原因を決めつけず、動画と記録で“守る行動”に変えるチェックリスト付きガイド
犬がハエがいないのにパクパク噛む!それ、『フライバイト(Fly biting)』かもしれません|原因・対処・注意点まで解説
代表例
キッチンで洗い物をしていたら、足元の愛犬が急に上を見上げて――
何もいない空中を「パクッ、パクッ」 と噛みはじめました。
ハエも小虫も見当たらないのに、真剣な顔。
「え?いま、何か見えてるの?」と、ちょっと不安になりますよね。

▶ この“謎の口パク”には、ちゃんと名前があります。次で結論を先に出します。
15秒で分かる結論
お答え:それは『フライバイト(Fly biting/フライ・バイティング)』の可能性があります。
犬が 見えないハエを噛むように空中で口をパクパクする行動 を指し、原因はひとつに限られず、焦点発作(しょうてんほっさ/フォーカル・シージャー) などの神経の問題、胃や食道の不調(例:胃食道逆流)、反復行動(強迫的な行動)などが関係することがあります。
※頻度が増える・長く続く・ほかの症状がある場合は、動画を撮って獣医師に相談が安心です。
▶ 次は「小学生にもスッキリ」を目指して、もっと噛み砕きます。
小学生にもスッキリわかる説明
ものすごく簡単に言うと、『フライバイト』は、
「本当はハエがいないのに、いるみたいに感じて口が動いちゃうこと」 です。
たとえば、人でも
「くすぐったい!」と思うと、実際は何もなくても体が動いちゃうことがありますよね。
犬も同じで、目・お腹・脳 のどこかの“変な感じ”がきっかけになって、
口が 反射みたいにパクパク することがある、と考えられています。

(むずかしい言葉のミニ解説)
- 焦点発作(しょうてんほっさ):脳の一部だけが一時的に“混線”して、変な動きが出る発作です(全身けいれんじゃないこともあります)。
- 胃食道逆流(いしょくどうぎゃくりゅう):胃の中のものが食道側に戻って、ムカムカや違和感が出る状態です。
▶ 「じゃあ、どんな場面で起きやすいの?」を、次の章で“あるある”化します。
1. 今回の現象とは?
犬が、ハエがいないのに空中を噛む。
これを見た飼い主さんが「どうして?」と思うのは、だいたい次のような場面です。
こんなことはありませんか?(あるある例)
- 寝る前の静かな時間、急に天井を見て パクパク する
- 散歩から帰って落ち着いた頃、なぜか 一点を見つめて噛む
- 名前を呼ぶと一瞬こちらを見るのに、また 口パクに戻る
- 叱るほどでもないけど、毎日 出るから不安になる
- 口の中を見ても何もなく、虫も見えないのに 真剣に追いかける

よくある疑問(キャッチフレーズ風)
- 「犬が空中を噛むのはどうして?(フライバイトとは?)」
- 「ハエがいないのに口をパクパク…なぜ起きる?」
- 「これって病気?それともクセ?」
ここで大切なのは、
“かわいいクセ”に見える時でも、体のサインが混ざることがある という点です。
この記事を読むメリット
- 受診の目安がつきます(様子見でいい時/相談したい時)
- 病院で説明しやすい 観察ポイント が整理できます
- 「てんかん決めつけ」「ストレス決めつけ」などの 早合点を防げます
▶ 次は、読者が感情移入できるように“疑問が生まれる物語”へ進みます。
2. 疑問が生まれた物語
休日の午後、窓から日が差すリビング。
飼い主の「ミサキさん」は、ソファでコーヒーを飲みながら、愛犬の様子を眺めていました。
そのときです。
愛犬が、ふいに顔を上げて、空中を見つめました。
「……ん?」
次の瞬間、口が パク、パク、パク。
まるで“そこに小虫がいる”みたいに、同じ場所を狙って噛みます。
虫なんて見えません。
でも、犬はふざけている感じじゃない。
(なんで?)
(いまの、本当に何かいるの?)
(それとも、体の中で何か起きてる…?)
ミサキさんは、笑えない不安を飲み込みます。
「気のせいであってほしい」と思う一方で、
“もし病気のサインなら見逃したくない” という気持ちも強くなるのです。
スマホを手に取って検索窓に打ちました。
「犬 空噛み ハエいない」
「犬 口 パクパク 何もない」
――出てくる言葉の中に、見慣れない単語がありました。

(名前があるってことは、よくあること?)
(でも、よくある=安心、とは限らないよね…?)
