「なぜ私たちは、勝ち目のない側に心を奪われ、つい応援してしまうのか──その不思議な心理現象が『アンダードッグ効果』判官贔屓との関係と応援したくなる心理の正体

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意外とあなたも感じている?その「応援したくなる気持ち」に名前がある

友達と一緒に見ていた高校野球の決勝戦。

9回裏、0対5で負けているチームが、一生懸命に声を出して、涙目になりながらも諦めずバットを振り続けていたとき。
なぜか胸がギュッとなって、気がついたら勝っている側じゃなく、負けてるチームを応援してた。

勝てそうもないのに頑張ってる姿を見ると…応援したくなる

そんなあなたの心の動きは、心理学では「アンダードッグ効果」と呼ばれています。

アンダードッグ効果とは?──負けそうな人に心が動く心理

アンダードッグ(Underdog)効果とは、勝てそうにない人やチームに対して、感情的な共感が湧き、応援したくなる心理のことです。

これは単なる「かわいそう」ではなく、「頑張っている姿」や「真剣な態度」に対する正義感や共感の気持ちが作用しているのです。

起源:英語の“Underdog”(文字通り「下にいる犬」)が由来

日本語では「判官贔屓(ほうがんびいき)」とも呼ばれます。※(はんがんびいきとも読めます)

実はこの心理、日本人に特に強い傾向があり、物語でも“悲劇のヒーロー”が愛される文化的背景とつながっています。

なぜアンダードッグ効果が起きるのか?──心理学と社会的背景から解説

心理学者アラン・モンローらによる調査では、以下の3つの要因がアンダードッグ効果に影響すると言われています。

✅ 1. 公平さへの欲求(フェアネス)
人間は「努力した人が報われてほしい」と願う性質があります。

✅ 2. 共感と投影
「自分も昔、負けそうだったけど頑張った」そんな記憶が投影されることで応援したくなる。

✅ 3. ドラマティックな展開を期待する
弱者が逆転勝利するストーリーは、感情を揺さぶり、達成感やカタルシス(浄化)をもたらします。

さらにマーケティングや政治の世界でも、「弱者の挑戦」構図がよく使われています。

✔️ 実例:スタートアップ企業が「大手企業に挑む」ストーリーで共感を集める
✔️ 実例:選挙で不利な候補者が「地元の声を拾う小さな声」として票を伸ばす

アンダードッグ効果の実生活での応用例

スポーツ
地元チーム vs 強豪 → 地元に感情移入
オリンピックで無名選手が必死に頑張る姿 → 応援が集まる

学校・人間関係
成績が悪かった子が頑張って努力していると、応援したくなる
いじられ役の子が自分を変えようとしている → 心が動く

ビジネス・ブランディング
「資金力もないけど信念で頑張っています」
「社員5人の町工場が、世界の技術賞を取った」

人は“弱さ”に惹かれるのではなく、“努力している弱者”に心を動かされるのです。

注意点と誤解しやすい点

単に「弱い」だけでは応援されない
怠けていたり、投げやりな態度では逆効果になります

利害が絡む場面では逆効果になる場合も
命に関わる医療や金融分野では「実績」「信頼性」が重視され、アンダードッグは避けられます

コラム:源義経に見る「日本のアンダードッグ」文化

「判官贔屓」という言葉のルーツは、平安時代末期の武将・源義経。

兄・頼朝に追われ、悲劇の最後を遂げた義経の人生は、多くの人の涙を誘い、今もドラマや小説の主人公として親しまれています。

この背景こそ、日本人が「弱者の努力」に心を動かされやすい文化的基盤を示しています。

🔍「判官贔屓(ほうがんびいき)」とは?──意味と文化的背景

「判官贔屓」とは、「立場の弱い者・敗者に対して、理屈ではなく感情的に同情し、応援したくなる心情」を指す言葉です。

この言葉の由来となったのが、平安時代末期の悲劇の武将「源義経(みなもとのよしつね)」です。

“判官”とは、義経が任命されていた官職「検非違使左衛門尉(けびいしさえもんのじょう)」の通称で、武士としての地位を表すものでもあります。つまり「判官=義経」、「判官贔屓=義経に同情する気持ち」から生まれた表現なのです。

