「本屋に入るとなぜか急にトイレに行きたくなる…?」――そんな不思議な体験をした人の間で話題の現象が『青木まりこ現象』です。

考える

本屋でお腹が痛くなるのはなぜ?―『青木まりこ現象』を科学と腸活で読み解きます

まずいまただ!
推し作家の新刊コーナーに足を踏み入れた途端、お腹がキュルッ。
――そんな経験、あなたにもありませんか?

1985年、『本の雑誌』読者欄に寄せられた投書をきっかけに命名された
青木まりこ現象は、
書店や図書館で急激に便意・尿意を催す不思議な体験です。

青木まりこ現象とは?(定義・概要)

定義:本屋などに入店後、急に強い便意(まれに尿意)を感じる現象。
命名の経緯:投書者・青木まりこさんの投稿が『本の雑誌』1985年2月号に掲載され、
翌3月号で編集部が正式名称として採用。反響は週刊文春ほか主要メディアへ拡大しました。
公的分類:医学的な病名ではなく、都市伝説と実体験報告が交錯する“文化現象”として扱われています。

なぜ注目されるのか?

――青木まりこ現象を引き起こす4つの原因説

青木まりこ現象』がここまで人々の関心を集めるのは、「誰にでも起こるかもしれない不思議な現象」でありながら、いまだ明確な原因が特定されていないという点にあります。科学的な研究や専門家の仮説も増えてきていますが、その中で特に注目されているのが、次の4つの代表的な原因説です。

匂い刺激説

まず第一に挙げられるのが、「匂い」による身体反応です。新刊のインク、製本用の接着剤、紙に含まれる揮発性化合物(VOC)などが、鼻腔から迷走神経を刺激し、腸の動きを促進(=腸蠕動)するという説です。

近畿大学の野村正人名誉教授の研究チームは、実際に書店の空気を3年間かけて採取・分析し、フタル酸エステル類という化学物質を検出。その上で、マウス実験により排便量が増える結果を得ています(Kindai Picksインタビューより)。

つまり、匂いが無意識に自律神経へ作用して、身体に“トイレに行こう”という信号を送っている可能性があるというわけです。

姿勢・腹圧説

2つ目の説は、「立ち読み姿勢」が原因という考え方です。本屋で立って本を読むとき、自然と前かがみになります。この姿勢が腹部を圧迫し、腸を物理的に刺激して便意を引き起こすというものです。

これは、便秘改善のために推奨される「スクワット排便法」とよく似た理屈です。つまり、特定の姿勢が腸に直接的な影響を与える可能性があり、特に長時間同じ姿勢をとることでトリガーになりやすいのです。

心理的要因説(リラックス or 緊張)

3つ目の説は、心理状態が腸に与える影響です。書店は多くの人にとって「静かで落ち着いた空間」、つまり安心できる“安全基地”のような場所です。この安心感が副交感神経を優位にし、腸が活発に働き出すと考えられます。

一方で、試験前や資格勉強のテキスト売り場に行くと、「集中しなきゃ」という緊張感から腸が過敏に反応し、便意が起こるという逆のパターンもあります。これは過敏性腸症候群(IBS)の患者にもよく見られる反応であり、アメリカのメンズヘルス誌などでも臨床医がこの点に言及しています。

条件反射説

最後は「条件反射説」です。これは、子どもの頃に“書店でトイレに行きたくなって困った”という体験を繰り返したことで、「書店=便意」という無意識の結び付きが脳内にできてしまうという考え方です。

まるで、ペットボトルを見ると喉が渇くような、学習によって形成される反応です。カナダ・マギル大学のサイエンスコラムでもこの現象を例に挙げており、潜在的な記憶が行動に影響するという認知心理学的な視点からも検討されています。

🧠 総合的な見解

複合的にスイッチが入る多因子モデル

これらの4つの説を見てもわかるように、現象は単なる「匂い」や「姿勢」だけでは説明しきれません。現場での体験では、匂い・姿勢・心理的な状態・過去の記憶が重なったときに、まるでスイッチが入ったかのように急に便意が生じるケースが多く報告されています。

そのため現在では、「多因子モデル(複合要因説)」が最も有力とされており、原因の特定には人それぞれのライフスタイルや感受性まで含めて考える必要があるといわれています。

実生活での“腸活”応用

── 不思議な現象を味方にする方法

『青木まりこ現象』は不意に起こる不便な体験であると同時に、うまく利用すれば「腸の動きを活性化するヒント」になります。以下では、実際の生活で取り入れられる3つの“腸活”テクニックをご紹介します。