そんなモヤモヤをほどくために、次は結論を“はっきり”出します。
▶ この現象の正体を、次で一緒に確認しましょう。
3. すぐに分かる結論
お答えします。
ハエがいないのに空中を噛む行動は、一般に
『フライバイト(Fly biting/フライ・バイティング)』と呼ばれることがあります。

そして、ミサキさんの疑問――
「見えてるの?」「病気?」「クセ?」に対する現実的な答えはこうです。
- “見えている”と決めつけはできません(犬は言葉で説明できないため)
- 原因は1つではありません
- 神経(焦点発作など)として説明されることもあります
- いっぽうで、消化器の治療で改善した症例報告 もあります
- 行動(反復・強迫)として扱う立場もあります
つまりフライバイトは、
「名前のついた行動」=「原因が確定した病名」ではない、という点が重要です。
ここまでで「フライバイトかも?」の全体像はつかめたはずです。
でも実際は、細かい疑問がいくつも残りますよね。
そこで、よくある質問をQ&Aでまとめました。
気になるところだけ読んでみてください。
3.5まずここでスッキリ:フライバイトFAQ
気になる質問だけ読めばOKです(読む順番は自由です)。
よくある質問
Q1. フライバイトって、結局なに?
A. ハエがいないのに、ハエを噛むみたいに空中をパクパク噛む行動の呼び名です。
大事なのは、病名ではなく“行動の名前”という点です。
Q2. 「見えてる」ってことですか?幻覚ですか?
A. そうと決めつけることはできません。
見た目が似ていても、背景は神経・胃や食道・行動など幅広い可能性があります。
Q3. 病気ですか?それともクセですか?
A. 1回だけでは判断できません。
ただ、回数が増える/長く続く/他の症状があるなら、体のサインの可能性もあるので相談が安心です。
Q4. まず家でやることは何ですか?
A. まずはこの3つだけでOKです。
動画を撮る(10秒でもOK)
秒数を測る
起きた場面を一行メモ
これだけで病院での説明が一気に楽になります。
Q5. 叱って止めたほうがいい?
A. 基本はおすすめしません。
不安や興奮が重なると、行動が増えることがあります。
安全を確保しつつ、まずは静かに観察と記録が優先です。
Q6. 触って止めてもいい?口を開けて確認していい?
A. 口に手を入れて止めるのは避けたほうが安全です。
反射的に噛むこともあります。
確認するなら、落ち着いた後にやさしく様子を見る程度に。
Q7. どんなときに多いですか?(食後・寝る前など)
A. 個体差がありますが、
「食後」「寝る前」「落ち着いたタイミング」で出る子もいます。
だからこそ、“いつ起きたか”のメモが重要です。
Q8. 「首を伸ばす」「飲み込む」が一緒に出ます。関係ある?
A. ヒントになることがあります。
口パクの前に首を伸ばす/飲み込む/舌なめずりが出る場合、
胃や食道の違和感が絡むケースも考えられます。※断定はできません
Q9. てんかん(焦点発作)なんですか?
A. そう説明されるケースもありますが、確定はできません。
焦点発作は全身けいれんがなくても、口だけ動くなど“部分的”に出ることがあります。
気になるときは動画を持って相談が早道です。
Q10. 逆くしゃみとどう違う?
A. 逆くしゃみは、口パクというより
ズーズー/ブーブーと吸い込む音が目立ち、短時間で落ち着くことが多いです。
迷うときは動画で切り分けやすくなります。
Q11. 歯や口の中の問題でも起きますか?
A. 起きることがあります。
歯ぐきの痛み、異物、口内炎などで「くちゃくちゃ」「もぐもぐ」に見える場合も。
よだれ、口を気にする仕草があれば要チェックです。
Q12. 子犬でも起きますか?
A. 起きる可能性はあります。
ただし、遊び・興奮・学習行動と見分けが難しいこともあるので、
頻度・長さ・他症状で判断材料を集めましょう。
Q13. どのくらい続いたら病院ですか?
A. 目安として、
回数が増える
1回が長い(分単位)
嘔吐、強いよだれ、ふらつき、意識がぼんやり…などがある
このどれかがあれば相談をおすすめします。
Q14. 病院では何をすることが多い?
A. 状況により違いますが、
まずは問診(動画・ログ)→身体チェック→必要に応じて検査、という流れが一般的です。
だからこそ、動画と記録が最強の持ち物になります。
Q15. フライバイトが出たら“毎回”記録すべき?
