暗いのにチカッと光が見える“不思議”を、
やさしく・でもしっかり医学的な視点からほどいていきます。
まぶたを強く閉じると光が見えるのはなぜ?
『眼内閃光(フォスフェン)』の正体と危険サインを解説
代表例
朝の通学電車。
窓の外をぼんやり見ていて、ふと目をギュッと閉じた瞬間――
まぶたの裏で、ピカッと小さな光がはじけた気がする。
「え? 電車のライトかな? でも目、閉じてるよね……?」
そんな経験、あなたにもありませんか。
この“なんとなくスルーしてきた不思議”こそが、
今回のテーマです。
ここから、できるだけやさしく、
でもしっかり深く、この謎をほどいていきます。
ここでいったん、
読者が一番知りたい「結論」をサッと押さえてから、
進みましょう。
10秒で分かる結論
まぶたを強く閉じたり目を押したときに光が見えるのは、
目の奥の“光センサー”が圧力などの刺激を、
まちがえて「光が来た」と勘違いする
『眼内閃光(がんないせんこう)』という現象が起きているからです。
※ただし、急に光が増えた・黒い影(飛蚊症)が増えた・視野が欠ける
といった場合は、別の病気が隠れていることもあるので
眼科受診が大切になります。
「今すぐ答えだけ知りたい!」という人は、ここでひとまず安心。
「もう少しちゃんと理解したいな」と思った方は、
この先の章で一緒に深掘りしていきましょう。
小学生にもスッキリわかる説明
むずかしい話をいったん横に置いて、
小学生高学年にも伝わるように噛み砕いてみます。
目の奥には、
**「光を感じるセンサー」**がたくさん並んでいます。
カメラにたとえると、
写真を記録する「撮像(さつぞう)センサー(イメージセンサー)」のような役割です。
※「撮像(さつぞう)」と「撮影(さつえい)」の違い
ざっくり整理すると:
撮影(さつえい)
→ カメラで写真や動画を「撮る行為」そのもの
→ 例:写真撮影、動画撮影
撮像(さつぞう)
→ 光を受けて「像(イメージ)を結ぶこと」「画像を形成すること」
→ 特に カメラやビデオの中の素子(センサー)の働き を説明するときによく使う
→ 例:撮像素子(さつぞうそし)=イメージセンサー, 撮像センサー
本当は
「外から入ってきた光」を感じるためのセンサーなのですが、
- 目をギュッとつぶる
- 目のまわりがギュッと押される
といった、強い力の刺激でも
「ピカッ!」と反応してしまうことがあります。
そのとき、
“本当は光がないのに、光が見えたように感じる”
これが『眼内閃光』です。
噛み砕いていうなら、
目の中のライトセンサーが、
「押されたショック=光が当たった」と
ちょっと勘違いしちゃった状態
というイメージです。
「なんだか不思議だけど、
しくみがあるんだな」と
少しイメージできたでしょうか。
ではここから、
あなたの「あるある」にもっと近い形で、
今回の現象を見ていきましょう。
1. 今回の現象とは?
あるあるで知る眼内閃光
まずは、
「そうそう、あるある!」を引き出すために、
よくありそうな場面から入っていきます。
このようなことはありませんか?
- 勉強中、目が疲れてきて、ギュッと目を閉じたら
まぶたの裏で星みたいな光がパッと散った。 - 花粉症やアレルギーで、(本当はよくないけれど)
つい目をこすってしまったあと、
キラキラした模様が見えた。 - スポーツでボールが顔の近くに飛んできて、
ちょっと目のあたりをぶつけたとき、
「目から火花が出た」みたいに感じた。 - 夜、部屋を暗くして布団に入ったとき、
目を閉じているのに、
まぶたの裏にチカチカした光がよぎった。
どれか1つでも
「これ、自分も体験したことあるかも…」と
感じたなら、
あなたの目でも同じような現象が起きている可能性があります。
これらはどれも、
「光が入ってきた」わけではなく、
目の中の仕組みが刺激を“光”として感じている
パターンの一例です。
よくある疑問をキャッチフレーズ風に
今回の『眼内閃光(がんないせんこう)』について、
読者が検索しそうな“モヤモヤ疑問”を
キャッチフレーズ風にまとめると、たとえばこんな感じになります。
- 「目をギュッとつぶると光るのはなぜ? 眼内閃光とは?」
- 「暗いのにキラッ…光なんてないのに見えるのはどうして?(眼内閃光とは?)」
- 「目をこすると星が飛ぶ…これって目に悪い?(眼内閃光とは?)」
- 「まぶたの裏でチカチカ光るのは疲れ目のサイン?(眼内閃光とは?)」
このような「なんで?」を、
この記事全体でスッキリ解き明かしていきます。
この記事を読むメリット
- 「よくある眼内閃光」と「要注意の光」の違いが分かる
- 自分や家族が「いつ病院に行けばいいか」の
ざっくりした目安を持てる - 目をいたわるために、
今日からできる小さな習慣を知ることができる - 「なんとなく不安だった不思議」が
**“ちゃんと説明できる知識”**に変わる
不安を減らしつつ、
目を守るためのヒントを一緒に整理していきましょう。
次の章では、
この現象に気づいた「ひとりの人」の物語を通して、
あなた自身の不思議な体験と重ねやすくしていきます。
2. 疑問が浮かんだ物語
テスト勉強が続いて、
目も頭もクタクタの日。
夜、机の上に教科書を広げたまま、
彼(仮に“ユウ”と呼びます)は
イスにもたれて、そっと目を閉じました。
「ちょっとだけ目を休ませよう…」
そう思って、
いつもより強めにギュッとまぶたを閉じた、そのときです。
――パッ。
暗いはずの視界の中で、
小さな雷みたいな光が
一瞬だけ走りました。
「え? 今、光ったよね?」
「電気の反射かな…いや、目を閉じてたし…」
もう一度、
少しだけ強く目を閉じてみます。
――チカッ。
やっぱり、
まぶたの裏で何かが光ったように感じます。
胸の中にふわっと不安が広がってきました。
「なんでだろう…」
「目、疲れすぎてる?」
「これって、目の病気のサインとかだったらどうしよう…」
気がつけば、
ユウはスマホを手に取り、
「まぶたを閉じる 光 見える」
と検索していました。
でも、出てくる情報は
専門用語ばかりでよく分からなかったり、
「怖い病気」という言葉が目に飛び込んできたりして、
余計に不安になる記事もあります。
「ちゃんとした言葉で、
分かりやすく教えてくれる人はいないのかな…」
「この“謎の光”の正体を
一回ちゃんと知っておきたいな…」
ユウの中で、
「不思議だな」「なんでなんだろう」
という気持ちと、
「もし危ないものだったら見逃したくない」
という気持ちが、
じわじわと大きくなっていきました。
この物語の「ユウ」が感じた違和感や不安は、
きっと多くの読者の感情とも
どこかで重なっているはずです。
そこで次の章では、
このモヤモヤに対して、
まずはハッキリとした「答え」をお伝えします。
3. すぐに分かる結論
お答えします。
まず結論から
ユウが感じたような、
- 「まぶたをギュッと閉じたら光が走った」
- 「目をこすったら星みたいな光が見えた」
という体験は、
医学的には、
目の奥にある“光を感じるセンサー(網膜 もうまく)などが
圧力や引っ張られる刺激を受けて、
“光が来た”と勘違いしてしまうことで起きる
『眼内閃光(がんないせんこう)』という現象
だと考えられています。
噛み砕いていうと、
「光はないのに、
目の中のセンサーが“光が来た!”と
誤作動した状態」
というイメージです。
1章・2章で出てきた、
読者が感じやすい疑問を
まとめて整理すると、たとえば次のようになります。
- Q. 暗いのに、どうして光が見えるの?
