が、自然に立ち上がります。
2. 疑問が浮かんだ物語
休日の午後、冷たいアイスティーをグラスに注ぎました。
氷がカラン、と鳴って、胸の奥が少しだけゆるむ音がします。
ガムシロを入れて、スプーンを取ろうとした――その瞬間です。
とろりとしたガムシロが、上から細く落ちていきました。
透明なのに、そこだけ空気のように「重さ」がある感じで、すっと下へ沈んでいきます。
「……え?」
底に近づいたあたりで、急に見え方が変わりました。
ガムシロそのものが見えているわけじゃないのに、
底のほうから透明な線がふわっとほどけて、ゆらゆら揺れはじめたんです。
目の錯覚かなと思って、顔を近づけます。
でも、消えません。
それどころか、線は形を変えながら、静かに増えていきます。
「ガムシロって透明だよね」
「なのに、なんで“線”が見えるの?」
透明なら、見えないはず。
見えないはずのものが、目の前で“動いて”いる。
その違和感が、妙に気持ち悪いのに、同時に気持ちいいんです。
線は、リボンみたいにほどけて、
水の中で踊るように揺れながら、少しずつ薄くなっていきます。
「混ぜてないのに、勝手に模様ができる…」
「もしかして紅茶の中に“境目”があるの?」
「でも境目って、色で見えるものじゃないの?」
考えようとすると、分からないことが増えます。
分からないはずなのに、目が離せません。
たとえるなら、透明な水族館の中で、透明な魚が泳いでいるのを、
“気配だけ”で見ているみたいです。
「わけが分からないのに、ずっと見ていたい」
その気持ちが、胸の奥でじわっと広がりました。
でも次の瞬間、その“面白さ”が別の感情に変わっていきます。
――悔しい。
「なんでだろう」
「どうして“見えないはずのもの”が見えるんだろう」
知らないままにしておくと、自分の頭だけが置いていかれる感じがする。
目の前の現象は確かに起きているのに、説明できない。
それが、なんだかもったいないんです。
「この正体を知ったら、次に見えたとき、もっと楽しめる気がする」
「今まで見逃してきた“ゆらゆら”も、意味が分かる気がする」
そう思った瞬間、ただの不思議が、“解きたい謎”に変わりました。

グラスの中の線は、まだ揺れています。
ゆらゆら、ゆらゆら。
まるで、こちらにこう言っているみたいです。
「気づいた?」
「ここに、見えない違いがあるよ」
……よし。答えを知ろう。
次の段落で、あなたの「ナンデ?」を回収します。
3. すぐに分かる結論
お答えします。
その現象は、『シュリーレン現象』です。
シュリーレン現象とは、
水や空気のような透明な物質の中で、場所によって**屈折率(くっせつりつ:光の曲がりやすさ)**が違うときに、
しま模様や、もやのような揺らぎが見える現象のことです。
では、なぜアイスティーにガムシロで「透明な線」が出るのでしょうか。
ポイントは、混ざり始めにできる――
“濃いところ/薄いところ”のむらです。
ガムシロのように糖分を含む液体が溶け出すと、場所によって濃度が変わり、
そこを通る光の進み方が不規則に変化します。
その結果、スクリーンや背景の見え方がゆがみ、もやもや(線)のように見えると説明されています。

いちばん短く、流れで言うとこうです
- 濃度・密度のむらができる
- そのむらで屈折率が場所ごとに変わる
- 光が少しずつ曲げられる
- 背景がゆがんで見えて、透明な線が「見える」
ここまでが「前段階のやさしい説明」です。
この先は、もう一段深く――
**「屈折率ってそもそも何?」**を丁寧に整理したうえで、
シュリーレン“法”(撮影法)では、ナイフエッジ(刃=エッジ)を使って、屈折した光を明暗差として強調することまでつなげます。
ここまでで「正体はシュリーレン現象」と分かったと思います。
ただ、読んでいる途中でこう思いませんでしたか?