A. 最初から完璧じゃなくてOKです。
まずは動画1本+メモ3行が取れたら十分。
そこから「増えているか」「食後に多いか」などが見えてきます。
ここで不安が少し整理できたと思います。
次は、「フライバイトとは何か」を、言葉の由来や研究の話も含めてもう一段深く見ていきます。
ここまでを“前段階の説明”として覚えておけばOKです。
次の章からは、定義→原因の優先順位→見分ける観察ポイント→受診目安を、順番に整理していきます。
フライ(ハエ)を噛んでいるようで、噛んでいるのは“ハエ”とは限りません。
その正体を、もう一段深く、一緒に学びに行きましょう。
▶ 次は「フライバイトとは?(定義と概要)」です。
4. 『フライバイト(Fly biting)』とは?
定義
『フライバイト(Fly biting/フライ・バイティング/Fly Biting)』
は、犬が 何もいない空中を見つめて「パクッ、パクッ」と噛むような動きを繰り返す行動の呼び名です。
文献では Fly-catching syndrome(フライ・キャッチング・シンドローム)、fly snapping(フライ・スナッピング)、昔の呼び方として jaw snapping(ジョー・スナッピング:あごをカチカチ) など、似た表現も見られます。
ここで超重要:
**フライバイトは「病名」ではなく、あくまで“行動の名前”**です。
だからこそ、原因は1つに決めつけられません。

名前の意味(かんたん)
- Fly(フライ)=ハエ
- Bite(バイト)=噛む
つまり直訳は「ハエ噛み」。
でも実際は ハエがいるとは限らず、見た目が“ハエを噛んでいるみたい”だからそう呼ばれます。
いつから知られていたの?(由来・歴史)
フライバイトは、SNSで急に生まれた言葉ではなく、獣医領域では昔から“謎の口パク”として報告されてきた行動です。
- 1960年代に「Jaw snapping dog(あごがカチカチする犬)」として言及
- 1970年代に「auto-induced “fly catching”」や「jaw snapping syndrome」などとして報告
- 1990年代には「psychomotor epilepsy(精神運動発作のようなもの)」の文脈でも語られる
…といった流れが、研究論文内で整理されています。
✅結論として、“誰か1人の提唱者が命名した”というより、臨床現場の観察で積み上がって定着した言葉に近いです。
「研究のきっかけ」っぽい話はある?
あります。
ある研究では、ラブラドールが見せたフライバイト様行動が、消化器の治療で消えたことが背景にあり、そこから「消化器の不快感が関与しているのでは?」という仮説で、※犬を集めて前向き(prospective)に評価する研究につながっています。
※prospective study(プロスペクティブ・スタディ/前向き研究)
= これから起こることを、最初から計画して、先に先に追いかけながら調べる研究 です。
「これから先のことを、決めた方法で見守りながら調べる」 研究です。
たとえば「毎日同じ時間に体温を測って、1か月あとにどう変わったかを見る」みたいなイメージです。
まず押さえる要点まとめ(ここだけ覚えてOK)
- フライバイト=行動名(病名ではない)
- 原因候補は大きく
①神経(焦点発作など)②消化器(胃・食道の不調など)③行動(強迫・常同)+その他
▶ 次は、「なぜこの行動が注目されるのか?」を、“放置が怖い理由”も含めて整理します。
5. なぜ注目されるのか?