🧩 源義経と源頼朝──兄弟で敵同士となった運命

▷ 幼少期と成長
源義経は、平治の乱(1159年)で父・義朝を失い、母と共に京都で育てられます。

一方、兄の頼朝は伊豆へ流され、武家政治の礎を築いていくことになります。

▷ 共に戦った平家討伐
成長した義経は、兄・頼朝の挙兵に応じ、壇ノ浦の戦いなどで華々しい戦功を挙げます。

鵯越の逆落としや、奇襲戦術による名声は、軍神のように語り継がれました。

▷ 兄に追われる運命
しかしその後、義経の人気と功績は、兄・頼朝の権力基盤を脅かすものとして警戒されるようになります。

後白河法皇からの任官(検非違使)を独断で受けたことを口実に、頼朝との関係は決裂。
義経は追われる身となり、東北・奥州の藤原氏を頼って逃亡。最期は衣川館で自刃します(1189年)。
この兄弟の断絶と、義経の壮絶な最期が、人々の心に深く残り、「強く、美しく、そして悲しい」という物語構造を作り上げました。

📚 義経を題材にした“判官贔屓”な物語・文化作品

源義経の人生は、数多くの文学・演劇・ドラマ・映画の題材となっています。その中でも「判官贔屓」を象徴する代表的なものをいくつか紹介します。

① 義経記(ぎけいき)
鎌倉時代末期から室町時代にかけて成立したとされる軍記物語。
義経の誕生から最期までが、悲劇的・英雄的に描かれており、能・歌舞伎・浄瑠璃などの源流ともなりました。

② 歌舞伎『勧進帳(かんじんちょう)』
弁慶が主君・義経を守るために山伏に扮し、関所を突破するという名場面。
弁慶の忠義と義経の逃亡劇が強烈に描かれ、多くの人に涙を誘います。

③ 義経=伝説化されたヒーロー
「義経は大陸に渡ってジンギスカンになった」という逸話まで登場するなど、死後も伝説が絶えません。

これは、“敗者でありながら英雄”という、まさにアンダードッグ的な魅力があったからこそと考えられます。

🎯 なぜ日本人は「判官贔屓」になりやすいのか?

日本の文化には、以下のような“弱者への共感”を重視する要素があります。

仏教思想:弱者・敗者を救う慈悲の精神

物語構造:主人公が苦難を乗り越える「型」が好まれる

村社会的価値観:強者より“人情”や“仲間意識”を重んじる

こうした土壌があるため、「義経のような敗者=むしろ美しい・正義」という感覚が、自然に根付いたのです。

📝 判官贔屓は“日本版アンダードッグ効果”そのもの

判官贔屓は、源義経の悲劇を通して、日本人に根付いた感情的共感の象徴。
勝者よりも、努力しながら敗れた者に共感し、称える文化的傾向。
この感覚は、現代でもスポーツ・ドラマ・日常生活の中に息づいています。

まとめと考察

🎯 要点まとめ
アンダードッグ効果は「努力する弱者」を応援したくなる心理
心理学的根拠があり、共感・公平・期待がカギ
応援されるには「努力」「ドラマ性」が不可欠
マーケティングや人間関係にも応用可能

あなたなら、この心理をどう活かしますか?
たとえば、あなたが誰かに何かをお願いしたいとき、
「私はまだ経験が浅いけど、本気で頑張ってます」と誠意を見せることで、共感と応援を引き出すことができるかもしれません。

