ーーーなみ
自分の家で飼っている猫のとらちゃん。自分が呼ぶとにゃあとないて寄ってくる猫のとらちゃん。ところが今日のとらちゃんは、なみが呼んでも近寄るどころかフウッと威圧してきます。
自分の行う事に対して、相手が毎回喜んでいる態度をとってくれていたとしたら、自分の行っている事は相手にとっても嬉しい行動だと考えて、これからも同じ行動を取り相手を喜ばせようとするではないでしょうか。
それなのに、自分は今までと同じ行動を行ったのに、いきなり相手が威嚇してきたら、嫌悪な態度をこちらに向けてきたら?こちらの気分も悪くなり、相手に対して不信感を抱いてしまうこともあるのではないでしょうか?
今までは喜んでくれたのに、今回も喜んでもらおうと思ったのに?
〜してくれたのに、〜思ったのに、と自分本位の思考から今回の行動を振り返ってしまったり。
なんて嫌な態度をとる相手なのだろう、なんて嫌な相手なのだろう。と相手を悪く考えて自身を正当化しようとも考えてしまうかも知れません?
今までの良好な関係は全て嘘だったのか?こちらを騙していたのか?本当は相手はこちらの行動が嫌いだたけれども無理して付き合ってくれていたのか?
など、自分の行動も、相手の行動に対しても悪い事に目が向いて考えてしまいそうです。
自分ならば、そのような考えが浮かぶかもしれません。
いつものように一緒に遊ぼとしてとらちゃんにいつもと同じようになみが声をかけても、寄ってきてはくれませんでした。
それどころか、なみを威嚇でもするかのようにフウッとなきます、(さらに経本には、いかつい表情をとらちゃんがなみに向けたイラストも描かれています。)そのような態度をとられてしまったなみですが
ねえ おかあさん とらちゃんがなんか いつもと ちがうよ
絵本 しずかに しずかに より引用
と事実をそのままに受け入れ、客観的に感じたままの様子をお母さんに伝えます。
自分が受けた行為に対する自分の気持ちを含ませない、事実のみを人に伝える。
客観的に見て取れる事象を自分なりの気持ちで伝えられる、そのような伝え方は妙な自尊心やプライドを持ってしまった、今の私ではなかなかできる事ではないと感じらました。
自分が受けたショックや、今回の相手のとった行動の原因は自分にはない、自分は悪くないという思いを、少しでも伝えたい相手に分かって欲しいという気持ちがでてしまい、相手に伝える言葉にその気持が含まれてしまうと考えられます。
事実を事実として伝えられないという私に対して、素直に相手の様子からいつもと違うと感じた事をありのままに伝えられるなみの素晴らしさが、心に響いた感銘を受けた言葉でした。
大人になればもしくは猫や生き物の生態を知っていれば、今回のようなとらちゃんの態度は、とらちゃんが子供を身ごもり、その子供を守るための本能からの行為だと納得するのかも知れません。
命の大切さや、出産が命がけな行為であることからも、とらちゃん自身の身を守る為の行為なのだろうと、自分を納得させようと考える事ができるのかも知れません。
けれども、このとらちゃんのような行為を、なんの前触れもなく、なんの知識も、経験もなくされてしまったら、ショックを受けて、こちらも相手に対して敵意を向けてしまうかもしれません。
それなのになおは、お母さんにありのままのことを伝えられる事、その素直さが羨ましいです。
さらには、とらちゃんが大きな声や音が気になると教えてもらった後は、しずかに静かにしていようと決意します。
相手が行動した理由が分かれば、その行動の理由に対して自分ができる事を行おうと、考えを切り替えられる持ち主、相手を助けてあげられる自分なりの行動を考えられる人物、そんななみを見習いたいです。
その後隠れてしまったとらちゃんに対して、なみはダンボールと新聞紙、タオルを使ってお家を作ります。
とらちゃんがそのお家に入ってくれたのを確認すると、なみは静かに待っていようと足音をたてないように移動します。
おやつを食べる音もたてないように、ヤカンのの音も静かにしようとするなみ、コチコチとなる時計の音も、宅配便が届いた時も音をたてないように心がけます。
全てはとらちゃんが気になる事を防ぐために、気に障る事が起こらないように、自分のできる範囲で自分のできることをやろうとするなみです。
すると
…にゃあ
と声がきこえます。
とらちゃんの声のようです。
その声をきいたなみは、とらちゃんのいる部屋に近づきます、ドアを開ける時も、
しずかに しずかに
その後の様子を直接読みたい場合は
しずかに しずかに 文 なかのゆき 絵 鈴木永子
こどものとも年中向き 2022年5月号 通巻434号福音館書店
を是非読んでみてください。
皆様にはどの様な新しい響きがあるのか楽しみです。
理不尽な態度を受けたという自身の気持ちよりも、いつもと違う相手の様子を心配できるなおちゃんの素直さを見習いたいです。
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