背景・重要性
注目される理由はシンプルです
フライバイトは、体の異常の“入口サイン”になり得るからです。
研究では、消化器の病気が背景にある可能性や、てんかん(焦点発作)の一種として説明される可能性、さらに 強迫的行動としての可能性など、複数ルートが議論されています。
【脳・神経】焦点発作(Focal seizure)としてのフライバイト
獣医学の解説では、焦点発作=脳の一部だけで異常な電気活動が起きる発作で、見え方はいろいろ。
その“典型例”として **「fly-biting」**が挙げられています。
(ミニ解説:焦点発作)
焦点発作は、全身けいれんのように倒れるタイプとは違い、
- 口だけが動く
- 顔がピクピクする
- 一点を見つめる
など 局所的な症状だけで終わることもあります。
【脳のどこが関係する?】視覚野(後頭葉)の話
「本当にハエが見えているの?」という疑問に関して、研究側も慎重です。
ただし、24頭の後ろ向き研究では、EEG(脳波)で スパイク活動が見つかった犬がいて、その多くが後頭葉(視覚の処理に関わる部位)だったことが報告されています。
(ミニ解説:後頭葉/こうとうよう)
目から入った情報を「何が見えているか」に変換する、脳の“映像処理センター”のような場所です。
【消化器】胃や食道の不調が関係する可能性
前向き研究(7頭)では、フライバイト犬に対して検査を進めた結果、**胃や十二指腸の炎症所見、胃食道逆流(GER)、胃内容排出遅延(DGE)**などが診断として並び、治療(食事変更や薬など)後に 複数の犬で行動が止まった/改善したことが示されています。
特に、
- 食後に増えやすい犬がいた
- 口パク前に 頭を上げて首を伸ばす動きが共通して観察された
といった点も報告されています。
【行動】強迫(コンパルシブ)としての可能性
24頭研究では、治療反応として
- フェノバルビタール(抗てんかん薬)群より
- フルオキセチン(SSRI:行動治療で使われることがある薬)群の方が
反応が良かった、という結果も示されています。
ただし、研究者自身も **「原因は多くのケースで不明」**としていて、ここも断定できません。

つまり、注目ポイントはここ
「かわいいクセ」に見える一方で、体の問題が混ざることがある。
だからこそ、見逃さないために“観察”が大事になります。
▶ 次は、飼い主さんが今日からできる **実生活の対応(観察・対処・受診のコツ)**を、手順化します。
6. 実生活への応用例
家庭でできる観察・対処
ここからは「犬が空中を噛むのはどうして?」の答えを、行動として役立つ形に落とします。
ポイントは “原因当てクイズ”をしないことです。代わりに、獣医師が判断しやすい情報を集めます。
まずは結論:家庭でやることは「3つ」でOK
- 動画を撮る(短くてOK)
- メモを残す(いつ/どれくらい/前後に何があったか)
- 受診の目安に当てはめる(危険サインがあれば早めに相談)
Cornellの解説でも、発作の評価に ログと動画が非常に役立つことが強調されています。

【観察ログ】コピペで使えるテンプレ
スマホのメモに、このまま貼ってOKです。
- 発生日時:
- 1回の長さ(秒):
- 連続回数(回):
- 直前の状況:寝起き/食後/散歩後/興奮/来客/音/光 など
- 付随症状:よだれ/飲み込む動き/舌なめずり/首を伸ばす/嘔吐/落ち着きがない
- 呼びかけ反応:ある/ない(途中で止まる?)
- その後:ケロッとしている/ぼーっとする/寝る/怖がる など
(※研究でも、首を伸ばす動きが先に出るなど“前兆っぽい動き”が整理されています)
【家での対処】やっていいこと/避けたいこと
やっていいこと
- 叱らずに距離を取って見守る(叱ると不安が上がり、行動が増えることがあります)
- 危険物をどける(机の角、段差など)
- 静かに動画+時間計測
避けたいこと
- 口に手を入れて止めようとする(反射的に噛むことがあります)
- 人間用の胃薬や抗不安薬を自己判断で与える(犬は用量も適応も別です)
- 「幽霊が見えてる」などで結論づけて、受診を遅らせる
【受診の目安】このどれかがあれば“相談推奨”
- 回数が増える/毎日続く
- 1回が長い(目安として分単位)
- よだれ・嘔吐・ふらつき・意識がぼんやりする等、他の症状がある
- 初めて見た行動で不安が強い
- けいれんが5分以上続く、または短時間に何度も起きる(緊急の可能性)
▶ 次は、「誤解されがちな点」を先に潰して、無駄な不安と早合点を減らします。
7. 注意点や誤解されがちな点
早合点を防ぐ
誤解①「フライバイト=てんかん確定」
違います。
焦点発作の例として有名ですが、研究では 消化器・行動・その他の可能性も繰り返し述べられています。
誤解②「虫がいない=幻覚で決まり」
これも慎重に。
24頭研究では、説明候補として 視覚野のてんかん性異常、部分発作、強迫、幻覚様行動、常同行動などが並列で語られ、原因は不明で議論があるとされています。
誤解③「かわいい癖だから放置でOK」
放置がダメと断言はできません。
でも、前向き研究では 背景に消化器疾患が見つかり、治療で止まった例が複数あります。
つまり「癖っぽい見た目」でも 体が関与している場合があるのが怖いところです。
誤解④「ネットの対処法を試せば治る」
特に危ないのは、
- 薬の自己判断
- 受診を遅らせる断定
です。
獣医師は「行動」だけでなく、必要に応じて
血液検査、神経学的検査、画像検査、消化器評価などを組み合わせて判断します(研究でもMRI・EEG・CSFなどの実施が記載)。
▶ 次は、おまけコラムとして「見え方を変えると一気に理解が深まる視点」を紹介します。
8. おまけコラム
実は「フライバイト」より本質を突いた呼び名がある?