「陽炎と同じでいいの?」
「なんで“線”が底のほうから見えるの?」
「チンダル現象とは違うの?」
そこで先に、検索されやすい疑問を FAQで一気に回収します。
気になるところだけ、サクッと解決してから先に進んでください。
3.5シュリーレン現象の「ナンデ?」を一気に解決
よくある疑問(FAQ)
Q. シュリーレン現象って、結局なにが「見えて」いるんですか?
A. 物そのものが見えているのではなく、透明な中にある密度(濃度・温度)のむらで光が少し曲がり、背景がわずかにゆがんで見えることで「線」や「もや」に見えています。
Q. ガムシロは上から入れたのに、なぜ「底のほう」から線が出るように見えるんですか?
A. ガムシロは紅茶より濃くて重い(密度が高い)ので、細い筋になって下へ沈みます。沈みながら周りと混ざる境目で“むら”ができ、背景のゆがみとして線が目立ちやすくなるため、底付近で「出てきた」ように見えやすいです。
Q. 陽炎(かげろう)とシュリーレン現象は同じですか?
A. 呼び名としては日常では陽炎、仕組みを物理で説明すると屈折率のむらで背景がゆがむという点がシュリーレン現象の土台と共通です。つまり「名前は陽炎」「説明の土台はシュリーレン的」と考えると誤解が少ないです。
Q. 逃げ水は蜃気楼の一種ですよね?
A. はい。逃げ水は蜃気楼の分類でいう下位蜃気楼の代表例として説明されることが多いです。記事内で分けているのは、検索語として「逃げ水」「蜃気楼」が別で調べられやすいからです。
Q. チンダル現象(光の道筋が見える)と同じですか?
A. 似ていますが別物です。チンダル現象は粒(コロイドなど)で光が散乱して見える現象です。シュリーレンは密度のむらで光が屈折して背景がゆがむ現象で、主役が違います。
Q. 混ぜると線が消えるのはなぜ?
A. 混ぜると濃度差が小さくなり、“むら”が減って光の曲がり方が均一に近づくためです。つまり線が消える=むらが消えたと考えるとスッキリします。
Q. どうすると一番きれいに見えますか?(観察のコツ)
A. コツは3つです。①透明でまっすぐなグラス、②背景に文字や縞模様を置く、③混ぜずに静かに入れて横から見る。背景が「ものさし」になって、ゆがみが見えやすくなります。
Q. お湯と氷でも見えるのはなぜ?
A. 同じ水でも温度が違うと密度が変わり、屈折率も少し変わります。その温度差による“むら”で、背景のゆがみとして見えやすくなります。
Q. シュリーレン「現象」とシュリーレン「法(撮影)」の違いは?
A. 現象は「むらで光が曲がって見え方が変わる」こと。法(撮影)は、その曲がりをナイフエッジなどで明暗差に変換して強調する“見える化の方法”です。
Q. BOS(背景指向シュリーレン)って何ですか?
A. 背景の模様が屈折でどれだけズレたかを画像処理で調べて、密度のむらを推定する方法です。専用の光学系がなくても成立しやすい一方、解析と画質の影響を受けます。
Q. 「見ていたいのに、理屈も知りたい」って普通ですか?
A. 普通です。人の視覚は「動き」に敏感なので、背景がわずかに揺れるだけでも強く注意が向きます。だからこそ、シュリーレンの“ゆらゆら”は目を奪うんです。
Q. 危険はありますか?
A. 火や薬品を使わないなら基本的に安全ですが、熱湯を使う場合はやけど、ガラスは割れに注意してください。また強い光源を至近距離で直視しないようにしましょう。
疑問がスッキリしたところで、
ここからは「現象」をもう少し正確に言葉で整えて、“説明できる理解”に仕上げていきましょう。
“ゆらゆらの正体”を、あなたの頭の中でハッキリ結晶化させに行きましょう。
次の章では、シュリーレン現象の定義を、もう少し正確に整理します。
4. 『シュリーレン現象』とは?