    A. 紙の匂いを使った「30秒呼吸法」
    まず、もっとも簡単に始められるのが「紙の匂い」を使ったリラックス呼吸法です。

    やり方はとてもシンプル。新聞や雑誌を顔から10cmほどの距離に持ってきて、ゆっくりと深呼吸を5回行います。ポイントは吸う時間より吐く時間を2倍にすること。そのあと、軽く前屈を10回行い、最後にコップ1杯の白湯をゆっくり飲むのがコツです。

    この一連の動作によって、迷走神経が刺激され、自律神経のバランスが副交感神経優位にシフトします。これは「呼吸性迷走神経刺激モデル」と呼ばれる考え方で、リラックスと排便を促す働きがあることが医学的にも示唆されています(PMC文献より)。

    さらに、紙から発せられる揮発性化合物(特にフタル酸エステル類)が腸の動きをサポートする可能性も指摘されています(Global Voices報告より)。白湯をあらかじめ用意しておくと、動作がスムーズで継続しやすくなるのでおすすめです。

    B. 頭もすっきり「本棚ウォーク」で集中リセット
    もうひとつの活用法は、集中力が途切れたときの“脳リセット”としての「本棚ウォーク」です。

    まずはタイマーを3分にセットして立ち上がり、オフィスや自宅の本棚の前に立ちます。視線を最上段から最下段までゆっくり上下に動かしながら、背伸びを3回。最後に気になった1冊を手に取って、パラパラとページをめくるだけ。

    この動きは、視線の移動・立ち姿勢・軽い体操という3つの要素が重なり、前頭葉への血流を促し、ストレスホルモンであるコルチゾールの低下が期待されます(筑波大学の職域ストレス研究2024より)。3分という時間設定は、脳の集中モードを“切らさずに切り替える”ちょうどよい長さでもあります。リモート会議や長電話の前にも効果的です。

    C. 子どもの“急な訴え”対策にも使える
    最後に、小さなお子さんがいる家庭で役立つ方法です。

    書店などに入る前にまずトイレに行くよう促すのは基本ですが、加えて「10分ウォッチ」と呼ばれる“時間の意識づけ”を取り入れると、子どもの不安を和らげる効果があります。これは、「入店から何分経過したか」を親子で共有する習慣です。

    また、入店時に店舗の案内図でトイレの場所を一緒に確認しておくと、「行きたくなったらどうしよう…」という心理的ストレスを減らせます。立ち読み中は5分ごとに姿勢を変えるようにし、背伸びやつま先立ちなどを取り入れることで、腸への負担や刺激の集中を避けられます。

    不安の根本には「間に合わなかったらどうしよう」という恐れがあるため、「もし行きたくなったらすぐ教えてね」と、あらかじめ声をかけておくことで、パニックを未然に防ぐことができます(theyouthfairy.com参照)。

    注意点とよくある誤解

    ── 安全に取り入れるために知っておきたいこと

    ここまでの方法は、誰でもすぐに実践できるものですが、いくつか注意すべき点や、よくある誤解もあります。

      「必ず下痢=病気」ではありません
      『青木まりこ現象』は健康な人にも起こり得ますが、月に2回以上の頻度で起きる/腹痛や血便を伴う/トイレに駆け込むほどの緊急性がある場合は、過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(IBD)などの可能性も疑われます。

      米国の消化器内科医、Dr. Saurabh Sethi 氏もSNSを通じて「その症状、笑い話で済ませてはいけないかもしれません」と警鐘を鳴らしています(nypost.comより)。粘血便や激しい腹痛がある場合は、必ず2週間以内に専門医を受診しましょう。

      「古書店の方が匂いが強いから危険」説は誤解
      古書店では古紙特有の匂いが強いですが、揮発性有機化合物(VOC)は新刊に比べて少ないため、実際には症状が出にくいとする反対意見もあります。つまり、匂い刺激だけではこの現象を説明しきれないという見方が学術的にも出てきています(McGill大学より)。

      自分自身の症状が、匂い・姿勢・心理のどれに強く反応しているのかを観察することで、対策が立てやすくなります。

      書店員だからといって必ず発症するわけではない
      「本屋に長時間いる人=いつもトイレに行きたくなっている」と思われがちですが、書店員のアンケート調査では、発症しない人の方が多いという結果が出ています(近畿大学・野村正人名誉教授のインタビューより)。

      これは「慣れ」や「心理的な条件反射の弱化」が影響していると考えられており、同じ空間でも「客として過ごす」のと「勤務中にいる」のでは身体の反応が異なることが示唆されます。