前向き研究の著者は、
「Fly biting(ハエ噛み)」という言い方は、つい“ハエが見えている”と解釈してしまうので、『neck extension syndrome/ネック・エクステンション・シンドローム(首伸ばし症候群)』の方が科学的では?と提案しています。
実際、その研究では、フライバイトの前に
頭を上げて首を伸ばす動きが全例で見られたと書かれています。
これ、飼い主目線でも大事で、
「口パクだけ」より **前兆(首伸ばし・飲み込み・舌なめずり)**に気づくと、
動画も撮りやすいし、受診時の説明も一気に明確になります。

▶ 次はいよいよまとめです。あなたの不安が“行動に変わる”形で整理します。
9. まとめ・考察
この記事の結論を、もう一度(短く)
- フライバイトは“行動の名前”
- 背景は1つではなく、神経・消化器・行動などが候補
- だから飼い主がやるべきは 断定ではなく観察と記録
- 頻度が増える/長い/他症状があるなら、動画を持って相談が安心
考察(ちょっと高尚に、でも現実的に)
犬は「痛い」「気持ち悪い」「見え方が変」と言葉で言えません。
だからこそ、フライバイトは **“説明できない違和感が、口の動きとして漏れ出たサイン”**にも見えます。
そして面白いのは、研究でも
- 脳(焦点発作)
- お腹(食後に増える、治療で止まる)
- 心(強迫に反応する)
が並ぶこと。
私はこれを、
「犬の体は、脳と胃と心が“別々に”動いているんじゃなく、つながっている」
という証拠みたいに感じています。

読者への問いかけ
もしあなたの犬が、次に「パクッ」としたら——
あなたなら、
叱りますか?笑いますか?それとも“記録して守る”を選びますか?
――ここまでで、フライバイトは
「かわいいクセ」だけでは片づけられない可能性があることが見えてきました。
でも、次にぶつかるのがこの壁です。
「似た行動が多すぎて、どれがフライバイトなのか分からない」。
そこでこの先は“応用編”として、
間違えやすい現象・言葉を整理して、あなたの観察が「病院で伝わる情報」になる形にしていきます。
▶ 次は、**「似ているけど違う行動」**をサクッと見分けるところから一緒にいきましょう。
10. 応用編
似ている行動・間違えやすい言葉(見分けのコツ)
ここでは、読者の疑問に“答えながら”進めます。
- 犬が空中を噛むのはどうして?(フライバイトとは?)
→ 「空中を噛むように見える行動」の総称の1つで、原因は神経・消化器・行動など幅広いです。 - ハエがいないのに口をパクパク…なぜ起きる?
→ 「見えている」と決めつけず、**体の不快感(胃など)や脳の発作(焦点発作)**など複数の可能性を前提に観察します。 - これって病気?それともクセ?
→ 1回だけで断定はできません。
ただし、頻度が増える/長い/他症状があるなら「体のサイン」の可能性を考えて相談が安心です。
まず最初の切り分け:「本当に虫がいる」パターン
いちばん最初にやるべきは、実はこれです。
- 部屋に小虫が入りやすい環境(窓・照明・観葉植物・生ゴミなど)か
- 犬の目線の先に、光るもの(反射・埃・糸くず)がないか
ここで「本当に虫」なら、行動は比較的シンプルです。
虫が移動すると目線も追いかけることが多いです。

▶ それでも「虫がいないのに続く」なら、次です。
“フライバイトっぽく見える”代表選手5つ(見分けポイント)
① フライバイト/フライ・スナッピング(Fly snapping)
見えない虫を噛むように、空中でパクパクする行動です。
文献では fly snapping / fly biting / fly-catching syndrome / jaw snapping など近い表現が使われます。
見分けポイント
- 休んでいる時に突然始まることがある
- 呼びかけに反応する子もいれば、反応が弱い子もいる(個体差)
(ミニ解説)
焦点発作(フォーカル・シージャー):脳の一部で起きる発作で、全身けいれんにならないこともあります。VCAの解説でも、飛ぶハエを噛むような発作(fly-biting)が焦点発作の例として説明されています。
② 首を伸ばして上を向く系:スターゲイジング/ネック・エクステンション
飼い主さんが「口パク」だと思っていたら、よく見ると
**首を伸ばして上を向く(=違和感があるような姿勢)**が先に出るタイプです。
「フライバイト」という名前が、つい「ハエが見えている」に引っ張られるので、研究者が**“neck extension(首伸ばし)”**という見方を提案したケースもあります。
見分けポイント
- 口パクの前に、首を伸ばす/飲み込む/落ち着かないが出やすい
- 「食後」に増えるなら、消化器の可能性も視野に入ります