まず、定義をきれいにそろえます。
『シュリーレン現象/schlieren effect』とは、
水や空気など“透明なもの”の中で、場所ごとに密度が違う(=屈折率が少し違う)ときに、背景がゆがんで「もやもや」「しま」「線」のように見える現象です。
ここで大事なのは、見えているのが 色ではなく、
**光の通り道の“ズレ”**だということです。
「現象」と「方法」を分けると、もっとスッキリします
ややこしくなるポイントなので、最初に分けます。
- シュリーレン“現象”:
透明な中の“むら”で光が曲がり、背景がゆがんで見える(今回のアイスティーの線) - シュリーレン“法(撮影法)”:
その“光の曲がり”を、ナイフエッジ(刃=エッジ)などで明暗差に変換して、もっとハッキリ見えるようにする観察・撮影の方法
研究や実験の世界では、この **「現象」+「見える化の方法」**がセットで語られることが多いです。

もう一段だけ理屈(でも、置いていきません)
屈折率(くっせつりつ:光の曲がりやすさ)は、ざっくり言うと
- 密度が高いほど、光は進みにくくなる → 進む向きが少し曲がる
という性質と関係します。
気体については、屈折率と密度の関係を近似する式(グラッドストン=デール関係)がよく使われます。
だから、
- 温度差(陽炎)
- 濃度差(ガムシロ)
- 混ざりかけの“まだら”
みたいな **「密度のむら」**があると、
光が少しずつ曲げられて、背景がゆがんで見える。
噛み砕くと、こうです。
透明な世界に、見えない“レンズの凹凸”が一瞬できて、背景をぐにゃっと曲げる
→ それが「もやもや」「線」に見えます。
ここで、あなたの“3つの疑問”を回収します(答え合わせ)
Q1. 透明なのに、なぜ“もやもや”が見えるの?
A. 透明でも、密度のむらがあると光が曲がり、背景がゆがんで見えるからです。
Q2. ガムシロを入れたら線が出るのはなぜ?(屈折ってなに?)
A. ガムシロが混ざり始めると濃度差ができ、そこが“密度のむら”になります。
そのむらで光が少し曲がって、境目が「線」っぽく見えます。
Q3. 陽炎って、結局なにが揺れているの?(景色?空気?)
A. 景色が動いているのではなく、温度(密度)のむらで光が不規則に屈折して、向こうの景色が揺れて見えます。
この章の着地点(ここだけ覚えればOK)
- 見えているのは“物”ではなく、光の曲がりによる“背景のゆがみ”
- その原因は、透明な中にできる 密度(濃度・温度)のむら
- それをまとめて説明する言葉が シュリーレン現象
▶ 次の章では、「なぜこの現象が“研究で重要”なのか」を、歴史と現代の使われ方でつなげます。
5. なぜ注目されるのか?
シュリーレン現象が面白いのは、ただの小ネタではなく、
“見えない差”を、見える情報に変える入口だからです。
名前の由来:Schlieren(シュリーレン)ってどういう意味?
「シュリーレン(Schlieren)」はドイツ語で、
単数形「Schliere(シュリーア)」の複数形で、英語にすると **streak(すじ)/ striation(しま)/ cord(ひも状)**のような意味合いです。
つまり最初から、
**“透明の中に現れる、すじっぽい乱れ”**を表す言葉なんです。
だれが?なにをきっかけに?
アウグスト・テープラーってどんな人?
アウグスト・テープラー(August Toepler/1836–1912)は、19世紀ドイツの実験系の物理学者です。
電気(静電気)の実験や装置開発でも知られていますが、特に有名なのがシュリーレン(Schlieren)を「実用的な観察装置」として形にしたことです。
ポイントはここです。
シュリーレンの“見え方”自体はもっと昔から知られていたのですが、テープラーが「繰り返し観察できる・研究に使える形」に仕上げたことで、技法として広く使われるようになりました。
何がきっかけで発展したの?
「大事件があって発明された」というより、当時の研究や工学が求めたのは、こういうことでした。
- 透明な材料(たとえばガラス)の中にある**わずかな“むら”**を見たい
- 空気や気体の流れの中にある**密度の違い(温度差・圧力差)**を見たい
- 音(音波)や衝撃波のような“見えない揺れ”を観察したい
こうした需要に対して、テープラーは1859年のフーコーのナイフエッジ(刃)テストの原理を応用し、流体(気体・液体)の観察へ広げた、と説明されています。
シュリーレン技法とは?