- Q. これだけで、すぐに“危険な病気”と考える必要はある?
- Q. 目をギュッと閉じたり押したりするのは、しても大丈夫?
ここに対する答えを、
前置きとしてシンプルにまとめると――
- 暗くても光が見えるのは、
目の中のセンサーが“物理的な刺激”でも反応するから - ただし、「いつもと違う光」や
「黒い影が急に増えた」「視野が欠ける」などがある場合は、
眼科でのチェックがとても大切 - わざと強く押したりこすったりするのは、
目に負担がかかるのでおすすめできない
という形になります。
ここまでで、
「なんとなく不思議だったもの」に
名前とざっくりしたイメージがついてきたのではないでしょうか。
もっと詳しく知りたい人へ
「なるほど、“目の中のセンサーの誤作動”なんだ。」
「でも、そのセンサーって具体的に何?」
「どこからが“よくある範囲”で、
どこからが“要注意”なの?」
もしここまで読んで、
こうした疑問が少しでも浮かんだなら、
それはとても良いサインです。
この先の章では、
- 眼内閃光(がんないせんこう)が
どういう仕組みで起こるのか - 関連する専門用語(たとえば「光視症 こうししょう」など)を
カタカナの読み方と一緒に、
できるだけ噛み砕いて説明すること - 「ここからは病院に行こう」の
具体的な目安
などを、
図を言葉で描くようなイメージで、
一歩ずつじっくり解説していきます。
「まぶたを閉じると光が見える」という
身近な不思議を、
“なんとなく怖いもの”から
**“ちゃんと理解できるもの”**へ
一緒にアップデートしていきましょう。
3.1.よくある質問(Q&A)
まぶたを閉じると光が見えるのは大丈夫?
「なんとなく分かったけど、私の場合はどうなの?」
という疑問がたくさん浮かんでいる。
そんな人に向けて。
もっと詳しく知りたい人へ
Q1. まぶたを閉じると光が見えるのは、必ず『眼内閃光』ですか?
結論: 多くは眼内閃光として説明できますが、別の原因のこともあります。
まぶたをギュッと閉じたり、目の周りを押したときに見える光は、
目の奥の「光センサー(網膜)」や視覚の神経が、
圧力などの刺激を「光」と勘違いしてしまうことで起こるとされています。
ただし、
片頭痛の前ぶれ(閃輝性暗点)
網膜裂孔・網膜剥離にともなう光視症 など、
脳や網膜の病気のサインとして光が見えることもあり得ます。
「いつもと違う」「急に増えた」「黒い影や視野の欠けもある」
というときは、自己判断せず眼科で相談するのが安心です。
Q2. 『眼内閃光』と『光視症』って何が違うんですか?
結論: 似た現象を指しますが、使われる場面が少し違います。
眼内閃光(がんないせんこう)/フォスフェン
→ 光が入っていないのに、目や神経の刺激だけで光が見える現象全般。
光視症(こうししょう)
→ 眼科で使われる「症状名」。
網膜が引っぱられたりして光が見えるとき、
網膜裂孔や網膜剥離のサインになることがあり、
診断上、重要なキーワードになります。
この記事では、
現象としての説明に「眼内閃光」/「フォスフェン」、
病気のサインとして語るときに「光視症」
といったイメージで使い分けています。
Q3. まぶたを強くギュッとつぶるクセは、目に悪いですか?
結論:「たまにうっかり」はともかく、習慣的に強く押すのはおすすめできません。
強い圧力は、網膜や眼球に物理的な負担をかけます。
光が見えるのが面白くて、
わざと何度も強く押してフォスフェンを出す“遊び”はやめたほうが安全です。
目を休ませたいときは、
遠くを見る
まばたきを増やす
目を閉じるとしても、そっと力を抜いて閉じる
といった方法のほうが、負担が少ないと考えられます。
Q4. 眼内閃光だけなら、病院に行かなくていいですか?
結論: 「いつもと同じ」「回数が増えない」なら様子見もありますが、
初めて・急に増えた場合は一度は眼科でチェックを。
光視症は、
網膜裂孔・網膜剥離などの初期サインのこともあると、
眼科の解説でも注意喚起されています。
特に、
光が突然増えた
黒い影(飛蚊症)が急に増えた
視界の一部が欠ける・カーテンのように暗くなる
といった場合は、早めの受診が強くすすめられています。
「いつもの軽いチカチカ」とは明らかに違うと感じたら、
放置せず眼科で相談するのが安心です。
Q5. 片目だけ光が見えるときは、両目のときより危険ですか?
結論: 片目だけの異常は、眼球側の問題を疑いやすいので要注意度は少し上がります。
両目で同じように見える光は、
脳側(視覚野など)の影響も考えます。
片目だけに出る光は、
その目の網膜・硝子体の問題である可能性が高く、
特に飛蚊症や視野欠損を伴うときは、眼科受診の重要なサインになります。
片目だけの光+「急に増えた」「黒い影・視野の欠けもある」
という時は、自己判断せず眼科へ。
Q6. 子どもが「目を閉じると光が見える」と言ったら心配すべき?
