転職・入社後に最初だけやる気が出て満足度が上がるのはなぜ?──『ハネムーン効果』を心理学でやさしく解説します

考える

最初の追い風は“才能”じゃない。落ち着く前に、続く仕組みを作るヒント

転職・入社直後に急にやる気が出るのはなぜ?それ『ハネムーン効果』かもしれません

代表例

引っ越しした直後だけ、部屋がモデルルームみたいに片づく。
なのに、気づいたらいつもの散らかり具合に戻っている。

……これ、あなたにも覚えがありませんか?

※これは日常で起きやすい「最初だけ上がる」体感のたとえです。この記事では、転職や入社など仕事が変わった直後に、仕事満足度が一時的に上がる現象が研究でどう説明されるか(ハネムーン効果)を紹介します。

(→まずは「上がるほう」に名前がある、と10秒で説明します)

10秒で分かる結論

新しい環境に入った直後、気分が上がって「よし、頑張れそう」と感じることがあります。
ただし、組織心理学でいう「ハネムーン効果(honeymoon effect)」は、主に 転職・入社など仕事の変化の直後に、仕事満足度(job satisfaction)が一時的に高まる局面を指します。

なお、引っ越し直後に片づく/新しい道具でやる気が出る、といった日常の「最初だけ上がる感じ」は、より広くは **ノベルティ効果(novelty effect)**として説明されることもあります。

(※「その後どうなるか」は、付属の補足で“別の名前”として整理します)
(→次は“小学生でもスッキリわかる言い方”にします)

小学生にもわかる説明

新しいゲームを買った日は、すごくワクワクしますよね。
でも何日かすると「いつものゲーム」になっていきます。

それと同じで、新しい環境は最初だけ特別に見えやすいんです。
だから、やる気が出るのも「ふしぎ」じゃなくて、わりと自然なことなんですよ。

(→ここからは“あるある”で、もっと身近にしていきます)

1. 今回の現象とは?

新しい環境に入ったときだけ、やる気が急に出る。
「よし、今度こそいける気がする!」と、最初に気持ちが上がる。

この現象は、こんな場面で起こりがちです。

このようなことはありませんか?(あるある例)

  • 新しい手帳を買った日だけ、人生が整った気がする
  • 新しい勉強アプリを入れた直後だけ、毎日続く気がする
  • 新しいスポーツを始めた最初の週だけ、体が軽い気がする
  • 新しい目標を立てた直後だけ、「自分、変われるかも」と思える

最初は「自分、天才かも」と思うのに、
数日〜数週間で、気持ちがふっと平常運転に戻ることもあります。

だからこそ、こういう疑問が生まれます。

よくある疑問(キャッチフレーズ風)

  • 「新しい環境だとやる気が出るのはどうして?」
  • 「最初だけ燃えるのはなぜ?(ハネムーン効果とは?)」
  • 「やる気が消えるのは意思が弱いから?」

この記事を読むメリット

「やる気が落ちた=自分がダメ」ではなく、
**“最初に上がるのは自然”**だと理解したうえで、続く工夫を作れるようになります。

(→次は、疑問が生まれる“物語”で一気に引き込みます)

2. 疑問が浮かんだ物語

転職して一週間。
ミナさんは、仕事帰りの電車でふと思いました。

「……なんか、今めちゃくちゃ気分がいい。」

新しい会社は、空気が軽い。
周りの人も優しい。
仕事の説明も丁寧で、「ここならやっていけそう」と思えました。

朝は自然に早起きできるし、
メモもきれいに取れる。
提出物も早い。
自分が“少し成長した人”になったみたいでした。

「私、こういう場所を探してたんだ」
そんなふうに未来まで明るく見えます。

でも同時に、心のどこかで小さな疑問も浮かびました。
「なんでこんなに気分が上がってるんだろう?」
「この感じ、いつも続くのかな?」
「もしかして、今だけ…?」

ミナさんは、スマホでこう検索しました。

「転職 最初 やる気 満足度 上がる なぜ」

(→次で“学術的に名前のある現象”として、はっきり説明します)

3. すぐに分かる結論

お答えします。

いまのミナさんの「転職直後に気分が上がっている感じ」は、
組織心理学で扱われる ハネムーン効果(honeymoon effect)』 と呼ばれる局面と合っています。