一言でいうと
**「透明の中の“密度のむら”で光が曲がるのを、明暗(明るい・暗い)に変換して見える化する方法」**です。
何をしているの?(イメージで理解)
シュリーレン技法(シュリーレン撮影)の基本セットは、ざっくりこんな感じです。
- **点光源(小さな光)**を用意する
- レンズや鏡で光をほぼ平行光にして対象(空気や水の“むら”)を通す
- 集めた光の焦点付近に、**ナイフエッジ(刃=エッジ)**を置く
- その先にカメラやスクリーンを置く
ここで起きることはシンプルです。
- “むら”がない → 光はほぼ同じ位置に集まり、ナイフエッジで一定量カットされる → 画面は安定
- “むら”がある → 光が少し曲がって、ナイフエッジに当たる量が場所ごとに変わる → 明暗の模様として見える
つまり、ナイフエッジは
**「曲がった光を、見えるコントラストに変換する翻訳機」**みたいな役割です。

例で一気にわかる(身近→研究)
身近な例:ろうそくの上の“ゆらゆら”
ろうそくの炎の上には、熱い空気が上がっていきます。
熱い空気と周りの空気は密度が違うので、屈折率が少し変わり、背景がゆがみます。
シュリーレン技法を使うと、その“見えない流れ”がくっきり模様として見えるようになります。
研究の例:衝撃波や高速流れの可視化
シュリーレン撮影は、気体の密度勾配を可視化できるため、航空・流体分野で広く使われてきました。
解説としても「屈折率の変化(密度・温度・圧力などによる)を見えるようにする」と整理されています。
テープラーは、透明の中の“むら”を、ナイフエッジで明暗に変えて見える化することで、シュリーレンを研究に使える技法として確立させました。
昔と今で、何が変わった?
昔: 透明材料のむら(光学的不均一)を見たい
今: 空気の流れ、衝撃波、熱いプルーム(上昇気流)、呼気の広がりなど
“密度差がある現象”を広く可視化する道具になっています。
NASAが、シュリーレン(背景指向シュリーレン系)で
超音速飛行の衝撃波を可視化する取り組みを紹介しているのも、その象徴です。
「へえ」で終わらない:健康・生活にも実は近い
近年は、室内環境や衛生の分野でも、
人の体から立ち上がる 熱のプルームや、咳・くしゃみの流れ、マスクの効果などを
シュリーレンで“見える化”する研究例が整理されています。
ちょっとだけ脳の話:なぜ“ゆらゆら”は目を奪うのか
ここは誤解しないでください。
**現象を起こしているのは脳ではなく、物理(光と密度差)**です。
ただし、私たちが「ゆらゆら」を強く感じるのは、
脳が **動き(モーション)**に敏感だからです。
視覚脳の領域 V5/MT は、視覚運動(動き)の知覚に重要だと整理されています。
だから、背景がわずかに“歪んで動く”だけで、
脳が「動いている!」と強く反応し、つい目で追ってしまう。
あの「見ていたいのに、理屈も知りたい」感じは、かなり自然な反応です。
▶ 次は、ここから一気に“日常で使える形”に落とします。家で安全に再現する方法も入れます。
6. 実生活への応用例
体験できる・説明できる・活かせる
この章は、提示したメリットを全部回収します。
メリット①:説明できるようになります(結論テンプレ)
友だちに聞かれたら、これでOKです。
「透明でも、濃さや温度のむらがあると光が少し曲がって、背景がゆがむ。
その“ゆがみ”が線やもやに見えるのがシュリーレン現象だよ。」
メリット②:家にあるもので安全に再現できます(自由研究にも◎)
※火や薬品はいりません。
ただし 熱湯やガラスの扱いには注意してください。
アイスティー×ガムシロ “透明の線”観察のコツ
- できれば、透明でまっすぐなグラスを使います(曲面が強いと歪みが増えます)
- 背景に 文字や縦じま(タオルでもOK) を置きます(歪みが見えやすい)
- ガムシロは、混ぜずに、静かに注ぐ
- 横から観察します(背景の歪みとして見える)
