かるくなるって、りんごが なくなるってことだったんだ

絵本

ーーーテオ こぐま 

こぐまのテオは、おばあちゃんところにリンゴを届けに行きますが、リンゴが沢山入ったバケツはとても重く、途中でアライグマに手伝ってもらいます。そしてアライグマにお礼としてリンゴを1個あげました。更に進むとウサギに出会い、また1つリンゴをあげます、その先はリスに出会いまたリンゴをあげます。バケツの重さが軽くなりますが、代わりにリンゴの数は減ってしまったことに気が付いたテオでした。

自分にとっては悪い結果となってしまった、事に気が付いてしまったテオの悲痛な言葉だと感じられました。

子熊のテオを手伝ってくれたアライグマ、喜んでもらおうとしたウサギ、困っていたところを助けてくれた三匹のリス、テオは助けてもらったお礼にとリンゴをあげたテオ。

お礼が出来たテオ、喜んでもらえたうえにリンゴが貰えた、アライグマやウサギや三匹のリス達。そのうえテオはバケツが軽くなって歩きやすくなり皆が喜べる結果となったハズだったのですが。

その代償として、おばあちゃんにあげるリンゴの数が少なくなってしまったのです。

軽くなることは中身が減る事だという世の中の現実の真理に気が付いてしまったテオの悲しさが伝わってくるようでした。喜んだのも束の間、その喜びの代償としての対価が、大きすぎてしまった事への衝撃、この様な経験を通して皆成長していくのでしょうが。

テオの表情も言葉から哀愁が漂う場面でした。

バケツが軽くなるという事の対価としてリンゴの数は減ってしまう。

あばあちゃんに喜んでもらうための道具のリンゴ、おばあちゃんに喜んでもらうことが、第一の目標でありそのためにはどんな苦労も厭わないという考えであったのならば、今回のテオのリンゴを皆にあげるという行動は結果的には間違っていたのかも知れませんよね。

しかし、今回のここまでの行動の中で誰も間違った行動はとっていないとも言えますよね。

テオはおばあちゃんに沢山喜んで欲しいがために沢山のリンゴを持ちます。

バケツの重さにテオが困っていたと感じたアライグマは、運ぶのを手伝ってくれます。

おばあちゃんがもっと喜ぶと考えてウサギは、テオに花をあげます。

転んでしまい困っているテオを助けるために三匹のリスたちは、テオの手助けをします。

そして、それらのお礼として、それぞれにテオはリンゴをあげます、そのうえカバンは軽くなり歩きやすくなります。

どの行為も善意と、お礼からの行動であり間違ってはいないはずですよね。

それでも、リンゴが減ってしまった事になってしまった事実に悲しむテオ。

行動と結果では、意にそぐわない事が多にして往々にしてあることの一場面なのでしょうが、かくも現実は切ないですね。

それでもこの時点では、テオはおばあちゃんの家に行くことまだ諦めていない様子だったのですが、この経験から、手伝ってもらうと、誰かの行動が介入してしまうと、何かが減ってしまうとういう思考に陥ってしまいます。

1つの方向からしか物事を捉えられないことへの危険性が如実に現れてしまった場面かも知れませんね。

自分では冷静で客観的に物事を捉えているつもりでも、直前のまたは強く感受してしまった事象に考え方が引っ張らてしまうと、その場合は大抵は悪い思考へとネガティブな思考へと流されてしまうのではないでしょうか。

(自分がそのような経験多いだけで、他の方々はそのような事はないのでしょうか…?)

そして、テオもその例に漏れずに、今は誰にも手伝ってもらいたくない、誰にも関わってほしくないとの思考に陥ってしまいます。

そのせいで、改めてリンゴの数を数えていたテオにカワウソが手伝ってあげると声をかけると、手伝ってもらったら、リンゴをあげなくてはいけない、との思考からカワウソの手伝いを無闇に拒否しようとしてしまいます。

カワウソが手伝うと口にしたからなのでしょうが、その言葉を耳にしてしまったテオは今までのことが 頭によぎってしまったのでしょう。

カワウソからしてみればそれほど意識した言葉では無かったのかも知れませんし、テオのしていることが気になって話しただけだったのかも知れません。それでもテオが無理にバケツを隠そうとしたことで、余計に事態は悪化してしまいました。

どちらも相手を貶めようとなんて考えていなかったハズなのに、悪気はなかったハズなのに。

テオとカワウソがバケツを引っ張り合い、その結果バケツはひっくり返ってしまいます、そしてリンゴは川に落ちてしまい無くなってしまいます。

あまりのショックで泣いてしまうテオ。しばらく泣いていましたがおばあちゃんちにいく理由がなくなってしまったため、家に帰ろうとします。寂しくやるせないテオの場面でした。