ハネムーン効果は、ひとことで言うと――

新しい職場や環境に入った直後に、仕事満足度や前向きな気分が一時的に高まりやすいこと

噛み砕いて言うなら、こうです。

「最初は“新しさボーナス”が乗って、気持ちが上がりやすい」

背景のヒントとして、脳は「新奇性(ノベルティ:novelty=新しさ)」に反応し、
海馬(かいば)とVTA(ブイティーエー:腹側被蓋野)をめぐるモデルが提案されています。
(※ただし、これだけで“仕事満足度の変化”を全部説明できる、と断言するのは避けるのが安全です)

(→次は、付属として「似た言葉:ハネムーン・ハングオーバー効果」も整理します)

付属:ハネムーン・ハングオーバー効果って何?

ハネムーン効果は「上がる局面」だけの名前です。
一方で研究では、上がったあとに下がっていく局面(ハングオーバー)まで含めて、全体を ハネムーン・ハングオーバー効果(honeymoon-hangover effect) と呼ぶことがあります。

  • ハネムーン(honeymoon):転職直後などに満足度が上がる
  • ハングオーバー(hangover):時間が経って、その上がり方が落ち着き、元の水準へ戻るように下がる

つまり、
ハネムーン効果=ハネムーン・ハングオーバー効果 ではありません。
前者は「上がる部分」、後者は「上がって下がる流れ全体」です。
※本文の定義
「ハネムーン効果とは、入社・転職直後などに職務満足度が一時的に高まる局面のこと」
間違えやすい内容
「引っ越し直後に片づく/新しい手帳だとやる気が出る、のような“最初だけ上がる感じ”は、より広くは“新奇性(ノベルティ)効果”として説明されることが多い」

3.5ハネムーン効果で不安が出たときの答え

ここまで読んで、「なるほど」と思う一方で、
「これって私だけ?」「どう対処すればいいの?」と疑問が出てきたかもしれません。
先に“よくある質問”をまとめて解決します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ハネムーン効果って、ひとことで言うと何ですか?

A. 転職・入社などで仕事が変わった直後に、仕事満足度や前向きな気分が一時的に上がりやすい「上がる局面」を指す言い方です。

Q2. 「やる気が上がる」のは良いこと?悪いこと?

A. 良い面もあります。追い風で行動しやすくなるからです。ただし「上がりっぱなし」を前提にすると、落ち着いたときに自分を責めやすいので、最初から“波がある前提”で設計するのがコツです。

Q3. どのくらい続くものですか?

A. 個人差が大きいです。数週間〜数か月で落ち着く人もいれば、もっと長い人もいます。大事なのは期間を当てることより、「落ち着く日が来る前提で仕組みを置く」ことです。

Q4. やる気が落ちたのは、私の意思が弱いから?

A. そう決めつけない方が楽です。環境が変わった直後に気分が上振れしやすいのは珍しくありません。落ちたあとに残るのは“意思”より“仕組み”なので、責めるより整える方が前に進めます。

Q5. 「ハネムーン効果」と「ハネムーン・ハングオーバー効果」は同じ?

A. 同じではありません。ハネムーン効果は「上がる局面」。上がったあと落ち着いて下がる局面(ハングオーバー)まで含めた流れ全体を、ハネムーン・ハングオーバー効果と呼ぶことがあります。

Q6. 引っ越し直後に片づくのも、ハネムーン効果ですか?

A. この記事では“体感のたとえ”として紹介しました。学術用語としては、日常の「新しさで上がる感じ」はノベルティ効果(新奇性の影響)として説明されることも多いです。

Q7. じゃあ「ノベルティ効果」との違いは何ですか?

A. ざっくり言うと、ハネムーン効果は主に職場・仕事満足度の研究文脈で語られやすいのに対し、ノベルティ効果は「新しさで一時的に上がる上振れ」をより広く説明する言葉として使われやすい、という違いがあります。

Q8. 落ち着いてきた時期に、まず何をすればいい?

A. おすすめは3つです。①入社初日に感じた「良かった点」を3つ見返す ②“5分だけ着手”で仕事のエンジンをかける ③週1回だけ困りごとを短く相談する。気分の波をゼロにするより、波があっても進める形にします。

Q9. ハネムーン期にやっておくと得することは?

A. 追い風があるうちに「続く仕組み」を置くことです。例:朝のルーティン、相談の窓口、最初の成功パターン、学習計画。勢いを“感情”のままにせず、“構造”に変えるのがコツです。

Q10. 「現実ショック(リアリティショック)」とは違いますか?