メリット③:読み進めるほど“シュリーレン法(撮影)”につながります
研究の世界では、
「曲がった光」を 明暗差に変換して、もっと見やすくします。
その代表が、ナイフエッジ(刃)で光を少し遮って、
屈折した光だけを“明るい/暗い”として浮かび上がらせる考え方です。
さらに発展すると、背景の模様の“ズレ”を解析する
**背景指向シュリーレン(BOS)**のような考え方にもつながります。
活かし方のヒント(大人向け)
- プレゼンや授業で「屈折」を説明するとき、陽炎とガムシロは最強の例になります
- 室内の空気の流れ(暖房・換気)を“イメージ”する助けになることがあります

メリットとデメリット(正直に言います)
メリット
- 目に見えない差(温度差・濃度差)を直感で理解できる
- “理科が現実に刺さる”体験になる
デメリット(限界)
- 目で見えるのは「むらの形」で、数値そのものではありません
- 混ざり方や光の条件で見え方が変わります(再現条件が少し繊細)
▶ 次は、ここで起きやすい誤解を先に潰して、読者が安心して納得できる章にします。
7. 注意点や誤解されがちな点
誤解①:「ガムシロそのものが見えている」
“ガムシロの液体”が発光して見えているわけではありません。
屈折率のむらで背景がゆがみ、その“ゆがみ”が線っぽく見えているのが核です。

誤解②:「陽炎=シュリーレン現象?同じ名前でいいの?」
呼び名としては、日常では **陽炎(かげろう)**です。
ただ、陽炎の仕組みを説明するときに
「密度のむら→屈折→ゆらゆら」=専門用語ではシュリーレン現象と整理しています。
つまり、
- 現象名(生活の言葉)=陽炎
- 仕組みの説明(物理の言葉)=シュリーレン現象
この二段構えが、いちばん誤解が少ないです。
誤解③:「混ぜれば消える=不純物?」
混ぜて均一になれば、むらが消えるので見え方も弱くなります。
それは“不純物”というより、むらが消えただけです。
危険性(悪用というより“誤用”が起きやすい)
シュリーレンは「見えない差」を強調できる反面、
- 画像だけで断定してしまう
- 見え方を“熱”や“汚れ”と勘違いする
といった 誤解の増幅が起こりえます。
安全面では、
- 熱湯・ガラスの破損
- 強い光源を直視しない(観察用ライトでも目は大切)
この2つは必ず注意してください。
▶ 次は、「え、そこまでできるの?」と思える、ちょっと楽しいコラムで深掘りします。
8. おまけコラム
シュリーレンは“日常の中に隠れた顕微鏡”です
ここで視点を変えます。
シュリーレン現象って、言い換えると
**「透明の世界の“差”を、目に翻訳してくれる仕組み」**なんです。
だから、あなたが次にやると面白いのはこれです。
“見えない差”を見つける3つのコツ
- 背景に文字や縞を置く(歪みが出ると一発で分かる)
- 横から見る(背景のゆがみとして見える)
- 「むら」が生まれる瞬間を狙う(混ざり切ると弱くなる)
研究の世界でも、背景の情報を使って屈折の影響を拾う発想(BOS/「背景指向(はいけいしこう)シュリーレン法」)が重要になります。
あなたのキッチンが、一瞬だけ“流体実験室”になる感覚。
これ、クセになります。

▶ 次は、ここまでを一度まとめて、あなたなりの考察で「読後感」を作ります。
9. まとめ・考察
最後に、要点を3行でまとめます。
- 透明なのに見えるのは、密度(濃度・温度)のむらで光が曲がるから
- その“光の曲がり”が背景をゆがませ、線やもやに見える
- この仕組みを説明する言葉が シュリーレン現象(陽炎もその代表例)
ここからが、私の考察です。
私たちは「透明」を、つい「何もない」と思いがちです。
でも実際は逆で、透明な世界ほど“差”が隠れています。
温度差。濃度差。混ざりかけ。
目に見えないだけで、そこには情報が山ほどある。
シュリーレン現象は、その情報を
「見える形」に翻訳してくれる現象です。
あなたなら、この“見えない差”を、どんな場面で見つけてみたいですか?