結論: 慌てすぎる必要はありませんが、「いつから・どう見えるか」はきちんと聞いておくと安心です。
大人と同じように、
目を強くこすったとき
遊びの中でギュッとつぶったとき
に光が見えるのは、眼内閃光として説明できる場合も多いです。
ただし、
あまり目をこすらないのに頻繁に訴える
「黒い点」「虫みたいなもの」も見えると言う
視力低下やものの見え方の変化を訴える
といったときは、小児も含めて眼科での検査が勧められます。
Q7. スマホやパソコン、ブルーライトは眼内閃光の原因になりますか?
結論: 直接の原因というより、「目の疲れ」を通じて間接的に関係してくる可能性があります。
現時点で、「ブルーライト=眼内閃光の直接原因」という明確なエビデンスはありません。
とはいえ、長時間の画面作業は、
眼精疲労(がんせいひろう)
まばたきの減少によるドライアイ
などを通して、目の違和感やチカチカ感を増やす要因にはなり得ます。
画面を見る時間が長い人は、
一定時間ごとに目を休める
画面の距離や明るさを調整する
といった「目のセルフケア」が、結果的に不快な症状の予防につながるかもしれません。
Q8. 眼内閃光をわざと起こして“遊ぶ”のはやめたほうがいい?
結論: おすすめできません。
まぶたの上から眼球を押すと光が見える、という現象は昔から知られていますが、
圧迫は、網膜や眼球自体に負担をかける行為です。
一度・二度なら大きな問題にならない場合が多いとしても、
繰り返しの強い圧迫を「遊び」にするのはリスクがあります。
不思議さを味わうなら、
実験より「知識」と「観察」のほうが安全です。
このブログや本・ミュージアムを、“安全な実験室”として使ってください。
Q9. どの診療科に行けばいいですか? 脳神経外科ですか?眼科ですか?
結論: まずは眼科が基本です。
「光が見える」「黒い影が見える」「視野の一部が欠ける」といった症状は、
多くの場合 眼球〜網膜〜視神経の問題からチェックすることが一般的です。
眼科で眼底を含め詳しく調べ、
眼の構造に問題がない場合や、
片頭痛などが疑われる場合に、必要に応じて他科(脳神経外科など)へ紹介される流れが多いです。
Q10. 「放置しても大丈夫な眼内閃光」と「要注意の光」の違いを一言でいうと?
結論:「様子が変わらない光」は経過観察のこともあるけれど、
「急に増えた光」や「黒い影・視野の欠けを伴う光」は、すぐ眼科へ。
「昔からたまにある」「ここ数年ほとんど変わらない」
という光は、生理的な変化や後部硝子体剥離に伴うものとして、
経過観察になることも少なくありません。
一方、
「急に出た」「急に増えた」「影や視野欠損も一緒」という場合は、
網膜裂孔や網膜剥離が隠れている可能性があり、
早急な検査と治療が重要になります。
Q&Aで、「自分のケースは大丈夫かな?」という
いちばん身近な不安には、ひと通り答えをそろえることができました。
ここから先は、
眼内閃光という現象そのものを、
もう少し一歩引いた視点から “全体像” として整理してみましょう。
3.5. 一度整理してみよう
眼内閃光って結局こういう現象です
ここまでの内容を、
いったんシンプルなイメージでまとめてみます。
目は「カメラ」+「パソコン」のようなしくみ
- 目の奥には、光を感じる
「視細胞(しさいぼう)」=光センサー が並んでいます。 - カメラでいうと、
「撮像(さつぞう)センサー(イメージセンサー)」 にあたる部分です。 - そこからの信号は、
視神経(ししんけい)を通って脳の 視覚野(しかくや) に送られ、
脳が「見えた」という体験にまとめています。
つまり、
目=カメラのレンズ+センサー
脳=画像処理をしているパソコン
みたいなイメージです。
眼内閃光は「センサーの誤作動」で起きる光
本来、視細胞は
「外から入ってきた光」を感じるためのセンサー です。
でも、
- まぶたをギュッと閉じた
- 目のまわりを押してしまった
- 硝子体(しょうしたい:目の中のゼリー)が網膜を引っぱった
などの 物理的な刺激 でも、
センサーや神経に電気信号が流れてしまうことがあります。
その結果、
「光は来ていないのに、
神経だけが“光が来た”と勘違い → 光が見えたように感じる
これが
眼内閃光(がんないせんこう)/フォスフェン
という現象です。
噛み砕いて言うと、
目の中のライトセンサーが、
“押されたショック=光が当たった”と
ちょっと誤解してしまった状態
というイメージです。
似ているけれど違う言葉たち
ここで、よく一緒に出てくる用語を
超ざっくり整理しておきます。
- 眼内閃光(がんないせんこう)/フォスフェン
→ 光が入っていなくても、
目や神経の刺激だけで見える「光の体験」そのもの。 - 光視症(こうししょう)
→ 病院で使われる「症状名」。
網膜が引っぱられるなどして光が見えるときに、
網膜裂孔・網膜剥離のサインとして扱われることがある言葉。 - 飛蚊症(ひぶんしょう)
→ 視界に糸くずや虫のような影がふわふわ見える症状。
「光」ではなく「影」だけれど、
目の中の変化が見えている、という意味で“仲間”と言える現象。
ざっくり言えば、
眼内閃光=現象の名前
光視症=その中でも、病気のサインになるかもしれない症状名
とイメージしておくと分かりやすいです。
「ここからは病院に行こう」のライン
じゃあ、どこまでが「よくある範囲」で、
どこからが「受診した方がいい」ラインなのか。
目安としては、
次のような場合は眼科を受診した方が安心とされています。
- 光が 急に増えた/頻度がどんどん増えている
- 同時に、黒い影(飛蚊症)が急に増えた
- 視界の一部が、
カーテンを引いたように暗くなる・欠ける - 視力が落ちた・ものがゆがんで見える
- 片目だけ急におかしい感じがする
こうした場合は、
- 網膜裂孔(もうまくれっこう)
- 網膜剥離(もうまくはくり)
といった病気が隠れている可能性があるため、
自己判断で様子見せず、早めの受診が大事だとされています。
ざっくりまとめると…
眼内閃光は、
目の中のセンサーと神経が
物理刺激などで“光が来た”と誤作動したときに起こる光の体験で、
日常の「あるある」でもあり、
場合によっては病気のサインにもなりうる現象
です。
この全体像を頭の片すみに置きながら、
次の章からはもう少し専門的な話(歴史・研究・脳のしくみ)を
ゆっくり深堀りしていきましょう。
4. 『眼内閃光(がんないせんこう)/フォスフェン』とは?