A. 近い場面で語られますが別の焦点です。リアリティショックは理想と現実のギャップによる衝撃。ハネムーン効果は、変化直後に満足度が上がりやすい局面の説明です。両方が同時に起きる人もいます。

Q11. 脳(ドーパミン等)が原因なんですか?

A. “ヒント”にはなりますが、脳だけで全部を説明するのは慎重であるべきです。新奇性(新しさ)への反応や報酬系の話は関連づけて語られますが、職場の満足度は仕事量・人間関係・評価制度など社会的要因も大きいからです。

Q12. 会社側(上司)はどう支援するといい?

A. 入社直後より「慣れた頃」が勝負です。2〜3か月後に振り返りを入れる、役割の再確認をする、フィードバックを言語化する。追い風が弱まる時期に支援があると離職や落ち込みを防ぎやすくなります。

Q13. この考え方は転職すべきかの判断材料になりますか?

A. なりますが、単独で決めないのが安全です。「落ち着いた=失敗」と早合点せず、仕事内容・成長機会・人間関係・健康など複数の軸で判断するのがおすすめです。

疑問がほどけたところで、ここからは“用語としての定義”をきっちり整理します。
(→次章:4. 『ハネムーン効果』とは?)

(→次章では、ハネムーン効果が“どういう条件で強く出やすいか”を、具体例つきで深掘りできます)

4. 『ハネムーン効果』とは?

定義と概要

結論:ハネムーン効果は「仕事が変わった直後、満足度が一時的に上がる局面」

組織心理学・産業組織分野で言う **ハネムーン効果(honeymoon effect)**は、主に

  • 転職・入社などで職場が変わった直後に
  • 仕事満足度(job satisfaction)が一時的に高まりやすい

という“上がる局面”を指す言い方です。
この「上がる→(やがて落ち着く)」という時間変化を、転職後の満足度の縦断データ(同じ人を追跡する調査)で扱う研究が積み重なっています。

そもそも「仕事満足度」って何?

研究では仕事満足度は、ざっくり言えば **「自分の仕事をどう評価し、どれだけ心地よいと感じているか」**です。
古典的な定義としては「仕事や仕事経験の評価から生じる、快い・肯定的な感情状態」と説明されます(研究論文中で引用される定番の考え方です)。

名前の由来:honeymoon=新婚旅行の“蜜月”

「ハネムーン(honeymoon)」は“蜜月”の比喩です。
新婚の最初の時期は、相手の良い面が目に入りやすく、気分も上がりやすい。
それと同じように、環境が変わった直後は、前向きな評価が起きやすい——そのたとえが研究用語にも入ってきました。

重要:ハネムーン効果=「ハネムーン・ハングオーバー効果」ではありません

ここ、混乱しやすいので先に整理します。

  • ハネムーン効果:最初に満足度が“上がる”局面
  • ハングオーバー(hangover):その後“落ち着いて下がる”局面(※二日酔いの比喩)
  • ハネムーン・ハングオーバー効果:上がって、あとで下がる“流れ全体”

「ハネムーン(ハングオーバー)効果」という言い方を見かけることがありますが、厳密には
“ハネムーン効果”と“ハングオーバー(効果)”は別の局面で、セットで語るときに「ハネムーン・ハングオーバー効果」と呼ぶ、という整理が安全です。

(→次は「なぜそんなことが起きるのか」を、読者の疑問に答える形で解体します)

5. なぜ注目されるのか?

背景・重要性

まず、あなたの“3つの疑問”に答えます

Q1「新しい環境だとやる気が出るのはどうして?」

仕事の変化直後は、次の“前向き要因”が重なりやすいからです。

  • 期待:「今度こそうまくいくかも」という見通し
  • 比較:前職の不満が強いほど「良くなった」と感じやすい
  • 周囲の支援:入社直後は教えてもらえる・気にかけてもらえる
  • 自己正当化:「転職した判断は正しかった」と思いたい(無意識に起きやすい)