ここまでで、あなたはもう
「透明なのに見える」現象を、ちゃんと説明できる地点まで来ています。
でも、シュリーレン現象の面白さはここからです。
次にやると世界が一段クリアになります。
それは、似ている現象と言葉を“仕分け”して、語彙を増やすこと。
「陽炎(かげろう)って結局どれ?」
「蜃気楼(しんきろう)と何が違うの?」
「チンダル現象みたいに“光が見える”のと同じ?」
このあたりを整理すると、日常の“ゆらゆら”を
あなたの言葉で語れるようになります。
▶ この先は興味に合わせて、**応用編(用語と似ている現象の整理)**へ進みましょう。
10. 応用編
似ている“ゆらゆら”を整理して、語彙を増やす
ここでは、わざと「間違いやすい仲間たち」を並べます。
似ているけど、ポイントが違うので、ここを押さえると一気に強くなれます。
まずは“同じ土台”の仲間:陽炎・逃げ水・蜃気楼
陽炎(かげろう)
- 熱で空気に温度のむらができる
- その結果、光が不規則に屈折して、景色がゆらぐ
…という説明が一般的です。
逃げ水(にげみず)
- 道路が水たまりみたいに見えるやつです。
- これも「光が曲がる」タイプで、蜃気楼の一種として説明されることがあります。
蜃気楼(しんきろう)
- 空気の層(温度差)で光が曲がることで、遠くの景色が伸びたり逆さになったりして見えます。
※逃げ水(にげみず)は、蜃気楼(しんきろう)の一種で、「下位蜃気楼」に分類される現象です。
夏の道路で“水たまりみたい”に見えるのがこれ。一方、蜃気楼は総称で、上位蜃気楼・下位蜃気楼と種類があります。今回の説明は上位蜃気楼です。

✅ここでの結論
陽炎・逃げ水・蜃気楼は「大気中の屈折(屈折率のむら)」が主役。
だから「シュリーレンが扱う土台(屈折率のむら)」と相性がいい代表例になります。
似てるけど“理屈が別”の仲間:チンダル現象/マランゴニ対流
チンダル現象
- 霧・煙・コロイドみたいに、細かい粒があると
- 光が**散乱(さんらん)**して「光の道筋が見える」現象です。
→ シュリーレンは「屈折(光の曲がり)」、チンダルは「散乱(光がばらける)」で主役が違います。
マランゴニ対流
- 表面張力が場所で違うと、液体が流れて模様ができます。
→ 見た目は“もやもや・筋”でも、**光じゃなくて流れ(表面の力)**が主役です。
✅ここでの結論
「透明なのに見える」=全部シュリーレン、ではありません。
**屈折(シュリーレン)/散乱(チンダル)/流れ(マランゴニ)**で仕分けると、説明が一気に正確になります。
シュリーレンの“親戚”:見える化の方法(シュリーレン法/シャドウグラフ/BOS)
ここは「理科が刺さる」ゾーンです。
シュリーレン法(シュリーレン撮影)
- 屈折で少し曲がった光を、ナイフエッジなどで明暗差に変換して強調する技法です。
シャドウグラフ(Shadowgraph)
- 同じく密度差を見ますが、強調のされ方が違います(ざっくり言うと“影っぽく”出る系)。
- シュリーレンの発展の中で言及されることが多い方法です。
BOS(Background-Oriented Schlieren/背景指向シュリーレン)
- **背景の模様(ドットや文字)**を使って、屈折で生じる“ズレ”を拾う方法です。
- 透明材料の屈折率分布を測る手法として「BOS法」が技術資料で解説されています。
✅ここでの結論
あなたのブログの強みはここです。
「現象(ゆらゆらが起きる)」だけで終わらず、
“どうやって見える化するか”までつなげられる。これは読者が何度も読み返します。
▶ 次は「もっと学びたい人」のために、教材(書籍)をまとめます。
11. 更に学びたい人へ
おすすめ書籍:3冊
ここから先は、「なるほど」で終わらせずに、
自分の言葉で説明できるようになるための“学びの入口”です。
①『おうちでカンタン! おもしろ実験ブック 光と色』寺本貴啓(監修)
こんな人におすすめ
小学生〜初学者/親子で「目で見て納得」したい人/自由研究にも◎
おすすめ理由(シュリーレン記事とどう繋がる?)
シュリーレン現象は「光の見え方の変化」を扱う話でした。
この本は、その土台になる “光ってそもそもどう振る舞う?” を、実験で体に入れられます。
▶ 次に読むなら「屈折」「レンズ」に進むと、一気に説明力が上がります。
②『高校数学でわかる光とレンズ 光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで』竹内 淳(著)
こんな人におすすめ
中学生後半〜大人/「屈折率って何?」を曖昧にしたくない人/理屈で腹落ちしたい人
おすすめ理由(シュリーレン記事とどう繋がる?)
記事で重要だったのは「光が少し曲がる(屈折)」でした。
この本を読むと、その“曲がり方”を、式や図で整理できるようになります。
▶ 次のステップは「見える化(計測)」です。ここで“研究っぽさ”が一段上がります。
③『光計測入門』左貝 潤一(著)
こんな人におすすめ
中級者〜上級の入口/「見える」を“測れる”に変えたい人/技術・工学寄りに踏み込みたい人
おすすめ理由(シュリーレン記事とどう繋がる?)