公式っぽい“ちゃんとした定義”
日本語の辞書では『眼内閃光(がんないせんこう)』は、
目を閉じて眼球を圧迫したときなどに見える閃光で、
網膜が物理的に刺激されて起きる “内視現象(ないしげんしょう)” の一つ
と説明されています。
ここで出てきた
内視現象(entoptic phenomena/エントップティック・フェノメナ)
とは、
「光そのものではなく、目の内部の構造や働きによって見えている現象」のことです。
つまり眼内閃光は、
- 外から光が入ってきたわけではないのに
- 自分の目の中の刺激だけで“光が見えたように感じる”現象
ということになります。
「眼内閃光」「眼閃」「フォスフェン」…名前がいろいろある理由
似た意味の用語がいくつかあります。
- 眼内閃光(がんないせんこう)
→ 「目の中で感じる閃光」という、日本語の説明的な呼び方 - 眼閃(がんせん)
→ 「眼を閉じているのに光が見える現象」として、日本語版Wikipediaなどで説明されている用語 - フォスフェン(phosphene)
→ 英語圏で使われる一般的な専門用語
「フォスフェン(phosphene)」という言葉は、
ギリシャ語の 「phos(光)」と「phainein(見えるようにする/示す)」
を組み合わせたものだと説明されています。
なので、直訳すると
「光を見せるもの」=フォスフェン
くらいのイメージです。
日本語の「眼内閃光」「眼閃」、
英語の「phosphene」は、
細かいニュアンスの違いはありますが、
「外から光が入っていないのに光が見える」
という同じ現象を指している、と理解しておいてOKです。
どうやって起こるの?(ざっくりメカニズム)
今のところ分かっていることを、
できるだけ簡単にまとめると次のようになります。
- 網膜(もうまく)には、
桿体(かんたい)・錐体(すいたい)という“光センサー(視細胞)” が並んでいる - その先には、双極細胞 → 神経節細胞 → 視神経 → 視覚野(しやくや)
という“情報リレー”が続く - 普段は「光」がこの回路を動かしていますが、
物理的な圧力・電気刺激・磁気刺激・自発的な神経の発火 でも
同じ回路が動いてしまうことがあります
その結果、
“本物の光”がなくても、
脳には“光が来た”のと似た信号が届く → 光が見えた気がする
という「誤作動」が起きます。
これが、『眼内閃光(フォスフェン)』の基本的な正体です。
歴史の話:古代ギリシャからプルキニエまで
この現象自体は、実はかなり古くから知られていました。
- 古代ギリシャの医師・哲学者 アルクマイオン(Alcmaeon) らは、
目を刺激すると光が見える現象を記録しており、
それが後に 「眼球変形フォスフェン(deformation phosphenes)」 の
初期の記述と考えられています。 - 19世紀初頭には、
チェコの生理学者 ヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニエ(Purkinje / Purkyně) が、
自分の主観的な視覚体験をくわしく観察し、
「圧迫によるフォスフェン」の形やパターンを系統立てて記録しました。
プルキニエは、
「主観的な感覚にも客観的な生理学的な裏づけがある」
という考え方を押し進め、
のちの神経科学の土台をつくった人物の一人とされています。
『眼内閃光』は「幻覚」とは違うの?
ここでよくある誤解が、
「光が見えるってことは、幻覚なの?」
という不安です。
『眼内閃光』は、
目や視覚系の“物理・生理的な刺激”によって起こる現象で、
- 精神疾患などで見られる
「脳が意味のある“物語”を作りだすタイプの幻覚」とは
別ものと考えられています。
もちろん、
光が見える原因が “目の病気” や “脳の病気” の場合もあるので、
不安を感じたときに放置していい、という意味ではありません。
「仕組みとしては、かなり“物理的”な現象」
ということだけ、まず頭に入れておいていただければ十分です。
ここまでで、
『眼内閃光』が
“目の中のセンサーや神経が、
いろいろな刺激に反応してしまった結果としての光の知覚”
だという全体像が見えてきたと思います。
次は、
「なぜこの現象が、医療や研究の世界で重要視されているのか」
その背景を見ていきましょう。
5. なぜ注目されるのか?
背景・重要性
体からの「小さなSOS」になることがある
『眼内閃光』に近い現象は、
眼科では 「光視症(こうししょう)」 という症状名で扱われることがあります。
光視症は、
- 外に光源がないのに
- 視界の中にピカッと光のすじや閃光が走る
と感じる症状で、
網膜裂孔(もうまくれっこう)や網膜剥離(もうまくはくり)の
前ぶれとして現れることがある、と
日本眼科学会などの解説でも説明されています。
つまり、
「よくある現象」でありつつ、
場合によっては重大な病気のサインになることもある
という、
ちょっと複雑な立ち位置にいるわけです。
神経科学にとっての“実験道具”
フォスフェンは、神経科学の世界では
「視覚系がどのように働いているかを探るための“手がかり”」
として利用されてきました。
たとえば、
- 視覚野(しやくや:後頭葉の一次視覚野)に
経頭蓋磁気刺激(TMS)という磁気刺激をあてると、
小さな光の点(フォスフェン)が見えることが多い - どの場所をどれくらいの強さで刺激したとき、
どんなフォスフェンが見えるかを調べることで、
「ここが視覚情報を処理している場所だ」という地図 を作れる
といった研究が行われています。
また、
フォスフェンが発生する場所が
- 網膜のレベルなのか
- 脳の視覚野なのか
を区別しようとする研究も多数あり、
視覚系のどこで「光としての意識」が立ち上がるのか、
という問題にも関わっています。