      匂い刺激を活用する際の安全性にも配慮を
      紙の匂いにはインクや接着剤由来の揮発成分が含まれており、人によっては頭痛・めまい・アレルギー反応が出ることもあります。とくに化学物質過敏症の方や妊婦、小さな子どもがいる家庭では、匂い刺激を使った方法は避けた方が安全です。

      不快感を感じたらすぐに中止し、十分な換気を行うようにしてください。

      ✅ 青木まりこ現象を“安全に・前向きに”活用するために
      呼吸・姿勢・心理の3要素をうまく使えば、腸活・ストレス対策に応用可能

      繰り返す異常な症状は病気の可能性もあるため、自分の体調に敏感になること

      他人と同じ空間でも、自分だけが反応することはおかしくない――その違いを受け入れる心構えも大切です

      現象を正しく理解し、自分の体と向き合いながら、楽しく・無理なく活かしていきましょう。

      おまけコラム

      “名前がついた日本発の奇現象”3選

      「青木まりこ現象」のように、日常の中のちょっとした不思議が人々の共感を集め、やがて“名前のある現象”として定着していく例は、実は日本にいくつか存在しています。ここでは、ユニークでちょっと笑える、けれどどこか共感してしまうような“名づけられた現象”を3つご紹介します。

        ディラン効果
        詩を声に出して読んだり、暗唱したりすると、なぜか感情があふれて涙が止まらなくなる――そんな体験、ありませんか?
        これは、アメリカのフォーク歌手ボブ・ディランの歌詞を読んでいたときに感極まって泣いてしまう人が続出したことから、「ディラン効果」と呼ばれるようになりました。とくにリズムや言葉の響きが感情を揺さぶることが関係しており、言語と情動の密接なつながりがうかがえます。

        吉田拓郎症候群
        ある音楽番組でリスナーが「吉田拓郎の曲を聴くと決まって眠くなる」と投稿したことをきっかけに、「吉田拓郎症候群」と呼ばれるようになった都市伝説的な現象です。
        たしかに、柔らかなギターの音色や懐かしい歌詞には、副交感神経を刺激する“癒し効果”があるのかもしれません。これは医学的に検証された症状ではありませんが、「聴覚の記憶が心身に影響する」ことを実感させてくれる一例です。

        山田よし子症候群
        『青木まりこ現象』の延長線上で話題になったのがこの「山田よし子症候群」。
        ラジオ番組で「CDショップに行くとなぜかトイレに行きたくなる」と投稿したリスナーの名を取って命名されたもので、いわば“便意系派生現象”の第二弾とも言えます。
        「青木まりこ」と同様、特定の場所と排泄欲求が無意識に結び付いた結果と考えられており、心理・条件反射の影響が強く働いているとされています。

        こうしたネーミング現象に共通しているのは、「誰か一人の率直な体験」が、メディアの力によって共感と共鳴を呼び、名前とともに社会に広がっていくという点です。
        あなたの“ふとした不思議”も、いつか「○○現象」として世に知られる日が来るかもしれません。

        考察

        「あなたなら、どう活かしますか?」

        『青木まりこ現象』という奇妙で面白い現象をたどってみると、そこには身体の仕組みと心の動きが密接に絡み合った“人間らしさ”が見えてきます。

          書店で急に便意を感じたこと、誰にも言えなかったけど実は経験がある……。そんな人は思いのほか多いのです。

          現象の原因はひとつではなく、「匂い」「姿勢」「心理」「記憶(条件反射)」といった要素が複雑に重なり合い、ある条件が揃ったときにスイッチが入るようにして発生します。

          けれどこの現象は、不便な“困った体験”として避けるだけでなく、うまく付き合えば腸の動きを助ける“きっかけ”として活かすこともできるのです。
          たとえば、集中力を切り替えるタイミングに「紙の匂い深呼吸」や「本棚ウォーク」を取り入れてみる。あるいは子どもの不安を和らげるために、トイレの位置を一緒に確認する。

          ちょっとした工夫と理解があれば、不思議な現象も“生活の味方”に変わるのだと、この現象は私たちに教えてくれます。

          あなたは次に本屋へ行ったとき、『青木まりこ現象』をどう活かしますか?
          自分なりの工夫や体験談、アイデアをぜひコメント欄でシェアしてみてください。
          もしかしたら、あなたの声が次の「○○効果」のはじまりになるかもしれません。

          おすすめ書籍

          『においと香りのサイエンス』 匂い×生理学を深掘りしたい人
          『腸と脳』小林弘幸 ストレス腸の仕組みを知りたい人
          『本屋図鑑』いとうせいこう他 書店文化を味わいたい人