③ 逆くしゃみ(Reverse sneezing/リバース・スニージング)
これ、初見だとかなり怖いです。
でも多くは 鼻の奥(鼻咽頭:びいんとう)への刺激で起きる反射で、発作とは別物のことがあります。
見分けポイント
- 「パクパク噛む」より、ズーズー/ブーブーと吸い込む音が主役
- 数十秒〜短時間で落ち着くことが多い
▶ 「口の動き」に見えて、実は「呼吸」の現象…という落とし穴です。
④ 口の中の違和感(歯・歯ぐき・異物)
これもフライバイトと間違えやすいです。
見分けポイント
- 片側だけ噛む、よだれ、口を気にする
- 口パクより「もぐもぐ」「くちゃくちゃ」寄り
▶ 口腔(こうくう:口の中)トラブルは、見た目が似ても「原因がまったく別」なので要チェックです。
⑤ 反復行動(強迫・常同)っぽいタイプ:光追い/影追い/空噛み
獣医行動学の領域では、フライバイト様の行動が
“異常な反復行動”の一種として分類されることがあります。
見分けポイント
- 特定の場所・時間・刺激(光、音、退屈)で起きやすい
- 生活環境の変化で増減することがある
▶ ただしここも、「ストレスだ」と決めつけないのが大事です。
消化器疾患の治療で改善した例も報告されているため、体の評価とセットで考えるのが安全です。
応用編まとめ(ここだけ覚えてOK)
フライバイトっぽい行動が出たら、まずはこの順でOKです。
- 虫や光の可能性をざっくり排除
- 逆くしゃみのような「呼吸の現象」を切り分け
- それでも続くなら、動画+ログで獣医師に相談(神経・消化器・行動を並行で考える)
▶ 次は「もっと深く学びたい人へ」。
11. さらに学びたい人へ
おすすめ書籍
フライバイトは「行動の名前」で、背景が 神経・消化器・行動などにまたがる可能性があります。だからこそ、1本の記事だけでなく、信頼できる本で“地図”を持っておくと安心です。
ここでは、4冊について、特徴とおすすめ理由を提示します。
初学者・家族向け(まず不安を減らしたい人に)
『犬の家庭医学 最新版』(共立製薬株式会社 編/石田卓夫 監修)
特徴
- 初めて犬を迎えた人にも分かりやすい解説で、しぐさ・症状から病気を早期発見する考え方がまとめられています。
- 後半に、専門獣医師監修の**部位別「病気辞典」**が載っているタイプです。
おすすめ理由
- 「これって様子見?病院?」の迷いを減らすのに強いです。
- フライバイトのように原因が幅広い現象でも、**“まず体調のサインをどう拾うか”**が整理しやすくなります。
中級者向け(“クセ”と決めつけず、行動を治療として考えたい人に)
『最新 犬の問題行動 診療ガイドブック:薬物療法・行動療法による実例を集録』(荒田明香/藤原良己/渡辺格)
特徴
- 問題行動を「しつけ」だけでなく、行動療法+薬物療法の両方から扱う構成です。
- 症例(実例)ベースで、治療の選び方を紹介するタイプ。イラストも多用して理解しやすく工夫されています。
おすすめ理由
- フライバイトが「強迫(コンパルシブ)っぽい反復行動」として扱われるケースを学ぶときに、考え方の助けになります。
- 「叱る/我慢させる」以外の選択肢を、現実的に増やせます。
全体におすすめ(“神経の視点”を一段深く、でも体系的に)
『エッセンシャル 犬と猫の神経病診療』(長谷川大輔 監修/伊藤大介 監修)
特徴
- 一次診療(かかりつけ)で必要な、神経病の考え方・診察の流れ・検査の要点を体系的に整理した本です。
- 図版に加えて、神経徴候の動画をQRから見られるのが大きな強みです。
おすすめ理由
- フライバイトが「焦点発作(フォーカル・シージャー)」の可能性として語られるとき、**“病院で何をどう見ているのか”**が理解しやすくなります。
- 飼い主さんでも「先生の説明が分かる」状態に近づけます(※専門寄りなので、気になる章からでOK)。
しっかり深掘り(行動学を辞書的に押さえたい人に)
『犬・猫の問題行動ハンドブック』(佐々木伸雄)
特徴
- 各問題行動について、分析のしかた→治療法を、具体的症例や図表とともに解説するタイプです。
おすすめ理由
- 「似た行動が多くて混乱する…」という段階で、分類の軸を作りやすいです。
- 行動の見立てを“感覚”ではなく、手順で考える助けになります。
迷ったら、こう選ぶとスッキリします
- まず不安を減らす → 『犬の家庭医学 最新版』
- 行動(クセ?ストレス?)を深める → 『最新 犬の問題行動 診療ガイドブック』 or 『犬・猫の問題行動ハンドブック』
- 神経(発作の可能性)を理解する → 『エッセンシャル 犬と猫の神経病診療』
▶ 次は、これらの本を読んだあとに「記事に戻って確認すると理解が深まるポイント(チェックリスト化)」
12. フライバイト観察チェックリスト
まずはここだけチェック!