人工視覚(バイオニックアイ)の“ピクセル”
もう一つ、とても重要な分野が 人工視覚(バイオニックアイ) です。
網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)などで
視力を失った人に対して、
- 網膜の上や下に電極アレイを埋め込み
- 電気刺激で**小さな光点(フォスフェン)**を生じさせ
- その点の集まりを「粗い視覚情報」として使ってもらう
という「人工網膜(じんこうもうまく)」「網膜プロテーゼ」の研究・実用化が進んでいます。
代表的な例として Argus II などの装置があり、
電極刺激でフォスフェンを生じさせて
物の輪郭や位置情報をある程度つかめることが報告されています。
ここでのポイントは、
人工視覚の世界では、
フォスフェン=“視覚ディスプレイのドット”
のような役割を果たしている
ということです。
宇宙飛行士・瞑想・感覚遮断でも
少し変わったところでは、
- 宇宙飛行士が、
宇宙線(高エネルギーの放射線)が目や脳を通過したときに
光を見たと報告している - 長時間真っ暗な部屋にいて視覚刺激を遮断された囚人が、
自然にフォスフェンのような光を見た、という報告 - 一部の瞑想者や、幻覚剤を用いた実験の中で、
内部からわきあがる光のような体験が記録されている
といった例もあります。
ここでは宗教的・スピリチュアルな意味づけは置いておき、
「視覚系の神経がさまざまな理由で自発的に活動しても、
フォスフェンとして感じられることがある」
という、
神経の“ゆらぎ”としての一面があることだけ押さえておきましょう。
こうして見ると、眼内閃光(フォスフェン)は
- 日常の「あるある」
- 病気のサイン
- 神経科学の実験道具
- 人工視覚の“画素”
という、
とても多面的な顔を持った現象だと分かります。
次は、
私たちの日常生活レベルで、
この現象とどう付き合えばいいのかを見ていきましょう。
6. 実生活への応用例
付き合い方とヒント集
「知っているだけ」で減る不安
まず一番大きいメリットは、
「理由を知ることで、むやみに怖がらなくてよくなる」
という点です。
- 「まぶたを閉じたら光った。これって脳の病気?」
- 「もしかして失明の前ぶれだったらどうしよう…」
と考えはじめると、
それ自体がストレスになります。
しかし、
- 眼内閃光は
「目や神経の誤作動としてよくある現象」であること - ただし
「いつもと違う・急に増えた・黒い影や視野欠損を伴う場合は
眼科受診が大切」
という 「境界線」 を知っておくだけで、
「今回は“よくあるタイプ”っぽいから、
ひとまず落ち着いて様子を見よう」
と 冷静な判断がしやすくなります。
目を守るための小さな習慣
眼内閃光そのものを「意図的に使う」場面は
あまりありませんが、
この現象をきっかけに
目をいたわる習慣を見直すことはできます。
今日からできる3つのこと
- 「ギュッ」と目をつぶりすぎない・こすりすぎない
- 物理的な圧力で網膜や眼球を強く刺激するクセは
シンプルに目の負担になります。 - 「疲れたから目をギュッとつぶる」のが習慣なら、
代わりに 遠くを見る・まばたきを増やす など、
負担の少ない休み方に変えてみましょう。
- 物理的な圧力で網膜や眼球を強く刺激するクセは
- 長時間作業には「目のタイマー」を
- 仕事や勉強で画面を長く見る人は、
1時間ごとに 1〜2分だけ遠くを見る「強制休憩」を。 - これだけでも、
目の疲れからくる違和感やフォスフェンの頻度が
体感として変わる人もいます(個人差はあります)。
- 仕事や勉強で画面を長く見る人は、
- 「いつ・どんな光だったか」をメモしておく
- 「いつから」「どんなときに」「片目か両目か」
をざっくりメモしておくと、
いざ眼科に行ったときに診察がスムーズです。 - 特に 黒い影(飛蚊症)や視野の欠け が出た場合は、
メモを持って早めに受診しましょう。
- 「いつから」「どんなときに」「片目か両目か」
メリットとデメリットを整理するなら
メリット
- 不安を「知識」に変えられる
- 自分の身体のサインに気づきやすくなる
- 人工視覚など、最先端の研究に興味を持つきっかけになる
デメリット(放置した場合)
- 危険なサインを「たいしたことない」と見逃すリスク
- 逆に、ネット情報だけで「全部怖い」と感じてしまい
不要なストレスを抱えるリスク - 強くこするクセを放置して、
別の眼障害のきっかけになる可能性
大事なのは、
「全部怖がる」でも
「全部大丈夫だと決めつける」でもなく、
“線引きのポイント”を知ること
です。
ここまでで、
日常レベルでの「上手な付き合い方」が
少し見えてきたかと思います。
次の章では、
「どこからが要注意なのか」「どんな誤解が多いのか」 を
もう少しシビアな視点で整理していきます。
7. 注意点や誤解されがちな点
こんなときは、眼科へのGOサイン
次のような症状がある場合は、
放置せず、できるだけ早く眼科を受診することが
各種ガイドや学会の解説でも推奨されています。
- 光が 急に増えた/頻度が明らかに増えた
- 同時に、黒い影(飛蚊症)が急に増えた
- 視界の一部が カーテンをかぶせられたように暗くなる/欠ける
- 視力が落ちた・ものがゆがんで見える
これらは、
- 網膜裂孔(網膜に小さな裂け目ができる)
- 網膜剥離(網膜が剥がれてしまう)
といった病気のサインである可能性があります
「いつもの眼内閃光と、明らかに違う」 と感じたら、
できるだけ早めに専門医の判断を仰いでください。
片頭痛の“キラキラ”との違い
もう一つ、
よく混同されるのが 片頭痛の前兆(閃輝性暗点 せんきせいあんてん) です。
- ジグザグした光や、ギザギザした輪のような模様が
視界の中心からだんだん広がる - 10〜20分程度でおさまり、