シュリーレン法やBOSは、「見え方」を“情報”として扱う発想でした。
この本はまさに、光を使って 形・距離・変位・振動などを測る側の世界に入っていくための、橋になります。
▶ 「現象を楽しむ」から「測って説明する」へ。ここまで来ると、記事が“読み物”から“学びの資産”になります。
12.疑問が解決した物語
数日後。
あの日の「透明な線」が、どうしても頭から離れなくて。
私は記事を読み終えたあと、もう一度だけ、同じようにアイスティーを用意しました。
グラスの向こうに、文字が読める紙を置きます。
「背景がゆがむと分かりやすい」――そう書いてあったからです。
氷を入れて、アイスティーを注いで、
ガムシロをそっと落としました。
とろり、と沈む。
そしてやっぱり、底の近くから――
透明な線が、ふわっとほどけて、ゆらゆら揺れはじめました。
でも、前とは違いました。
“気持ち悪さ”が、ほとんどないんです。
代わりに、胸の奥が静かにあたたかくなる感じがしました。
「見えてるのは、ガムシロじゃない」
「光の通り道が、少し曲がってるんだ」
背景の文字が、ほんのわずかに歪みます。
その歪みが、線になって見えている。
そう思った瞬間、目の前の現象が、ちゃんと一つの形に収まりました。
「透明なのに見える」の正体は、
見えない“違い”(濃度や密度のむら)が作る、光のズレ。
だから、混ぜれば消える。
だから、温度でも起こる。
だから、真夏の道路も揺れる。
ひとつ分かると、世界がつながっていくのが嬉しくて、
私は思わず笑ってしまいました。
「次に陽炎を見たら、空気のせいじゃなくて“光のせい”だって言えるな」
「次にこの線が出たら、“今、むらがある”って気づけるな」
分かったことで、現象を消したくなったわけじゃありません。
むしろ逆です。
分かったからこそ、もう一度見たくなる。
“ゆらゆら”が、ただの不思議じゃなくて、
**自分の目で確かめられる「小さな実験」**に変わりました。

最後に、私は一つだけ決めました。
次に「透明なのに見える」に出会ったら、こうする。
- まず背景を用意して、ゆがみを確認する
- すぐに混ぜず、変化する時間を観察する
- そして「見えているのは何か」を決めつけず、光の通り道を疑う
不思議を、怖がらない。
不思議を、笑い飛ばさない。
不思議を、「調べていいもの」として扱う。
それが今回の、私の教訓です。
さて。
あなたが次に出会いたい“ゆらゆら”は、どれでしょう。
アイスティーの中ですか?
それとも、真夏の道路の上ですか?
そしてそのとき――
あなたは、その不思議を「見逃しますか?」
それとも、「見えない違いを探す目」で、もう一度見つめますか?
13.文章の締めとして
透明な線が見えたあの瞬間、
私たちは「世界のどこかに、目に映らない違いがある」と気づきます。
それは、特別な才能でも、難しい道具でもなく、
ただ“いつも通りの飲み物”の中にふっと現れるもの。
そして一度理由を知ると、
不思議は消えるどころか、むしろ輪郭を持って深くなります。
「見えないものは、ないわけじゃない」
「見え方が変わるだけで、世界はこんなに情報を持っている」
そんな感覚が、日常の温度をほんの少し上げてくれる気がします。
明日、同じ景色を見ても、
あなたの目にはきっと、昨日とは違う“ゆらぎ”が映るはずです。
注意補足
今回の内容は作者が個人で調べられる範囲でまとめたものであり、他の考え方や説明の仕方もあります。
研究や計測技術が進むことで、より精密な説明や新しい発見が出て、解釈が更新される可能性もあります。
🧭 本記事のスタンス
この記事は、「これが唯一の正解」ではなく、読者が自分で興味を持ち、調べるための入り口として書いています。
このブログで少しでも「もっと知りたい」が芽生えたなら、
ぜひ次は、図や写真、論文や専門書といった“濃い情報”の中に潜ってみてください。
シュリーレン現象が教えてくれるのは、
見えないものほど、丁寧に見れば見えるようになるということです。
あなたの好奇心が、光の通り道をそっと曲げて、
世界の「まだ見えていなかった差」を、次はもっとくっきり浮かび上がらせてくれるはずです。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
あなたの毎日に、シュリーレンのような“見えない発見”がふわっと浮かびますように。



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