本を読んでも、病院に行っても、結局いちばん役に立つのは
**「その瞬間の情報」**です。
フライバイトは原因が1つに決められないからこそ、
“観察の質”がそのまま診断の近道になります。
ここでは、スマホで見ながらそのまま使えるように
チェックリスト形式でまとめました。
✅ A. その場でやること(30秒でOK)
- 動画を撮れた(5〜20秒で十分)
- 時間を測った(何秒続いた?)
- 回数を数えた(パクパク何回?ざっくりでOK)
- 周りに本当に虫がいないか、さっと確認した(照明/窓際/観葉植物など)
▶ 次は「いつ起きるか」を書くだけで、原因の手がかりが増えます。
✅ B. いつ起きた?(状況チェック)
- 食後30分〜2時間くらいに多い
- 寝る前/寝起きに多い
- 散歩後・興奮後に多い
- 来客や大きな音のあとに多い
- 明るい場所(光や影が動く場所)で増える
メモ例
「20:10 食後1時間、リビング、3回×約10秒」
▶ 次は「体の不調っぽいサイン」がないかを確認します。
✅ C. いっしょに出ていない?(体のサイン)
消化器っぽいサイン(お腹・喉の違和感)
- 舌なめずりが増える
- 飲み込む動きが増える
- 首を伸ばす/上を向くのが先に出る
- げっぷっぽい動き/吐きそうな動き
- 嘔吐、食欲低下、便がゆるい
神経っぽいサイン(発作を疑う時の材料)
- 呼んでも反応が薄い/目が合わない
- ぼーっとする時間がある
- 顔がピクピクする/よだれが増える
- 終わった後に急に眠る、落ち着かない
※焦点発作(フォーカル・シージャー)では、全身けいれんがなくても
口の動きなど“部分的な症状”だけが出ることがあります。
▶ 次は「呼びかけへの反応」で、行動の性質が少し見えます。
✅ D. 呼びかけるとどうなる?(反応チェック)
- 名前を呼ぶと一瞬止まる
- おやつやおもちゃで切り替えられる
- 触れるとやめる
- 何をしても止まりにくい
※止まる/止まらないだけで原因が確定するわけではありません。
ただ、獣医師にとっては重要な判断材料になります。
▶ 次は「危険サイン」です。ここだけは見逃さないでください。
🚨 E. 受診を急ぎたいサイン(当てはまれば相談推奨)
- 回数が増えている(週1→毎日など)
- 1回が長い(分単位)
- 1日に何度も起きる/短時間に連発する
- 嘔吐・強いよだれ・ふらつき・意識がぼんやりする
- けいれんが疑われる、または発作が長い
特に、発作が 5分以上続く、または 短時間に何度も続く場合は緊急性が高いことがあります。
▶ 次は「病院で伝えるテンプレ」です。これがあると診察が一気に進みます。
🏥 F. 病院でそのまま読める「伝え方テンプレ」
診察で口頭でも読み上げられる形にしました。
- いつから:___日前から
- 頻度:1日__回/週__回
- 1回の長さ:__秒くらい
- 起きやすい場面:食後・寝る前・散歩後・その他(___)
- 同時症状:舌なめずり/飲み込み/首伸ばし/嘔吐/よだれ/ぼーっと など
- 動画:あり(_本)/なし
✅ このチェックリストの使い方(おすすめ)
1日分を完璧に取ろうとしなくてOKです。
**「動画1本+メモ3行」**が取れたら、もう十分前進です。
13.疑問が解決した物語
数日後の休日。
ミサキさんは、あの日と同じリビングで、またコーヒーを手にしていました。
……そして、やっぱり来ました。
愛犬がふいに顔を上げ、空中に向かって「パク、パク、パク」。
でも、今回は違います。
ミサキさんの胸は、あの日ほどざわつきませんでした。
(落ち着いて。まずは動画。次に時間)
スマホをそっと構え、10秒ほど撮影。
ついでにメモに「食後1時間」「首を少し伸ばしてから」「約12秒」を残します。
「虫かな?」と思って天井を見ても、やっぱり何もいません。
それでも、ミサキさんは“幽霊でも幻覚でも”と決めつけませんでした。