そのあと頭痛が出てくることが多い
といったパターンは、
眼の病気というより
脳の血流変化などに関係した片頭痛の一種として
説明されることが多いです。
一方で、
網膜の問題からくる光視症は、
- 視野の端でピカッと光る
- 暗いところで特に感じやすい
- 黒い影(飛蚊症)や視野欠損を伴うことがある
など、出方が少し違うとされています。
どちらも「光が見える」ことに変わりはないので、
自己判断で決めつけるのではなく、
「こういう見え方の違いがあるんだな」
ということだけ知っておき、
気になる場合は専門医に相談するのが安心です。
「全部スピリチュアル」でも「全部病気」でもない
フォスフェンは、
- 瞑想や宗教的体験の中で
「内なる光」として語られることもあれば - 眼科・神経内科では、
網膜や視覚経路の異常のサインとして扱われることもあります。
どちらか一方だけが「正しい」というよりも、
現象そのものは物理・生理的に説明できるが、
それをどう意味づけるかは文化や個人によって違う
というのが実態に近いと考えられます。
医療的な観点からは、
- 危険なサインを見逃さない
- それ以外の部分は、
必要以上に怖がらず、うまく付き合う
というバランスが大切です。
ここまでで、
- どこからが要注意か
- どんな誤解が起きやすいか
を整理できました。
次の章では、
少し力を抜いて、
「目の中の宇宙」ともいえる内視現象の世界を
おまけコラムとして覗いてみましょう。
8. おまけコラム
目の中の“ミニ宇宙”としての内視現象
飛蚊症(ひぶんしょう)という「影のエフェクト」
眼内閃光が「光のエフェクト」だとすれば、
**飛蚊症(ひぶんしょう)は「影のエフェクト」**です。
- 視界に糸くずや虫のような影がふわふわ浮かんで見える
- 白い壁や青空のような明るい背景で目立つ
といった症状で、
目の中の 硝子体(しょうしたい)というゼリー状の部分にできた濁り が
網膜に影を落とすことで見える、と説明されています。
これも、
「目の中の構造がそのまま映像化されたもの」 という意味で、
内視現象の一つです。
プルキニエの“視覚のスケッチブック”
先ほど名前が出てきた
プルキニエは、
- 圧迫によるフォスフェン
- 網膜の血管の影(プルキニエの樹)
- 光のちらつきで見える不思議な模様
などを、スケッチとして残しました。
彼にとって内視現象は、
「自分の神経系そのものを内側から観察するための窓」
のような存在だったのかもしれません。
宇宙飛行士のフォスフェンと“宇宙線”
宇宙飛行士の証言として、
宇宙ステーションや宇宙船の中で、
- 真っ暗な空間にいても
- まぶたを閉じていても
- 突然ピカッと光が走る
と感じることがある、と報告されています。
これは、
宇宙線と呼ばれる高エネルギーの粒子が
網膜や視覚野を直接刺激しているのではないか
と考えられています。
地球の外でも、
神経が刺激されれば“光の体験”が立ち上がる
という意味で、
フォスフェンは「意識と物理世界の接点」としても
研究対象になっています。
アートとしてのフォスフェン
フォスフェンや内視現象を、
抽象画や映像作品として表現するアーティスト もいます。
- 目を閉じたときに見える模様
- 頭をぶつけたときに見える星のような光
- 夢と現実の境目のような、揺らぐ光の粒
これらは、
「完全に主観的で、他人と共有しづらい」体験ですが、
それをあえて外に描き出す試みは、
「内側の世界」を他者と共有しようとする芸術
とも言えるかもしれません。
さて、
少し寄り道をしましたが、
おかげで 眼内閃光がどんな“親戚たち”を持っているか が
見えてきました。
次の章では、
ここまでの内容を一度まとめ、
あなた自身の目との付き合い方を
もう一段高い視点から考えてみましょう。
9. まとめ・考察
―「目の中の光」とどう付き合うか?
この記事で分かったこと(ざっくり総まとめ)
ここまでの内容を、
できるだけシンプルにまとめると――
- 眼内閃光(フォスフェン)は
「目や視覚系が誤作動して起きる、光の知覚」 - 物理的・電気的・磁気的な刺激や、
神経の自発的な活動で起こることがある - 日常の「あるある体験」であると同時に、
網膜裂孔や網膜剥離などのサインになることもある - 人工網膜・人工視覚では、
フォスフェンが「視覚のドット」として利用されている
ということでした。
「高尚な意見」としての考察
眼内閃光を、
少し抽象度を上げて眺めてみると、
「私たちが“見ている世界”は、
外の世界そのものではなく、
神経がつくりだしたイメージに過ぎない」
という事実を、
やさしく教えてくれる存在だとも言えます。
外界に光がなくても、
神経がそれらしい信号を出せば光は見える。
逆に、
外にどれだけ光があっても、
その信号を受け取って処理する仕組みが壊れれば、
私たちは何も見えません。
眼内閃光は、
“世界そのもの”ではなく“世界の脳内モデル” を
私たちが見ているのだ、という
認知科学・哲学的な視点への入口にもなります。
ちょっとユニークな考察
もう少しくだけた言い方をするなら、
「眼内閃光は、
脳と目が出してくる “デバッグ用のテスト信号” みたいなもの」
と考えることもできます。
- 機械のエンジニアが、
テスト信号を流して回路の様子を確認するように - 私たちの視覚回路も、
ときどき「自家発電モード」で光を表示してしまう
そう考えると、
- 何も知らないときには「ただ不気味だった現象」が
- 少し仕組みを知ったあとは
「ああ、今テスト信号が走ってるんだな」と
ちょっとクールに受け止められるかもしれません。
あなたへの問いかけ
ここまで読んだあなたに、
最後に小さな問いを投げかけて締めくくります。
あなたなら、この「目の中の光のサイン」を
これからの生活の中でどう活かしますか?