人生は常に勝者の舞台ではありません。
努力する人の姿は、誰かの心を動かすチカラを持っています。

注意事項として

※本記事は筆者が個人で調べられる範囲で信頼できる文献・研究をもとにまとめた内容ですが、心理学の世界には他にも多くの説や視点があります。今後の研究によって、新たな見解や補足が加わる可能性があります。ひとつの考え方として、参考にしていただければ幸いです。

関連書籍(おすすめ)

🔗 『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)

🔗 『アンダードッグ・アドバンテージ』(ディーン・グラツィオーシ)

🔗 “Underdog: The Making of the American Hero”(国書刊行会)

本tの特徴とおすすめ理由

🔹『影響力の武器』
著者:ロバート・チャルディーニ
ジャンル:社会心理学・行動科学

📘特徴:
「人が“なぜ行動するのか”」を心理学的に解明した名著。

アンダードッグ効果そのものを直接扱っているわけではありませんが、「共感」「社会的証明」「好意」など、アンダードッグ効果を支える心理のメカニズムが詳細に解説されています。

実験に基づいた説明で、科学的な根拠に信頼性がある。

✅おすすめ理由:
アンダードッグ効果の背後にある“人間が誰かを応援したくなる”心理の基本原理を知るのに最適。ビジネスや日常のコミュニケーションにも応用しやすく、「なぜ人は弱者を応援するのか」という根本を理解する助けになります。

🔹『アンダードッグ・アドバンテージ』
著者:ディーン・グラツィオーシ(Dean Graziosi)
ジャンル:自己啓発・セルフブランディング

📘特徴:
アンダードッグ(不利な立場の人)が持つ強みを活かし、成功するためのマインドセットと行動戦略を紹介。

自分の弱みを逆手に取り、他人の共感と信頼を得る方法を多数紹介。

英語圏の自己啓発書らしく実践的な内容で、読みやすい構成。

✅おすすめ理由:
アンダードッグ効果を「個人が人生やビジネスで活用するにはどうすればよいか」という視点から具体的に学べます。マーケティングやSNSブランディングにも応用可能で、「弱さを強みに変える」ための強力な実例集としておすすめです。

🔹『Underdog: The Making of the American Hero』
著者:スーザン・ジェイ・グラジアン(Susan J. Glover)など複数説あり/出版社:国書刊行会(翻訳)
ジャンル:文化史・アメリカ研究

📘特徴:
アンダードッグ=弱者が英雄になる物語が、アメリカ文化においてどのように成立してきたかを解説した文化的・歴史的アプローチの本。

映画、政治、スポーツなどあらゆる分野において、「敗者が勝者になるストーリー」が人々の心を掴む背景を探求。

ドキュメンタリー的かつ批評的な視点で読みごたえがある。

✅おすすめ理由:
アンダードッグ効果を、単なる心理現象ではなく「社会がつくる英雄神話」として捉えることができます。日本における「判官贔屓」と比較しながら読むと、文化の違いも浮き彫りになり、教養的な広がりを得たい人に最適です。

書籍名こんな人におすすめ
『影響力の武器』心理学的にアンダードッグ効果の仕組みを理解したい人
『アンダードッグ・アドバンテージ』自分の弱さを武器にして人生やビジネスで成功したい人
『Underdog: The Making of the American Hero』アンダードッグを文化・歴史的視点で深く考察したい人

🌸おわりに──「応援したくなる気持ち」に、名前があるということ

私たちが自然と心を動かされる「頑張る姿」には、アンダードッグ効果という名前がついています。
それは、ただの同情ではなく、「努力」「真剣さ」「物語」に心が動く、あたたかな人間らしさの証です。

スポーツ観戦でも、学校でも、職場でも、日常のどこかで──
あなたも無意識のうちに誰かを応援し、また誰かに応援されているかもしれません。

「努力している姿」は、言葉にしなくても人の心に届く力を持っています。

あなた自身の挑戦も、誰かのアンダードッグ効果を引き出しているのかもしれません。

最後まで読んでいただき、

本当にありがとうございました。

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