研究でも、転職直後は平均的に満足度が高く出やすい、という“スタートの上振れ”が報告されています。

Q2「最初だけ燃えるのはなぜ?(ハネムーン効果とは?)」

“上がりっぱなし”ではなく、時間とともに下がる(落ち着く)ことがあるからです。
たとえばドイツの大規模パネル(同じ人を毎年追跡)を使った分析では、

  • 新しい職場に移った直後は満足度が高くなりやすい
  • ただし (特に自発的な転職で)その後、満足度が時間とともに強く下がる

という点が要約として示されています。

つまり、あなたが感じる
「最初は最高。なのに慣れてきたら普通になる」
は、“気合い不足”というより、起こりやすい時間変化として説明できる、ということです。

Q3「やる気が消えるのは意思が弱いから?」

意思“だけ”の問題にしない方が正確です。
なぜなら、研究が見ているのは「個人の性格」よりも、環境変化の直後に起きやすい平均的な波だからです。

意思を責めるより、こう考える方が建設的です。

「ハネムーン期は“ボーナス期間”。
そのうち落ち着く前提で、仕組みを置こう。」

(→次は「どんな研究で確かめられてきたのか」を、できるだけ具体的に紹介します)

6. 研究ではどう確かめられている?

代表研究・方法・結果

代表的な考え方:転職の前後で“満足度の形”が変わる

この分野では、「転職すると満足度は上がるのか?」だけではなく、
**“転職の前から後まで、時間の形(軌跡)がどう動くか”**がテーマになります。

研究例①:大規模パネルで見る「新しい仕事の効果」と“注意点”

ドイツのSOEP(大規模な追跡調査)を用いた研究では、

  • 新しい職場に移ると満足度が高くなりやすい
  • その大きさは 自発的な転職が中心で出ている
  • 工場閉鎖など外的要因(本人都合ではない転職)では、その効果が消えるため、因果は慎重に扱うべき

というポイントが「Research highlights」として整理されています。

ここが超重要です。
“転職したから上がった”と単純には言い切れない(元々上がりやすい人が動いている可能性がある)ということです。

研究例②:新入社員(new hires)の満足度は、いつ下がりやすい?

別の研究では、新入社員(新規入社者)を含むデータで

  • 新入社員は最初の満足度が高い
  • その後、一定期間下がりやすい

という“時間の波”を、より細かく追っています。
たとえば、ある研究では 815人の新入社員と既存社員を比較し、10か月の間ほぼ毎日「今日の仕事の幸福感」を記録し、満足度が 最初は高いが、約2か月頃まで下がり、その後も推移が変化する様子を示しています。

「下がるの、私だけじゃないんだ…」と安心できる一方で、
**“下がりやすい時期があるなら、そこに対策を置ける”**のが大きな価値です。

(→次は、この知見を“人生で使える形”に翻訳します)

7. 実生活への応用例

ハネムーン期を味方につける

ここからは、読者が一番得をするパートです。
ポイントは **「上がった時に頑張る」ではなく、「下がる前提で設計する」**です。

個人向け:ハネムーン期の“3点セット”

① 期待をメモする(あとで現実と照合する)

転職・入社直後に感じる「ここがいい!」は、貴重なデータです。
3つだけでいいのでメモします。

  • 何が嬉しい?(例:裁量がある)
  • 何に安心した?(例:人間関係が穏やか)
  • 何を続けたい?(例:朝の準備ルーティン)

後で気持ちが落ち着いた時に、判断がブレにくくなります。

② “60日目の壁”に予定を入れる

研究でも「最初の高まりが薄れる」タイミングが示唆されています。
だから、最初からカレンダーに入れます。

  • 入社2か月前後に「振り返り30分」
  • 上司・同僚に「困ってること相談」

③ やる気を“感情”から“構造”へ移す

やる気は波があります。
波が下がっても残るのは、仕組みです。

  • 仕事開始の合図(席に着いたらToDoを1つだけ開く)
  • 5分だけ着手(脳を“起動”する)
  • できた印(チェックマーク)を残す

管理職・チーム向け:最初より「3か月後」が勝負

入社直後に手厚いのは当然として、
本当に効くのは **“慣れた頃の支援”**です。

  • 3か月後の期待ギャップ(思っていた仕事と違う)を拾う
  • 6か月前後の停滞期に、役割の再設計や学習機会を入れる
  • 「できて当たり前」になる前に、フィードバックを言語化する

(→次は、誤解しやすい落とし穴と“悪用”の注意をまとめます)