          本の特徴とおすすめ理由

          📘『においと香りのサイエンス』(日本香料協会 編)
          🔍 においや香りが私たちの脳・神経・感情・行動にどう作用するのかを、科学的に解説した一冊。
          嗅覚のメカニズムから、香料産業の裏側、文化との関わりまで幅広くカバー。
          フタル酸エステルなど、揮発性化合物(VOC)と人体の関係にも触れており、『青木まりこ現象』に出てきた「匂い刺激説」との関連も見つけやすい構成です。
          ✅ 理系・文系どちらにも読みやすいように工夫されており、においにまつわる研究と生活実感の橋渡しになる内容です。
          図解・写真も豊富で、嗅覚に関する学びの入門書として最適。
          👤 アロマセラピー、香水、化学物質過敏症など、匂いに関心のある人すべて。
          “匂い”が人間の行動にどう影響を与えるかを体系的に知りたい人。

          📗『腸と脳 ―ストレスに強くなる食事と生活習慣』(小林弘幸 著)
          🔍 「腸」と「脳」がどれほど密接につながっているかを、自律神経・腸内環境・ストレス反応の観点から解き明かすベストセラー。
          医学博士・小林弘幸氏が、自身の臨床経験をもとに、腸の状態を整えることで心の健康も安定することを紹介。
          ✅生活習慣・食事改善・呼吸法など、誰でも取り入れられる実践的な腸活テクニックが満載。
          難しい用語が少なく、健康本として読みやすく、すぐ役立つのが魅力。
          👤「緊張するとお腹が痛くなる」「便秘や下痢が続く」といったストレス腸タイプの人。
          体調と気分の波をどうにかしたい、自律神経を整えたい人。

          📕『本屋図鑑』(いとうせいこう・奥村健一・齋藤あきこ 著)
          🔍 日本全国のユニークな個人書店・老舗書店・小規模書店をカラー写真と解説で紹介した、ビジュアルブック。
          書店そのものだけでなく、店主の思い・地域との関わり・本とのストーリーを丁寧に掘り下げています。
          まるで本屋を“旅するように味わえる”一冊です。
          ✅書店好き・紙の本ファンにはたまらない!「こんな本屋さんがあったのか」と発見の連続。
          旅行気分でページをめくれるので、読むだけで心がほぐれる癒し効果もあり。
          👤休日に書店をぶらぶらするのが好きな人、“本屋巡り”が趣味の人。
          本の街・神保町や地方書店に興味がある、本と人の物語に惹かれる人。

          🎯まとめ:それぞれの違いと選び方

          書籍名学びたいテーマ読者タイプ
          においと香りのサイエンス嗅覚と科学・においの影響においに敏感/香料・健康に興味
          腸と脳腸活・自律神経・ストレス対策不調・便秘/ストレスに弱い人
          本屋図鑑書店文化・人と本の関係本屋好き/ノスタルジックな本が好き

          どの本も、『青木まりこ現象』というテーマをさらに深く味わうのにぴったりの内容です。
          それぞれ別の角度から人間の心と身体、そして“本と場所の関係性”を読み解くことができるため、興味に応じてぜひ手に取ってみてください。

          ✧ 最後に

          ── 日常の“ふしぎ”を、あなたの暮らしのヒントに

          「本屋に入ると、なぜかトイレに行きたくなる」――そんな一見どうでもよさそうな現象が、実は身体と心、そして記憶の仕組みと深くつながっている。
          青木まりこ現象』は、私たちが無意識に抱えているストレスや体の反応にそっと気づかせてくれる、不思議でどこか愛おしい現象です。

          名前のついた「現象」には、人の体験と共感が詰まっています。
          あなたの何気ない違和感も、実は他の誰かとつながる“ヒント”になるかもしれません。

          ぜひ、次に本屋へ行くときは――
          匂いや姿勢、気持ちの変化にちょっとだけ意識を向けてみてください。
          もしかしたら、自分の身体の声にもっとやさしくなれる一歩になるかもしれません。

          補足説明

          ※本記事の内容は、筆者が個人で調べられる範囲で信頼性を重視してまとめたものですが、医学的に確立された見解ではない情報も含まれます。
          今後の研究の進展によって、より明確な原因や新たな知見が示される可能性があります。
          この現象がすべての人に当てはまるわけではないことを、あらかじめご理解ください。
          ただし、『青木まりこ現象』のように医学的な診断名ではないテーマについては、研究段階であることや異なる解釈が存在する点をご理解ください。

          今後の研究の進展によって、新たな説や事例が明らかになる可能性があります。
          現象を面白がりつつも、必要があれば専門家に相談する冷静さも大切にしていきましょう。

          最後まで読んでいただき、

          本当にありがとうございました。

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