- 早めの眼科受診の目安として
- 自分の身体への気づきを増やすきっかけとして
- 人工視覚や神経科学に興味を持つ入口として
- あるいは、
ちょっとした「内なる宇宙の観察」として
どれを選んでもかまいません。
大切なのは、
「よく分からない不安」から
「知ったうえで、自分で選べる感覚」へ
一歩近づいていることです。
ここまでで、
「目の中の光には、ちゃんとしくみがあるんだ」
というところまでは、一緒にたどり着けたと思います。
――ここから先は、少しだけ “応用編” です。
今回の現象を説明するときに使えることばを増やし、
日常の会話や、いざというときの受診の場面でも、
「自分の言葉で」眼内閃光を語れるようになること をめざしてみましょう。
10. 日常で使えることばと応用編
自分の体験を「自分の言葉」で説明してみよう
まずは一文にしてみる
ここまで読んできたあなたなら、
自分の体験を 一文でまとめる力 が、もうかなりついています。
たとえば、こんなふうに言いかえてみることができます。
日常会話バージョン
「最近、まぶたをギュッと閉じたときに、
電気みたいな光がチカッと見えることがあるんだ。」
「暗い部屋で目を閉じてても、
視界の端に雷みたいな光が走ることがあって、ちょっと気になってて。」
少しだけ説明を足したバージョン
「どうやら『眼内閃光(がんないせんこう)』っていう現象らしくて、
目の奥のセンサーが、押された刺激を“光”と勘違いしてることがあるみたいなんだ。」
完璧な専門用語を使えなくても大丈夫です。
「自分の体験を、自分なりの言葉で言い表せること」 が、何より大切です。
眼科の先生に相談するときのことば
病院で相談するときは、
- いつごろからか
- どんな見え方か
- 片目か両目か
- どのくらいの頻度か
- 他に「黒い影」「視野の欠け」「視力低下」がないか
といった情報を、
できるだけシンプルな日本語で 伝えられると、とてもスムーズです。
たとえば、こんな言い方があります。
「1か月くらい前から、ときどきなんですが、
暗いところで片方の目の端に、稲妻みたいな光が走ることがあります。」
「まぶたを閉じているときにも、
チカッと光るように感じることがあって、
黒い影も少し増えた気がするので心配になって来ました。」
「両目で見えるというより、右目だけで見える気がします。」
あらかじめスマホのメモに箇条書きしておくと、
緊張していても伝えやすくなります。
家族や友だちに説明するときの「たとえ」
医学用語をそのまま言うより、
比喩(たとえ) をまじえて話すと、相手にも伝わりやすくなります。
たとえば、こんなたとえ方があります。
- 「カメラのセンサーが、ちょっと誤作動したみたいな感じ」
- 「テレビ画面に、ノイズの光だけ一瞬ピッと入る感じ」
- 「目の中で、スイッチを押してないのに LED が一瞬だけ光る、みたいなイメージ」
そこに、
「外からの光じゃなくて、目の中のセンサーと神経が
勘違いして起きる現象らしいよ」
という一言を足せば、
「ただの不安な話」から「ちょっと面白い知識の共有」 に変わります。
覚えておくと便利な“目のことば”ミニ辞典
最後に、この記事で出てきたことばの中から、
日常で使いやすいものだけ を、あらためてまとめておきます。
◆ 眼内閃光(がんないせんこう)/フォスフェン
外から光が来ていないのに、
目や神経の刺激だけで光が見える現象。
「目の中のライトセンサーの誤作動で見える光」
くらいのイメージで覚えておけばOKです。
◆ 光視症(こうししょう)
眼科で使われる「症状名」です。
外に光源がないのに視界で光が走るとき、
ときに 網膜裂孔(もうまくれっこう)や網膜剥離(もうまくはくり)のサイン になることもある、
と日本眼科学会などでも説明されています。
◆ 飛蚊症(ひぶんしょう)
視界に糸くずや虫のような影がふわふわ見える症状です。
多くは加齢や近視に伴う変化ですが、
急に数が増えたときには、網膜の病気が隠れていることもある とされています。
◆ 内視現象(ないしげんしょう)
「光そのもの」ではなく、
目の内部の構造や働きが映像として見えている現象の総称 です。
眼内閃光や飛蚊症などが、ここに含まれます。
こうした言葉は、
一度に全部覚える必要はありません。
「困ったときに見返せる“自分専用の言葉リスト”」
として、この記事と一緒に頭のすみに置いておいていただければうれしいです。
ここまでが、「日常で使えることばと応用編」です。
つぎの章では、
「もっとちゃんと勉強してみたい」「本で深く知りたい」と感じた方に向けて、
本や場所を通じてさらに学ぶためのヒント をまとめていきます。
11. 更に学びたい人へ
本と“実際の体験”で、視覚の世界をもっと味わう
ここから先は、
- 「本でもっと深く知りたい」
- 「実際に体験しながら学びたい」
そんな方のための、“次の一歩”ガイドです。
おすすめ書籍
初学者・子どもと一緒に読むなら
キラキラげんきな めのひみつ(からだはすごいよ!)
すみもと ななみ(イラスト)/五十嵐 多恵(監修)
- ゲームに夢中な女の子「くみちゃん」の目にピンチが訪れ、
黒猫の「くろ」と一緒に、近視から目を守るコツを学んでいく絵本です。 - イラスト中心で、小学校低〜中学年でも読みやすいボリューム感。
- 「目を大切にするって、こういうことなんだ」と、
親子で楽しく話し合うきっかけになります。
👉 「まずはやさしく、目の大事さから伝えたい」 というときにぴったりです。
視覚の“成り立ち”を知りたい初〜中級者に
視覚世界の謎に迫る―脳と視覚の実験心理学
山口 真美(著)
- 赤ちゃんの視覚の発達研究を通して、
「脳のなかで視覚世界がどう組み立てられていくのか」 を解説した一冊です。 - 図や実験例も交えながら、
専門的すぎない言葉で書かれています。 - 「見える」という当たり前の感覚の裏にある、
脳と経験の役割がよく分かります。
👉 「視覚ってそもそもどう育つの?」 と気になった方におすすめです。
錯視・イリュージョンの世界を本格的に味わいたいなら
視覚の冒険―イリュージョンから認知科学へ
下條 信輔(著)
- ステレオグラムや錯視などの**「目のだまされ方」**を入り口に、
認知科学としての視覚研究へと案内してくれる本です。 - タイトルどおり「イリュージョンから認知科学へ」、
楽しさと学問の橋渡しをしてくれる構成になっています。 - 1990年代の本ですが、視覚を考える“古典”的名著”として今もよく引用されています。
👉 「錯覚の正体を、ちゃんと科学として知りたい」 という人にちょうどいい一冊です。
「世界の見え方」そのものを深く考えたい人に
なぜ世界はそう見えるのか:主観と知覚の科学
デニス・プロフィット/ドレイク・ベアー(著)
小浜 杳(訳)
- 心と身体の状態によって、
坂のきつさや距離感まで変わってしまう――そんな不思議を、
知覚心理学・認知科学の視点から解き明かす本です。 - 「客観的な世界」と思っていたものが、
実はどれだけ主観や身体に左右されているかが分かります。 - 少し読みごたえはありますが、