8. 注意点・誤解されがちな点

危険性も正直に

誤解①「新しい環境なら何でもハネムーン効果で説明できる」

できません。
組織心理学の“ハネムーン効果”は、主に仕事満足度(job satisfaction)文脈で語られます。

引っ越し直後に片づく、最新ガジェットでやる気が出る、は
研究分野としては **ノベルティ効果(novelty effect)**と呼ばれることが多いです。
※ノベルティ=「新しさ」への反応が最初に上振れし、その後落ち着く現象。

誤解②「脳のドーパミンで全部説明できる」

“ヒント”にはなりますが、それだけで断言は危険です。
たしかに脳科学では、新奇性(ノベルティ)に反応して記憶や動機づけに関わる回路が議論されます。

  • 海馬(かいば:記憶に関係)とVTA(ブイティーエー:腹側被蓋野=報酬系に関係)がループを作る、という考え方
  • 報酬系(ドーパミン報酬系)にはVTA、側坐核、前頭前野などが含まれる、という整理 NCBI

ただし、転職後の満足度変化は
仕事内容・人間関係・評価制度・生活リズム・期待ギャップなど、社会的要因も大きいので、脳だけで単純化しない方が安全です。

誤解③「ハネムーン効果=ハングオーバー効果」

違います(ここはあなたの原稿方針どおりでOKです)。

  • ハネムーン:上がる局面
  • ハングオーバー:落ち着いて下がる局面
  • セットで語ると「ハネムーン・ハングオーバー効果」

悪用の危険性:都合よく“言い訳”にされる

  • 企業側が採用時に過剰に良く見せ、ハネムーン期だけを前提に設計する
  • 本人が「慣れた=終わり」と決めつけ、短期離職の正当化に使う

言葉に名前がつくと、安心もしますが、
“現実を見なくていい免罪符”にもなり得るので注意です。

(→次は、視点を変えて「日常の体感」と研究用語を、気持ちよく接続するコラムにします)

9. おまけコラム

あなたの毎日に“ミニ・ハネムーン”を作る

ハネムーン効果(研究用語)は「仕事満足度」の話が中心です。
でも、あなたが本当に欲しいのはたぶんこれですよね。

「最初の勢いを、もう少し長持ちさせたい」

そこで提案です。
大きな転職をしなくても、**小さな“新しさ”**を意図的に入れると、気分の上振れが起きやすいことがあります(※これはノベルティ効果の文脈)。

ミニ・ノベルティの例(安全で現実的)

  • 作業場所を変える(席/カフェ/会議室)
  • 最初の5分だけ別の手順にする(チェックリスト化)
  • “初日と同じ質問”を自分にする
    「今の職場の良いところ、3つ言える?」

「新しさ」は万能薬ではありません。
でも、落ちた自分を責めるより、上がる条件を少しだけ作る方が、ずっと優しい戦略です。

(→次は、全体をまとめつつ、あなたなりの考察で締めます)

10. まとめ・考察

まとめ(要点だけ)

  • ハネムーン効果:転職・入社など仕事の変化直後、仕事満足度が一時的に上がりやすい局面
  • 上がった後に落ち着く流れまで含めると ハネムーン・ハングオーバー効果と呼ばれることがある
  • 「落ちた=ダメ」ではなく、波がある前提で設計すると強い

考察:やる気は“才能”ではなく“季節”

春(ハネムーン期)に芽が出るのは自然。
でも、夏や冬に同じ芽の出方を求めると、苦しくなります。

ユニークな言い方をすると――

ハネムーン期は「自分の本気」じゃなくて、
環境からもらった“追い風”かもしれない。

追い風は止まります。
だからこそ、止まる前に **帆(仕組み)**を張っておく。
これが、一番現実的で優しい“継続”の作り方だと思います。

あなたなら、この効果をどう使いますか?
「落ちた時の自分に、どんな仕組みを渡しますか?」

――この先は、興味に合わせて「応用編」へ――

ここまでで、ハネムーン効果の核(=仕事が変わった直後に満足度が上がりやすい局面)はつかめました。

でも実は、このテーマは
「似た言葉」が多くて、混ざりやすいんです。

ここから先は、語彙を増やして
あなたの体感を“自分の言葉”で説明できるようにしていきましょう。

(→「似ている現象」「間違えやすい言葉」を、地図みたいに整理します)