この記事で読んだ通り、フライバイトは“行動の名前”で、原因はひとつじゃないからです。
翌日、かかりつけの動物病院へ。
動画とメモを見た獣医師は、「フライバイトの可能性があるね」とうなずきました。
そして「神経だけじゃなく、胃や食道の不調でも似たことが起きることがある」と、今後の確認の順番を一緒に整理してくれました。
帰り道、ミサキさんはふっと気づきます。
“分かった”のは、原因の断定ではありません。
不安の扱い方でした。
- すぐに結論を決めつけない
- かわいいクセで片づけない
- でも必要以上に怖がらない
- 観察して、記録して、相談する
それだけで、「何か起きている」から「守れる行動」に変わる。
ミサキさんは、愛犬の背中をなでながら、静かに笑いました。

あなたの犬が、もし今日「パクッ」としたら――
あなたは、どうしますか?
叱りますか?様子を見ますか?それとも、動画とメモで“守る準備”を始めますか?
14.文章の締めとして
フライバイトを見たとき、飼い主の心に最初に立ち上がるのは、だいたい「怖さ」です。
見えないものを追っているように見える。
止めたほうがいいのか、様子を見るべきか。
その場では、判断の材料が足りなくて当たり前です。
でも、この記事のゴールは「原因を言い当てること」ではありません。
フライバイトは“行動の名前”で、背景は一つに決められない。
だからこそ、私たちが持つべきなのは 断定の勇気ではなく、観察のやさしさなのだと思います。
犬は「お腹が気持ち悪い」「見え方が変」「なんだか落ち着かない」を、言葉で説明できません。
その代わりに、動きや目線や呼吸で、ほんの少しだけヒントを出します。
そして飼い主は、そのヒントを拾える唯一の人です。
だから、あなたが不安になったこと自体が、すでに“守る力”の始まりです。
今日からできるのは、特別なことではありません。
動画を撮る。秒数を測る。起きた場面を一行メモする。
それだけで、「怖い出来事」は「伝えられる情報」に変わります。
そして情報は、獣医師の判断を助け、犬の未来をやわらかくします。
この先、もしまたあの「パクパク」が起きても、あなたはきっと前より落ち着いていられます。
“何か分からない”が、“何をすればいいか分かる”に変わったからです。
不思議な現象は消えなくても、あなたの中の混乱は減らせます。

補足注意
本記事は、信頼性の高い情報源をもとに、できる限り正確にまとめています。
ただし、ここで示した内容は 作者が個人で調べられる範囲での整理 であり、犬の状態や背景によって見立ては変わります。ほかの考え方・解釈もあり、この答えがすべてではありません。
また、フライバイト(フライキャッチング・シンドローム)は原因が複数ありうるとされ、研究も更新され続けています。
今後の研究で、理解や対処法が変わる可能性、新たな発見が出る可能性もあります。
🧭 本記事のスタンス
この記事は、「これが唯一の正解」ではなく、「読者が自分で興味を持ち、調べるための入り口」として書かれています。
さまざまな立場からの視点もぜひ大切にしてください。
フライバイトは、見た目は“空振りのパクパク”でも、背景は神経や消化器、行動まで広がる奥深いテーマです。
だからこそ、信頼できる文献や資料を辿るほど、あなたの観察は精度を増し、愛犬のサインをもっとやさしく読み取れるようになります。
フライ(ハエ)を追いかけるように見えて、追いかけているのは――もしかすると“本当の手がかり”かもしれません。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
それでは、これからはフライバイトの「空振り」を、あなたのやさしい観察で“意味のある一口”に変えていきましょう。



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