自分のことを手伝ってくれた相手にお礼をするのは勿論大切なのですが、その御礼をどの様なものにするかも考える必要があるのですね。

その御礼に対する評価が自分の中でどの様な価値を占めていたのか、どこまでのお礼を今の時点で返せるのかを考えずに、自分の返せる物の限界をお礼として差し出してしまうと、自分にとっても相手にとっても良い結果にはならないのかも知れないと考えさせられた心に響いた感銘を受けた言葉でした。

そのような悲しい思いを経験してしまった子熊のテオでしたが、始まりは森の向こうに住むおばあちゃんにリンゴを届けようとします。しかし沢山のリンゴをバケツに詰めたために、バケツはとても重くなってしまいテオはゆっくりと歩いていきます。

その姿を見たアライグマは手伝ってくれます、辛そうな様子を見たらすぐに手伝おうとできるアライグマは素敵ですね。お礼にテオはリンゴをあげます、そのりんご一個分バケツは軽くなります。

次はうさぎに会ったテオ、テオがおばあちゃんにリンゴを届けに行くと言うと、ウサギはおばあちゃんが喜んでくるだろうと、おはなをテオにあげます。テオが行っている行動を理解したうえで、その行動を更に良い結果になるように手助けしようとするウサギ素敵ですね。テオはウサギにお礼にリンゴをあげます、そのリンゴ一個分バケツは軽くなります。

森の奥まで来たテオですが、木の根っこにつまずいてしまいます、バケツがひっくり返りリンゴも転がってしまいます、慌ててリンゴを拾うテオを手伝ってくれたのが三匹のリスでした。大変な状況に対峙したらすぐに手助けできるリス素敵ですね。リンゴを拾ってくれた三匹のリスにテオは1個ずつリンゴをあげます。その渡したリンゴの分カバンは軽くなります。

自分を助けてくれ、手伝ってくれ、気にかけてくれた者達にきちんとお礼としてリンゴを渡せたテオでしたがその御礼は、今自分が行動しようとしている事のキッカケともなったリンゴでした。

様々な者達への、お礼の代償、バケツが軽くなった代償として、おばあちゃんにあげるための物、おばあちゃんに喜んでもらおうとしていたリンゴの数が減ってしまった事に気が付いたテオが言った言葉が

どうして、こんなに、りんごが へっているの?

そうか、かるくなるって、りんごが なくなるってことだったんだ。

どうしよう。おばあちゃん、がっかりするよ。

絵本 テオのりんご より引用

でした。

自分の行動が、本来行おうとしていた行動を妨げてしまう行為だったことに気が付きショックを受けてしまうテオ、その後さらなる悲劇がテオを襲い、リンゴはなくなってしまい大泣きをしてしまうテオ。

リンゴがなくなってしまい、うちへの帰り道とぼとぼと歩いていると、リスが出てきて良いものをくれます、さらには、アライグマもウサギもやってきて、おばあちゃんにあげられそうなものというテオにとって必要なものを持ってきてくれます。

お互いにお互いを思いあった善意の行為ならば、良い結果が返ってくるのですね。

リンゴはないけれども沢山の動物たちが、リンゴとは別のおばあちゃんが喜んでくれそうなものを持ち寄ってくれたおかげで、またおばあちゃんの家を目指す一行。

するとカワウソは先程、川に落っことしてしまったリンゴを拾っておいてくれていました。

様々な動物たちのおかげで、バケツの中身は山盛りいっぱいになりテオも元気になりおばあちゃんの家に向かいます。

そしておばあちゃんの家についた一行がどの様に喜んでもらえたのかを直接読みたい場合は

テオのりんご 作 きたむらえり 絵 きくちちき

こどものとも年中向き 2019年4月号 通巻397号 福音館書店

をぜひ読んでみてください。

皆様にはどの様な新しい響きがあるのか楽しみです。

他者を思っての行動ならば、今回のように良い結果につながる確率が多いと嬉しいですよね。

良かれと思った事が、悪い結果になってしまうこともありますが、そのような結果を恐れて他者の手伝いができない気持ちが強くなってしまうことや、手伝われる事を素直に喜べない、なにか裏があるのではないか?と考えなくてはいけないような、その様な日常は疲れてしまいますよね。人の好意を素直に受けられる、人に好意を素直に向けられるような日々をおくりたいです。

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