11. 応用編

似ている現象・間違いやすい言葉まとめ

結論:ハネムーン効果は「仕事満足度の上がる局面」の名前です

組織心理学の文脈で言うハネムーン効果は、
転職・入社などの仕事の変化の直後に、仕事満足度が一時的に上がる局面を指す使い方が中心です。

→次は、混ざりやすい“似た現象”を、ズバッと区別します

「似ているけど別物」図鑑:ここを間違えると説明がブレます

① ノベルティ効果(ノベルティ:novelty=新奇性/新しさ)

最初だけ成績・気分・行動が上振れして、慣れると落ち着く現象を、広くこう呼ぶことがあります。
教育・アプリ・ガジェットなど「新しさブースト」の説明に使われやすいです。

  • 例:新しい勉強アプリを入れた直後だけ続く
  • 例:新しい道具を買った日だけ捗る

あなたの記事の「引っ越し直後に片づく」は、厳密にはこの説明の方が近いです(※たとえとして置くのはOK)。

② ヘドニック・アダプテーション(hedonic adaptation=快楽順応)

良いことが起きても、人はだんだん慣れて“当たり前”になり、幸福感が元に戻りやすいという考え方です。

  • 例:昇進した直後は嬉しいけど、しばらくすると普通になる
  • 例:待遇が上がっても、満足が永遠に続くわけではない

③ ハビチュエーション(habituation=慣れ)

同じ刺激が続くと、脳と体の反応が弱くなる現象です。

  • 例:最初は緊張していた通勤路が、何も感じなくなる
  • 例:最初は嬉しかった褒め言葉が、当たり前に感じる

④ リアリティ・ショック(reality shock=現実ショック)

新しい環境に入ったあと、理想と現実のギャップにぶつかってショックを受けることを指す用語です。

  • 例:「思ってた仕事と違う…」が出てくる
  • 例:ここで一気にモチベが落ちる人もいる

⑤ ハネムーン・ハングオーバー効果(honeymoon-hangover effect)

ここが一番混同されます。

  • ハネムーン(honeymoon)=上がる局面
  • ハングオーバー(hangover)=その後、下がって落ち着く局面
  • その“流れ全体”をまとめて ハネムーン・ハングオーバー効果 と呼びます。

あなたの方針(「本編はハネムーン効果=上がる局面」に集中し、付属で全体像を補足)は、読者の混乱を減らすので合理的です。

(→次は「同じ“ハネムーン”でも別ジャンル」も紹介します。ここを知っておくと誤解が激減します)

さらに混ざりやすい:同じ言葉でも“別の意味”のハネムーン

「ハネムーン」という言葉自体が、比喩として
**“始まりの気分が良い期間”**に広く使われます。

そのため、分野が違うと意味も変わります。

医療:1型糖尿病の「ハネムーン期」

治療開始後に一時的にインスリン分泌が残り、血糖が安定しやすい時期を指します(期間には個人差)。

政治:政権の「ハネムーン期間」

新政権発足直後など、支持や好意が集まりやすい“最初の追い風”の比喩です。

SEO:いわゆる「Googleハネムーン」

新規ページが一時的に上がる…という“業界で語られる仮説”です。
ただし、検索エンジン側が公式に同じ形で認めている用語ではなく、解釈は慎重に扱うのが安全です。

(→次は「もっと学びたい人向け」に、実在する学びルート=本を用意します)

12.さらに学びたい人へ

おすすめ書籍

ここからは「読むだけで終わらない」ための本を4冊だけ厳選します。

① 初学者・小学生にも
『マンガでわかる!心理学超入門』ゆうきゆう(監修)
特徴
マンガ+やさしい解説で、心理学の基本を「生活のあるある」でつかめます。監修がゆうきゆう先生で、読み物として入りやすい構成です。
おすすめ理由
ハネムーン効果を読む前提になる
「人の心は状況で揺れる」「気持ちの波は自然」という感覚が、スッと腹落ちします。
「まず面白く理解したい」人の最初の1冊に向きます。

(→次は“転職・入社の最初の時期”を、行動レベルに落とす本です)

② 全体におすすめ
『ハーバード・ビジネス式 マネジメント ― 最初の90日で成果を出す技術』マイケル・ワトキンス(著)/村井章子(訳)
特徴
「新しい職場・役割に入った最初の期間」を、失敗しにくい手順で整理する実務書です。
おすすめ理由
ハネムーン効果の“追い風”はいつか弱まります。
この本は、その前提で「最初のうちに何を整えておくか」を具体化しやすいので、記事内容を現実の行動に変えやすいです。

(→次は“やる気が落ちても続く仕組み”を作る本です)