**「見える世界=脳と身体がつくるモデル」**という感覚がしっかり身につきます。
👉 この記事の「まとめ・考察」が刺さった方には、特に相性が良い一冊です。
実際に体験できる施設
科学技術館 5階「イリュージョンA」(東京・北の丸公園)
- 東京・北の丸公園にある科学技術館の5階展示室のひとつで、
テーマは 「錯覚(FOREST)」。 - 「うずまきシリンダー」「ジャイロブランコ」など、
目の錯覚や感覚の不思議を全身で体験できる展示がそろっています。 - 公式サイトでも
「私たちが、いかに眼と脳との情報伝達で世界を感じ取っているか実感してください」
と紹介されており、この記事のテーマと非常に近いコンセプトです。
👉 「知識+体験」で、視覚のしくみを実感したい人におすすめのスポットです。
鎌倉不思議立体ミュージアム(神奈川県・鎌倉)
- 鎌倉駅近くの商業施設「あいざ鎌倉(i-ZA鎌倉)」3階にオープンした、
錯視・錯覚立体作品の体験型ミュージアムです。 - 数理工学博士・杉原厚吉さんが監修し、
「不可能立体」など約50点の作品を、見て・触れて・写真も撮りながら楽しめます。 - 「何でも吸引4方向すべり台」など、
ボールが“登っているように見える”不思議な作品も体験可能です。
👉 「目の錯覚を、アートとして・遊びとして味わいたい人」にぴったりの場所です。
小さなまとめ
- 本でじっくり理解するルート
- ミュージアムで体験から入るルート
どちらから入っても、
「眼内閃光」からはじまった “見え方の不思議” を、
さらに深く・広く楽しめるはずです。
この記事が、
あなたの「目」と「世界の見え方」を学ぶ
最初の一冊/最初の一歩 を選ぶ手がかりになれば、とてもうれしく思います。
12.疑問が解決した物語
テスト勉強続きのある夜。
机に向かっていたユウは、ふと手を止めました。
「あのとき調べた“あの光”って、なんだっけ…」
あの出来事のあと、ユウは
「まぶたを閉じる 光 見える」から情報を探し、
眼内閃光(フォスフェン) の解説をしたブログ記事を読みました。
目の奥の“光センサー”が押された刺激を
「光が来た」と勘違いして起きる現象であること
ただし、
・光が急に増える
・黒い影(飛蚊症)が一気に増える
・視界が欠ける
といったときは、眼科受診が重要 なこと
そのポイントが、頭に残っています。
その夜、ユウはまたイスにもたれ、そっと目を閉じました。
今度は、前のように力いっぱいではなく、
呼吸に合わせて、やわらかく。
――チカッ。
まぶたの裏で、小さな光が走ります。
「……あ、これか」
前ならドキッとしていたはずの瞬間。
けれど今は、記事の内容を思い出しながら、
自分の状態を落ち着いて確かめます。
光の回数は急に増えていないか
黒い影が一気に増えていないか
視界がカーテンのように欠けていないか
「今は“いつもの感じ”かな。
でも、様子が変わったら、そのときは眼科に行こう。」
そう心に決めると、
「よく分からない不安」は、
少しだけ「ちゃんと備えられている安心」に変わりました。
それ以来ユウは、
ギュッと目をつぶるクセをやめて、
- 遠くを見る小休憩をはさむ
- 画面を見続けないよう、タイマーで区切る
といった、目をいたわる小さな習慣 を始めます。
数日後。
友だちがふと、心配そうに話しかけてきました。
「最近さ、まぶた閉じると、ピカッて光ることがあるんだよね…」
ユウは、あのときの自分を思い出しながら、
そっと、でもはっきりと伝えます。
「それ、多分“眼内閃光”って現象かもしれないよ。
目の奥のセンサーが、押された刺激を光と勘違いしてることがあるらしい。
ただね、光が急に増えたり、
黒い影がどっと増えたり、視界が欠ける感じがあったら、
そのときは早めに眼科に行ったほうがいいって書いてあった。」
難しい専門家みたいに話す必要はありません。
自分が知ったことを、自分の言葉でそっと渡す。
それだけでも、相手の不安を少し軽くできるかもしれません。
その夜、ユウはノートの端に、
小さくこんなメモを書きました。
「分からない不安は、“知ること”と“相談すること”で減らせる。」
では、あなたならどうでしょうか。
まぶたの裏でチカッと光る、あの不思議に出会ったとき——
- ただ「怖いな」で終わらせるのか
- 名前と仕組みを知り、「必要なときは相談できる自分」でいるのか
どんな向き合い方を選んでみたいですか?
ユウの小さな体験が、
あなた自身の「目との付き合い方」を考える
ひとつのきっかけになれば、うれしいです。
13.文章の締めとして
ここまで読み進めてくださったあなたは、
最初にこのページを開いたときとは、
少し違う気持ちで自分の「目」と向き合っているのではないでしょうか。
まぶたの裏でチカッと光る、
あの一瞬の違和感。
ただの「不安なできごと」だったものに、
名前がつき、
しくみがわかり、
「こうなったら病院に行けばいい」という目安も持てるようになると、
同じ現象でも、心に残る感触はずいぶん変わります。
不安がゼロになるわけではありません。
それでも、
「よく分からないこわさ」から
「知ったうえで選べるこわさ」へ
少しだけ形が変わったのなら、
このブログを書いた意味が、たしかにあったのだと思います。
そしてもうひとつ、
この記事を通してお伝えしたかったのは、
からだの小さなサインに「気づける自分」でいることの心強さ
です。
まぶたの裏の小さな光に気づくことも、
疲れた目をそっと休ませようとすることも、
「いつもと違う」と感じて病院で相談してみることも、
すべては、
あなた自身のからだを大切に扱う、
静かな「選択」の積み重ねです。
この記事の内容を、
全部覚える必要はありません。
ふとしたときに、
「あ、そういえば“眼内閃光”っていう名前があったな」
「何か変だと感じたら、早めに眼科で聞けばいいんだっけ」
そのくらいの記憶のかけらが、
どこかであなたをそっと守ってくれたら、とてもうれしいです。
注意補足
本記事は、作者が現時点で信頼できる情報源をもとに、
個人で調べられる範囲をできるだけ丁寧に整理した内容です。
もちろん他の考え方や整理の仕方もあり、
この説明がすべての正解ではありません。
また、眼や脳に関する研究は進んでおり、
今後の研究によって
理解が更新されたり
新たな発見が出てくる可能性もあります。
もしこの記事があなたの中に小さな
『眼内閃光(がんないせんこう)』という興味のひかりをチカッと灯してくれたのなら、
そのひかりを合図に、
ぜひ文献や資料というより深い“知の光源”にも手を伸ばして、
ご自身のペースでじっくり学びの世界を照らし広げてみてください。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
どうかこれからも、
あなたの中にふと生まれる小さな『眼内閃光』を、
不安だけでなく“自分を守る合図”として、やさしく受けとめてあげてください。

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