③ 全体におすすめ
『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』ジェームズ・クリアー(著)/牛原眞弓(訳)
特徴
「小さな行動を積み上げる」習慣づくりの実践本です。
おすすめ理由
ハネムーン期は“気持ちの上振れ”が起きやすい反面、落ち着いた後に途切れがち。
この本は、気分に頼らず続ける設計(=仕組み化)の発想が強いので、「最初だけ上がって終わる」を防ぐのに相性がいいです。

(→次は“研究の言葉で理解したい人”向けの、少し本格派です)

④ 中級者向け
『改訂版 社会人のための産業・組織心理学入門』高橋浩(著)/高橋修(編集)
特徴
産業・組織心理学を、事例を交えながら体系的に学べる入門書です。出版社情報でも「最新の研究成果を網羅しつつ、数多くの事例で解説」とされています。
おすすめ理由
ハネムーン効果を「職場の満足度」「適応」「人と組織の関係」など、周辺概念までセットで理解できます。
記事を“読んで終わり”にせず、自分の職場の現象として説明できる語彙が増えます。

最後にひとこと。
本で学ぶと、ハネムーン効果は「知識」から「使える道具」になります。

13.疑問が解決した物語

ミナさんの結末

転職して一か月。
ミナさんは、仕事帰りの電車でふっと力が抜けるのを感じていました。

「最初の頃みたいに、自然に燃えないな……」
でも今日は、前みたいに自分を責めません。

あの記事で読んだ言葉を、思い出したからです。
“ハネムーン効果”――転職・入社直後に、仕事満足度が一時的に上がりやすい局面。
「今の私は、追い風の中にいたんだ。追い風が弱まるのも、変じゃないんだ」

ミナさんはスマホのメモを開いて、入社初日に書いた「良かったこと」を見返しました。
「人が優しい」「説明が丁寧」「朝がラク」
そして、今日の自分にこう付け足します。

「追い風が弱まっても続く形を作ろう」

次の日から、ミナさんは小さく行動を変えました。

  • 朝イチは“5分だけ着手”して、仕事のエンジンをかける
  • 週に1回だけ、上司に「困っていること」を短く相談する
  • 気分が落ちた日は、初日の良かった点を3つ言い直す

不思議なことに、気持ちの波がゼロになったわけではありません。
でも「波があるのが普通」と分かっただけで、心は軽くなりました。

電車の窓に映る自分を見て、ミナさんは小さく笑います。
「やる気が落ちたのは、私がダメだからじゃなかった。
“最初に上がる”っていう、人間らしい仕組みだったんだ」

教訓
最初の勢いは才能ではなく、環境がくれる追い風かもしれません。
だからこそ、追い風があるうちに「続く仕組み」を置くと、未来の自分が助かります。

さて、あなたはどうでしょう。
もし“最初の追い風”が弱まったとき、
自分を責める代わりに、どんな仕組みを1つ置いてみますか?

14.文章の締めとして

転職や入社の直後に、心がふわっと軽くなる。
朝の足取りが少し速くなる。
「よし、やれるかも」と思える――あの感覚は、偶然ではなく、名前のある現象でした。

だから今日からは、追い風が弱まった日も、必要以上に自分を責めなくて大丈夫です。
追い風は永遠じゃないけれど、追い風の間に作った“小さな仕組み”は、あなたをちゃんと支えてくれます。

注意補足

この記事は、心理学や医学などの信頼できる公開情報をもとに整理しましたが、作者個人が調べられる範囲での内容でもあります。
現象の呼び方や解釈は分野・研究・立場によって異なることがあり、この説明が唯一の正解というわけではありません。

また、研究が進むことで理解が更新されたり、新しい発見で説明が変わる可能性もあります。
だからこそ「知って終わり」ではなく、あなた自身の体験に照らして確かめてみてください。

このブログで少しでも「なるほど」と思えたなら、ぜひこの先は、もっと深い文献や資料にも触れてみてください。

ハネムーン効果は、“最初の追い風”を教えてくれる言葉です。
でも本当の学びは、その追い風が弱まったあとに、あなたが何を選び、どう続けるかで深まっていきます。

あなた自身の「ハネムーン」を、知識でほんの少し長くしてみませんか。

最後まで読んでいただき、

本当にありがとうございました。

あなたの毎日が、焦らずに味わえる“やさしいハネムーン”でありますように。

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